2006-11-13

カツゾウがチエゾウに

chiezou.jpg野口勝三センセ(京都精華大学助教授)が『知恵蔵』(朝日新聞社)で執筆しています。担当されているのは、「現代社会と思想」というページの「現代社会/国際」。「ジェンダー」「リベラリズム」「リバタリアニズム」「多文化主義」「世界システム」等々について解説しています。とてもコンパクトにまとめられていて、素人にも読みやすいです。

● 朝日現代用語『知恵蔵』(朝日新聞社) 2650円

2006-11-05

いただいたご本『コドモであり続けるためのスキル』

kodomo.jpg貴戸理恵さんによる「よりみちパン!セ」の第二弾。「無理しておとなになる必要なんて、ぜんぜん、なかった。「今」は「将来」のための手段なんかじゃないし、「一人前」になっちゃったおとなの人だって、ホントはいつだって、降りていける」。

社会学の研究者である貴戸さんが、教育やジェンダーについてわかりやすい言葉でメッセージするエッセイ。考え方の基本は、いわゆる「近代主義批判」というやつだが、彼女自身の経験に問いかけるように言葉を編んでいる姿勢に好感が持てる。近代の矛盾の中で生き難さを抱えている若者に、新しい世界像を与えるだろう。大事なのは、世界像を複数持っていることなのだ。

● 貴戸理恵『コドモであり続けるためのスキル』(よりみちパン!セ/理論社) 1200円+税

2006-10-23

Kansai Rainbow Paradeのご成功おめでとうございます!

昨日、10/22(日曜日)に大阪で初めて行われた性的少数者たちのパレードは、900人もの参加者を集め、大成功のうちに終わったとのことです。スタッフを務めたみなさん、歩かれたみなさん、本当におめでとうございます。

なんでも大阪の市長さんや知事さんからも祝福のメッセージが届いたそうで、今回のイベントが、性的少数者の運動をまた一歩前進させたことは間違いありません。こうやって各地で社会的に声を上げていく人々が増えていけば、もっと性的少数者が生きやすい世の中になるのでしょう。来年もがんばってください!

2006-10-09

マツコ大活躍!

QJ3.jpg巨漢のドラァグクィーン、マツコ・デラックスがTBS系のワイドショー「ピンポン!」にレギュラー出演している。先週は知らずに見過ごしてしまったが、今日はバッチシ拝見。なんだか感慨深かった!

午前中から見るマツコの姿はかなりのインパクトで、福澤アナはじめ周囲を喰っていた。おぉ、これでスター街道まっしぐらかもしれない。「クィア・ジャパン vol.3ーー魅惑のブス」の表紙を飾った辺りでブレイクするかと思っていたのだけど、まだ早かったのかタイミングが悪かったのか、メジャーにはならなかった。オネエタレントの活躍のおかげで世間もオカマに慣れ、ちょうど彼らの影が薄くなったきたところでの、満を持しての登場。

その毒々しさを失わずに、このまま芸能界でトップ目指してがんばってほしい。テレビのこちら側から応援していよう。

2006-09-28

仲人業

flowers.jpgということでもないのだけど、趣味が高じて、最近やたらいろいろな人のカップリングをやっている。もちろんお金をいただいているわけではなく、単なるボランティアなのだが、とても充実感がある。

大方の人は人生においてパートナーを見つけることにプライオリティがあって、でもなかなかお相手が見つからないことで悩んでいる。そんなみなさんのお役に立ちたいと、おせっかいに生き甲斐を感じる今日この頃なのだ。以前からその傾向はあって、周囲ではありえないカップルを作るのに定評があったし、QJr vol.1でもお見合い企画をやったのだけど、ここのところやけに過熱気味。

ゲイの社会的な問題については、もう尾辻かな子さんやら次世代の活動家やらに安心してお任せできる状況なので、おばさんはお見合いババァでもやっていればいいと思っている。ネットの出会いやハッテン、ゲイバーなどではいいお相手を見つけられない人のお手伝いこそ、活動引退後の生き甲斐? っていうか、自分のシモの現役感がなくなってくると、代替行為として他人のシモの世話をしたくなるのかもね(笑)。

