1-1●日誌--沢辺

来週7/29月から、クラウドファンディング始めます。『ビリガマ 高卒に厳しくなってきたゲイ社会をたくましく生きる店子』の宣伝費

来週7/29月から、クラウドファンディング始めます。
ポット出版の新刊のマンガ『ビリガマ 高卒に厳しくなってきたゲイ社会をたくましく生きる店子』の宣伝費 目標50万円です。

マンガ『ビリガマ』は、お洒落なエリート・ゲイでも、社会的に脚光を浴びる人権活動家でもない、自称ビリガマ(=底辺ゲイ?)」のリアルを描いたマンガです。

使い道は、この本の宣伝費用で、ゲイメディアやゲイイベントへの広告費用です。
2024年7月29(月)〜1ヶ月の予定。
是非ご協力ください。

●クラウドファンディング(7月29日(月)19:00スタート予定)

『ビリガマ 高卒に厳しくなってきたゲイ社会をたくましく生きる店子の日常』
ポット出版プラス
ISBN 978-4-86642-028-8
四六判 256ページ
価格 1600円+税(予定)
解説 ちあきホイみ(歌手、女装)/枡野浩一(歌人)
発売予定 2024年9月初旬

ポット出版サイト
版元ドットコム 

友人からの、本「彼は早稲田で死んだ」への批判

古い友人の前田年昭さんから、樋田毅さんの本『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』には大いに批判がある、その本を元にした映画は見ないことにしている、といった趣旨の批判のメールが届いた。
ポット出版が映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』の制作委員会に参加しているからだ。

前田さんと初めてであったのは、1990年代の初期。印刷物の「活字」を、写真の印画紙に印字して、それを印刷物の版下としていた頃だった。
その写植、電算(コンピュータ)を使って印字する「電算写植」が出回り始めたころ、メーカーの写研の入力装置ではなく、PC98とMS-DOS(エムエスドスー)で、各所にあった出力屋(バンフーとか東京リスマチックとか)から、印画紙出力するためのデータをつくる独自のアプリがあった。確か「みえ吉」「くみ子」って名前だった記憶があるけど。
青山あたりには、手動で印字してくれる個人営業の「写植屋」さんがいっぱいあって、そこに頼むとA4くらいの印画紙にいろいろ印字してもらうと5万くらいしたと思う。電算写植ならA4サイズの印画紙をつくってもらっても、千円を下回る値段だったような記憶がある。
なので、このPC98で動くアプリを買いに行ったんだけど、そこにいたのがこの前田さん。
正規軍の写研にたいして、そのインフラを使って安く便利にするアプリはゲリラみたいなもん。
以降も、デザイナーの鈴木一誌がつくった「ページネーションマニュアル」(ポット出版のサイトにも掲載されている)をきっかけのひとつにしてできた「日本語の文字と組版を考える会」で一緒した。
左翼とか政治とか全く関係ないところでであったのだけど、ぼくとおなじように高校で左翼で、いろいろあったことを後で知る。

前田さんの批判に「半世紀前に「国際主義と暴力」を称揚しながら今、しれっと「非暴力」と言い出している元活動家に対しても」「許せない」とある。
まさに半世紀前に「革命は暴力」といって称揚したのはぼくだ。
でも「非暴力」がすべてとは思っていない。当時のベトナム人に、アメリカの暴力に対して非暴力で立ち向かえ、などとは言えないしい、今も思ってもいない。
だけども、暴力を行使してでも実現する必要があると思っていた革命(社会主義・共産主義・マルクス主義、、)は、そもそも誤りを含んでいたと思うように「変節」したし、革命ではないたゆまぬ改革・改善の積み重ねが必要だとも「変節」。

そんなつきあいの前田年昭さんからの本にたいする批判だ。映画に対する批判でないのは観ていないのと、観ないという態度をとると決めているからだそうだ。
沢辺の、この批判に言いたいことは、別にこの日誌に書くかもしれない(書かないかもしれないけどW)
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樋田毅『彼は早稲田で死んだ』を批判する
前田年昭(組版労働者)

 樋田毅『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋、2021年、以下〈樋田本〉と呼ぶ)を読んだときに感じた強い違和感と反発は今も消えない。ついで、映画『ゲバルトの杜』(代島治彦監督、2024年)が公開された。監督は〈樋田本〉によって「「ゲバルトの杜」の恐ろしさを知っ」て、「この本を原案に」「内ゲバについてのドキュメンタリー映画」をつくったという(公式ウェブ)。私は見ていない。見ずに批判するのは間違っていると思うから映画についてはコメントしないが、知人がプロデューサーとして映画製作に参加していると知り、〈樋田本〉への批判だけは伝えなければ、と以下のメッセージを託す。

 〈樋田本〉は、川口大三郎虐殺事件を革マル派による「内ゲバ」とみる。「彼は早稲田で死んだ」という書名は、「ゲバルトの杜」という醜悪な映画タイトル同様、ここにあらわれている見方、捉え方は、当時の早大当局(村井資長総長)の「派閥抗争」という傍観者的な見方と同じである。これは、歴史的事実なのか。否、彼の死は「内ゲバ」によるものでも「内ゲバ」に“巻き込まれた”ものでも断じてない。「早大当局と結託した革マル派」による学生に対する暴力支配が事件の本質である。「彼は革マル派と早大当局によって殺された」が事実である。行動委員会(WAC)や当時の運動の歴史が、後知恵のきれいごとで改竄され、消されている(旧早大政治思想研究会有志「川口大三郎君は早稲田に殺された」(『情況』2023年冬号掲載)を参照されたい)。これは歴史への修正、改竄であり、事実を覆い隠すものは、その事実をつくり出した犯人である、という格言はここでも見事にあてはまる。関東大震災時に朝鮮人が“死んだ”、という言説を想定してみれば、歴史の修正、改竄が誰を利するものか明白である。

 〈樋田本〉は「不寛容に対して寛容で」立ち向かえと主張する。本のなかでは、78ページ、115ページ、153ページをはじめ253ページにいたるまで繰り返し、書かれている。空語である。自らをジャーナリスト(奥付)と名乗るが、言葉に責を負うプロフェッショナルの言葉とは思えない。イスラエルのパレスチナジェノサイドに抗議する反戦運動の全米、世界への現下のひろがりに直面した大統領バイデンは5月2日、「抗議する権利はあるが、混乱を引き起こす権利はない」と反戦運動への弾圧を理由づけた。逮捕者2000人という“混乱”は誰が引き起こしたのか。イスラエルの侵略を後押しするバイデン自身が作りだしたものではないのか。抑圧には反抗しかない。「不寛容に対して寛容で」という主張は、「不寛容」の暴力を容認し、後押しすることに帰結する。

 〈樋田本〉は、1994年、奥島総長によって、「早稲田大学は革マル派との腐れ縁を絶つことができた」(256ページ)、というが、これが解決なのか。私の違和感は、光州事件を題材にした映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』(チャン・フン監督、2017/2018年)への違和感と通ずる。映画『タクシー運転手』を評価する人が少なくないが、反共国家韓国の現実は何ひとつ変わっていないからだ。いま、日本の大学には、自由と民主主義、自治はない。大学の構内に交番(2013年、同志社大学)など考えられない事態が起きている。いったいどこに、学問研究の自由、大学の自治があるというのか。ジャーナリズム、アカデミズムは、難儀なめに遭わされている人民の、直面している問題の解決に役立ち、闘いを励ますものでなければ、その存在意義はない。本も、そして映画も、である。

 自由民権運動の元闘士が「国権」にとらわれ転向をとげた姿を見て、北村透谷は「会ふ毎に嘔吐を催ふすの感あり」と書いた(「三日幻鏡」1892)が、半世紀前に「国際主義と暴力」を称揚しながら今、しれっと「非暴力」と言い出している元活動家に対しても、さらにその時流にのって「当時から非暴力を主張していた」と説教しに現れた〈樋田本〉を見ても、私は同じ思いに駆られる。私は〈樋田本〉を許せない。
 (2024.5.14)

映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』の製作に参加したわけ

ポット出版は、代島治彦監督の運営するスコブル工房と、映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』の製作委員会を一緒に構成して、この映画の製作に参加した。
ナタリーの記事
予告編
●『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』のクラウドファンディング
僕は1956年3月生まれで、1971年の4月に高校に入学。
67年の10.8(ジュッパチ 佐藤訪米阻止闘争 中核派の京大生山崎君が死んだ)から高揚が始まった新左翼運動/ベトナム反戦運動/全共闘運動が下火に向かい始めた頃だった。とはいえ、まだ大学・高校でヘルメットを被って「戦う」ってムードがあった頃。
同じ年に高校に入学したなかにもブンド戦旗派で一年ダブって入学し直したやつがいたし、同じ年のその高校の入試には麹町中学校で全中闘の活動のことを内申書にかかれて、軒並み高校入試を落とされた保坂展人(現世田谷区長)もいた(入試で落とされてのちに「内申書裁判」になる)。
同級生のなかには、おなじ学校の戦旗派にさそわれ三里塚第二次執行阻止闘争に参加して、畦道から田んぼにおちてパクられたやつもいた。
一年生を中心に10人ちょっとで「全闘委」を作って黒ヘルをつくったりした。
そんな時代だった。
オヤジが共産党員だったこともあって、中学生のころには左翼を気取ってたし。

72年になると、2月に連合赤軍のあさま山荘事件。
立て籠もった5人のなかの高校生兄弟の下がちょうどおなじ歳、でなんだか自分が「遅れた」ような気分になった。
夏になると学校に比較的近い相模原で、相模原闘争=米軍戦車輸送阻止闘争(鴻上尚史の『アカシヤの雨が降る時』のネタのひとつでもある)があって、相模補給廠の正門前に高校メンバーでテントをはって、夏休み中泊まり込みしてた。
現地にきていた高校生たちのグループ=全都高校生相模原闘争連絡会議(町田・忠生・新宿・東大付属などなど)とも仲良くなったり、ジモトの寿司屋から閉店後のすし飯の残りを差入をしてもらったり、駅前でカンパをいっぱいもらったり、と闘争気分を満喫した。
そしたらなんと、73年3月に、高校から退学勧奨があって中退。
友達がいた(昼間部に)こともあって定時制の4年に転校、そこの友達に公務員の試験のことを聞いて、労働者になって左翼続けようと思って地方公務員になった。
公務員では仕事より組合運動・青年部運動ばっかりやってた。
でもしっかり飲んだり遊んだりしてたケドね。

公務員で10年程過ごしてたけど、その左翼運動ってことでは、ほんとに社会主義・共産主義でいいんだろうかって疑問が少しずつ大きくなっていった。
最終的に100人を超える死者を出す内ゲバ、高校生のときにあった連合赤軍の仲間殺しなんかは、ソビエトのスターリンの大虐殺や、中国での文化大革命という名の大虐殺とおなじ土俵のものに思わざるえなかった。
新左翼はスターリン(の虐殺・粛清)への批判から始まったはずで、それを克服できない既成左翼=共産党を強く批判したはずなのに、その批判は「世界革命を裏切って一国社会主義革命に逃げ出した」のがいけない、といった批判だったけど、どう考えたって、スターリン批判しても、内ゲバ・虐殺・粛清の論理を超えられるとはおもえなかった。
いまだからストレートにいえば社会主義・共産主義の論理のなかに必然的に内ゲバ・虐殺・粛清が内包しているとおもった。プロレタリア独裁という論理は、ブルジョアジーにたいしてプロレタリアが「独裁」して押さえつけるんだ、って論理だと思うんだけど、でもそれを、誰が、どういう基準で、どうやって決定するのか、明確な論理がないんだと思った。
なんで30歳で左翼を一切やめてた。公務員もやめた。
それからは、仕事をして、最終的にポット出版にいきついた。

