2008-06-23

ゲイバーへの道 2 『売れっ子ホステスの会話術』

kaiwajyutu水商売1年生の伏見としては、まずは接客を基礎から勉強しなければということで、右の本を書店で購入。まあ、最初はネタ作りのつもりだったのですが、この本、思いのほか学ぶことが多い。「よけいなことは話さない」とか「客に話しをさせる」とか「共通の話題を探す」とか、まあ、当たり前と言えば当たり前のことしか書いていないのだが、こういうことを整理して考えることはないので、意外と勉強になった。

実際、当たり前のことでもそれができていないゲイバーのママは相当多い。伏見のゲイバー経験でも、「なんでこのママって自分のことばかりしゃべっているんだろう?」とか「客に自分を褒めさせようとするのはどうも…」とか「客にライバル心を持つのはどうよ」とか……基本的なことを誤解しているゲイバーのママは少なくない。

自己顕示欲の強い伏見としては気をつけなければならないところだが、たぶん、もっと自分を戒めなければいけない点は、客に突っ込みを入れすぎないようにすることだろう。ふだんから、二丁目では自分のことは積極的に語らないし、名前すら口にしないくらいなのだけど(だっていいことないでしょ?、笑)、つい職業病で、相手の話を訊きながら質問を連打してしまうことがある。こういうの、素人さんは驚くよね。

この本の著者は、できるだけ客に話しをさせて「上手にハモる」というのを主張する。あぁ、接客業ってメインボーカルはお客さんに任せて、ホステスはハモり役に徹することなんだ、なるほど!と腹に落ちた。

*オープニングパーティまであと9日!

2008-06-19

ゲイバーへの道1 mixi復帰

とりあえずmixi復帰。

ゲイバーを営業するにあたっていちばん必要なのは資金。だけど、今回は他人の店の休日を利用させてもらうだけなので、資本金はいらない。預貯金に余裕のない伏見は大助かりなのであるが、次に大切だと思われるお客さんになってくれそうな友人、知人というのが、実に心もとない。あまり他人と情緒的な関係を作ってこなかったので、二丁目での飲み友だちといえる人たちもいないし、ふだん電話し合うような友だちすら一人、二人……。といったありさまで、さすがにこれはヤバいと気づき、撤退していたmixiに急遽復帰。(←こういうとこ、節操ないの)

それでマイミクっていうのをお願いして回っているのだけど、いやあ、知り合いが少ない。マイミクが数百人、千人台(←エスムラルダ)なんていう人たちはいったいどういう生活してるんだか。人間関係にオマエら心ないだろ!と意地悪な視線を投げかけつつ、んなことは言ってられん、見習わなければ、と猛省の日々。でも、マイミクを増やすにも、ほんと、友だちがいないんだもーん!(いったい二丁目で四半世紀も何してたんだか) なので、お気づきの方はぜひマイミク申請してください(本名で入っていまーす)。面識がなくてもまったくOK。これからゆっくり「親しく」なりましょう、水曜日にお酒でも飲みながら(笑)。

2008-04-28

ハートをつなごう

NHK教育テレビでの初の同性愛特集、すばらしかったー! こういう番組がテレビで放送されると、思春期のゲイやレズビアンの生き難さは少しずつ軽減されていくと思う。同性愛者の置かれた状況はまだ差別や抑圧と無縁ではない。また、どの世代でもつねに圧倒的な少数派であることは間違いなく、どんなに社会状況が進んでも、情報に恵まれないことには変わらない。だから毎年ネタを換え品を換え、同じような番組が制作されるのが望ましい。

今回の番組の反響が大きければ大きいほど、制作者の次回への意欲に訴えることができる。HPを通じて感想を送るのもいいし、ブログなんかに記事を書くのもいいし、反響を盛り上げていくのが重要。運動ってまめさだよね。http://www.nhk.or.jp/heart-net/hearttv/

個人的にも、砂川さんとか尾辻さんとか知ってる顔がけっこう出ていて面白かった。登場する純粋な若者の気持ちにキュンとなったりして、ちょっと心が洗われました。自分が初々しいリブ釜だった時代を思い出したりして、あぁ、若い頃にはこういう真っ直ぐな気持ちで本を書いたり、テレビ番組に関わったりしていたなあ、と。いまはすっかりすれっからしのババア……あぁ。

明日も放送されるので、みなさん、注目!