いまもお預かりしている方が何名かいるので、どなたかいい「物件」があったら、ぜひとも情報を交換しましょう。ただし、自薦だと背景がわからないので、お友達で推薦できる人がいたらご連絡ください、ということで。いつか、おせっかい好きな人の「仲人リンク」を作ってもいいかもね。

2006-09-25

再開

skyhigh.jpg顔に染みができるのを恐れて夏の間さぼっていた散歩を再開。

秋の空は高く、空気が澄んでいて気持ちがいい。殺伐とした気分にさせてくれる本を数冊一気読みした後なので、心身が癒される。高血圧や糖尿予防のためばかりでなく、心のデトックスをしないと、仕事ができなくなった。勢いだけでは走りきれないお年頃ですね。

気持ちのよい晴天に河原の猫ちゃんたちもお昼寝。猫への欲求がこみ上げてくる。あぁ、捨て猫の斡旋団体の門を叩こうか、どうしようか。タヒチへ行って猫殺しの作家に、殺生する前の子猫を譲ってくれるよう頼もうか(笑)。手が自然に猫を求めてしまう。猫欲者? 

2006-09-08

『男子のための恋愛検定』に安堵

kentei.jpg突然、自分の出した本が「本当にちゃんと書けていたのか」と不安になり、読み返してみる。が、ページを繰り出したら止まらない。自分の考えと同じことが書かれているし、期待通りの展開になっていく!(当たり前) 一気に読み終えて、なぜか安堵。『男子のための恋愛検定』(理論社)けっこう面白いじゃん。

『さびしさの授業』も、出版後「あれでよかったのかなあ」としばし疑問がまとわりついて離れなかった。でも間をあけて読み直してみたら、まあ、こんなものだろう、と落ち着いた。結局、書いた本は自分以上の内容にはならないし、そのときいっしょうけんめい文章を綴れば、自分以下のものにもならない。妙な納得を得た。

2006-09-05

セクシュアリティと政治

大阪府議の尾辻かな子さんの活躍や、ジェンダーフリーなどをめぐる保守派の巻き返しで、ゲイコミュニティの中でも「政治」への意識が高まりつつあるようです。とてもいい傾向ではないでしょうか。自分たちの共益を実現するために積極的に政治にコミットメントすることは、今後、絶対に必要。

そうした議論を深める場として、玉野真路氏(アリーチェ)がmixi内に「セクシュアリティと政治」というコミュニティを立ち上げました。興味のある方は参加されたらいかがでしょう。まずは、当事者のコンセンサスを形成していく場を持つことからはじめなくてはなりません。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=1233034

黒い影を感じるニュース

なにやら黒い影を感じるニュースが2つ。都城市の男女共同参画社会づくり条例から、「性別又は性的指向(以下「性別等」という。)にかかわらず」という文言が削除されようとしている件と、東京都の石原慎太郎都知事が、歌舞伎町や新宿二丁目に条例で規制をかけたいと発言した件、どうも嫌な感じですね。こういう動きには警戒をしたほうがいいと思います。

詳細については、尾辻かな子さんのブログと、Japan Gay Newsを読んでみてください。

2006-08-25

佐藤B作の想像力

日テレの「ダウンタウンDX」という番組で、俳優の佐藤B作がこんなネタを披露していた。同窓会の後で幼なじみの男性と二人で山に登ったとき、ふいに愛を告白され、迫られた。気持ち悪く、「怖かった!」

その話しぶりにまったく友情も憐憫もなく、ただ同性愛への嘲笑しかないことに、すごく不愉快になった。いっしょに笑うだけだった周囲のタレントに対しても、憤慨している。

その幼なじみだって、本当に佐藤のことが好きで、思いあまって気持ちを告白し、ノンケの男性が女の子にするのと同様に迫っただけだろうに……。まあ、気持ち悪く感じてしまったことを責める気はないが(それは人それぞれの感性だから)、でも、そのことで友人を世間の笑い者にし、少なくとも佐藤の旧友たちには個人が特定できるようなディテールまで公開し、「それ以来会ってない」などと斬り捨ててしまうのは、ひどすぎる。