高校生から二十代の「左翼」な気分や現場は、本当に面白かったといまでも思うし、そんなことをやったことに後悔はしていない。
そこで考えることや、いろんなことも「学んだ」と思ってる。
会議の運営の方法も、教えてもらったことも役立ってるけど、おかしいなと思って、どうやるのがいいのか?とかもいっぱい考えたのは、今も役に立ってる。
今も時々言うギャク。
「お知らせ」なんかのなんらかの「メディア」の大切さは、僕の中ではレーニンの「何なす(何をなすべきか)」の「全国を貫く政治新聞とその配布網の確立」ってのがどうしても結びついちゃう。

左翼運動をしたことを後悔はしてないし楽したかったと思うけど、それは失敗だったとも思う。
圧倒的に考えが足りてなかった、社会のありかたもただ正しい/正しくないとしか考えてなかった。いろんな人がいる状態で、なにをどうするのかという考えはまったく浅かった。
若造の社会への反発=自分のダメさのいいわけ。
ただ、そうした社会のムードがあって、そのなかでどんなことを考えていたのかというのは、記録として残しておきたいと思っていたんで、この映画の製作に加わることにした。

内ゲバに関しては左翼をやめた以降もいろいろ考えてきたつもりだけど、あんまり考えが進まなかったんで、この映画をとおして、もう一度考え直したり、友達と議論してみたかった。
そんなかんじで映画製作に参加した。
結果、それなりに、左翼や内ゲバのことなんかも自分で整理できたつもりだ。
なので、この映画づくりは、僕にとってとても大きなものをもたらしてくれたと思う(経済的には損失になりそうな予感がしてるけどw)。

ということでこの『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』がついに完成。
2024年5月25日(土) 東京渋谷 ユーロスペースで公開される。

ポット出版は映画『彼は早稲田で死んだ』の製作委員会に参加しました

昨年末に、樋田 毅さんによる『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』が、文藝春秋社から出版された。
この本は、第53回大宅壮一ノンフィクション賞を2022年5月12日に受賞。
今からちょうど50年前の11月に起こった、早稲田大学での川口大三郎さんが内ゲバでリンチの上に殺された事件を追ったノンフィクションだ。川口さんは当時2年生。

当時早稲田大学のいくつもの自治会の多数派だった革マル派が、対立党派の中核派の「スパイ」だとして、川口さんを捕まえて起こった事件だった。

著者の樋田さんは、一年後輩の1年生でおなじ文学部。
革マル派による、自治会支配が暴力的に行われていたという中でおこったこの事件に対して、樋田さんをはじめ、他の党派・非党派の学生運動活動家や、ノンポリの学生までもが「革マル追放」の運動を起こした。樋田さん自身「再建自治会(革マル派が主導権を握る自治会に替わって学生の再選挙などをとおして新たな自治会をつくろうとしたもの)」の委員長に選出されるほどに、この活動に取り組んだが、革マル派に襲われて骨折などの重傷をおわされて、最終的にはこの運動は「敗れ」る。
のちに樋田さんは、朝日新聞の記者になり、定年退職後、この本を執筆。

「革マル追放」をともに目指した仲間(樋田さん同じように非暴力の運動をめざした仲間、武力で革マル派に対抗しようという人まで)や、川口くんを殺した側の当時の革マル派の活動家にもインタビューをして、このノンフィクションを書いた。

一方、『三里塚に生きる』『三里塚のイカロス』『彼が死んだあとで』という、半世紀後からみた新左翼運動のドキュメンタリー映画を作った代島治彦さん。

この二人の出会いから、新左翼運動の<負>の内ゲバの、そのまた一つのエポックな事件だった川口さん事件を中心にした映画製作が始まった。

僕は、1971年に高校入学。69年東大安田講堂事件あたりから後退期はいっていった、当時の全共闘運動や新左翼運動に「遅れて」ヘルメットを被りはじめた。
72年の川口さん事件当時の早稲田大学にもでかけていったことがあった。
その後、20代を新左翼的な労働組合運動・労働運動で過ごしたけれど、スターリン主義(運動や国家権力の独裁化)はマルクス主義や社会主義・共産主義では克服することができない、と思うようになって自称「左翼」を完全にやめることにして転職もした。
しかし、この時代に自分が考えていた「理想(=正義)」とは何だったのか、どう間違えていたのかを、自分なりに考え続けてきたつもりだし、少なくとも「何があったのか」という記録や証言は残しておきたいと思い続けていた。

今となっては「正義」というまとまったワンセットになったものはなく、より良いと思う選択を、精一杯、人々が積み重ねて行く以外に、より良い社会を作る道はない、としか言いようがないと思っている。
特に、たまたま自分が出会ったにすぎない思想を「正義」と思い込んで、それに同調しない人を「変革」するって思うことに誤りの根本があって、そこから暴力の正当化がはじまったと考えいる。
また、自分たちが間違うのは当然で、間違わないようにするのではなくて、間違ったら修正できること、誤ってもそれをみずから認めることのほうがとても必要だとも思っている。

去年、代島治彦監督の『彼が死んだあとで』を映画館で見た。
監督の前作の『三里塚のイカロス』も見ていて、あの時代をくぐった人たちが、今あの時代を語っておくこと、それを記録しておくことの大切さをつよく感じて、同世代(高校生のときに新左翼の運動にハマった)の同じような新左翼運動の端っこで「活動」していた友人たちと、代島監督を招いて「合評会」という小さな集まりをひらいて、少しばかり感想を話し合った。
この縁から、今回、代島監督のスコブル工房とポット出版で製作委員会を作って、川口さん事件の映画化をすることになった。

現在、撮影はすすみ、映画中劇(鴻上尚史さんの作・演出による短い劇)の製作準備にとりんでいる。
そして、最大の課題の資金集めが待っている。

新左翼運動を問う「三部作」をつくった代島治彦監督、
大宅壮一ノンフィクション賞受賞の樋口毅さん、
演劇界のもはや重鎮とも言える鴻上尚史さん、
大友良英さんという、フリージャズ、「あまちゃん」のテーマソング作曲者
新左翼運動の時代背景の助言者として池上彰さん
という豪華なメンバーと一緒に、この映画製作の一翼を担えるなんて、ポット出版にとってはとても嬉しい企画になった。

みなさんのご協力を、おねがいします。
映画『彼は早稲田で死んだ』製作委員会のサイトぜひみてください。

ポット出版の[出版流通]その4(番外)・本屋大賞は業界最高の改革事例だと思う

ポット出版の事務所は、版元ドットコムという業界団体の事務所と共有してる。ポット出版(株式会社スタジオ・ポット)の業務縮小以降、事務所にいるスタッフは版元ドットコムの事務局スタッフのほうが圧倒的に(笑)多いんだけどね。
版元ドットコム事務局には、楽天ブックネットワーク(楽天BN・旧大阪屋)という取次に30年以上働いてきて「業界の著名人」の、鎌垣さんが今年の2月から、週に一度のスタッフとして働いてくれてる。
その鎌垣さんと、今日おしゃべりをして「本屋大賞は、出版業界における近年最高のイノベーションだった」という話をされた。
じつは、ボクもそう思ってたんです(ホントですよwww)。
そのネタ書いてもいいかって無理強いしたんで、少し書きます。

出版業界は中小零細の書店・出版社の数がものすごく多いので、ついつい愚痴がでるのかもしれない。
どこの業界もおんなじかもしれないし。

例えば、中小零細出版社からは、取次の正味が安くて差別されている、とか、大手出版社の声はきいて中小零細の声はきかない、とかね。
書店からは、人気のある新刊は、紀伊國屋書店やジュンクなどの大きな本屋にはいっぱい積まれているけど、街の小さな本屋にはとどかない、とか。
飲み屋で一緒にいると良くそんな愚痴がでてたんですよ、その昔は。

芥川賞・直木賞についての、本屋の愚痴は、
「大々的にニュースになって、直後から本屋に買いに来る客がいても、発表までどの本が受賞するのか本屋にしらされないから、事前に注文して並べておくこともできない」、だから、発表のときには本屋に並べられるように我々には事前に教えて、注文にも応じろ、ってな愚痴ね。

愚痴だ、って決めつけてるのは、そんなことを愚直に改善しようという粘りのある交渉や行動があったって話を聞いたことがないから。

そこに登場したのが、本屋大賞、だと思うんです。
以下、すべて又聞き情報からの意見ですけど、本屋大賞は
・大賞が決まったら、公表まえに出版社と交渉して、増刷などの対応を依頼して、公表時には本屋に並べられるようにした
・これを大きな本屋などの取組ではなく、書店員の個々人の参加や運営ではじめた
という。

このことは、
芥川賞・直木賞の[公表前には誰にも(本屋にも)もらさない=結果公表時には本屋にその本が(潤沢に)ない]という状況にたいして、
本屋大賞という、自分たちで運営するあたらしい「賞」をつくることで、見事に改善した、というように見えるんです。

悪いことを告発し、それに抗議・糾弾することで、現状の問題(悪いこと)の改善を、(だれかに)迫るというスタイルから、
悪いことをなくすために(減らすために、あるいは悪くないことをつくりだすために)責任やマイナスの可能性を引き受けて、「良いこと」をつくりだす。
本屋大賞によって、公表されたときには、本屋にもその本が並んでいて、売りのがしも減らせるし、お客の要望にも答えることができる。

近年、出版業界で最高に成功した改革だと思うんですよ。
これからもこの本屋大賞の改革をなんか一つでも真似したいと思う、今日このごろです。

ポット出版の[出版流通]その3・著者が自著の告知にアマゾンのリンクをはること

著者が、ツイッターやフェイスブックなどで、自著の告知をするときに、よくアマゾンのリンクがはられているのを見ることがあります。
僕は、著者のSNSでのアマゾンへのリンクに、強い違和感があります。

それは、全国の書店員がそれをみると、嫌な気分になるんじゃないかと思うからです。

アマゾンには書店としての勢いが感じられ、リアル書店は不景気な話ばかりがながれているような状況がつづいてます。
そうしたときに、本の書き手=著者までも、「アマゾンで買って」と言ってるように、リンクでアマゾンに誘導してるんです。
僕が書店で働いてるとしたら、なにか読んで面白かった本をSNSをで紹介するときには、とてもじゃないけどアマゾンにリンクする気はおきません。
自分のお店で買ってほしいからです。
アマゾンに誘導している著者のツイートを、書店員はリツイートしにくいんじゃないかな?

そんなせこいことばかりを書店員が考えているとはおもわないけど、僕はセコイ!