● NHK教育テレビ
4月28日(月)、29日(火)  午後8時〜8時29分
再放送  5月5日(月)、6日(火) 午後1時20分〜1時49分

2008-04-08

右翼 × 元統一教会 × 元左翼 × 漫画家 × オカマ?

loft.png阿佐ヶ谷ロフトで行われた「よりみちパン!セ」シリーズのイベントを観に行った。この前、このサイトで紹介した『失敗の愛国心』の著者・鈴木邦男さんと、『「悪いこと」したらどうなるの?』の藤井誠二さんが出演するという情報を得たからだ。他人のトークイベントなんて滅多なことでは観に行かないのだが、大ファンのお二人に会いたいばかりに、禁断の地、阿佐ヶ谷まで出掛けた。

行ってみたら、壇上には『ついていったら、だまされる』の多田文明さんや漫画家の武富健治さんまで並んでいて、とっても豪華なメンツ。な上にお話しも超面白かった。いやあ、みなさん業も深く、修羅場をしっかり生きてきて、ご立派。感心して聴いていたら、後半壇上に呼び出されて、ついトークに加わってしまった。誘われたらすぐに股を開くサセコ体質にも困ったものよね。でもお訊きしたいこともあったので、ずうずうしくしゃべってきました。「シングルの右翼って伝統主義と矛盾しないんですか?」とか。

鈴木さんはとてもダンディで男気があって、益々ファンになってしまった。藤井さんのことは前から「頭部の形が亀頭みたいでエロくて好き」と吹聴していたのだが(←失礼すぎる)、内面的な男ぶりも大したもので、ちょっと癖になりそう。加えて、ロフトの経営者の平野さんとも10年ぶりくらいに会ってなつかしかった。いずれ、阿佐ヶ谷ロフトでも何かしたいなあ。

2008-01-01

謹賀新年

081.1_fuku.jpg本年もよろしくお願い申し上げます。

ご無沙汰している人、よくお目にかかる人、まだ出会えていない人、08年にはどこかで言葉を交わすことができれば、と願っています。

伏見は今年も何冊か単行本が出る予定です。楽しみにしていてください。

今年がみなさんにとってすばらしい一年になることを祈っております!

2007-11-08

さよなら、がんちゃん

90年代以降、ゲイシーンでさまざまな活動を展開した春日亮二さんが亡くなられたそうです(享年37歳)。まだ若く、才能とエネルギーに溢れた方だったので、残念としかいいようがありません。友人のひとりとして寂しいです。

心よりご冥福をお祈りいたします。

本当に、楽しい思い出をありがとう。

2007-10-28

クィア学会、大成功!

昨日、東京大学で行われたクィア学会の創立大会は大盛況のうちに終わった。台風による風雨のなか、2、3百人は集まったのだろうか? 地方からの参加者も多く、また世代も幅広く集まり、会場は熱気に包まれていた。近年、こうした密度の濃い空気をクィア関係のイベントで感じたことがなかったので、ちょっと90年代の「熱」を思い出した。

クレア・マリイさんによる開会の辞もたいそう立派で、格調の高いものだった。伏見のベシャリは相当おふざけでコマッタちゃんでしたが(笑)、他のシンポジストの方々がきちんとそれぞれの考えを述べられていたので、シンポジウムも意義深いものになったのではないでしょうか(ゲイ関係のことは砂川秀樹さんが理路整然と分析していたので、安心して伏見はイロモノに徹することができた、と弁明)。河口和也さんと堀江有里さんの司会も軽妙で、よかったです(いやあ、掘江さんがあんなに笑えるキャラだとは知らなかった)。

個人的には、以前から尊敬申し上げていた沢部ひとみさんとごいっしょできて、とても光栄だったー! 編集者、ライターの大先輩としていつかお目にかかりたいと思っていたので。

