1-2●社長のメール日誌

差別の問題と『同和はこわい考』

・ある言動が差別にあたるかどうかは、その痛みを知っている被差別者にしかわからない
・日常部落に生起する、部落にとって、部落民にとって不利益な問題は一切差別である

10代から30歳あたりまで、左翼(新左翼シンパ)で、組合運動を中心に、15年くらい活動してた。
はじめてヘルメットをかぶって、デモに行ったのが、1971年6月の明治公園の沖縄闘争だった。
時期で言えば、1971年から、1985〜86年あたり。
そのときの、オレの左翼運動の大きな柱のひとつが、部落解放運動・狭山闘争だった。
反差別運動。

ところが、そうした反差別運動に、だんたん違和感を持つようになった。
そのときに読んだのが、
同和はこわい考ー地対協を批判する (藤田敬一・著 阿吽社・発行4-900590-12-6)
だった。あとがきの日付は1987年4月20日。
藤田さんは、大学の教員で、部落民でない立場から、部落解放運動や狭山闘争を支援していた人。

この本で藤田さんは、反差別運動にある、上の2行の考え方を批判していた。

オレはすでに左翼をやめて転向したあとだけど、この本の存在を知って、
あ、オレの違和感は、この藤田さんと同じだとおもった。

反差別運動が陥りがちな上記二点の考え方を克服するには、「差別かどうか」の判断を高めていくしかないないな。

この本復刊しようかしら?

アマゾンバックオーダー終了問題について(版元ドットコムmlへのメール)

出版業界、とりわけ中小出版社のあいだでの大きな話題がアマゾンバックオーダー終了問題だ。

版元ドットコムという出版社組織の情報交換メーリングリストに、何人かからメールが投稿されたんで、
その返事として、長いメールをかいた。まだ、話題がホットなようなんで、
この『ポットの日誌』にも、掲載しておくことにした。
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一昨日、出版学会の星野さん(文化通信編集長)のアマゾンバックオーダー終了問題の講演に行ってきました。

それまでの僕は、アマゾンとんでもないってちょっと凝り固まってたんですが(笑)、
星野さんの話を聞いて、少し冷静になって考えると、
できるだけ安く仕入れよう、などといったアマゾンの考え方は、まあ、それはそれでまっとうだよね、
と思い返しました。
ただ、この論理に全面的に賛成してるわけでなく、自分の利益を増大させるためになにをやってもいいわけじゃない。
作る人売る人運ぶ人とお客の要望との調和は、利益のまえの大事だろう、と青臭いことが、僕の考えの基本です。

その上で、今回のアマゾンのバックオーダー終了は、アマゾンは何を目的にしているか? です。
出版流通のまずさから、売上が毀損しているなら、バックオーダーを終了しても、その毀損は回復しないし、
むしろ減るのだと思います。
今回のバックオーダー終了は、アマゾン社内でもかなりの激論になったという「噂」もあるようです。

とすれば、その目標の可能性は、主にロングテールを切るということで、
ロングテール部分の出版社直取の拡大だとしか思えない。
直取することで、仕入れコストを下げること、あわせて不透明な日本の取次の流通状態をバイパスすること
なんだろうと思います。
とくに、バイパスは問題解決には妥当な策かな?とは思います。

ただ、もともと、健全野党の出現を促したい、と思っているので、
アマゾンが、ロングテールを切ることを人質にして直取拡大に「勝負をかけた」のをチャンスとして、
アマゾン以上の品揃え、アマゾン以上に在庫の有無の確実な情報での流通の迅速化、で、
他のネット書店の頑張りに期待しています。
同時に、版元ドットコムとしても、
アマゾン以上の品揃え、アマゾン以上に在庫の有無の確実な情報での流通の迅速化、
の取組みをしているつもりです。

hontoの近刊予約システムはその第一歩です。
近刊予約時だけではありますが、hontoに対して確実な入手可能情報を提供することで、
hontoでの、販売活動を促すのが、その目的です。
確実な入手可能情報にもとづいた品揃えで、アマゾン以上になってほしいし、
そのことでロングテールのアマゾン毀損分を、回復できるのではないかと思うのです。

それと同時に、アマゾンでのバックオーダー終了に、短期的な対策も考えたいと思っています。

版元ドットコムシステムの機能に、
アマゾン、HonyaCLUB、honto、の在庫状況表示・カート状況を自動的に取ってくるシステムを検討しています。
HonyaCLUBの在庫が、日販倉庫の在庫状態をほぼ示していると思うので、
それを社別に一覧でしめして、日販への、倉庫への在庫依頼・アマゾンへのカート回復依頼の、
交渉用の基礎資料とするものです。
もちろん、日販との交渉、カート回復依頼に実効性があるかはわからないのですが、
その際、hontoへの在庫依頼交渉もあわせておこなって、
「今、アマゾンには在庫ないけど、hontoならネットで買えますよ」という、販促を出版社から
することも、アマゾンカート落ちの対策になると思うのです。
(hontoは、その手始めに交渉して近刊予約システムまでこぎつけましたが、今楽天との交渉を始めています)

いかがですか? そうしたシステムは有用でしょうか?