「どこでもいいから、自著を買ってください」と言ってくれないのか。

前回の「ポット出版の[出版流通]その2(番外)・版元ドットコムMLに投稿したこと」に書きましたけど、本の7〜8割はアマゾン以外の本屋が売ってくれてるんです。

ではなぜ、著者は、ついアマゾンにリンクをはってしまうのか?
それは、書影がついて、それなりの内容紹介とかもある情報を、網羅的にネット上に公開していて、すぐ購入に導くサイトというと、アマゾンだと発想してしまうほどに、アマゾンが書誌譲歩を一般に公開してきたからです。なので、アマゾンは「エライ!」のです。

でも今は、アマゾン以外にも、そうした書誌情報が公開されているサイトはボチボチあります。
アマゾン以外のサイトは、近刊に少し弱いところがあったりしますけど。

なので著者のみなさん。
著者という「すごい立場で(SNSで著者をフォローしているのは、その人の書くものが好きな人だったりします)」告知するなら、ぜひ、
版元ドットコムを使いましょう(笑)。
版元ドットコムは、
・日本で発行されるほぼすべての本を(会員社の本だけでなく)
・書影、内容紹介、目次など濃い情報で(アマゾンからは目次情報がなくなってる)
・書店員が版元に注文するための情報もできる限り収集して
・主要なネット書店・チェーン店へのリンクも
つけて発信してるんです。お試しにポット出版の「ふたりのパパとヴィオレット」という本のリンクです。

『なかったことにしたくない 〜電子書籍をさがすなら hon.jpの5122日』を読んだ

『なかったことにしたくない 〜電子書籍をさがすなら hon.jpの5122日』
ボイジャーから電子書籍とプリント・オン・デマンド(POD)で発売された『なかったことにしたくない 〜電子書籍をさがすなら hon.jpの5122日』を、浅間の山の小屋で、読んだ。
僕も出てくるんで、発売された当初にPODの本を寄贈してもらっていたけど、これまで読んでなかった、5月に発売されてたのに。
最近は、目が悪くなって電子書籍をiPhoneで文字を大きめにして読むので、紙の本じゃな、というのと、「なかったことにしたくない」
っていう「情緒的」なタイトルにひいたからだと思う。
でも、内容は、hon.jpという電子書籍検索サイト事業の記録なんで、電子書籍で買い直しておいた。

8月は、浅間の山で休暇兼リモートワークをすることにした。ちょうど小説を読み終わって、そろそろ読むかってタイミング。
読み始めたら一気に読んでしまった。
落合さんは(僕と違って)文章うまいな、事業や会社の立ち上げの話や、落合さんと一緒にやったこと、その関わりの時の落合さんの「受け止め」方や、気持ちなども語られていたからだし、そもそも電子書籍の日本における創世記の大切なポジションを担っていたhon.jpの成り立ちや行末が、リアルで面白かったからだと思う。

「〜理詰めで語調を強めていく沢辺に返す言葉をなくしていった。最後には怒鳴るような体になった沢辺を、準備会のメンバーが諌めて〜」なんていう恥ずかしい僕の過去を落合さんに「目撃」されていてしっかり書いてもらってた(笑)。確かにあのときは激昂してしまったのだ、あー恥ずかしい(ってそんなことんばかりだけどね)

電子書籍の書誌情報のデータを、落合さんたちが「三層」にしたこと、その理由とか、もっと議論しておきたかったな。

電子書籍の書誌情報整備に、いまも一番必要なのは、共通の番号だと思っている。
版元ドットコムで電子書籍書誌情報の登録をつい最近やっと実現したんだけど、この共通の番号(とその体系、例えば紙の本と電子書籍の同定をどうするかなどを織り込んだもの)の不在が、相変わらず厄介で、ここは電子書店も含めて共通化しないと将来に問題をのこしてしまう。
そんなことも、改めれおもいだした。

出版や電子書籍に関わりのある人、興味のある人は読んでおくといい本だ。
でも、そういう読者対象は少ないので、ボイジャーの電子書籍版+PODでの発売という方式がなかったら、多分まとめられなかった一冊だと思う。
こうした記録は、出版本来の役割として重要な役割の一つ。電子書籍で、あるいは紙の本が国会図書館などで保存されて、後の検証の材料となるからだ。
落合さんでなければ書けなかったもの、まとめることができなかったもの。そうしたものをまとめた落合さんに、心から拍手。

読んでみようという人は、上のほうのタイトルのリンクからたどって行くと、楽天ブックスやhontoやアマゾンなどにいけるbooks.or.jpの画面になる。
ボイジャーの「理想書店」はこちら

最後に、注文をつけておこう(笑)。
ボイジャー発行のこの本は、版元ドットコムサイトでは検索しても出てこない。版元ドットコムの会員になっているにもかかわらず(笑)。
JPRO(出版情報登録センター)が公開している、books.or.jpには登録されているから、版元ドットコム会員社のボイジャーは、版元ドットコムシステム経由ではなく、JPROに直接登録しているのだろう。版元ドットコムシステムを利用してくれればいいのに(笑)。
おまけに書影はbooks.or.jpには出てこない。
楽天ブックスでは、紙の本も電子書籍も発売されているけど、紙の本には書影がなく、値段も2,200円のはずなのに1,100円で、「注文できない商品」になっちゃってる。
Hontoでも、楽天ブックスと同様。
アマゾンは、電子書籍は発売されている。紙の本は、オンデマンドコーナで販売。
ボイジャーは、自社の電子書籍販売サイトでの販売からはじめて、その他の電子書店からの販売はフォローしているようだけど、紙の本(POD印刷ではあるけど)の流通は良くないな。POD印刷であっても、活版・オフセットのような印刷方式のちがいしかないんだから、PODでもなんでも関係なく紙の本として書店・ネット書店流通を整備するのがいいんじゃないか。

あ~あ、またおせっかい虫がうづいてしまった、よ。

ポット出版の[出版流通]その2(番外)・版元ドットコムMLに投稿したこと

版元ドットコムの会員と会友のMLに、会員社からの書き込みがあった。
JRC扱いの版元の新刊の書誌情報(すら)、アマゾンに表示されないんだけど、
なにか情報はないか、という質問だった、何社もの会員社が、熱心に返信した。
そのいくつもやり取りを読んでいてちょっと思うことがあったんので
MLに投稿した。
版元をはじめ、取次の人や、書店の人にも読んでもらえたらうれしいので、
この「ポットの日誌」にも公開することにした。
投稿は2021年7月30日(金)。

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MLに書き込んだみなさま

この件に関する直接的な情報ではないですけど、
ちょっと気になったことを書いておきます。

●情報の流れと、物の流れ(本の商流)について
今回のことを考えるにあたって、
◯情報流
・書誌・書影などの情報
・在庫の情報(出版VANの在庫情報)
◯商流(在庫情報/物体の移動/伝票などの記録/支払いなど)
どのような取引経路で仕入れることができるのか?
そして、その仕入れは「信用」できるのかということです。
ここはEDI化がすすんでいて、ココも出版VANが使われています。
本屋からの受注・それへの出版社の出庫の情報を伝え合うということです

ということを分けて・整理してみるのがよいと思います

版元ドットコムが作っているシステムは、
情報流(のうち書誌・書影情報と一部在庫情報を補完)が中心です。
版元ドットコム会員社で、かつJPROを利用している会員社の書誌・書影情報の流 れは、
版元ドットコム→JPROの情報流をつかっていています。
この書誌情報をキャッチできないのは、出版業界では「おミソ」扱いだと思うほど、
太い流れになっています。

情報流のもう一つの在庫情報の太い流れは、
出版VAN(新出版ネットワークというのが現在の正式名称のはず)という流れ・ システムのなります。
出版VANで、在庫情報(在庫あり/品切れ重版未定など)を流す。
これが、出版業界では、太い流れであちこちで活用されます。
逆に言えば、出版VANの流れにのらないと、出版社の在庫の有無をつかめないこ とが多くあります。
今回の、JRCは出版VANの流れに乗っていないはずなので、
「アマゾンがJRC経由の出版社の在庫情報がつかみにくい」というも一つの理由 でしょう。

出版社に在庫があるかどうかの情報が、EDIで対応できないと、
アマゾンとしては扱いづらい。
読者に販売しても、入手できなかった場合に、
読者に「ゴメン」と連絡しなければならないからだとも、言える。

もう一つのの商流です。
出版業界の太いながれは、
やはり版元→トーハン・日販・楽天BNの取次→本屋(ネット書店もふくむ)です。
書誌情報があり、在庫情報が自動的に流れ、取次から仕入れられる本は、
本屋が安心して注文できます。

ちなみに、横道ですけど、この取次を中心にした商流の際の、本屋の受発注は、 現在3つの方法があります
・出版VAN のEDI交換による発注(7〜8割)
・本屋→取次→出版社への紙の短冊での発注(1割弱)
・本屋・取次→出版社へのFAX・電話などの発注(1〜2割前後)
()内はポット出版(取次で流通)への注文の形態別割合です

トーハン・日販・楽天BNが新規出版社との契約に抑制的です(その理由は脇にお いておいて)。
そのため、古くは地方小出版流通、星雲社、などによる補完の努力がなされてき ました。
トランスビューが直取引を始めました(2000年をちょっと過ぎたあたりだったと)。
そして、トランスビューが他の新規設立出版社の本の流通を、
自社商流に相乗りさせる業務を提供しました。
それがキッカケのひとつになって、
新規設立出版社の流通に、鍬谷書店・八木書店・JRCが門戸を開いてきた。
これによって、取次契約が難しかった版元の流通がとてもやりやすくなった、と いう経過を経ます。

しかし一方、こうした取次流通を補完する流通は、取次流通という太い流れに完 全に乗り切れていません。
今回のJRCも、そうした「乗り切れていない」ところを、様々な工夫と努力で 「補完」していますが、
どうしても「補完」しきれないのが現状だと思います。

このことが今回のことにつながった、というのが基本的な構造なのではないかと 思います。

書誌情報・在庫情報・商流(の確実性)の3つに、少しでもモレがあると、うま く本を売ってもらえない
ということが起きるというのが僕の考えです。

◯情報流
・書誌・書影などの情報
・在庫の情報(出版VANの在庫情報)
◯商流
を整理して考えて見る必要があると思います。
今回の例は、情報流の書誌は流れる状態をつくれたけど、
在庫情報・商流が、太い流れに乗れていなかったのでモレがおこった、と思います。

●アマゾンをどのような状態にしたいのか

今回の問題は
①書誌・書影を表示させたい
②注文を可能にさせたい
③24時間発送にしたい(在庫ステータスを良くしたい)
とわけて考えることができると思います
このとき、アマゾン以外のネット書店も視野にいれるほうがいいと思います。
アマゾンは連絡つながらないけど、楽天なら◯◯ができる、とかがあるからです。
また、意識的に、表示状態のいいネット書店に、
ネット・SNSを使って直接読者に告知し誘導することが可能だからです。
これを表にすると、以下になるかと

       アマゾン 楽天BOOKS honto 紀伊国屋 などなど
――――――――――――――――――――――――――――――
①書誌の表示
――――――――――――――――――――――――――――――
②注文可能にする
――――――――――――――――――――――――――――――
③24時間発送にする
――――――――――――――――――――――――――――――