「クィア学会」というので、ポスト構造主義とか、近代批判とか、「バトラー祭り」とか、そういうのがしたい人たちの巣窟になるのならどうもねえ…と思っていたのだが、交流会などに残ってみても、実にいろんな考え方の人たちが集まっていて、ここなら、異なる世界像をぶつけ合うことができるような気がしたので、伏見もお金を払って入会させてもらうことを決めた(←えらそうな物言い)。

とうか、清水晶子さんが、会に何かを期待するより自らそこに積極的に参加して盛り上げてほしいというような旨のことをおっしゃっていて、それは本当にそうだなあと思った。伏見もこれからはゲストとか人任せではなく、会員として積極的、主体的に参加しようと決意した。どうせなら、後半生はクィア学会に捧げちゃおうかしら! 最近、44歳の手習いで大学で学問を勉強をしはじめたので、ちょうどよいかもー。

ともかく、スタッフ、ボランティアのみなさん、ご苦労様でした。暴言、無礼な態度、たいへん失礼いたしました(笑)。

2007-10-05

キシピーがゲイバー Bridge 開店

bridge.jpg友人のキシピーが新宿二丁目に素敵なバーを開きました。その名もBridge。お客さんとお客さんの架け橋になれれば、と意味でしょうか?(訊いていないけど)

オープニングパーティに伺いましたが、とてもお洒落で、落ち着くお店でした。いまどきなのが、店内禁煙でバルコニーが喫煙コーナーになっているところ。そこも広々としていてゆっくりと飲んだりおしゃべりできる空間になっています(あるいは、ハッテンも?)。6Fの見晴らしのいいバルコニーから夜空を眺めていると、なんとなくロマンティックな気分になりますね。

(大塚隆史さんがグラン魔性子の称号を与えた)マッチョ兄貴のキシピー(イケメンよ!)の店だけあって、お客さんの筋肉量はなかなかで、フェロモンがそこはかとなく漂っています。でも文科系(ゲイカルチャー)にも対応していて、映画ファンやアート志向の人も十分満足できるバーとなることでしょう。

女性も年増もOKなので、気軽に遊びに行ってあげてください。←デブも大丈夫だったし

● Bridge 新宿区新宿2-13-16 SENSHO Bld.6F
03-6423-7384
(梅寿司の角を曲がった先にあるビル)

2007-08-13

ゲイバァ終了、パレード大成功、おばさん万歳!

_______________.jpgパレードを祝して催したゲイバァ伏見(リアル)ですが、大勢のお客さんにお越しいただきました。とくに2日目はトークもおおいに盛り上がり、実に有意義でした。ご来店くださったみなさん、トークのゲストの方々、誠にありがとうございました! 伏見は虚弱なくせにほとんど丸二日眠らずに飛び回っていたので、終わってからしばらくダウンしてしまい、御礼が遅くなりました。

パレードのほうも晴天に恵まれ、参加者も増えて大成功でした。伏見は今年はプレスとして歩くわけでもなくただの沿道応援でしたが(←寝坊しただけ)、ブラスの演奏に、歩く人たちの笑顔に、感動を与えられました。暑くてしんどかったけど、確実にエンパワーメントされた次第です。これだけのイベントの準備をされたボランティアのみなさんに、心より感謝申し上げます! みなさんの貢献のおかげで、今年も楽しめました。

(こんなことは本当は書くべきではないかもしれませんが)パレードの夜、明け方近くになって、ゲイバァ伏見に TOKYO PRIDE の代表理事の中田たか志さんが来てくださり、さまざまなお話を伺いました。お世辞ではなく、非常に感銘を受けました。あのパレードを成功させるために、どれだけの努力と苦労を引き受け、戦略的に行動してこられたのか! なにかそのディテールに泣きたくなるくらい、感動してしまいました(たぶん、その場にいた野口勝三さんも同じだったと思います。←ちょっと目がうるんでたもーん)。

