2001-10-10

前口上

 1999年8月にポット出版から発売になった『熟女の旅』は私にとって、試金石というべき意味合いがありました。本を出す度、売上が落ちてしまい、これ以上、部数が落ちると、本を出せないところに追い込まれるのは必至であります。
『熟女の旅』の8割は書き下ろしで、これがある程度売れれば、雑誌で書かせてもらえないテーマは書き下ろしでやっていけばいいし、これが売れなければ、単行本自体、当面出さない方が無難です。
 少しでも売るために1999年5月からポットのサイトで始めたのが「ボツ劇場(ボツ劇)」でありました。依頼されなくても原稿を書いてしまう性癖のため、溜まりに溜まっている原稿をここで放出すると同時に、繰り返し本を買って欲しいとお願いすることにしたのです。また、これとは別に、書き下ろしの単行本の作業を進めるために、「ボツボツ劇場(ボボ劇)」も開始。
 ところが、自分の連載でことごとくと言っていいほど告知を入れても利用者数は一日20から30程度で一向に増えず、自分の連載をほとんど誰も読んでいないらしきことを知っただけでした。薄々気づいてましたが、ショックでした。
 そして、『熟女の旅』は今まででもっとも売れない本となりました。拙著ではよくあることですけど、連載している雑誌でさえ書評に取り上げてもらえず、「ボツ劇」は数字に表れるような効果はまったくありませんでした。これでは、書き下ろしの本を出すだけ無駄で、とても労力に釣り合う収入にはならず、出版社としても赤字になりかねません。そこで、1999年いっぱいで「ボツ劇」を閉鎖し、本を出せる状態じゃないので、「ボボ劇場」も閉鎖。
 それでも、何ら規制なく文章を書ける快楽は捨てがたく、新たに「杜撰」をテーマにして、それまでのようなまとまった原稿ではなく、いい加減な日常雑記を中心にした「黒子の部屋」を1999年暮れから開始。我が風俗妻がシャワーを出ると、ツツツツツとタオルをもってきて体を拭いてあげる私の様子を「黒子みたい」と彼女が表現したところからつけたもので、他意はありません。 続きを読む…