①書誌・書影を表示させたい
これに必要なのは、書誌情報が届いている/確実な入荷/その本を売りたいとい う書店の意思
の3つだと思います。
版元ドットコム→JPROの、書誌情報のながれは、
ほぼ間違いなく、ネット書店と取次と本屋などに届きます。
情報は届いている、ある、としても、確実な入荷/その本を売りたいという書店 の意思
がなければ、そもそも表示させることすらされない場合があります。
自費出版で本をつくり、配布を個人でする場合は、主に確実な入荷がわからないので
多分販売対象にならないでしょう。多くの本屋において。
JRCなどの流通は、そうならないためにあれこれの工夫・努力をして、
なんとか補完しようとしているのです。

②受注可能にする
はまさに、確実な入荷/その本を売りたいという書店の意思、が必要です。
そのために版元のできることは、確実な入荷、という状態をつくるようにするこ と以外にありません。
また遠回りですけど、売りたいと思わせる本をつくること(むずかしくはない) です。

③24時間発送にする
24時間発送の表示になるのは、ネット書店が、自社の倉庫に在庫を持つものだけ です。
アマゾン以外もほぼ同じですし、本屋の棚におさまっている状態とおなじです。
すると、仕入れて24時間表示にするかしないかは、書店の意思=仕入れる意思、 によることになります。
ついでに書くと、トーハン・日販・楽天BNの倉庫に在庫があると、1〜3日表示が 多いようです。
これも、取次が在庫するかどうかを決めることができるものなので、その意思に よります。

だから、
版元ドットコムでは、hontoと交渉して、版元の意思・判断で、honto倉庫に在庫 できるスペースを
1,000冊分買って、会員社に在庫スペースを提供しています。
これは、
・版元の意思で、24hステータスにできる
・hontoには在庫があるので24hで届きますよ、とSNSで宣伝・誘導できる
・アマゾンは交渉できないけど、hontoには版元ドットコムとの交渉の窓口がある。
 もちろん、今後、他のネット書店にも広げることができないか考えています。

なのでアマゾンの在庫状態を改善することと同時に、
ネット上で、他のネット書店に誘導して、アマゾン在庫の弱点を補う、ということも
考えの一部にいれてもらいたいと思います。

●販売店が店になにを並べて売るかは、販売店の意思(権限)

版元はメーカーです。書店・ネット書店は販売店(小売店)
小売店がどんな商品を仕入れて並べるかは、小売店の意思(権限)だと思います。
だから、「書店営業」というのがあって、「うち(メーカー)の本を仕入れてく ださいよ」
という働きかけがある。
仕入れるということは(返品もあるけど一旦は)書店が「買う」ことだからでも あります。
アマゾンも小売店です。ジュンク堂も、街の本屋も。
だから基本的に、アマゾンサイトに、何をどう表示させるかは、
小売店であるアマゾンの意思になるのだと思います。

版元はなにができるのか、すべきかは
書誌情報が届いている/確実に入荷できるというサインを送ること/並べたくな る本をつくる、です。

ですから、JRCは、アマゾンのベンダーセントラル契約して、情報ばかりか、
JRCの商流で出庫できる状態ですよ、とサインを送っているだと思います。
(JRCのベンダーセントラル契約があるのか、どうなっているのかは今回調べて ません)

確実に入荷できる条件とはどういうものか、というのは、
それぞれの会員社の商流形態によって、可能なこと不可能なこと、
また経費をどこまで出すのか、によってさまざまです。
なので、おおきな記述になるので、今回は割愛させてもらいます。
版元ドットコムの「活用入門」基本編・営業編も、一つの回答です。
直球でそう説明するものでもありませんが、
「活用入門」で説明していることは、確実に入荷できる条件
をどうつくるかを目指しているともいえます。
それぞれの会員社の条件を踏まえて。

●アマゾンについて
最後にアマゾンについて書きます。
アマゾンの出版物売上は、出版業界売上全体の1兆数千万のうちの20〜30%と思 われます。
紀伊国屋全店、丸善ジュンク堂全店で、3%とか5%とか、数%のはず。
確かに全体の2割は巨大です。でも逆に言えば、本の70%〜80%は、アマゾン以外の
書店店頭、他のネット書店、などなどで売れています。
アマゾンは目立つけど、出版という商売全体をかんがえると、むしろ大切にすべきは
70%〜80%を売る、それ以外の販売チャンネル、小売店などだと思っています。
だから、それ以外のチャンネルにもっと注目したほうがいい。
では、それ以外のチャンネルに向けてなにができるか。
・読者には、だした本の存在とその内容を認識してもらうこと
→書誌情報・書影を、早く・濃い情報で、業界とネット上に公開すること
・それ以外のチャンネルの多くを占める本屋などに、
書誌・書影/在庫があるのか(注文できるか)/どのような商流で入手可能か
を知らしめること、これがほとんど全てです。

最近の版元ドットコムサイトの改修で、一冊一冊の本紹介ページに「書店員向け 情報」というのを
掲載するようにしました。
これは、8割売上を叩き出す書店員に、
在庫/どうゆう商流なのか、また返品の考え方を提供しようという、こころみです。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910553009

このページは最近創業して入会した人々舎の最初の一冊目の本の紹介ページです。
情報をきちんと流したので、近刊の予約がアマゾンで始まっています。
でも、hontoでは、書誌情報は掲載されているけど、注文は受け付けていません。
これは、太い流れに乗れていなかったモレです。
新刊が完成して現物があれば、先に説明した、honto倉庫に在庫できるスペース
に入庫して、24hにすることができます。
予約はとってもらえていませんが、発売されたら確実に在庫表示を良くできる確 実な方法が
一つは、あるのです。

このぺーじにある「書店員向け情報」はこのようになっています。
> 取引取次: 鍬谷
> 直接取引: あり
とあるので、書店員は、鍬谷から取次同士の「仲間取引」なんだな、、、、とわ かります。

> 返品の考え方: 代表・樋口了解のもと「返品了解書」を同封の上、各取次さ んへお戻しください。
とあるので、万一売れ残ったら返品できるかという出版社の姿勢がわかります
(本当は、取次の姿勢・考えの問題でもあるのでかんたんに返品できないことも
書店員は想像したりするはずです、訳知りならばw)

> 出版社への相談
> 店頭での販促・拡材・イベントのご相談がありましたらお気軽にご連絡くだ さい。
で、個別の取り組みの際に出版社がたよりになるのかどうかわかります。

近刊なのでまだ在庫はないはずですから、在庫表示はありません。
版元ドットコムシステムから、在庫情報を「あり」にすれば、
ここに、在庫 あり、と表示されます。
(ですから特に出版VANをつかってない会員社はこのステータスのメンテナンス は大事です)

これらは、版元ドットコムシステムの「会員社情報」メニューが各社でいれたも のを表示しています。
つまり、さまざまな版元の「商流はどうなのか」という小売店の不安・疑問に応 えて、
注文の敷居を下げようというこころみです。
まだ「会員社情報」に入力していない会員社が多いのですが、どうか書き込んで ください。

そもそも、書誌・書影/在庫があるのか(注文できるか)/どのような商流で入 手可能か
を知らしめる方法には、書店FAXがあり(書店員の認知と商流の紹介)、
書店営業があり(本屋の店頭は最高のディスプレイ)、
書評掲載依頼(読者・書店の認知)などなどがあります。
個人的には小零細出版社は、書店営業などせずに、情報流と商流を整え、
注文があれば確実に書店にとどける体制づくりに注力するのがいいと思ってます。
書店営業の時間は、本をつくることにそそぐ。

この投稿は、まだまだ食い足りないと思います。
意見・異論や疑問があれば返信ください。
(返信でも構いませんし、直接メール電話でも)

また、この僕のメールは、
ポット出版の「ポットの日誌」にコピペして公開します。
版元ドットコム会員社以外の版元にも、同様な疑問・問題意識があると思うので。
公開したら、MLでもお知らせします。

沢辺

ポット出版の[出版流通]その1・ポット出版の本はどのルートで売れてるのか?

2019-12-05のこの日誌で、「株式会社スタジオポットの事業縮小のおしらせ」を書いてから、1年半、日誌をかいてなかった。
現在、株式会社スタジオ・ポット(ポット出版は屋号)の事業を縮小して、出版の仕事だけになっている。
編集やデザインの請負仕事はしなくなった。

ところで、ヒマもできた(笑)んで、これまで30数年やってきた、ポット出版の仕事でやってきたことを少し書いていこうと思った。
出版の仕事といっても、本を作る仕事ではなく、それを売る仕事、つまり[出版流通]についてだ。
ポット出版で、初めて本をだしたのが1989年。このとき「こういう本をつくろう、だそう」というつくり手としての気持ちだけで出発。
本を作ることはなんとかできたんだけど(印刷とかデザインのこととか好きだったしね)、[出版流通]のことはホントに手探りだった。
何年も何年も。
新泉社の小汀さんに「TRCで図書館で売ってもらうように交渉しなよ。太洋社の4階に行けばいい」って言われた。
TRCというのが図書館流通センターという、図書館に本を売る本屋だってこと、太洋社っては取次だってことはわかったんだけど、
TRCと太洋社がどういう関係で、太洋社のどこに行けばいいのか、TRCの本の仕入れ先はどこで、それと太洋社はどういう関係なのか、全部ナゾ。ほんとは太洋社の◯◯課の☓☓さんのとこに行け、と固有名詞を教えてもらいたかったんだけど、わかってる顔をしたくて、
そのまんま太洋社に一人で突撃することになった。
そんなことを繰り返してきて[出版流通]のことがそれなりに理解できてたつもり、なんで、少し整理しておこう、
というのがこの話を書く動機だ。

さて今回、ポット出版の本の出荷先を金額ベースで集計してみた。それが以下。

●紙=80%
 取次=49%
 トラ=11%
 著者=8%
 e託=5%
 書店直=3%
 生協=3%
 個人=1%
 版ド=1%
 子ども=1%
 国会=0%
●電子=20%
 取次=19%
 書店=1%

紙の本と電子書籍の売上金額で大別してある。
ポット出版の売上は、紙の本80%で、電子書籍が20%売れているということ。

紙の本が、どのルートでうれているのかが「取次=49%」以下のところ。

「トラ」というのは、トランスビューという書店と直接取り引きをしている出版社に扱ってもらって、
書店などに流通してもらっているものということ。
ポット出版は、トーハン・日販といった取次をルートとして書店に本を届けてもらっている。
それにたいして、ポット出版プラスというブランドをつくって、トランスビューの書店への流通にあいのりさせてもらっている。
2016年8月からで、現在は、新刊はほとんどポット出版プラス・トランスビューあつかい。
なので、ポット出版の場合の取次=49%というのは、既刊本(何年も前にだした本)の売上ということになる。
逆に、トランスビュー扱いの売上に、新刊の売上が入っているので、その分売上額は多くなる。