その内容にはここでは触れませんが、ちょうどその前に沢辺均さん、野口さん、長谷川博史さんとトークで議論していた内容の良いエクザンプルのようなお話しで、LGBTの運動は他の社会運動ではありえない可能性を秘めていると、希望を持った次第です。それは「大人の運動」とでもいいましょうか。倫理主義や左翼主義に陥らずにすむことが、もしかしたらできるかもしれない。

個人的には、中田さんとはこれまでそれほど近しいわけではなく、かといって角を突き合わせるような間柄でもありませんでした。ただ、かつて二丁目を中心にやってこられた彼と、リブみたいな理念に乗ってやってきた伏見では、とくに相性がいいとも思っていなかったのが正直なところです。でも、じっくりとお話しを伺うと、いやあ、(こういう言い方は生意気ですが)この方は、本当に立派! 能力的にも、社会的なスキルの上でも、いまのLGBTの運動の中では傑出した存在ですね。伏見も学ぶことが多いのに目から鱗でした。自分よりも年上の人に、心から尊敬の念を抱けるということは、本当に幸せなことです。

パレードのボランティアなんて、文句ばっかりいわれて見返りの少ない役回りです。とくに「理事」「実行委員」みたいに責任ばかり多い役職の人は、人間サンドバックになりがちで、まるで「オマエのためにやってやったのに!」と言わんばかりの文句まで投げかけられるのが、これまでの通例です(それで心に傷を負ったスタッフ多数……)。でも、中田さんのような情熱のある方が人柱の役を担っているからこそ、あれだけのイベントが可能になっていることは間違いない。それは、しょんべん臭い若釜じゃなくて、やっぱり、酸いも甘いもかみ分けてきた「おばさん」だからこそできることなのでしょう(笑)。

*中田たか志さんのことをもっと知りたい人は、このサイトの「同性愛入門」をダウンロードしてね。

2007-07-29

本日、参議院議員選挙

とりあえずまだ雨は降っていません。しっかり投票所に行って、自分たちの思いを候補者に託しましょう。なんだか明日未明までドキドキしそうですね。あとは祈るばかりです。一票で負けることもありますから、悔いの残らない選択を!

2007-07-28

「私」から「私たち」から「私」へ

右を見左を見、周囲を気にしてゲイバーに入店した時代をおぼえているひとは、
もはや少なくなった。

ゲイ同士知り合ってもふつうに名字を名乗り合うことがなかった過去に、
現在リアリティを感じる者は多数ではないかもしれない。

でも、たかが十数年前、ぼくらは新宿御苑でゲイの集団で花見をするのに、
差別の恐怖と闘わなければならなかった。

ついこの間、90年代でさえ、同性愛者のイベントをするのに、
会場に警備員を置かなければならないこともあった。

友だちに性的少数者であると告げることすら許されなかったのは、
遠い昔のことではない。(いや、いまでもそれは続いている)

そうした状況が変化していったのは、
それを変えようと思ったひとたちが、少しずつの勇気を持ち寄ったからだった。

目の前の困難を「私」として乗り越えるだけでなく、
「私たち」として向き合う「政治」をはじめたからだ。

「私」の状況は「私」の力で実現したと思いがちだが、
それを背後で支えたものへの想像力を持たないひとは多い。

それどころか、「大きなお世話だ」と思っているひとも珍しくない。

悲しいことに、寝た子を起こさないでくれ、
という「苦情」も相変わらず耳にする。

けれど、そのひとたちの「自由」でさえ、勝手に出来上がったものではない。

もしそう思っているのだとすれば、それは傲慢だ。

時代は変えようとしないかぎり変わらない。

「私たち」の問題として解決すべき事柄は、「私たち」とともにある。

そのことと、「私」がどう生きるのか、という課題はつねに同時平行してある。

「私たち」を「政治」とするのなら、「私」は「文学」かもしれない。

そのふたつは不可分であり、生きるための両軸だ。

「私」をしっかり生きることも、「私たち」の課題と向き合うことも、
どちらも人生には必要なことだろう。

「私たち」としての「私」を考えることは、「私」をよりよく生きるために、
不可避な機会に相違ない。

捨て身で「私たち」であろうとしているそのひとに、花束を。

不器用に「私たち」であろうとしているそのひとに、万雷の拍手を。

2007-07-27

参議院選挙比例区って!?