◎オマケ
アマゾンの日販への要求は、日販倉庫に、アマゾンが予測した需要を満たすための本を在庫しておけ、
と読めます。
もちろん、100%はむりだけど、なければすぐに調達しろ、と。
これは、全国の本屋の悲願じゃないでしょうか? その意味では納得するのですが、
それを実現するのは、倉庫の大幅な拡大と、流通情報の確実性(あるなし、いつ出版社から取次・本屋に届けられるのか)
の大幅な向上が必要だと思います。
で、流通情報の確実性の向上は、我々出版社もホンキで取組む課題だと思ってます。
ただ、読み方によれば、日販はアマゾンが作りきれない倉庫の補完をしろ、第二倉庫になれ、とも聞こえます。
これは図々しいでしょう、アマゾン。何様だ?と思います。
アマゾンを含む日本の本の小売に対してそうしたことを実現したいとは思うのですが、
アマゾンのためにやるのは違う、と。
あいかわらずお店で売れている本の送料はたぶん6~7割。アマゾンだけ改善させるより、6~7割の販売環境の改善のほうが、
効果が有るはずです、算数的に、。
この意味から、「バーシャル須坂構想」が必要じゃないかと、、、、、。

記憶ですが、アマゾンのアメリカ創業時は、読者から注文があったら、出版社に注文だして、納品されてから届ける、
ってモデルじゃなかったでしょうか?
当時、「持たざる経営」というのが流行って、本社を売却してリースにきりかえるとかした大企業もあったやに思います。
ところが、ある時点で、大きな自社倉庫に在庫をもっておいて、注文がきたら自社倉庫から出荷することに切替えたように記憶してるんですけど。
その理由は「現物が手元にないと、あるなしを確実に客に答えられない」と言われていた?
もしそうだとしたら、アメリカの流通も日本のそれとどっこいどっこいだったのではないか?
で、いまでも「現物が手元にないと、あるなしを確実に客に答えられない」というのが、
アマゾンだけでなく、すべての小売の現状なんじゃないかと思うのです。だから「バーシャル須坂構想」が、、、。

◎オマケの2
いずれにしても、流通のマージン率を高くしないとならなくなると思います。今後。
出版社が流通に出荷する時点の正味が50%くらいにしなければならない事態がやってくる気がします。
この場合、今2,000円の価格の本の出版社出し正味1,400円を確保するには、2,800円の価格(出し正味50%で1,400円にするか、
手間を減らして、出し正味1,200とか1,000でやっていけるようにして価格2,400くらいにするか、
などの手立て複数で、吸収していくのではないでしょうか?

返事にはなってないですけど、。

沢辺

アマゾンの安売り=再販制の危機、栗田という取次の民事再生 出版流通のほころびのなかで考える今後の方向

●再販制はこんなふうに説明されている
再販制というのは、日本書籍出版協会(書協)のサイト(http://www。jbpa。or。jp/resale/#q1)によれば、
出版社(メーカー)が個々の出版物の小売価格(定価)を決めて、書店(販売業者)で定価販売できる制度です。この制度は、独占禁止法で認められています。
といことになっている。
さらに、
再販制度がなくなればどうなるのでしょうか?
読者の皆さんが不利益を受けることになります。
①本の種類が少なくなり、
②本の内容が偏り、
③価格が高くなり、
④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、
⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。
再販制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。
また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。
と、再販制の必要な理由が書かれている

●再販制のもとでおこったこと
こうした再販制のもとで、さまざまな事象が起こったのだろうけれど、僕が一番のポイントだと思っているのは、小売店である書店の仕入れ原価率の高さ。再販制を前提として今の本の値段の相場ができていると思うのだ。

業界噂話しではよく、仕入れ原価率は78%だと言われている。千円の本の仕入れ金額は780円だと言うわけ。
220円が書店の取り分で、ここから店の家賃光熱水費・人件費などなどが支払われるということだろう。
大手書店チェーンやアマゾンなどのネット書店は取次という問屋と交渉してもう少し安く仕入れていると思うけどね。
なので、書店は定価販売しなければならない再販制(出版社の言うとおりの定価でうる)は助かるはずだ。
書店同士で価格競争してはならない→しなくて良いことになるからだ。

最近は書店でポイントがつく場合も多くなっているけど、1%とか2%とかショボイのは、出版社の価格拘束があることと、220円の粗利から10%(100円相当)とかのポイントつけるのは無理だ、ってわけのようだ。

●出版流通制度の今後の方向
で、栗田(取次)が民事再生を申請したことで、出版の流通システムの崩壊とか言われていて、その原因に再販制があるといった論調も見られるし、アマゾンがいくつかの出版社と本の安売りをはじめたというニュースも流れて、再販制の崩壊の事象だといった論調もあるので、流通システムの今後の方向を、僕なりに書いておこうと思う。