著者=8%、の著者は本を書いてくれた人自身が購入してくれたものだ。

e託=5%、のe託というのは、あのアマゾンとポット出版の直接取引のことだ。
アマゾンとの直接取引=e託は、ポット出版プラスのブランドからだしたものをすべて扱ってもらっている。
なので、同じアマゾンへの出荷でも、ポット出版の発行の本は、日販・楽天BN経由で出荷している。

書店直=3%、の書店直というは、ポット出版が本屋と直接取引しているもの。
昔からやっている模索舎タコシェ、という独立系本屋や、田亀源五郎さんのマンガなどをゲイショップで売ってもらってる。

生協=3%、の生協は去年の秋にプチヒットの「タンタンタンゴはパパふたり」を、生協の通販で扱ってくれたんで去年だけの売上

個人=1% 版ド=1% 子ども=1% 国会=0%、の個人は個人に直接うったもの、版ドというのは、業界団体の版元ドットコムのこと。
子ども、は子どもの文化普及協会という、絵本を中心に本屋や雑貨屋やカフェとかにうっている組織で、国会、というのは国立国会図書館に納本したときに、ポット出版に支払われる金額の集計(0%だけどwww)。

●電子=20%に、取次=19% 書店=1%
ポット出版は、新しく本を作ったら、電子書籍を同時につくっている。
電子書籍書店への配信は、電子書籍取次のMBJからしてもらっているのが基本。
でも、10年ほど前に、電子書籍の新刊同時制作発売をはじめたころに、楽天コボ・Apple・Googleには、ポット出版から直接契約をしてみた。この3社は契約できて、アマゾン・キンドルは「取次(MBJなどね)からにしろ」って断られた。
だもんだから、取次=19%というは、MBJからの入金額ということになり、書店=1%というのは、楽天コボ・Apple・Googleからの売上ということになる。

こんなところがポット出版の本の、売れる場所、そのルートということになる。

次回は
ポット出版の[出版流通]その2・ルート別売上をどう見てるのか?、というのを書いてみるつもりでありんす。

株式会社スタジオポットの事業縮小のおしらせ

編集制作とデザインの受託事業を、来年の2020年1月末で終了することにしました。
ポット出版の、本の発行・発売は以降も継続していきます。
ただし、新刊はこれまで以上に絞っていくので、発行点数は減ると思います。
すでに約束しているものは、発行します。
このことで、株式会社スタジオポットは、編集制作/デザイン/出版の三つの事業のうち
出版だけをのこして一つの事業、という体制になります。

編集制作とデザインの受注先のお客さんへは、今年の8月から事業終了の連絡をはじめ、
調整してきました。それらはほぼ終えることができました。
4月から翌年3月までの年度単位で受注していたものがあったため、
年度末までの受注のしごとの終了まで対応する、
その入稿がほぼ終了する1月末での事業縮小としました。

この事業縮小は、そもそも来年3月で64歳になる沢辺の、
いつか来る、その後の株式会社スタジオポットの体制をどうするか? という
スタッフとの一年半まえからの検討の結果、決めたものです。
「沢辺後」の体制維持ができなかったので、事業縮小としました。
大半のスタッフは、2020年1月から、あらたな職場や仕事に向かうことになります。

現在のポットの仕事を始めたり、会社組織にしたりしたころ、
自分が60歳を超えてどうなるか?などと想像する余裕もなかったです。
でも実際に「いつかはフェードアウト」の「いつか」が近づくと、
仕事や事業や会社の整理には、とても時間がかかります。
仕事や事業のほかにも、スタッフのこと、
銀行からの借入、私募債という友人からの借金、株式の整理、などです。
これらのことも、ここ数年間準備を少しづつしてきて、ほぼ最終段階までこれました。

最近、いくつかの小零細出版の社長などと、「いつかはフェードアウト」へむけた
準備や対応の方法など、話をする機会がありました。
取次の人とも、内々に「取次の考え方、対応パターン」なども聞きました。
そうした話のうえで、やはり、出版事業は、発行した本を、
需要のある限り流通させることが必要だと、強く思いました。
流通し続けることのために、出版事業は残すことにしたとも言えます。

編集制作・デザインの受託事業は終了させますが、ポット出版の事業は
ひきつづきつづきます。
また、これまで沢辺がやってきた業界での仕事、地域での仕事なども、
まだまだつづきますので、ひきつづきよろしくおねがいします。

沢辺 均

――――――――――――――――――――
お取引いただいているみなさまへ

いつも、編集・制作、デザインなどの依頼をいただいて、ありがとうございます。
さて、スタジオ・ポットは、2020年3月をもって、編集デザインの事業を終了させていただくことになりました。

長い間、依頼いただいてありがとうございました。

スタジオ・ポットは、これまで編集・制作、デザイン、出版(ポット出版)の三つを柱としてきました。
今回、このうち取材・編集、デザインの事業を終了して、出版業務だけを継続する体制にすることになります。

終了する部門の事業については、終了までの期間に、ポット担当者から個別に連絡・相談して、円滑に対応していきます。

・2020年1月から、新規の受託は終了させていただきます。
・2019年12月までに受託した業務は、引き続き終了まで対応させていただきます
・年度(〜2020年3月)単位で受託させていただいている業務は、引き続き年度の終了まで対応させていただきます
・過去にスタジオ・ポットで制作した制作物のデジタル・データは、必要に応じて連絡していただき、提供します。

みなさまには、お忙しいところにご負担をかけますが、円滑な一部事業終了にお力添えいただくよう、お願いいたします。
担当者からの連絡・相談に、不備などありましたら、沢辺までご連絡ください。

2019年
株式会社スタジオ・ポット
代表取締役 沢辺均

久しぶりに再販制のこと考えた

出版労連(出版社の労働組合の連合組織)が毎年開いている、第46回出版研究集会で、ことしは再販制にかんする分科会をひらくそうだ。
そこで、出版業界のなかで、再販制に批判的な意見も紹介しよう、ということで、事前に取材しにきてくれた。分科会で紹介してくれるようだ。
――――――――――――――――――――
④10/25(金)「わかっているようでわかっていない再販制度」
講師・斎藤健司さん(出版再販研究委員会副委員長/金の星社社長)
→今年はゼロから教えます! 再販制が出版産業を支えてきたことは事実。そして現に再販制のもとで産業が回っていることも事実。しかし一方で、出版労働者のなかにも再販制についての知識が十分でなかったり、乏しい人が少なくないことも現実。ひと目でわかる再販商品と非再販商品の見分け方、など再販制を学び直すチャンス。
――――――――――――――――――――
来てくれたときに、あんまりとっちらかった話になると悪いな、と思って、そもそも再販制必要論はどんな理由を上げているのか調べて、自分の考えを箇条書きにしておいた。

自分の考えの要点は、
●再販制で、出版を「振興」しようなんて、無意味
再販制必要の論拠にあるようなことは、再販制と無関係に実現されてたり、意味がなくなっていたりしている。
返品がほとんどの注文品にてきようされていて(返品条件付き注文って用語まであらわれている)委託・注文という切り分けやルールも崩壊してる
●再販制の議論の前に、すでに課題は山積み
といったところ、だ。

まじめに再販制を取り上げようという、主催者には申し訳ないけど、この企画は無意味じゃないかなー、って思う。

さて、その際につくった、考えてることの要点・コピペした資料を以下に掲載しときます。
――――――――――――――――――――
●ポット出版の現状
・設立・取次契約時に、取次と再販契約を結ぶ。
・2012.2発行『家畜人ヤプー3』から、非再販表示・希望小売価格・¥希望小売価格Eに
・再販契約は解除してないが、全発行本非再販という、立場。
→何も変わってない。取り立ててアピールもしてない。

●再販制への意見
◯再販制議論より先に議論すべきことがあると思う
・流通契約内容
→正味割合(価格の値上げ)、新刊委託制(書店主体の注文)、返品の明確化効率化、など
・出版物輸送問題
→須坂構想、あるいは須坂構想基地の複数化
・出版社業務の効率化
・出版情報の整備
→書誌・書影は8合目、在庫情報に課題
・出版産業の労働組合の再生
→「資本との対決」でも「労使協調」でもなく、経営にも労働者にも責任を持つ労働運動(たとえば、決算書公開運動とか)
などなど

◯そもそも、再販議論そのものが無意味になっていないないか?
・1997年(消費増税も)から、長期デフレ下での、出版物売上低下
・出版産業の大きな変化
(書店の減少、取次の危機、Amazonの占有率増大と版元への影響力、一部コンテンツのネットへのシフト、など)
・委託の拡大(返品条件付き注文)

◯再販制必要論の論拠は意味ないのでは?
・同一価格 →ネット書店でもほぼ実現 再販制のおかげとは思えない
 A書店でもB書店でも同一価格は、必要か?
・委託 →現状の委託の混乱、他商品でも委託制は成り立っているのでは?
・街の本屋の維持 →すでに維持されてない
 本屋に限ったことでなく、小売店のチェーン店化がすすんでる(でも止まってないか)
・低価格の実現 →低価格化はむしろ弊害では? 新書・文庫増加も低価格化

書協 2001.04 の見解から抜粋――――――――――
・全国の読者に多種多様な出版物を同一価格で提供していくために不可欠
・自国の文化水準を維持するために、重要な役割

●書協QA
・なぜ出版物に再販制度が必要なのでしょうか?
出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。
①個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、
②種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、
③新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。
このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。
書店での立ち読み 風景に見られるように、出版物は読者が手に取って見てから購入されることが多いのはご存知のとおりです。
再販制度によって価格が安定しているからこそこう したことが可能になるのです。
・再販制度がなくなればどうなるのでしょうか?
読者の皆さんが不利益を受けることになります。
①本の種類が少なくなり、
②本の内容が偏り、
③価格が高くなり、
④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、
⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。
再販制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。
また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。
・出版物の価格は高いのでしょうか?
出版物の定価は、出版社間の激しい価格競争のため低めに決められています。
その結果、出版物は消費者物価指数で見ると他の商品と比べて値上がりが少なく、1975年を100 として総合で1998年では185ですが、本は128です。

●wikipedia
から抜粋
書籍・雑誌
書籍や雑誌については、販売業務委託契約と、売れ残りの買取り保証付の販売契約が行われている。書籍で再販制度による委託販売制度といった場合は、売れ残りの買取り保証付の販売契約による販売形態をさす。書店は、売れ残りの買取り条件に組み込まれている再販売価格維持契約により、書籍・雑誌を定価で販売しなければならないが、売れ残りの買取り保証により、一定期間が過ぎても商品が売れ残った場合、商品を出版取次に返品することができる。

書店は、返品が保証されることにより、在庫抱え込みリスクが軽減されることで、需要の多くない専門書等でも店頭に並べることができ、世界でも類をみない小部数で多様な書籍が刊行される出版大国となっている。

小学館・講談社等の出版物については責任販売制とともに、再販制度が適用されていない出版物も一部存在する。その他の出版物については基本的に定価で販売されているが、再販制度の弾力的運用を図るため、

期間を区切って非再販本フェアを開催
雑誌の時限再販
雑誌の定期購読者割引
等を行っている事業者もある。

ポイントカードを採用している書店もある。かつて書店組合では「ポイントカードは実質的な値引きであり再販契約違反だ」として反対していたものの、公取委は値引きであるものの消費者利益に資するとして容認している。