特定の候補者を当選させたい人は、党名ではなく、個人名を書かないとそれが反映されないんだそうです。意外とそのことが知られていないようで、伏見もつい最近まで分かっていませんでした(人のこと言えない)。だから投票場では●●●○○○とフルネームでちゃんと書きましょうね。

選挙もいよいよ大詰めですが、さまざま巻き返しもあり、メディアでそれなりに取り上げられた候補者もそのことだけでは票につながらず、奮闘努力しているようです。人々の投票行動に影響を与えるって難しいですね。有権者の一人として、他人任せでは自分たちの思いを国政に反映させることはできないんだと真摯に受け止め、しっかりと投票に行きたいものです。最後までがんばれ!

2007-07-09

アカデミアへの問いかけ

http://d.hatena.ne.jp/tummygirl/20070702/1183388698
http://d.hatena.ne.jp/tummygirl/20070702/1183388699

FemTumYumというブログのtummygirlさんとずっとやり取りをしているのですが、そこで、以下のような問いかけをしたので、こちらでも。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

前言撤回。ピリオドは止めます。

このやり取りをご覧の方々に広くご意見を伺いたいです。とくにアカデミズムに関わるみなさんに。

まず、事実関係を確認すると。私はブログ FemTumYumにおいて、tummygirlと名乗る人物が「どこかの学会」で私の著作を俎上に乗せて発表したことを知りました(そしてそのエントリの内容を信じました)。tummygirlさんのご連絡先がわからず、コメントの書き込み方もよくわからなかったので、まず、自分のブログに呼びかけのエントリをアップしました。そのすぐあとに、hatenaのコメントの投稿の仕方がわかったので、FemTumYumにも同様のものを書き込みました。

呼びかけた内容は、英語に弱い私としては、tummygirlさんがアップされている英文の発表原稿をできたら訳していただいて、ポット出版の「欲望問題」のコーナーに投稿してもらえないか、あるいは、公開の場で討論をしませんか、というものです。(FemTumYumのエントリの内容が真実だとすれば)その英文の原稿は公的な場所で発表されたものですので、俎上に上げられた人間としてそれについて誰が行ったのかを知り、できれば内容を検討し、必要と思えば応答したかったからです。ただ、私は匿名の人物とネットで論争のようなことはしない主義です。少なくとも自分だけ名前を明らかにして相手は匿名という形ではしません。今回は、それが公の場で発表されたものであるということだったので、そのように思ったわけです。

しかしtummygirlさんはブログの自分と、学会発表をした実名をつなげることはしないというお考えで(学会で発表したものだということを記し、それを一部といえどもブログ上にアップしているにもかかわらず)、あくまで実名で応ずることはしたくない、という立場です。たぶん今後、書評をいただいたとしても、この論理でいくと、それも匿名で、ということになるのでしょう。

コメントにも書いたのですが、もちろんtummygirlさんが私の呼びかけに応じて公開討論に出たり、書評を書く義務はありません。そのことを断られるのは仕方ない。けれど、私としてはせめて、ネット上ではなく私個人に実名を教えてくれないか、とお願いしました。なぜなら、そうでなければ、私には公的な場で自分が俎上に上げられたことについて、どうにも知ることができないからです。そのテキストだけは中途半端にネット上に上げられているにもかかわらず。そして、もし反論が必要だと思っても、直接発表した本人すらわかりません。ブロガーのtummygirlさんと実名の研究者の方をあえてつなげて暴露するつもりはありませんが、ご自身が学会で発表したということを記しているわけですから、俎上に上げた人物から問い合わせを受けたら、個人的に発表者としての名前を明かすくらいは、義務ではなくても「仁義」だと私は考えます。それが言説に関わる人間の(倫理とはいわないが)「礼儀」ではないか、と。