こういう番組を放送することは、差別語を不用意に口にしてしまうことより、よほど悪質だ。人権とか差別とか以前に、人間としての想像力ややさしさのかけらもない。俳優業をしていればゲイのひとりやふたり知人にいるだろうに、そういう人たちへの配慮はないのか。そんなことで役者ってできる商売なのか。

http://www.ytv.co.jp/dtdx/contents/midokoro/midokoro.html

2006-08-21

いただいたご本『愛する男たちの伝説』

matunaga.jpg『ポン・ヌフ物語』『料理人』に続く松永尚三さんの小説。「1980年代を舞台に、ゲイのカップルたちの「愛」をめぐる葛藤と、ロマンティックな恋模様を描いた哀しく、美しいメロドラマ」(帯より)。大阪府議会議員の尾辻かな子さんや、世田谷区議の上川あやさんも推薦に名を連ねている。

●松永尚三『愛する男たちの物語』(文芸社)1500円+税

2006-08-18

いただいたご本『悪魔のささやき』

d.jpg編集を担当された方から加賀乙彦氏の『悪魔のささやき』をお送りいただいた。帯のコピーには「小学生殺人、放火、村上ファンドetc……人はなぜ思わぬ悪事に手を染めてしまうのか!?」とある。

人が図らずも陥ってしまう、あるいは、ある時ある人の頭上に突然落ちてくる「魔の時」に焦点を当てた著作らしい。これはとても興味深いテーマである。我が身を振り返ってみれば、(もちろん小さな罪は山ほど犯してきたが)なぜこれまで刑法で裁かれるような悪事に手を染めることがなかったのか、不思議に思うことがあるのだ。こんなに多くの人を憎んだり、しょっちゅう首を絞めてやろうかと思うことがあるというのに(笑)現実的にそれをしないできたのは、どこか偶然のようにも思える。

しかし世の中には反対に、その偶然、「魔の時」を自分の人生に招いてしまう人たちが少なからずいる……。これは他人事とは思えないテーマである。

●加賀乙彦『悪魔のささやき』(集英社新書) 680円+税

2006-08-15

『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』

gayero.jpg田亀源五郎編『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2—ゲイのファンタジーの時代的変遷』(ポット出版)が刊行されました。前作同様、田亀先生の情熱が結晶した力作。実は、伏見も序文を書かせていただいています。

今回は、長谷川サダオ、木村べん、林月光など、ゲイ雑誌の読者なら一度はお目にかかったことのある有名作家を取り上げていて、とても見応えがあります。ゲイ雑誌に掲載されたときにはわからなかった微妙な表現も再発見できて、純粋にアートとして楽しめる一冊でしょう。ちょっとお値段は張りますが、手元に置いておいて損のない画集。そしてゲイカルチャーの歴史的遺産。

以下、ポット出版のサイトよりコピペ。
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日本のゲイ・エロティック・アート Vol.2
——ゲイのファンタジーの時代的変遷
[2006.08.21刊行]
編●田亀源五郎

定価●4,500円+税
ISBN4-939015-92-0 C0071
A5判/224ページ/上製
印刷・製本●株式会社シナノ
ブックデザイン●沢辺均/山田信也/小久保由美

【内容紹介】
日本のアート史に埋もれる「ゲイ・エロティック・アーティスト」たちを丹念に掘り起こし再評価した「日本のゲイ・エロティック・アートVol.1」に続く第2弾。Vol.1は、ゲイ・エロティック・アートがいつ誕生し、どのように発足したかを追った。そして、このVol.2では、1970年代から現在に至るまで、ゲイ雑誌で活躍しているアーティストを紹介、それらの作品からゲイのファンタジーが時代的にどのように変遷してきたかを探る。編者による各作家の解題も収録。作品収録160ページ(カラー88ページ)。

【目次】
序/伏見憲明…006
日本のゲイ・エロティック・アート史 ゲイのファンタジーの時代的変遷…009
長谷川サダオ…033
木村べん…065
児夢(GYM)…093
林月光(石原豪人)…125
天堂寺慎…157
遠山実…165
蔵本彪…179
解題Abouteachartist…193
あとがき…222