電子書籍では、書店側に在庫が発生しないため、売れ残りの買取り保証を前提とした再販売価格維持ができなくなっている。日本出版者協議会は、紙の出版物との価格バランスと収益確保のために、電子書籍にも再販売価格維持契約の適用を求めているが、公正取引委員会は独占禁止法上の原則から違法としている。そのため、電子書籍では出版社側がつけた価格で販売を行うために、出版社が直接販売を行ったり、販売業務委託契約により販売の主体を出版社または出版取次業者とすることで、書店に販売業務を委託して販売したりする販売形態になっていることが多い。

新刊『ランスとロットのさがしもの』という絵本です

ポット出版の新刊です。
性的少数者(いわゆるLGBT)への理解を拡げようという、絵本です。
子どもの読み物として、性的少数者の実存をえがいています。
ゲイカップルが子どもを得ようと努力する話。
内容紹介のページ

ポット出版のLGBT絵本シリーズの、4作目となります。
このシリーズは、尾辻かな子(現在衆議院議員)さんが日本での翻訳出版をポット出版に提案してくれて発行した『タンタンタンタンゴはパパふたり』から始まっています。2008年4月でした。
初刷2,500部は順調に売上て1年後には2刷できたのですが、3刷までに更に5年。しかし、以降は毎年1,000か2,000部で増刷できる、ロングセラーに育ってくれました。また、これ以降の絵本『王さまと王さま』、『くまのトーマスはおんなのこ』と出版してきて、どれも着実に売上ています。

まあ、出版業界全体でのロングセラーとは、一桁/二桁少ないんですけど、ポット出版では、堂々ロングセラーってことになります。

●『タンタンタンゴはパパふたり』の増刷経過
刷 発行日 印刷数 累計
―――――――――――――――
1 2008/04/15 2,500 2,500
2 2009/05/22 1,000 3,500
3 2014/07/08 1,000 4,500
4 2015/10/09 1,000 5,500
5 2016/04/18 1,000 6,500
6 2017/01/20 2,000 8,500
7 2018/04/02 2,000 10,500
8 2019/02/26 2,000 12,500

この『タンタンタンゴはパパふたり』の増刷や、ポット出版の性的少数者関連本発行の経過は、その運動や、社会への理解の深まりとリンクしています。

最初に出した本は2001年6月の『パレード 東京レズビアン&ゲイパレード2000の記録』。パレードが2000年夏に数年ぶりに復活開催されたものの記録集でした。

2007年7月には、尾辻かな子さんがレズビアンとして参議院比例区に立候補したものの2万票代の得票で落選。『タンタンタンゴはパパふたり』はそんな尾辻さんの企画で、落選後の活動模索中のものです。
性的少数者の声が社会に聞こえだした初期の時期で、理解を得るところへの出発点のころかと思います。
そんな状況のなかで売上も足踏みしてた。

2015年11月には渋谷区と世田谷区で同性パートナー制度がつくられます。
性的少数者への理解の拡がりの、おおきな一つの結節点でした。
マスコミで取り上げられることも増えた。
そうした拡がりのなかで、2014年から年に一度は増刷するようになり、2017年からは、増刷部数が倍増(1,000→2,000)です。

書店からの受注電話の印象から言えば、
多くの注文は、書店に注文してくれた人からの「客注」。
そのなかに、図書館、とくに学校図書館からの注文が多い、という印象です。

こんな経過で2001年から始まった、ポット出版の性的少数者をめぐる本。
15年くらいかかって拡がってきたジャンルとなりました。

そして今度の新刊は『ランスとロットのさがしもの』の発行です。
絵本『王さまと王さま』が結婚までのお話、こちらは、結婚後のお話です。
著者も翻訳者も同じチーム。
ぜひ手にとってください。しばらくすると、ためし読みも公開できます。

――――――――――――――――――――
ランスとロットのさがしもの
Lance & Lot zoeken zich rot
発行:ポット出版
リンダ・ハーン 文・絵, アンドレア・ゲルマー 訳, 眞野 豊 訳
希望小売価格:1,500円 + 税 (この商品は非再販商品です)
ISBN978-4-7808-0235-1 C8798
A4変 36ページ /上製
[2019年10月刊行]
内容紹介
騎士のランスとロットは、いつもいっしょに世界中を旅したりして楽しく暮らしていました。でも、二人が暮らすお城に帰ると、そこは誰もいない静かで、空っぽで、寒い場所でした。二人は何かが欠けていると感じます。
そして、何日も考えた末、二人は家族を作る「冒険」に出発したのです。

二人の王子さまが恋して結ばれる『王さまと王さま』の作者が次に作った物語は、二人の父親が子どもに愛情を注ぐ、家族の愛のお話です。

・訳者あとがきより
 オランダの絵本『ランスとロットのさがしもの』(原題:Lance & Lot zoeken zich rot)の日本語版を全ての子どもたちに届けられることをとても嬉しく思います。
 二人の王子さまが恋をして結ばれる物語『王さまと王さま』の次に、リンダさんが作ったこの絵本は、もう一つの愛のお話です。今回の絵本で描かれているのは、家族の愛です。
(中略)
 この絵本が生まれたオランダは、2001年に世界で初めて同性婚が法的に認められた国です。これによって同性同士のカップルとその子ども、いわゆる「レインボーファミリー(にじいろかぞく)」は、法的な親子関係を結ぶ権利が保障されました。そうした家族は、日本ではまだ法的に認められていませんが、すでにこの国に存在し、生活しています。日本で暮らすにじいろかぞくは、お互いのサポートのために市民団体を立ち上げ、東京だけではなく地方でもイベントを開催したり、世界中のレインボーファミリー団体と連携したりしています。にじいろかぞくとその団体に共通しているのは、子どもの幸せを中心にして多様な家族のあり方とその子どもの権利を主張していることです。なぜなら、彼らは愛が家族を作ると知っているからです。

電子書籍の書誌情報

ポット出版は、版元ドットコムという出版社団体のいち員で、役員社としても活動しています。

出版界では、最近、電子書籍情報を、一般に公開もするためにも、収集活動を本格化しました。
その「お知らせ」が出版界で公開されたのですが、
版元ドットコム参加会員社(323社、201908現在)に、補足説明の文書を書きました。

2019年8月1日付でJPO・JPROから「「JPRO電子出版物登録無料キャンペーン!」のお知らせ」が発表されました。
また電子取次のメディアドゥから、取引版元にも、同様のお知らせがメールで送られていると思います。
 →お知らせ 下に全文貼ってあります(下記と同内容です)
 →お知らせ https://jpro2.jpo.or.jp/news/detail?seq=133&kind=0
 →出版情報登録センター(JPRO)の活動・書誌情報の流れは
 https://jpro2.jpo.or.jp/documents/JPROパンフweb用見開き_201904V21.pdf

版元ドットコムは、JPO(日本出版インフラセンター)の会員となり、
出版情報登録センター(JPRO)管理委員会に、組合員の沢辺(ポット出版)を派遣しています。
この電子書籍書誌情報のWGのメンバーにもなっているので、この「お知らせ」についての補足説明をしておきます。

●これまでの電子書籍の書誌情報のながれ
電子書籍の書誌情報のながれは、これまで二つながれがありました。
(紙の本の場合とほぼ同じです)
◯電子書店(アマゾンKindleや楽天コボやhontoなどなど)での販売のための書誌・書影
電子取次(MBJ・メディアドゥなど)に納品する際に、EPUB(電子書籍の本体ですね)+書誌情報+書影を
セットにして納品しています。この書誌情報は、電子取次を経由して、電子書店でサイトでの表示などに使われます。
この書誌情報は、電子取次ごとに必要な項目が違っていて、版元は、電子取次の決めたフォーマットにあわせて、取引先の数だけつくって
それぞれに納品しているわけです。

◯情報として収集・蓄積・(活用?)
・この「取引先の数だけ」つくることを一つにまとめられないか? 
・そもそも電子書籍の書誌情報を網羅的に、業界で収集・蓄積しておけないか?
といったことを目的の一つとして「出版デジタル機構」が出版業界で設立されました。
版元ドットコムもこれに100万円出資して、参加しました。
こうしてつくられたのが「共通書誌情報システム」で、開発・運営は出版デジタル機構がおこなっていました。
(出版デジタル機構は、のちにメディアドゥが買収)
しかし、共通書誌情報システムへの登録しても、相変わらず電子取次などへの書誌情報を含んだ「セット」が必要だったことから、
中途半端な状態のままでした。
また、JPO(日本出版インフラセンター)傘下の、出版情報登録センター(略称JPRO・じぇいぷろ)は、
この共通書誌情報システムから、登録情報の提供をうけて、データの蓄積(だけで未活用でした)をしていました。
共通書誌情報システム経由の、JPROへの登録料金は、新刊一冊について500円(紙の本の登録料は1,000円)。

●「お知らせ」の要点と、これからの書誌・書影情報のながれ
8月1日付の「お知らせ」の要点は
・メディアドゥ(旧出版デジタル機構)は、共通書誌情報システムの運営をやめる
・その後は、直接JPO・JPROが収集・管理する(従来は版元→共通書誌情報システム→JPRO)
・実際の収集は、版元が電子取次(MBJやメディアドゥ)に納品した書誌・書影を、電子取次からJPO・JPROが集める
 そのため、版元は、JPROが電子書籍書誌情報を、取次から集めることに同意して
 また、その際、MBJ経由がいいか、メディアドゥ経由がいいか希望を連絡して
・登録料は、新刊1冊につき、500円→200円に値下げする(紙の本の登録料は1冊1,000円で両方出版すると1,200円になる)
・これまで、共通書誌情報システムに登録していなかった版元も、10月1日〜12月31日までであれば、
 既刊の書誌情報をまとめて登録しても200円が無料で登録できるし、その期間の新刊の登録も無料だ

●版元ドットコム会員版元はどうするのが良いか?
書誌・書影情報の整備・保存は大切です。売る製品の情報があって、はじめてお客が購入できるからです。

 電子書籍をこれまで制作・販売したことがある版元であれば、
・JPROに「これからJPROにも登録」
 あるいは共通書誌DBに登録申し込みをしてある版元なら「ひきつづき登録しますよ」と申し込む
・電子取次(MBJ・メディアドゥ)のどちらから書誌情報を流してもらうかは、どちらを選択しても構わない
 ただ、個人的にはMBJ経由を推奨します。版元ドットコムはこの間MBJと良い協力関係を作れてきたので、
 今後なにかあれば相談して改善などしやすい相手だからです
・申し込み方法は、下記にある「申込み書」をJPO・出版情報登録センターに、各社、メールでおくってください

