2009-06-11

お部屋1872/部数と印税 7・上製の経費とアマゾンの順位

梅雨入りして鬱陶しい季節となりました。せめて気分だけでも爽やかにすべく、読んでない方はお先に以下に目を通してください。長くなってきたので、サブタイトルをつけてみました。

「1864/部数と印税 1・印税さまざま」
「1865/部数と印税 2・刷部数と実売」
「1866/部数と印税 3・下がる印税率」
「1868/部数と印税 4・上製にする理由」
「1870/部数と印税 5・本のみてくれ」
「1871/部数と印税 6・部数と定価」
 
 
今回はこれまでの補足です。

その前に事情説明。一昨日、「1871/部数と印税 6」を修正を加えた際にトラブルが生じたようで、ポットのサイト上では存在しないことになってました。深夜、帰宅してから気づいたのですが、一部を残して元データのほとんどが消えてしまってまして、ガックリ肩を落としつつ修復しました。

「何かあったのか」と心配してくれた方もいたようですが、単なる書き込み上のトラブルです。

では、補足の1。

「1868/部数と印税 4・上製にする理由」のコメント欄に、ポット出版の沢辺さんが、並製を上製にする経費を書いてくれました。

四六判で、並製と上製の差は30円程度。この場合は、部数の多寡には関係がないので、安い本でも高い本でも同じです(判型によっては違ってきましょうが)。

対取次の掛け率は出版社によって違いますが、ポット出版の場合は、44円程度定価を上げれば同じ金額が残ることになります。これだと原価率が上がってしまうため、同じ原価率を維持しようとすると、もう少し高くする必要がありますが、1000円の本であれば、1100円にすればいいだけのこと。

しかし、多くの部数を刷ってベストセラーを狙う売り方をする本だと、1000円の本を1100円にはしたくないでしょう。

これが3000円台の本ともなれば、原価にも原価率にも影響をほとんど与えないので、そのままの定価で上製にする判断をしやすく、3500円の本を3600円にすることの抵抗も少ない。「高い本だから上製にしやすい」ということになります。

しかし、安い本でも上製のものはあります。とくに女性向けの本で、新書サイズの上製本がよくありますね。中身がスカスカなので、新書で文字の級数を上げて1冊にするしかない。

新書のほとんどは定価が700円台から800円台です。そのため、並製の新書で1000円台となると高い印象になります。

そこで1000円で出せるものを1100円の上製本にします。こういう本は200ページもなかったりするため、厚い紙を使ってツカを出すのも定石です。これによって、値段が高くなっても、新書との差別化ができて、さほど高い印象にはならないわけです。こちらは一般の新書よりも高く、「高いなりの見てくれを必要とする」ための上製です。

バカバカしいですが、こんなことで本は売れたり売れなかったりするものなのです。

続いて補足の2。

『エロスの原風景』は、アマゾンで時折4桁に突入してまして、予約の段階での数字としては上出来です。

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で、この順位について、「1870/部数と印税 5」に、「アマゾンの順位は册数ではなく、売り上げ金額の集計」と書きましたが、アマゾンは集計方法を公開していないはずで、これはあくまで私の観察結果です。違っていたらごめん。

私は「数学バカの数字好き」なものですから、数年前に、「どう順位を出しているのか」「どう順位が動くのか」が気になって、数ヶ月にわたって、数字を調べ続けたことがあります。册数だったら、初刷千部台の高額書が三桁に入ることは考えにくいですが、現にそういうものがあって、「金額の集計だな」と判断した次第。

金額だけを集計しているのでなく、册数と金額のどちらも考慮しているだけかもしれないですが、册数だけで決定するよりずっと合理的です。

書店の売り上げ順位では、今も册数だけで決定していることが多いと思います。册数はわかりやすいですけど、2千部売れている1万円の本と、3千部売れている千円の本とを比較して、後者の方が売れているとするのは納得しがたい。ほとんどすべての場合、前者の方が利益を出していて、後者は赤字の可能性もあります。同じ10%の印税であれば、前者が200万円、後者が30万円です。前者を「売れている」と言うべきではないか。

本を出す立場から、また、本を売る立場からも(タコシェの店員だったものですから)、以前から私はこれに不満があったのですが、アマゾンはさすがだなと。

册数ではなく、金額の集計になると、大手の安めの本より単価の高い中小の本が上位に入りやすい結果をもたらします。アマゾンで「売れている順」に並べて、「同じような本なら売れている方を買う」という人たちがいる以上、この差は決して小さくない。

アマゾンがこのままシェアを拡大していくことに対する反発もあるし、これによって書店が潰れていくことに対する危惧もあるのですが、この現実は認めざるを得ず、力のない出版社、実績や知名度のない著者にとって、アマゾンはありがたい存在です。

現在、全国の書店数は1万5千程度かと思います。この中には、雑誌と文庫くらいしか置いてなかったり、文具やビデオと一緒に本を少し扱っている程度の書店も多数入っており、はなっから私の本は置かれていない。客注があって初めて入荷することがある程度ですが、客注自体がめったにないし、一冊客注があったところで、「次からはこの著者の本は注文を出そう」とはなかなかならない。

部数と軒数を比較すれば一目瞭然であるように、それほど小さな書店じゃなくても、初刷3千部の本はほとんどの書店に入荷しません。入荷しても、限られたスペースにもっと売れるものを出しますから、客の目に触れないまま返本されます。本はあちこち行ったり来たりするだけ。

入荷する店には複数册入りますので、千軒の書店にも入らない。例えば拙著『風俗お作法』では、総計で百冊以上注文してくれた都内の書店があります。たったひとつの書店が初刷の30分の1を扱う(今も売り切れてないので、実際にはもっと多い)。いかに数少ない書店が売ってくれているのかがよくわかりましょう。

大きい出版社だと、全国のサンプリング店の数字を集計して、全国どこでどの程度売れているのかのデータを出していて、数字が好きな私は時々送ってもらうのですが、私の本は極端な都市型ですから、大雑把に言えば、4割から5割が首都圏、2割から3割が大阪・京都・兵庫、残り全部合わせて3割程度です。県によっては、全県合わせて一桁しか売れないこともあるはずです。

文庫はもっと多くの書店に流れますが、私の単行本に限って言えば、少なくとも95%くらいの書店はなくてもいい。それら95%の書店でも、取次が取り扱っているすべての書籍の取り寄せができるという点が書籍流通のすぐれた点ですが、アマゾンさえあれば、その点でも95%の書店はいらない。

もちろん、それらの書店があって出版界は成立していますから、もしなくなったら、出版社自体が成立せず、残りの5%の書店も成立しません。出版界の発展を担ってきたのはそれらの書店でもありますから、そう簡単に潰してはいけないわけですけど、私個人の本にとって、アマゾン一社と、95%の書店とどっちが大事かと言えば、迷う事なくアマゾンです。

この調子だと次回も終われそうにないです。