【編者プロフィール】
▼田亀源五郎 たがめ・げんごろう
ゲイ・エロティック・アーティスト。1964年生まれ。
多摩美術大学卒業後、アート・ディレクターをしつつ、86年よりゲイ雑誌にマンガ、イラストレーション、小説等を発表。94年から専業作家となり、ゲイ雑誌『G-men』(ジープロジェクト)の企画・創刊にも協力。
著書に、『嬲り者』(Bプロダクト)、『柔術教師』(Bプロダクト)、『獲物』(ジープロジェクト)、『銀の華(上・中・下巻)』(ジープロジェクト)、(全てマンガ作品)がある。

2006-08-14

たなべさんブログ再開

fuko.jpgクィア・ジャパン・リターンズのライターとしても活躍中のたなべさんが、ブログを再開させた。ご本人曰く「これまで、mixiの日記でなんでも書いていましたが、とある出来事をきっかけにblogみたいにオープンにものを書く場所も必要だろうな、と思ったので」。

http://blog.livedoor.jp/tanabenesia/

新木場のゲイ・バッシング問題でも論陣を張っていた彼だけに、これからどんなブログ活動を展開していくのか、伏見も大注目(すぐに厭きてしまうのかもしれないけど)。先のたなべ・斎藤靖紀論争では、伏見は大筋たなべ支持で、ああいう意見が一つも出なかったとしたら、「ゲイコミュニティ、どうよ」と匙を投げるところだったので、孤軍奮闘、本当によくがんばってくれたと感謝。

新木場の件はとくに発言するつもりもなかったのだが、野口勝三・京都精華大学助教授とメルマガ用の対談を収録したら、ノリノリで話しが盛り上がってしまった。読者のみなさんには近く、コミュ二ティ的情緒への違和から、フーコーの権力論批判まで縦横に語る野口センセとの議論を届けることになる予定。

*写真はたなべさんではなく、ふー子。

2006-08-02

伊藤文学著『「薔薇族」の人々』

bz.jpgある新聞から書評を頼まれた伊藤文学著『「薔薇族」の人々』。(失礼だがあまり期待せずに読んだら)これが非常に面白かった! 名著ではないか。伏見はこういう本が読みたかった。そしてゲイの人にはぜひとも読んでもらいたい。

書評については、媒体発表後に有料メルマガ【ゲイバァ伏見】で配信する予定。読者の方はお楽しみに!

伊藤文学著『「薔薇族」の人々』(河出書房新社) 2000円+税

2006-07-31

ゲイコミュニティは百家争鳴

週末、ゲイコミュニティはmixiを中心に大騒ぎだった。新木場の公園で高校生たちの「ホモ狩り」によってゲイが襲われ、重症を負った事件が報道されたからだ。それだけなら「なんと卑劣な犯行!」という反差別の怒りがわき起こるだけだったとも言える。しかし記事中に被害者が全裸で歩いていた事実が含まれていたことで、メディアで大きく取り上げられ、コミュニティ(あるいは一般の人たちの間)でもさまざまな議論が展開された。差別の実態、欲望の自由と公共性の問題、報道のスタンスへの疑問、ゲイリブの戦略、コミュニティの友情の可能性……。

中でもmixi内でやり取りされた斎藤靖紀(ブル)さんと田辺貴久(たなべ)さんの論争は、実にスリリングで、示唆に富んだものだった。議論を交わす態度といい、語られた内容や水準といい、伏見も多くを学んだ。アクセスする機会がある人は、ぜひ両者の主張を読み比べてもらいたい。そして今後のことを考えていく材料とすることをお勧めする。

2006-07-30

いただいたご本『オタクバカ一代』

otaku.jpg*【ゲイバァ伏見】駄デブ日記より

作家の浅野智哉さんがご自身、取材・構成に関わった村濱章司著『オタクバカ一代』(角川書店)を送ってくださった。

寡聞にして存じ上げなかったのだが、この村濱さんという方はオタク界の有名人で、ビジネス的にも大成功を収めたセレブ?だという。ページをめくっていると、どのギョーカイにも歴史があり、ドラマがあるんだなあと、興味深い。っていうか、こういうギョーカイがあるんだ! 伏見が知っているオタクセレブの名前は庵野秀明と岡田斗司夫くらいなのだけど、きっと、そうした文化に憧れる人が読んだら、わくわくするネタ、人名が満載の一冊のはず。