●具体的な手続きについて
◯電子書籍を過去に発行したことがある版元 で、
・共通書誌情報システムをすでに利用している版元
 →申し込みが必要です。下記にある「申込み書」をJPO・出版情報登録センターに、各社、メールでおくってください
・共通書誌情報システムを利用していない版元
 →今回を機会に、電子書籍のJPROへの登録の申し込みをするのがいいです。
  また、電子取次にある書誌情報を活用できるというメリットもあります。
  下記にある「申込み書」をJPO・出版情報登録センターに、各社、メールでおくってください
◯過去に発行したことがないが、これから発行を計画している版元
 →電子書籍書誌情報の、JPROへの登録をおすすめします。
  下記にある「申込み書」をJPO・出版情報登録センターに、各社、メールでおくってください
◯過去に発行したことがないし、今後の発行もまだ未定の版元
 →今は何もすることはないです
  電子書籍の制作・販売をはじめることにしたら、版元ドットコム事務局に問合せください。
  その時点での対応策についてアドバイスできると思います。

●版元ドットコムシステムでの、電子書籍対応について
現在、電子書籍の書誌情報の登録などができるように、エンジニアが開発中です。
開発中のシステムは、次の通り
・版元ドットコムシステムに、
 紙の本の情報を活用しながら(同じ項目は流用できる) 
 電子書籍情報も登録できるようにます
 版元ドットコムサイトでも表示します (「この本は電子書籍もあります」といった関連を示せるようにする)
・登録された情報をもとに、電子取次(MBJ・メディアドゥ)向けの書誌情報ファイル(納品時に利用できるもの)
 をダウンロードできるようにする
 ダウンロードした書誌情報ファイルは、EPUB(電子書籍本体)と書影とを一緒に、電子取次に納品するファイルとして使えるものにする

以上が補足説明です。
これでも、不明な点があると思います。
不明な点は、このメーリングリストに、質問を投稿してください。
返事をします。
メーリングリストであれば、同じような疑問を持っている方の参考にもなると思います。
ぜひ協力ください。

よろしくおねがいします。
(沢辺均 版元ドットコム組合員/ポット出版)

――――――――――――――――――――
「JPRO電子出版物登録無料キャンペーン!」のお知らせ

2019年8月1

一般社団法人 日本出版インフラセンター(JPO)代表理事 相賀昌

出版情報登録センター(JPRO)管理委員会委員長 柳本重

「JPROへの電子出版物登録方法がより簡単に登録料も安価(一部無料)になりま
す!」

利用社各位

出版情報登録センター(JPRO)は、6月現在、登録が235万点を超え、物流・仕入・
選書・予約・注文で活用される業界に不可欠の情報インフラとなりました。
今後は、電子出版物の登録をさらに進め、紙と電子を合わせた
「日本初の出版物総合データベース」のより一層の充実を目指しています。

この度、業界の公的インフラ(共通書誌情報システム)の運営を引き継いだ
電子取次会社メディアドゥのご協力により、電子出版物の登録方法をより簡便に
できることとなりました。そこで、登録点数を増やして、より強固な総合DBとして
いくために、無料キャンペーンを実施しかつ登録料を値下げすることになりました
ので、ご案内いたします。

■ 登録方法がシンプルになります!
・貴社のご承認がいただければ、貴社がメディアドゥ社に販売委託している
電子出版物の書誌情報のうち登録に必要な項目(コンテンツデータは含みませ
ん)
をJPROに取り込みJPROが登録作業を行います。
・メディアドゥ社とお取引のない出版社様で、主取引がモバイルブック・ジェー
ピー社
の出版社様や、JPROへの直接登録を希望される出版社様は、
JPRO事務局にお申し出ください。

■ 電子取次事業者経由で登録するメリット
・貴社のスタッフの手間を増やさずに自動的に電子出版物の書誌情報が登録さ
れ、
紙の底本情報と紐づけることができます。
・電子取次会社がクリーニングしたデータを取り込むので、正確な書誌情報が
登録できます。
・必要な項目のみが登録されます。
(お取引条件や特定書店向けの情報等は一切登録されません)
・価格変更等の情報修正があった場合も、電子取次会社経由でJPROに反映されま
す。
・従来、共通書誌情報システム経由でJPROに登録していた出版社様も作業の手間
が省けます。
・共通書誌情報システムの利用ができずに登録を見送っていた出版社様も、
電子出版物の書誌情報の登録が簡便にできるようになります。

■ JPROに電子出版物情報を登録するメリット
・電子出版物の出版権(電子出版権)情報の公示が可能になります!
2015年の著作権法改正により、著作権者から電子出版権の設定を受けた出版社

公衆送信を行う権利を専有し、インターネットを用いた無断送信(インター
ネッ
ト上の海賊版)を自ら差し止めることができるようになりました。
JPROに電子出版物を登録すると、電子出版権情報も任意で付与でき、
「正規版」として電子出版権が設定されている場合にはJPRO出版権検索にて
公示することが出来ます。
(JPRO出版権検索:https://jpro2.jpo.or.jp/limit/pubrights/captchainput

・JPROの検索サイト「出版書誌データベース(略称:Pub DB)」
( https://www.books.or.jp/ )に「電子版あり」と表示されます。
読者には紙版が入手困難となっても電子版という選択肢を示すことができま
す。
また著者に対しても電子で出版を継続する出版者として意思表明することに
つながります。

■ 登録無料キャンペーンと登録料の値下げ
→ 電子出版物の登録「無料キャンペーン期間」を設けます。
→ 本年10月1日から12月31日までを制度切り換え期間として、それまでの既刊で
未登録のもの及び期間中に発行の電子出版物は登録無料とします。
→ JPROの新登録料
☆ 現行の登録料は、紙1,000円、電子500円で合計1,500円
☆ 2020年1月1日からの登録料は、紙1,000円、電子200円で合計1,200円
*電子出版物でコミックの「一話もの」等のマイクロコンテンツは
個々に課金せず、当面は紙の本と1対1で紐づけて「1 ISBNで1,200円」と
算定します。


—————————————————————————-

以上を踏まえ、ご承認をいただける場合は以下、必要事項をご記入いただき
このメールにご返信ください。

出版社名:_________________________ ご担当者名:__________________________

メールアドレス:_____________________ 電話番号:__________________________

電子出版物の登録方法を①~③からひとつご選択のうえ番号を記入してください
〔  〕

① メディアドゥを介して登録する
② 出版社ご自身で登録する(メディアドゥとお取引のない場合)
③ その他モバイルブック・ジェーピー等を介して登録する(メディアドゥとお取引
のない場合)

*本年10月1日から12月31日までを制度切り換え期間として、それまでの既刊で
未登録のもの及び期間中に発行の電子出版物は登録無料とします。

*ご不明な点などございましたら以下までお問い合わせください。
<問合せ先>
一般社団法人 日本出版インフラセンター 出版情報登録センター 事務局
メールアドレス:jprouketsuke@jpo.or.jp

――――――――――――――――――――

飯田泰之著『日本史に学ぶマネーの論理 』をよんだ

最近、飯田泰之さんの『日本史に学ぶマネーの論理 』を読んだ。
面白かった!!
日本の昔の、米や絹などで、お金の代わりにしてたころのこととか、お金の発行のこととか、が書いてある。

お金とはなんなのか?
このあたりにことが、最近とても気になる。

日本のデフレ不況の始まりと、出版物の総売上の低下がはじまりが、1997年から始まっていて、きれいに相関しているように見える。
デフレ不況からの脱出で、出版物の売上増に向かってくれないかな?と他力本願な思いをついもってしまう今日このごろだ。

そこでまた飯田さんの本。
貨幣発行益を得ようとした昔の改鋳が行われたり、やっぱり金・銀の含有量を減らすのはまずいでしょう(ああ、なんと「学級委員長」みたいな正論クンなんだ)となってデフレに苦しんだり。
政策なんて、グダグダ、ってのが、人間の営みなんだねー。

首尾一貫、とか、(単純な)正義、とかの、きれいな形で、世の中まわっていかないのね。

てことで、この本読んどくといいと思うなー。

日本史に学ぶマネーの論理
飯田 泰之(著/文)
発行:PHP研究所
四六判 256ページ
定価 1,600円+税
ISBN9784569842936CコードC0033
紹介
なぜ政府は貨幣を発行するのか。「誰かの負債」が「みんなの資産」になる? 貨幣と国債に違いはあるのか。インフレーションは悪夢なのか。日本史の事例から考える、人気エコノミストによる令和時代の貨幣論。電子マネーの競争が激化し、貨幣がなくなりつつある今、改めて貨幣とは何か、マネーとは何かをつきつめる。
「貨幣の歴史は知的好奇心を刺激してくれる面白い話題である。海外の制度と比較しても独自性の高い日本のマネーの歴史――一見奇妙であり、それでいてどこか先進的な存在を知ることを通じて、間接的に得られるものも少なくないのではないだろうか。
貨幣とは、貨幣の未来とは何かというテーマにとどまらず、現代とは異なる貨幣のシステムを楽しむ――そんな動機を持って本編に進んでいただければ幸いである。」(「はじめに」より)
明治大学准教授

差別の問題と『同和はこわい考』

・ある言動が差別にあたるかどうかは、その痛みを知っている被差別者にしかわからない
・日常部落に生起する、部落にとって、部落民にとって不利益な問題は一切差別である

10代から30歳あたりまで、左翼(新左翼シンパ)で、組合運動を中心に、15年くらい活動してた。
はじめてヘルメットをかぶって、デモに行ったのが、1971年6月の明治公園の沖縄闘争だった。
時期で言えば、1971年から、1985〜86年あたり。
そのときの、オレの左翼運動の大きな柱のひとつが、部落解放運動・狭山闘争だった。
反差別運動。

ところが、そうした反差別運動に、だんたん違和感を持つようになった。
そのときに読んだのが、
同和はこわい考ー地対協を批判する (藤田敬一・著 阿吽社・発行4-900590-12-6)
だった。あとがきの日付は1987年4月20日。
藤田さんは、大学の教員で、部落民でない立場から、部落解放運動や狭山闘争を支援していた人。

この本で藤田さんは、反差別運動にある、上の2行の考え方を批判していた。

オレはすでに左翼をやめて転向したあとだけど、この本の存在を知って、
あ、オレの違和感は、この藤田さんと同じだとおもった。

反差別運動が陥りがちな上記二点の考え方を克服するには、「差別かどうか」の判断を高めていくしかないないな。

この本復刊しようかしら?

出版不況は、デフレ不況のせいじゃないだろうか

ちょっと前までリフレに共感していたのに、最近は、反緊縮とか、積極財政論とか、MMTに惹かれるようになった。
当然、今度の10%への消費増税はやめてほしい、と思ってる。
十年前ころには「国の運営に必要な費用は人民全員で負担すべきだろう(もちろん再分配はちゃんとやって)」という低レベルな「責任感」から、消費税増税にも「賛成」って気分だった。
なんとも、グラグラ一貫性のない、無知蒙昧。はずかしい。

で、そうした財政論とかじゃなくて、出版不況。

出版不況は、可処分時間がゲームなどにも取られて読書の時間が減ったらだとか、いろんな理由として語られる。
でも、最近ハマっている財政論とかの文脈のデフレ不況との関連で考えてみたらどうだろうか、と思うようになった。

出版不況の根本原因は、本離れなどに「主要な原因」があるんじゃなくて(もちろん複合的な原因ではあるだろうけど)、主要な原因は、たんにデフレ不況だからじゃないか?、と思うのだ?