しかし私が個人的なアドレスを(勇気を出して)コメント欄に記したにも関わらず、tummygirlさんは応じるつもりがないようです。はてさてどうしたものか。

みなさんにお考えをお訊きたいのですが、そもそも学会という公的な場で行われた議論に対して、俎上に乗せられた人間はアクセスできないのでしょうか。発表する側はそれが「業績」になるのに対して、俎上に乗せられた側は誰が行ったのか知る権利もないのか。学会という場に関わる人たちは、そうした問い合わせを受けたときに、それに関心を払わなくていいというのが、慣習なのか。その辺り教えていただけませんか。

このようなことはこれから多く起こりうると思いますので、ご意見をいただければ幸いです。

http://www.pot.co.jp/otoiawase/index.php

トーマス・ソングさんのブログ

QJ5.jpgQJ vol.5「夢見る老後!」、QJr vol.1「あなたに恋人ができない理由/関係が続かない原因」にもご協力いただいたトーマス・ソングさんがブログをはじめました。彼の人生は小説以上にドラマティックで、近代の矛盾をそのまま抱え込んだ個人史です。何年か前に来日されたおりには、伏見が少人数の会を催して、とても有意義にお話しをさせていただきました。一つ一つのエピソードが歴史の証言なのですよ! ご興味のある方は以下へ。

http://ameblo.jp/thomas-penfield

Thomas Song(トーマス・ソング)
1929年、韓国人を両親に東京で出生。大連で少年期(1934−46年)を過ごし、旧制高校一年のとき(1945年)日本敗戦。翌46年冬、ソ連占領下の大連から南朝鮮に脱出。48年、単身渡米。高校、大学を卒業(53年)、徴兵され軍務服役後、米国に帰化(56年)、研究院修了。大学の司書と教員生活20数年後、引退。パートナーとの共同生活37年。在米58年。フィラデルフィア在住。

2007-07-07

注目!

これまでネットでやり取りなどしない主義だったのですが、いま、FemTumYumというブログのtummygirlさんとこのようなコミュニケーションを交わしています。←掲示板童貞、喪失?

http://d.hatena.ne.jp/tummygirl/20070702/1183388698
http://d.hatena.ne.jp/tummygirl/20070702/1183388699

ぼくとしてはtummygirlさんと公開の場での議論を望んでいます。まさか「海外の学会」では伏見憲明について批判?して、国内でぼく自身と直接対話をするのを避ける理由なんてないでしょ?(笑) 「話せばわかる」とは思わないけれど、異なる考え方、異なる言語圏にいるのもの同士が言葉を交わすことは意義深いと思います。昨今そういう対話がちゃんとなされないことの問題を感じます。それこそが学問の制度化じゃないの?

それにクィア&ジェンダー・スタディーズって、現場と不可分の「運動」なわけだから!

毎日このブログに立ち寄られる一般のLGBTのみなさん、ぼくのラブコールがアカデミズムの方に届くのか、ご注目ください!

2007-07-05

面白いエントリみーつけ!

FemTumYumというブログに興味深いエントリがありました。

http://d.hatena.ne.jp/tummygirl/20070702/1183388698
http://d.hatena.ne.jp/tummygirl/20070702/1183388699

ブログのコメント欄に以下の文章を書き込もうとしたら、使っているソフトのせいか上手く投稿することができず、書き込めなかったので、自分のところにアップします。誰かFemTumYumのtummygirlという方を知っていたら、ご連絡してくれませんかねえ。こういった分野の大学の先生なので、非常にかぎられているはずですが(笑)。どうぞよろしくお願い申し上げます。それからご本人が見てくださったら、すみません、こんなぶしつけなやり方で。hatenaってよく使い方がわからないのです。