ただ以下のことは雑誌流通のこととをヨコに置いておいている。『文化通信』という業界紙の星野さんが、よく、書籍流通は雑誌流通に依存してるって前からいっているけど、そのことに踏み込むと大変なことになるので、ね。

今後、大切だと僕が思う第一は、書店の仕入率を下げることだ。
22%の粗利じゃ、「売れ残った本は安くしても売り尽くそう」とかできないでしょう。
本棚のなかにカフェやらビールバーとか(最近のはやりのようです)置くとかいった工夫もやりようがない。書店が活性化するためには、いくらなんでももう少し粗利率が必要だと思う。

第二に、書店が仕入れる本は、書店がちゃんと選ぶように(選べるように)することが必要だと思う。
現在おこなわれている、新刊委託制度は、書店が注文しなくとも取次が見計らって本屋に新刊を送るシステム。だから、書店では送られたダンボールを開けてすぐに「いーらない」といって返品することもあるらしい。こうした状況は小売店としてどんなもんだだろうか?
もちろん、本によっては見計らいでいろんな本屋に並べることが有効な本もあるのだろうから、新刊委託で多くの書店に自動的に送られるシステムもあったほうがいいのだろう。

この点で、よく出版社が不安がるのは、売れると思ってたくさん注文が来て、結果的に売れなくて返品ばかり帰ってくることが心配で、書店の注文どおりに出荷できない、といったことで、こうした課題をクリアできないと、書店の注文にもとづいた流通というのは、実現むずかしいのだろうけどね。

第三に、やっぱり基本的に書店が返品できるというのは、大切なんだと思う。
千円の本を10冊仕入れてうまく8冊売っても、粗利は1760円(220円×8冊)で、売れ残った本の仕入れ代金は1560円(780円×2冊)で、トントンにしかならない。売れ残った2冊を返品して仕入れ金額を取り返せば粗利1760円はそのまま粗利になるのだという。
もっとも、出版業界の返品率は40%あたりだから、8冊売れたらよく売れたということになるのだろう。
でに、この「返品可能」は再販制とは関係ないことだと思うけどね。

本のような少額で、代替性の低い商品だと返品がないと小売が成り立たないと思うからだ。

第四に、取引条件を簡素化するのがいいと考えている。
現状の取引条件は、
新刊委託=6ヶ月以内の返品は自由で、納入した冊数から6ヶ月間の返品を毎月マイナスして6ヶ月後に締める(請求書を起こす)
注文=書店の注文にもとづいて出荷する。返品がないことになっているけど、実際は「返品条件月注文」などという言葉が生まれていて、かなり自由に返品されている印象が出版社側からみるとある。
他に常備委託・長期委託・延勘(繰り延べ勘定の略?)、、といったように取引条件がいくつもある。
たとえば、注文に条件を一本化して、替わりに支払いを翌月末払いから翌々月末払いにするなど簡素化が必要だと思う。

最後に、出版流通の効率化が必要だと思う。
最も効率化できるのは、出版社在庫の集中だ。
多くの出版社の在庫を持つ倉庫をもち、どの取次・書店へもここから出荷する、というイメージ。
現状は、出版社が倉庫を持ちそこから取次へ本を入れる、取次は出版社別に納品された本を書店別に分けなおして出荷している。
出版社倉庫の費用は出版社、取次の倉庫=配送センターの費用は取次、というような重複が生まれている。
これってかなりの無駄なんじゃないかな?

●出版社が今できること
出版流通全体の効率化などは、ポット出版が大声で叫んでも実現できそうもない。
とは言ってもポット出版だけで実現できることもある。

第一に、新刊委託配本(見計らい)をやめて新刊の配本も書店からの注文にもとづいて行うことだ。
取次との取引条件も出荷側で簡素化してしまうのだ。

第二に価格拘束をやめる(非再販)。
現状で非再販にしても書店店頭での値引きは実現されない。書店の粗利が22%しかない現状では、売れ残りを安売りするって言ったってたいした値引きはできない。でも将来の書店での価格政策の自由化に備えることはできる。

先のアマゾンの安売りの例では、再販制を崩したことが大切なのではなく、出版社が通常より安くアマゾンに納品したとおもわれることのほうがよっぽど大変な事態なのだ

第三に、書店からの注文に必要な書誌情報の発信を行うことだ。

第四に、不幸にして予想に反して売れ残ってしまった本の販売促進策を、生み出していくことだ。

こうしたことは「インフレ」になってきた今こそ、実現の可能性があるのではないかと考えている。

本来なら、現状について・それぞれの方針の理由とかを丁寧に書くのがいいのだけど、そこまでの気力なく、項目だけ列記したレジュメのような内容にとどまってしまったけど、まあ問題意識の一旦でも伝えられたらとおもってこのまんま失礼。