2014-11-16

プラス電書でつけた電書を電子図書館にいれられるか?

ポット出版で「プラス電書」というサービスの実験をはじめた。
紙の書籍を買ってくれると、対応する電子書店で[無料]で電子書籍をダウンロードしてもらえる、というサービスだ。
『アーカイブ立国宣言 日本の文化資源を活かすために必要なこと』
『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2014』
ちなみに、試し読み版は、DRMをかけてないEPUBで、ダウンロードできますぜw。
(ちょっと横道。無料といっても、今後サービスを別な本でする場合無料にすかどうかはきめてません。50%の値引きをするとか、いろいろ値段のバリエーションはあると思ってる)
このサービスに電子図書館を熱心にすすめる図書館員から質問メールが来た。
────────────────────
さて、アーカイブ立国宣言も、電流協の本も、電子書籍がついてますよね。
もし、この紙の本を図書館が買ったら、この電子書籍って●●市の電子図書館にも入れられるってことになるのでしょうか。

や。すみません、そんなに簡単じゃないことは分かっております…。
────────────────────

●まず「プラス電書」というサービスについて
この本は、どこで買った本にも「プラス電書」というサービスがついている。
本のなかに、電子書店で無料ダウンロードできるクーポンコードをいれてあるからだ。
たとえば、ジュンク堂池袋本店でかった本、アマゾンでポチっとした本、近所の本屋に注文して買った本でも、本の中にクーポンコードがあるのだから。
電子書店は、このサービスに対応してくれている所に限られるが、自分が会員になっているところか、会員になるかすればよい。
この本のプラス電書に対応してくれた電子書店は、honto、紀伊國屋書店、BOOKSMART、BookLive!の4店舗。
楽天KOBOに営業に行った時にはすでに時間切れギリギリで対応してもらえなかったが、好感触で、次回は対応してもらえるんじゃないかと想像してる。

だから、アマゾンの通販で買って、honto電子書店でダウンロードするみたいなこともできるわけ。
このサービスをはじめた時に一番やりたかったことは、どこの本屋でかっても電子書籍がついてくるってこと。
このサービスを考えている時に、「空飛ぶ本棚」ってサービスの雑誌を買いにいったのだけど、「空飛ぶ本棚」をやっている本屋で買わなくてはならなかった。
渋谷の文教堂に行ってその雑誌を何冊か買ったのだけど、表紙とウラ表紙のバーコードのところにシールが貼ってあって、レジに持って行くと、店員さんが後ろの棚からカードを探しだして渡してくれるってしくみ。
店員さんも、限られた雑誌だけのサービスだからそうしたこともできるんだろうけど、対応商品が増えれば無理でしょ。本についていなきゃ、と思った次第。また、本屋が限定されるってもの客から見たら面倒だし、やだな。特定の本屋に行くほどのサービスとも思えない。

●電子図書館に入れられるのか?
さて、この「無料」の電子書籍は、電子図書館で貸し出しできるのか?

二つの意味でできないとおもっている。

このサービスは、対応する電子書店で無料ダウンロードするってサービス。
図書館が、電子書店で会員になるなら、まあ無料ダウンロードできるだろうけど、それってDRM付きのEPUBなわけで、その書店のビュアでしかよめない。
・そもそも電子書店会員に法人会員ってあるのかな? ないでしょう。また別の問題がおこるからね。
・仮に法人会員になったとして、その書店のビュアでしか読めないのですよ。物理的に。図書館での貸出に対応するとすれば、そのビュアから吸い出して、電子図書館システムにいれなきゃいけないのだけど、まあ、それはDRM外すわけで、それ違法ですよね。
・さらに仮に、DRM外したEPUBを吸い出すことができたって、電子図書館システムにいれることは、そのシステム提供者に頼まなけりゃならないわけで、やらないですよね、まともな会社なら。
このあたりがひとつめ。

ふたつめは、記憶の範囲で書くので間違えがあるかもしれないのですけど(図書館学や著作権に詳しい人に突っ込まれたい)、図書館の本の貸出の法的な根拠のこと。
紙の本を物体として図書館に売っている、図書館は図書館法の
「「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。」が根拠なんじゃないかな? 細かいことをはぶくけど、電子書籍は物体の販売じゃなくて、公衆送信権に属することになるわけで、公衆送信されたものの図書館の貸出って法的な根拠じゃなくって、図書館ー事業者ー出版社の間の契約で行われているものなんだと思う。
とすれば、このプラス電書サービスは、そうした契約はしていないので、図書館からの貸出に含むことができない、って考えているのだ。

いやー、実はこのあたりのこと、電子図書館を考える上で、きちっと考えていなければならんと、思っていたところなのですよ。今後の課題だw。

友達からのメールに返事を書くつもりで、ポットの日誌にかいてみました。

このエントリへの反応

  1. 自分で自分に突っ込む。
    今回の2タイトルはさまざまなテストって位置づけなので、電子図書館にも販売するつもり。
    すでにプレスリリースがメディアドゥからだされたけど、慶応大学図書館でおこなわれるというオーバードライブの利用実験にはEPUBデータを渡してるし契約も終了。
    丸善の電子図書館システムも契約は終了してる。こちらはPDFファイルで目次リンクをハラなきゃならんので、配信は遅れてる。
    TRC-DLの方は、出版社との契約書の修正中で契約できずにいる。フォーマットはEPUBでよいので、契約さえできたら、すぐに提供します。