FemTumYumのtummygirl 様

はじめまして。伏見憲明です。
発表された内容、大変興味深いです。
が、情けないのですがなにせ英語に弱いので、訳していただき、
「欲望問題」のサイトにご寄稿いただけたらとてもありがたいです。
身勝手ながら、貴方の分析、批判などなどぜひ読んでみたいです!
こういうのは海外の学会で発表されるのも意義ありますが、
日本国内でやり取りしたらより実りがあるのではないでしょうか。
(「欲望問題」では公にはほとんど議論が起こらない状態なので、
すごくありがたいです。あなたの議論が知りたいです)
あるいは、ぼくは今、大学の中で理論家として「実践」をしている方々が、
どんな指針をムーブメントに与えてくれるのかに興味を持っています。
ご都合のよろしいときに、どこか公開の場で、
さまざまご教授いただくわけにはいきませんか?
理論というのは一般の人々の思考に届き、
現場の方向付けになるものでなければ使えません。
ぼくらのムーブメントの指針をもらえればと思います。
ご多忙でしょうから、日程は貴方に合わせます。
いつでも座敷は用意します。
お名前を存じ上げず、メルアドも探せなかったので、
お手数ですが、ぼくのサイトからメールをお返事いただけないでしょうか。
ぜひとも! 胸をかしていただければと思います。

http://www.pot.co.jp/otoiawase/index.php

2007-06-01

私信・上野千鶴子さまへ

yoku.jpgご無沙汰しております。
朝日新聞で鶴見俊輔さんと対談をなさっている様子を拝見したばかりです。相変わらずご活躍のようですね。

先日、ポット出版から拙著をお送りさせていただきました。編集者がぶしつけな書評の依頼をしたようで、大変失礼いたしました。お忙しくてご執筆いただけないとのことで、残念でしたが仕方ありません。

ただ、私としましては、今回の本だけは上野さんにお目通しいただいて、ご批判をもらえればと切に願っております。上野さんがご多忙なのは重々承知しておりますが、『欲望問題』は、学恩がある(と勝手に私が思っているだけですが)上野さんへの手紙、あるいは、「自主上野ゼミ」をやってきた私なりの「博士論文」として書いたものです。長い間、私なりに上野さんから多くを学び、また自身の活動を通して切実に考えてきたことを自分の言葉で誠実にまとめてみました。そして、この本は上野千鶴子思想への根本的な疑問にもなっていると思います。もし上野さんに私の「問い」にお応えいただけるのなら、それ以上のことはありません。

もちろん上野さんがもっと重要なお仕事を抱えていらっしゃること、私ごときの願いに応える義理も関係もないことはよく心得ております(それはそうでしょう!)。が、私は今度の本では自分の抱いた問いを上野さんに真摯にぶつけてみたいのです。すごく、ずうずうしい、あつかましいことを書いているのはわかっています。けれど、このことは、たぶんもうこういった本を書くこともない私の、活動家としての、理論家?としての最後の願いです。自分がとりあえずたどり着いた場所が本当に間違っていないのか、どこに問題があるのか、何か勘違いがないのかを、上野さんの胸をお借りして確認したいのです。

すでに、ポット出版のサイト*では、多くの論者の方々からこの本についての書評をご寄稿いただいております。橋爪大三郎さん、中村うさぎさん、遥洋子さん、小浜逸郎さん、藤本由香里さん、竹田青嗣さん、吉澤夏子さん、赤川学さん、黒川創さん……など40名近い人たちからご意見、ご批判をいただいております(これから、田中美津さん、伊田広行さん、加藤秀一さん……などからもご寄稿いただけるようです)。それぞれ考えさせられる内容なのですが、それらを読むにつけ、益々、上野さんのお考えを聞かずにいられない気持ちになっております。
*http://www.pot.co.jp/pub_list/index.php/category/promotion/yokuboumondai/

思えば、私が文章を書く人生になるきっかけを作ってくださったのは、上野さんです。セクシュアリティを考える言葉を与えてくださったのも上野さんなら、「ニュー・フェミニズム・レビュー」という場を与えてくださったのも上野さんです。私自身は、勝手に「上野千鶴子の一番弟子」を自称してきましたが、それは冗談ではなく、いったい上野千鶴子の弟子で私以上の仕事をしているやつがいるのか? という自負を(ひどく生意気にも)秘めてまいりました。と、泣きを入れても、戦略的な上野さんが私の誘いに乗るようなことはないと思いますが、あるいは、市井のオカマなど相手にするのもバカバカしいでしょうが、これは正直な気持ちでもあります。

