2009-06-06

お部屋1866/部数と印税 3・下がる印税率

「日本トンデモ本大賞」矢野穂積のパシリと化した人々傍聴人の写真を撮って議会で注意される恥ずかしい市議「貝になりたい」とわめき続ける饒舌な盗作者など気がかりなことがたくさんあるのですが、「1864/部数と印税 2」の続きです。

出版業界紙「新文化」をチェックしていると、出版界が終焉に向かっていることをヒシヒシと感じます。年にいくつも出版社が潰れているのはいつものこととも言えますが、書店のチェーンまでが次々と潰れています。そりゃ、本の売り上げが増えないのに、雑誌はコンビニにもっていかれ、本はアマゾンにもっていかれれば、書店は潰れるしかない。

かといって、コンビニとネット書店が既存のマーケットのすべてを支えられるかと言えば無理でしょう。町の書店が消滅しつつある中で、18禁のエロ本が危機に瀕しているように、書店があるから売れていた商品が存在しています。

「エロ本なんてなくなってもいい」と考える人たちもいそうですが、「くだらない本」「公序良俗に反する本」「どうでもいい本」「すぐに捨てられる本」「安直な本」を含めて本のマーケットは成立しています。むしろ、それが大多数かもしれない。

そういった本はついでに買うものだったり、勢いで買うものだったり、気分で買うものだったりしますから、わざわざアマゾンで探して買う人はあまりおらず、どうしたって部数は減ります。

出版科研が出す数字を見ると、出版物は、年間5%程度の売り上げ減少が続いてます。単行本は微減ですが、雑誌に至っては10%近く落ち続けてます。広告収入はもっと落ちていると言われますので、雑誌はどこも辛うじて続けている状態です。景気がいいのは「小悪魔ageha」くらいじゃないですかね。

書店も出版社も薄利多売の商売のため、わずか数%の落ちでも、顕著に利益の減少につながり、書店も出版社も続々赤字に転じてます。

小学館は4年連続の赤字で、昨年度の赤字は63億円。大手出版社は人件費がべらぼうに高いですから、働かない社員をクビにして、残った社員の給料を下げればいいだけですけど、そうは簡単にはいかないので、子会社化を進めて人件費を下げようとしています。新聞社もテレビ局もそうです。

単行本部門はさほど落ちてないとは言え、雑誌がこうも落ち込むと、出版社全体で出費を押さえるしかない。すでに本は落とせるところまで原価を落としていますから、あと手をつけられるのは印税くらいのものです。大手も刷部数の10%はもう維持できないでしょう。印税率を下げるか、実売で計算することになっていくのは避けられない。

中でも安い原稿料を単行本の印税で埋めている漫画家たちは生活ができなくなり、小林よしのりは、さらにいっそうパチンコに依存することになるでしょう()。

もちろん、中小は中小で、さらに条件が悪化していくでしょうから、「1864/部数と印税 1」の追記に書いたように、「今までは印税を出してましたが、これからは300部買取でお願いします」なんてことになりかねない。厳しいです。

このシリーズ、ついつい長くなってしまいましたが、ここからやっと新刊の話です。

他の著者のことまでは知らないですが、ポット出版の印税は、「実売計算」の10%で、増刷分から「刷部数計算」の10%です。増刷された場合はもちろん、初刷を売り切れば「刷部数計算」の10%と一緒ですが、なかなかそうはいきません。

私は今までポット出版で9冊の単著(「共著」や「編著」ではなく、著者一人で書いた本のことです)を出してまして、うち増刷されたのは3冊あります。1冊は5刷、1冊は4刷、1冊は2刷です。増刷されてはいないながら、初刷分をほぼ売り切ったのが1冊、今なお動いていて、そのうち売り切りそうなのが1冊です。9冊中5册は「刷部数計算」の10%と同じ程度の印税になりますから、まあまあの成績かと思いますが、残り4册はコケてます。

コケたと言っても、初刷を売り切らなかっただけのことですから、赤字になったとは限りませんが、中には半年で千部ちょっとしか売れなかったものもあります。これだと出版社は赤字です。その後も少しずつは売れていきますから、最終的にはペイしている可能性はあるにせよ。

1600円の本で、売れたのが千部だと印税は16万円。これでは3千部で4%の「刷部数計算」より少ないですが、私は4%の「刷部数計算」よりも、「実売計算」の10%の方が納得しやすいです。売れないものを書いてしまったのですから、仕方がないです。

こういう数字が出るようになって、「オレの書くものはもう需要がないのか」とダメージを受け、本を出す気がなくなりました。2週間ほどかけて16万円の収入なら、雑誌の仕事をしていた方が効率がいい。私は新たに原稿を書いていたい欲求が強くて、すでに書いた原稿を単行本用にまとめ直す作業が苦手ですし。

ところが、雑誌の仕事は減る一方です。メルマガの購読者も横ばいが続いています。そのために、本を出すしかなくなって、昨年、久々に『風俗お作法』を出しました。

この本は編集者が原稿の構成までをやってくれたためもあって、印税は刷部数の7%です。私としては、印税率が下がっても、そうしてくれた方がいいです。

増刷になるほどは売れなかったですが、今も動いているので、「まだ少しは需要があるらしい」ということで、今年も出すことにした次第。

それが新刊『エロスの原風景』です。

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※これは本の表紙で、この上に箱がつきます。書店で探す場合はお気をつけください。アマゾンでも予約受付中です。

5年以上やっている「実話ナックルズ」の連載「日本エロスの原風景」をまとめたものです。ミリオン出版から出す話が以前からあったのですが、結局、決まらず、ポット出版から出すことになりました(ポット出版がイヤイヤ出すことになったのでなく、ミリオン出版との話がペンディングになっていることを知らずに、ポット出版が「出そう」と言い出したものです)。

この連載では、毎回、ジャンル別、雑誌別にエロ表現をとりあげています。時々、それらとは別に、書ける場のないエロの歴史ネタも入れこんでいて、今回の本にも、「トルコ風呂の元祖は東京温泉である」とされていることが間違いであることを指摘した回や、昭和20年代に話題になった「オッパイ小僧」について書いた回を収録してます。

で、定価は2940円です。「高い」と思う方もいらっしゃいましょうが、私は妥当だと思ってます。

この定価はどう決定されるのか。長くなりましたが、次回こそ終わりです。
 
 
注:パチンコ台にキャラクターを提供して金を得ること自体、そうも非難されるべきとは思わないですが、台所事情の苦しさを告白したところで、その行為が肯定されるわけでもない。生活がどうあれ、やっていいことはやっていい、やってはいけないことはやってはいけないってだけでしょう。泣き言を言ってごまかそうとするその情けない姿勢は、小林よしのりらしくはあります。