しかし、それにしても、オタクを極めれば大金持ち、オカマでがんばっても貧乏中年……この差は…いったい……。進む道を間違えた。後の後悔先に立たず。いや、後の後悔先に勃ってしまったのが失敗のもと?(笑)

● 村濱章司著『オタクバカ一代』(角川書店) 1600円+税

2006-07-24

文藝春秋編『同級生交歓』

doukyuu新刊、というほどではないのですが、今月上梓された『同級生交歓』に伏見も出ております。文藝春秋の名物グラビア「同級生交歓」が新書にまとめられたもの。ご年配の方々(亡くなっている方も多い?)に混ざっての掲載なので、なんだか、そこだけ妙に浮いているのですが。

伏見は第一章の「公立小・中学校篇ーーご近所のよしみ。出会いの不思議。」に、元レベッカのNOKKOちゃんと収められております。NOKKOちゃんはずいぶん華奢な方なので、かなり遠近法を使って撮影したにもかかわらず(笑)並ぶとデカい自分。

しかし未来とは想像もできないものですね。中学のときには、自分が将来オカマの物書き業をしているとは思わず、ましてや、地味な少女だった彼女がロックスターになるなどとは想像もできず……。青春時代は彼女への嫉妬でずいぶん苦しみましたが、いや、いまも複雑な気持ちを抱いていることには変わらないのですが(笑)、そんな二人が埼玉の田舎の中学校で席を並べていたのは、たしかに「出会いの不思議」。

2006-06-24

いただいたご本『インド 第三の性を生きる』

india.jpg青 土社の大親友(←メルマガ購読者の意味)のH女史が、インドの第三の性、ヒジュラを写真と文章で紹介する新刊を送ってくれた。『同性婚』以上にマニアック な 内容に 青土社の蛮勇を思い知った気がしたが(笑)、これまでヒジュラものといえば、研究者とか写真家が「観察」したものが主だったので、こうした肉声が聴ける本 は重要かもしれない。

なにせ、ぼくらは、ヒジュラと言われればヒジュラを十把一絡げで見てしまうし、オカマと言われれ ばオカマをのっぺ らぼうに理解しがち。 そこに属 する個々人の言葉に接しないかぎり本当のリアリティは得られない。この本に主人公として登場するモナ・アハメドさんは、ヒジュラ以前にご本人が ずいぶん個性的な様子。なんたって60代で仲間との生活を捨てて、墓場でのひとり暮らしを選んだのだから……。

● モナ・アハメド/ダヤニタ・シン『インド 第三の性を生きる』
(関根光宏 訳/青土社/2600円+税)

2006-06-20

いただいたご本『同性婚』

douseikon.jpg副題に「ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史」。著者はアメリカのジェンダー/セクシュアリティ研究者、ジョージ・チョーンシー氏。尾辻かな子・大阪府議の活躍で、日本でも同性カップルの社会保障についての議論が少し喚起されたタイミングだけに、こうした本の出版は意義深い。

訳者あとがきに、この本の企画を出版社に持ち込んだところ「市場価値」がないと断る版元もあった、とわざわざ記されていたが、たしかに、この本が売れる可能性はあまり高くない。大手書店の店員さんが「ジェンダー/セクシュアリティの本は本当に動かない」と嘆いているご時世だ(←そりゃそう、論点はとっくに出尽くしていて、あとは真似っこか、オタクに議論を細分化しているだけだもん)。フェミニズムならまだ人口の半分の問題だけど、ゲイやレズビアン、バイセクシュアルは人口の一割にも満たないのだから、尚更。

そういう条件の中で書籍を、あるいは言説をマーケットを通じて流通させていくことは本当に難しい。研究者の自己満足や「記念出版」に終わらせないためには、関係者はがんばって「営業実践」するしかない。ドブ板販促。必要があれば伏見も協力するつもりだ。

● ジョージ・チョーンシー『同性婚』(上杉富之・村上隆則訳/明石書店) 3500円+税