今回、私がこの本を執筆しようと思ったのは、ジェンダーフリーなどをめぐる上野さんのご発言を遠くから見ていて、何か、とても不誠実なものを感じたからでした。それは、これまで上野さんのことを尊敬し、青春時代からアイドルとして敬愛してきた私には、ひどく残念で、一冊の本を書かずにはいられないほどの焦燥を与えました。本当に上野さん、それでいいのか?と。私がこの本を書かざるを得なかったのは、自分の信じていたものを(たとえ意見の違いがあっても)信じていたい、という一心からです。

と、すっかりファンレターになっていました。とにかく、私の気持ちを伝えたく思いました。振り返ってみれば、これまで何度かお目にかかったことはありますが、そのときはインタビュアーとしての私でしかなく、伏見憲明として同じ高さの目線で上野さんと向い合ったことはありません。知り合ってもうずいぶん経ちますが、どうしたわけか公開の場で対話したこともただの一度もなかったですね(まあ、身分を考えれば当然ですが)。

べつにストーカーになるつもりはありませんが(笑)、今後、場合によっては「性別二元制」をめぐる公開シンポジウムなども呼びかけさせていただこうかとも考えております。高見にのぼられた上野さんが象牙の塔から降りてきてはくれないかもしれませんが、新宿二丁目のようなふつうの人が集まるところにお迎えして、ジェンダーやセクシュアリティ、「性別二元制」をめぐって本当に私たちがどこに向かっていけばいいのか、差別をなくすにはどうしたらいいのかを議論する機会などあったら意義深いと、ひそかに構想しております。

長くなりました。ご多忙のところお付き合いいただきまして、ありがとうございした。たくさんの重要なお仕事を抱えて大変だとは思いますが、体調に留意されて、益々ご活躍してください。また遠からずご連絡さし上げます。いい年をした中年オカマが「お姉様、もっとかまってぇ」とだだをこねているような気持ち悪い文面になってしまいました。お許しください。でも拙著にお目通しいただければ幸いです。

2007.3.26
伏見憲明

*これは3月の末に上野千鶴子さんへ送ったお手紙です。「個人的なことは政治的なこと」ということで、私信を公開します。ちなみに他人の私信を公開する趣味はありませんが、上野さんからは音沙汰なしです。彼女のリクエストに応えて版元が2冊も献本したのですけどね……。献本には必ず「取り急ぎ御礼まで」と律儀にはがきを返される上野さんにして、いったいどうしたことか。まだ都知事選を闘っているんでしょうかねえ。

2007-04-14

欲望問題の書評

fushimiblog0000.jpgイダヒロユキさん、加藤秀一さんと、『欲望問題』に批判的な立場の方の書評が続いたところで、それに対して反論する神名龍子さんからの投稿がありました。神名さんはトランスジェンダーの業界では「武闘派」(笑)として知られる論客で、これも読み応えのある文章でした。議論っておもしろいですねえ。

それにしても、こういう論争に大学生とか院生とかが参加してこないのが本当に情けない。

2007-04-03

加藤秀一さんの書評

が、やっとというか、ついにアップされました! 超多忙のところご執筆いただいて心より感謝申し上げます。いろいろな意味でよい書評で、伏見としても刺激になりました。最終的にジャッジをされるのは読者のみなさんですから、双方の書いたものを読み比べてみたらいかがでしょう?←つまり本を買えよ、と(笑)。

遠からず、総括的な対談でそれぞれの書評を取り上げさせていただこうと考えております。そのときに伏見からの感想やら突っ込みやら批判やらをお伝えすることになる予定です。

2007-03-26

やっと批判らしい批判

『欲望問題』の書評にやっと批判らしい批判がアップされました。執筆してくださったのは社会学者のイダヒロユキさん。「シングル単位の社会」でおなじみの論者です。ぼくが言うのは相当ヘンですが(笑)、少しほっとしました。お忙しいところ書いてくださったイダさんには心から感謝!←嫌みでは全然ありません。