●出版物の売上ピーク…1996年の2兆656億円
から出版物は一貫して売上を減らしてる。
これにたいしてデフレの状況は、
●物価上昇率(コアコアCPI)…1998年からマイナスに
●名目GDP(ドル建て)…1995年から腰折れている

ほかにもデフレ不況の指標はいろいろあるみたいだけど、
96年の出版物売上ピークと、デフレ不況への転換の時期が、妙に重なって見えるのです。

ということは、万一、日本がデフレ不況を克服することができたら、出版物も売れるようになったりして(笑)。そうなるといいなと思う今日このごろ。

消費税増税撤回! むしろ、消費税廃止!
所得再配分を中心に財政出動を!
プライマリーバランス目標の撤回を! 
久しぶりにビックリマーク多様のスローガンでした。

出版に活用するためのプリント・オン・デマンドについて

もう10年近く前になるかな? プリント・オン・デマンド(POD)という、紙の本をつくる方法が登場して、一部には未来の出版の方法としてもてはやされた時期があったよね。
今は、話題になることはへったけど、技術も道具もそれなりに改善の努力がつづいていて、本の本体を印刷するなら、オフセット印刷と遜色ないくらいの仕上がりのところまで来ているみたい。

問題は、制作費用だ。
今、ある本のPODをつくっているけど、
A5判/254ページ/本文モノクロ/表紙4色/カバーなし、の本を
50部つくって4.5万くらい。100部つくって8万くらい。
この他に本文組版料/表紙のデザイン料がかかるわけだけど、。
でこれだと一部あたりの単価800円。印刷原価率を20%だとすると
価格は4,000の本になるわけだ。
それでも、50部とか100部の本づくりでは
編集費・組版デザイン費・流通費は完全な赤字なわけだ。
オフセット印刷で1,000部〜2,000部つくれる本なら、価格は1,600〜2,000程度だろう。
だからまだまだ、な感じだ。

そうしたコスト話を置いといて、どこで、どのように売ることができるのか? だ。
それは主に、大きく二つの商流になる。
①取次(日販・トーハン・大阪屋栗田などなど)を経由して書店
②ネット書店(honto・アマゾン)と三省堂店頭

①の場合、通常のオフセット印刷と同様に、本として売るだけ。
印刷方法が違うだけなので、制作はISBNを印刷してなければならないし、いつもん注文品のように、ただ取次に納品するだけ。
②の場合は、電子書籍取次のMBJを利用して、データを予めhonto・アマゾン・三省堂にあずけておく。
PODの印刷の場合カバーをつけると、さらに制作コストが大きく増えるし、そもそも②の場合は、カバーをつけることができない。
制作コストが増えると、増刷の場合は、価格を紙の本のままではコスト割れするし、POD版に限って価格を上げるならISBNをどうするか、などの問題に波及する

①、②のような区別を基礎において、価格設定・PODの方法(例えばカバーをつけるのか、つけないのか?)などを整理して考えるのがいい、と思うのだ。

3/8金 福岡のブックキューブリックでおしゃべりしませんか?

今度の金曜日、九州に行きます。福岡のブックスキューブリック箱崎店です。

ここで「九州の版元×版元ドットコム=!?  緊急ディスカッション@キューブリック箱崎店 〜ポット出版代表・沢辺均さんを迎えて」という長いタイトルのイベントがあって、それに参加します。「迎え」られちゃうんです。恥ずかしいけど。
http://bookskubrick.jp/event/3-8

資料の準備をしているんですけど、30部くらい用意してと言われてます。
21時からは、同じ場所で懇親会になります。

下に、当日持参する簡単なレジュメ(というか発言用のメモ)も貼っておきますね。

福岡近辺の方、どうぞ参加ください。一緒に飲んでおしゃべりしましょう。
あ、ただ、今ノドの炎症で、まともに声をだせません。聞きにくいですけどカンベン。

九州の版元×版元ドットコム=!?  緊急ディスカッション@キューブリック箱崎店 〜ポット出版代表・沢辺均さんを迎えて
【日時】2019 年 3 月 8 日(金)19 時〜 (*21 時〜 懇親会)
【会場】ブックスキューブリック箱崎店2階(カフェ&ギャラリーキューブリック)
【参加費】無料(懇親会のみ 3000 円)
【当日の流れ】
第1部 版元ドットコムを立ち上げた理由(約 30 分)
・版元ドットコム設立の経緯&役割&できること
・書誌情報はなぜ重要か
第2部 ディスカッション(約 1 時間半) *聞き手・野村亮+藤村興晴 ・流通問題最前線
・ネット書店のこと 〜amazon、honto を中心に
・電子書籍と POD
・「地方の本」はどこへ行く 〜あくまで実際的な問題として ・なぜポット出版は「直」を選んだのか
ほか
【ゲスト略歴】
沢辺均(さわべ・きん)…1956 年東京生まれ。ポット出版代表。1987 年にデザイン事務所を立 ち上げ、その後 1989 年にポット出版を設立。1999 年、出版社5社で版元ドットコムをつくり、 書誌・書影情報のデータベース化、ウエブサイトでの公開、書店・取次など業界各所への自動転 送、実売情報のデータベース化などに取組む。版元ドットコムは 2006 年4月に有限責任事業組 合となり、2018 年2月現在の会員社は 264 社となっている。2011〜2014 年3月、版元ドット コムから出向し、出版デジタル機構の設立に携わる。研究チーム・電書ラボ、JPO出版情報登 録センター管理委員。
――――――――――――――――――――
沢辺のレジュメ
第1部 版元ドットコムを立ち上げた理由(約 30 分)

●版元ドットコム設立の経緯&役割&できること
・立ち上げの理由=書誌データがネット上にない本は「存在しない」ことになる
・現在の目標=会員社の増バイ/業務効率化
・出版流通対策協議会(流対協)のネットワーク勉強会(98〜99年ころ)の結論として構想
 流対協は関与しないことにして、単独で発足
・2000年3月サイト公開 (アマゾン2000年11月/bk12000年7月事業開始)
●できること(エンジ色パンフ)
・書誌書影・ISBN番号の管理・整備・保存をクラウドで
・業界各所への書誌書影の拡散 JPRO(オレンジ色パンフ)経由/独自
・FAX送信 7,000店のFAX番号 DM送信(有料)
・ためし読み honto/楽天/セブン、、、
・書評入力 掲載情報収集=朝読毎産東経/会員社登録 メルマ
・近刊予約 現在honto
・Amazon在庫 ネット書店のカート状況の自動確認
・TRC販売データ ストックブックなどの販売データのDB化
・うれ太
・営業データ統合ツール 倉庫出庫・POSなどの統合=売上状況の確認
・openBD API配信
・開発中=発売状況確認ツール/電子書籍情報登録と取次別データ自動制作
 追求中=SRC倉庫の「間借」
●書誌情報はなぜ重要か

第2部 ディスカッション(約 1 時間半) *聞き手・野村亮+藤村興晴 ・流通問題最前線

●ネット書店のこと 〜amazon、honto を中心に
・宅配便は本当に便利なだけか? 取置
●電子書籍と POD
●「地方の本」はどこへ行く 〜あくまで実際的な問題として
●なぜポット出版は「直」を選んだのか
・表四表記 非再販/書影の利用
・新刊配本をやめる→新刊も注文で
・取次経由=ポット出版 トラビュー扱い=ポット出版プラス
・大型本・安い本/八木経由  初回注文55%の取組
 *トランスビュー扱いについては「まっ直ぐに本を売る」石橋 毅史(著)
  ISBN 978-4-908087-04-2/苦楽堂/2016-6-12

本に関わるイベント情報提供サービス ?

本に関わるイベントが、どうもいっぱい開かれてるような気がする。
この本に関わるイベントにかんする、情報の全体を網羅して知るサービスが、
ないようだ(知らないだけか?)。

今晩これから、書店関係者と飲むのだけど、その「書店」で
イベント情報提供サービスを立ち上げないか?ともちかけようか、
考えてた。
・本に関わるイベント、という縛りだけの情報
・開催場所は問わない(書店だろうが、書店じゃなかろうが/自店でも他店でも)。
とう網羅性を大事にするサービス。

網羅性が大切なのは、参加するだろう人には、その内容こそが重要なのであって、
特定の書店でひらかれることは、どうでもいいからだ。

また近年、本が売れなくなっているなかで、盛んに、本と「コト」をつなぐ必要性なんかが言われている。

先に網羅性ある情報提供サービスを作れば、その情報を求める人のメールアドレスを集めることができるとか、とっても優位にたてそうな気がするんだけどな、。

でも、他店の情報まで収集して、公開するなんてのはできそうにないなー、。
やっぱ、。

「ほんのひきだし」の文化通信・星野渉さんの記事を読んでおもったことでやんす

フェイスブックを眺めてたら、「ほんのひきだし」とうサイトに、文化通信の星野渉さんの「“ドイツモデル”からみる出版業界の将来 各社が問われる「マーケットイン」の姿勢とは」という記事に関する紹介があって、読んでみた。
星野さんは、友人(だと僕はおもってるんだけどね)で、なんども出版に関する話をしたこともある。ここで書かれているのは、もう10年も20年も前から彼が話していたことで、まだこう書かないとならないことにこそ問題があるのだろうと思う。
(まあ、ドイツモデルとして海外を持ち上げたり、その権威を使っているように思えるところには、違和感はあるんだけどね)

マーケットインというのは、この文章では本屋が仕入れる本は選べよ、ってことに尽きている。
新刊配本というシステムは、取次が選んだ本屋に、出版社の作った新刊を送りつけるシステム。本屋からみれば、なにもしなくとも販売する商品(本)が取次から届くということだ(少々乱暴にひとまとめにしてるけど、細部にさまざまな違った方法があっても、基本の部分でこう考えていていいと思う)。こうしたやり方を「プロダクトアウト」と呼び、メーカーの都合で商品を並べるのではなく、お客の要望(それを捕まえるのが小売=本屋だろう、と)というマーケットに合わせろ、というお話。
まったくそのとおりとしか言いようがない。とくに商品がなかった終戦直後ならまだしも、今は商品のほうが客より多いのだ。

で、出版社は、とっとと「プロダクトイン」に切り替えろってことなんじゃないのか? なぜそれができないのか?

やり方はもうすでにある。
出版社は新刊を、新刊委託ではなく、注文してくれた書店に、注文品(という条件)で出荷する、これだけだ。
すでに、「注文出荷制の本」だけをあつめた、書店への本の紹介チラシ(カラー)を毎月共同で送付する取組も行われている(トランスビューが中心に)。

定年退職すると、給料がなくなり、年金だけの収入になる。
収入が年金だけになったのに、貯金を取り崩して給料生活時代と同じだけの支出を続けるようなものだ。個人なら、貯金の取り崩しと、死ぬときの帳尻があえばいいのだが、出版業という業態は一応、死なないことになっている(継続することを前提に今を考える必要がある。一人出版社は、その人と一緒に「死」んでもまあかまわないけど)。

できること、やるべきことを、ひとつずつやる。
それ以外に、継続することって出来ないんじゃないか、と、この記事を読んで、おもった。

それにしても、今、62歳。
どうでも、いいか? なんてもまた思うのであった(笑)。