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デカい明日になりそうな『BIG tomorrow』の仕事 [下関マグロ 第21回]

「それじゃ、ちょっと行こうか」
引っ越したばかりの「オールウェイ」の事務所で、伊藤ちゃんがそう言った。
行き先は、青春出版社の月刊誌『BIG tomorrow』の編集部だ。伊藤ちゃんが歩いて行くというので、僕も一緒に歩き [...]

データ原稿書きで、手のひらが真っ黒だ [北尾トロ 第20回]

1986 年が明け、それまでの四谷から、新宿に通う生活が始まった。パインは張り切っていて、いつ顔を出しても事務所にいる。留守のときは打ち合わせに出ているか人と会っているかで、夜遅くまで、椅子の上であぐらを組んで原稿を書い [...]

会社の役員になってくれと頼まれた [下関マグロ 第20回]

パインが間借りしていた事務所には、パインの他に、伊藤ちゃん、伏木くん、坂やんなどなどのライターがいた。更にそこに三角さんという元編集者が加わって、なぜか経理のようなことをやっていた。
パイン以外の人間は、ずっとそこにいる [...]

間借りを脱し、新宿に共同事務所を開くことに [北尾トロ 第19回]

いつまでも間借りのままでは落ち着かない。仕事を充実させるためにも自前の事務所を持ちたい。パインは前々からそう言っていたから、年内に引っ越しする計画を聞いても驚きはしなかった。
事務所を構えるのはあくまでパインの会社・オー [...]

金はないが、時間だけはたっぷりあった [下関マグロ 第19回]

久しぶりに伊藤ちゃんから電話がかかってきた。その頃の伊藤ちゃんは単行本を執筆しているとかで、ほとんど顔を合わせていなかった。
「まっさん、どうしてんの?」
どうしてんのと言われても、どうもしておらず、その日も暇にしていた [...]

スポーツライターへの道が開かれた!? [北尾トロ 第18回]

なぜアフリカ雑誌の企画がスキーに? 唐突すぎる福岡さんの電話には戸惑うしかなかったが、だんだんその気になってきた。ジャンルはともかく、新創刊というところに惹かれるのだ。スポーツには縁がないが、ダメでもともと。それより、雑 [...]

決意というより成り行きでライターに [下関マグロ 第18回]

最近はそうでもないのかもしれないが、昔はエロ業界について勘違いしている男が多かった。
僕がアダルトビデオの助監督やエロ本の仕事をしていると言うと、「撮影現場に連れてってくれ」というようなことをよく言われた。
そんな物見遊 [...]

本が出ても何も変わりはしなかった [北尾トロ 第17回]

机の前に座り、原稿用紙を広げて早4時間。1文字も書けないまま時計の針だけが規則正しく先へ進む。初の著作となる『サラブレッドファン倶楽部』は出だしから行き詰ったままだった。肩に力が入っているせいか、最初の1行でつまずいてし [...]

アダルトビデオの助監督という仕事 [下関マグロ 第17回]

「もしもし、増田くん、またお願いできるかな」
芳友舎の土屋監督から電話がくるとうれしかった。アダルトビデオ助監督の仕事依頼であるが、うれしい理由はギャラが取っ払いだからだ。
ライターが原稿料を受け取るのは、早い場合で仕事 [...]

いきなり単行本の著者になった [北尾トロ 第16回]

パインの仕切りで、夏の終わりに総勢10名数名で長野県の野尻湖へ遊びに出かけた。車なんてシャレたものはないから電車である。大半が普段フリーで活動しているライターやデザイナーなので、大勢でどこかへ行くというだけでむやみに盛り [...]

読者チャレンジ企画とAVの助監督 [下関マグロ 第16回]

新橋の駅ビルの地下に、ウエイトレスの制服がミニスカートの喫茶店があった。といってもいかがわしいお店ではなく、ごく普通の喫茶店だった。
僕はその喫茶店で雑誌『とらばーゆ』の原稿を書いた。『とらばーゆ』は週刊だったから、最初 [...]

オイルぬりぬりマンの夏 [北尾トロ 第15回]

季節は巡り、暑い夏が近づいてきた。去年の今頃はパインの家に居候してプール通いをしていたのだ。あれからもう1年。相変わらず生活はカツカツだが、ライター稼業で持ちこたえてきたのは上出来のような気がする。
キンキンに冷房を効か [...]

初めてのライター仕事 [下関マグロ 第15回]

1984年の暮れのことだ。手帳に書きとめた住所と地図を交互に見ながら、新橋にある『とらばーゆ』の編集部にやっとたどりついた。
担当は長崎さんという、僕と同じくらいの年頃の女性だった。テキパキと事務的に打ち合わせが進んでい [...]

高橋名人とカメラ [下関マグロ 第14回]

このシリーズには多くの個人名や会社名が出てくるが、ほとんどは月並みな仮名にしてある。しかし、編集プロダクションの社長につけられた「パイン」という名前は、なんだか突拍子もない感じがするだろう。
それには理由がある。パインと [...]

パイン事務所での暗黒時代 [北尾トロ 第13回]

パインの事務所では月刊誌の「ロンロン」に加えて、パソコン周辺機器のムック製作が始まった。当時はまだパソコンそのものが一般的になりつつあった頃で、この手のカタログ的なものにも需要があったのだ。いち早くパソコンを使いこなして [...]

エロ本の仕事で女の子の路上撮影 [下関マグロ 第13回]

若生出版の柳井が応接室で見せてくれた雑誌は『ムサシ』というごく普通のエロ雑誌だった。まだインターネットもない時代、エロ雑誌というのは、いまから考えられないほど種類があったし、部数もけっこう出ていた。
業界にはまだ余裕があ [...]

等身大パネルと愛の暮らしを [北尾トロ 第12回]

いつものようにアートサプライ内のパイン事務所でうだうだしてると、増田剛己がやってきて仕事の話があるという。
「最近知り合ったムサシっていうエロ本の編集者から、何かやってよって言われてるんだよ。一緒にやんない?」
「ほぅ、 [...]

こうしてエロ本の仕事をすることになった [下関マグロ 第12回]

今でも四谷四丁目から四谷三丁目にかけての新宿通りを歩くと、ここを3輪の原付バイクで走ったことを思い出す。時期は1984年の秋から1985年の暮れまで。麹町にあるパインの事務所に通っていたのだ。
今でもそうだが、新宿通りか [...]

合格電報屋で一稼ぎをもくろんだ [北尾トロ 第11回]

アートサプライの事務所は四谷と半蔵門の中間にあり、食事処には不自由しなかったが、決して安くはなかった。そこで、少しでも食費を安く上げたい駆け出しライターたちは、上智大学の学食によく足を運んだ。ここなら300円もあればまと [...]

怪しいニューメキシコの水島 [下関マグロ 第11回]

去年の夏のことだ。千代田区立図書館で本を借りようとしているときに後から「まっさん」と声をかける男がいた。
僕のことを「まっさん」と呼ぶ人間は限られている。本名が増田だから、〝まっさん〟と呼ばれていたが、そういう呼び方をす [...]