2010-04-21

でるべんの会「『新潮社装幀室』というおしごと」講演ノート

でるべんの会「『新潮社装幀室』というおしごと」(2010.4.15)に参加してきました。
講師は新潮社装幀部の黒田貴さん(最近デザインした本は『ジーン・ワルツ』『マドンナ・ヴェルデ』(ともに海堂尊)、『クォンタム・ファミリーズ』(東浩紀)、『キケン』(有川浩)など)と、出版部の西麻沙子さん(『ジーンワルツ』/『マドンナ・ヴェルデ』担当編集者)。

以下、講演で伺った話をまとめたレジュメです。

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■2010.04.15 でるべんの会
「新潮社装幀室」というおしごと

新潮社装幀室─スタッフは11人、新潮社発行の単行本、文庫のデザインを担当。年間約600冊。平均一人月5冊をデザイン。

●新潮社装幀室の特徴
・担当編集者との距離が近い(物理的に近い。3階が装幀室/4階が出版局)
→修正に即座に対応できる/ラフがあがったら即見せられる/意見交換が容易/(編集側から見たら)外注のデザイナーにだったら絶対に言えないような、ちゃぶだい返しも言いやすい。
・カドの取れたデザイン
→装幀室内、出版局、さまざまな人の意見を聞き、揉まれるので出来上がりはカドのないものになる。
・外注にデザインを依頼する際も、担当になるのは装幀室。
例)カバーにイラストを使うとき、イラストレーターに指示をするのは装幀室。

●単行本発行までのおおまかなスケジュール
・装幀室が担当するのはカバー、オビ、表紙、トビラ。本文組は編集者の仕事。
・一冊の本の発行までを大体4ヶ月としている。
装幀室、出版局で会議(担当編集者から装幀室へのプレゼン/「この人にデザインしてほしい!」という考えがあれば伝える)※この時点で部数、定価、総ページ数は大体想定されている。
↓(1ヶ月)
ゲラを読んだり、下準備など
↓(1ヶ月)
デザイン
↓(1ヶ月)→オビはいつも入稿ギリギリで決定。色校はとらない。装幀室から編集者にオビのネームを催促するのもしょっちゅう。
入稿、印刷
↓(1ヶ月)
発行

●デザインに関すること
・編集者からの依頼に関して
「こういうデザインにしてほしい」という明確な意図があれば言って欲しい。それにのっとってなんとかやる/それがなければ全部投げてもいい。一番困るのは「今回は『新潮社装幀室』っぽくないデザインでお願い」とか。曖昧なのが一番困る。

・(話した黒田さんは)カバーラフ案を20種くらい作ることもある。その中から担当編集者が2、3点セレクトして出版部長に提出。※上から指示がくる場合もあるが、基本的には担当編集者の裁量。
・デザイナーはゲラを読むときもあれば、読まないときもある。
ゲラをしっかり読むことも必要だと思うけど、しっかり読むことでデザインに制限が生まれてしまう可能性(「これはこういう本だからこういうデザインはナシ」とか)もあることは意識している。編集者も同様。デザインには博打の要素もある。
・印刷の原価計算も装幀室で行なう。→デザイナーの自意識は、読者には求められていない。原価が上がれば、儲けが減るのではなくて本の定価が上がるだけ。
・単行本をデザインする際には、棚差しされるとき/文庫にするとき までは考えていない
・小説ではないが、ノンフィクションものであればデザイナーがタイトルを変更するケースもある。
・いいデザインの基準は、「売れる」こと。売れなかったら、それはよくないデザイン。
・人件費に関してはそんなに考えていない。「売る」ためにはコストもかける。
・デザイナー月刊5冊ペースは少ないと思う。もっと増やせ、ということではなく、いい環境で仕事が出来ていると思う。

2010.04.19
作成●高橋大輔

このエントリへの反応

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