2019-10-11

久しぶりに再販制のこと考えた

出版労連(出版社の労働組合の連合組織)が毎年開いている、第46回出版研究集会で、ことしは再販制にかんする分科会をひらくそうだ。
そこで、出版業界のなかで、再販制に批判的な意見も紹介しよう、ということで、事前に取材しにきてくれた。分科会で紹介してくれるようだ。
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④10/25(金)「わかっているようでわかっていない再販制度」
講師・斎藤健司さん(出版再販研究委員会副委員長/金の星社社長)
→今年はゼロから教えます! 再販制が出版産業を支えてきたことは事実。そして現に再販制のもとで産業が回っていることも事実。しかし一方で、出版労働者のなかにも再販制についての知識が十分でなかったり、乏しい人が少なくないことも現実。ひと目でわかる再販商品と非再販商品の見分け方、など再販制を学び直すチャンス。
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来てくれたときに、あんまりとっちらかった話になると悪いな、と思って、そもそも再販制必要論はどんな理由を上げているのか調べて、自分の考えを箇条書きにしておいた。

自分の考えの要点は、
●再販制で、出版を「振興」しようなんて、無意味
再販制必要の論拠にあるようなことは、再販制と無関係に実現されてたり、意味がなくなっていたりしている。
返品がほとんどの注文品にてきようされていて(返品条件付き注文って用語まであらわれている)委託・注文という切り分けやルールも崩壊してる
●再販制の議論の前に、すでに課題は山積み
といったところ、だ。

まじめに再販制を取り上げようという、主催者には申し訳ないけど、この企画は無意味じゃないかなー、って思う。

さて、その際につくった、考えてることの要点・コピペした資料を以下に掲載しときます。
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●ポット出版の現状
・設立・取次契約時に、取次と再販契約を結ぶ。
・2012.2発行『家畜人ヤプー3』から、非再販表示・希望小売価格・¥希望小売価格Eに
・再販契約は解除してないが、全発行本非再販という、立場。
→何も変わってない。取り立ててアピールもしてない。

●再販制への意見
◯再販制議論より先に議論すべきことがあると思う
・流通契約内容
→正味割合(価格の値上げ)、新刊委託制(書店主体の注文)、返品の明確化効率化、など
・出版物輸送問題
→須坂構想、あるいは須坂構想基地の複数化
・出版社業務の効率化
・出版情報の整備
→書誌・書影は8合目、在庫情報に課題
・出版産業の労働組合の再生
→「資本との対決」でも「労使協調」でもなく、経営にも労働者にも責任を持つ労働運動(たとえば、決算書公開運動とか)
などなど

◯そもそも、再販議論そのものが無意味になっていないないか?
・1997年(消費増税も)から、長期デフレ下での、出版物売上低下
・出版産業の大きな変化
(書店の減少、取次の危機、Amazonの占有率増大と版元への影響力、一部コンテンツのネットへのシフト、など)
・委託の拡大(返品条件付き注文)

◯再販制必要論の論拠は意味ないのでは?
・同一価格 →ネット書店でもほぼ実現 再販制のおかげとは思えない
 A書店でもB書店でも同一価格は、必要か?
・委託 →現状の委託の混乱、他商品でも委託制は成り立っているのでは?
・街の本屋の維持 →すでに維持されてない
 本屋に限ったことでなく、小売店のチェーン店化がすすんでる(でも止まってないか)
・低価格の実現 →低価格化はむしろ弊害では? 新書・文庫増加も低価格化

書協 2001.04 の見解から抜粋――――――――――
・全国の読者に多種多様な出版物を同一価格で提供していくために不可欠
・自国の文化水準を維持するために、重要な役割

●書協QA
・なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか?
出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。
①個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、
②種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、
③新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。
このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。
書店での立ち読み 風景に見られるように、出版物は読者が手に取って見てから購入されることが多いのはご存知のとおりです。
再販制度によって価格が安定しているからこそこう したことが可能になるのです。
・再販制度がなくなればどうなるのでしょうか?
読者の皆さんが不利益を受けることになります。
①本の種類が少なくなり、
②本の内容が偏り、
③価格が高くなり、
④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、
⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。
再販制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。
また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。
・出版物の価格は高いのでしょうか?
出版物の定価は、出版社間の激しい価格競争のため低めに決められています。
その結果、出版物は消費者物価指数で見ると他の商品と比べて値上がりが少なく、1975年を100 として総合で1998年では185ですが、本は128です。

●wikipedia
から抜粋
書籍・雑誌
書籍や雑誌については、販売業務委託契約と、売れ残りの買取り保証付の販売契約が行われている。書籍で再販制度による委託販売制度といった場合は、売れ残りの買取り保証付の販売契約による販売形態をさす。書店は、売れ残りの買取り条件に組み込まれている再販売価格維持契約により、書籍・雑誌を定価で販売しなければならないが、売れ残りの買取り保証により、一定期間が過ぎても商品が売れ残った場合、商品を出版取次に返品することができる。

書店は、返品が保証されることにより、在庫抱え込みリスクが軽減されることで、需要の多くない専門書等でも店頭に並べることができ、世界でも類をみない小部数で多様な書籍が刊行される出版大国となっている。

小学館・講談社等の出版物については責任販売制とともに、再販制度が適用されていない出版物も一部存在する。その他の出版物については基本的に定価で販売されているが、再販制度の弾力的運用を図るため、

期間を区切って非再販本フェアを開催
雑誌の時限再販
雑誌の定期購読者割引
等を行っている事業者もある。

ポイントカードを採用している書店もある。かつて書店組合では「ポイントカードは実質的な値引きであり再販契約違反だ」として反対していたものの、公取委は値引きであるものの消費者利益に資するとして容認している。

電子書籍では、書店側に在庫が発生しないため、売れ残りの買取り保証を前提とした再販売価格維持ができなくなっている。日本出版者協議会は、紙の出版物との価格バランスと収益確保のために、電子書籍にも再販売価格維持契約の適用を求めているが、公正取引委員会は独占禁止法上の原則から違法としている。そのため、電子書籍では出版社側がつけた価格で販売を行うために、出版社が直接販売を行ったり、販売業務委託契約により販売の主体を出版社または出版取次業者とすることで、書店に販売業務を委託して販売したりする販売形態になっていることが多い。