2006-02-05

クリニック その3

中国人のドクターは、最初から最後まで、苦虫を噛み潰したような顔で、真剣に私達の話を聞いていました。息子に言わせれば、一番感じの悪い人だったそうですが(汗)、私から見ると、プロとして素晴らしいドクターという気がしました。現代病院にはありがちな、真面目で感情を表さないタイプ。完全に無表情。でも、本当はとっても優しい、という感じのお医者様。私はそんな印象を受けました。

前のように、舌を見せて、その裏も見せました。中国人のドクター、通訳さん、ドクターRが、私の舌を見てなにやら話していました。「なるほど、あそこがね・・・ふむふむ。」などと言っているのが聞こえるので、終ってから「あのぉ、そんなにひどいのでしょうか??」と通訳さんに聞いてみたのですが、彼女は笑って、「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、しっかりとチェックしたかったのです。」とおっしゃいました。そうですか・・・。とても好意的な通訳さんで、耳鳴りが8種類も聞こえていると言ったら、「まぁなんてこと!ああ、そんなひどい!」と、すっかり同情したようなお顔をされて、かえって申し訳ない気持ちになりました。

興味深かったのは、中国人ドクターからの質問です。「あなたは、通常はポジティブな人間ですか?」
ほう! そういう質問があるのですね。それは、私の脈をドクターRと中国人のドクターがチェックしている時でした。私は即座に答えました。「自分のことなどに限っていえば、かなりポジティブな思考だと思います。でも・・・息子のことを考えると、それは私の人生でも私の未来でもなく、息子自身の人生+未来なので、時に心配になることがあります。心配する、というき持ちは、結局のところ、ネガティブなのだと思っていますが・・・。」大きく頷く通訳さん。

1時過ぎになりました。もう、かれこれ2時間が経過していました。息子と私は、エッセンから2時の電車に乗って、ノルデナウ(というか、その手前のヴィンターベルク)に行くことになっていましたので、時間が迫ってきて少々焦っていました。てっきり1時くらいにはエッセンの駅に着いて、息子はゆっくりとランチをする、という予想を立てていたので、思いがけず時間をかけて診察してくださるドクターに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。「お母さん、どうするんだよ。ここからタクシーで駅まで10分としても、やっぱり1時半にはここを出ないと間に合わないんじゃないの?」「うん、でも、診察は大事だし、間に合わなかったら、次の電車を調べて乗ればいいんだから、別に気にしなくていいわよ。」「うん・・・でも俺、ちょっとお腹が空いてきたんだけれど・・・。」え!・・・またですか・・・。まぁ、そういう時間ではあるんですけれども・・・。

「もうちょっと我慢してよね。ノルデナウに行ったら、ホテルで美味しい食事ができるんだからね。待っていてね。」なんというか・・・息子が発する言葉は、お腹が空いたとお金頂戴だけ・・・汗。思春期の悲しさよ・・・。まぁでも、今回はドクターのおっしゃったことで聞こえなかったことを、息子が私に伝えてくれたので、とても助かりました。そういうことは、自然と嫌がらずにやってくれます。「お母さん、こういう助けが必要だったら、いつでも病院まで着いてくるよ。当たり前のことだからね。でも、ノルデナウは俺、今回だけでいいよ。次回はお母さんだけで行ったらいいよ。俺は・・・行っても意味ないしさ・・・。」とのこと・・・。はぁ。意味ないってことはないと思うんですけれどもね・・・。

1時15分になりました。再びドクターRがやって来ました。「フラウ・アオキ、ついに私達は、あなたにぴったりのハーブを見つけ出しましたよ! たぶん、これはとても良いはずです。メールでお知らせしますから、ベルリンにもこのハーブを調合してくれる薬局が必ずあるはずです。ベルリンには何でもあるんですからね!笑。ですから、とにかく月曜日になったらメールをしますので、それで一度試してみてください。ハーブは煎じて飲むと苦いですが、我慢して続けてくださいね。そして、1ヵ月後には内臓を調べて、それからハーブの調合を微妙に変えていくかもしれませんので、またその時にいろいろ話しましょう。」とドクターR。「先生、ありがとうございます! 漢方にかなり似ているなぁ、と思いましたけれども、中国人のドクターまでいらっしゃって、診察してくださるとは思いもよりませんでした。」と言うと、ドクターRはにっこりして、「いや、実際ね、彼には最初に聞いておいたんですよ、これから来る患者さんは、日本人だけれども、大丈夫かって。大笑」

・・・汗・・・。ドクターRは、中国と日本の摩擦をよくご存知でして、中国人は日本人を激しく嫌悪していると思っていらっしゃるんですね。「ああ、そうですよね・・・。私は個人的には、会う中国人と韓国人には、必ず謝罪しますよ・笑」そう私が伝えたところ、「やぁ、そうですね、日本とドイツは似ていますね。我々も、そういう意味では謝罪する側でして・・・ハハハ!」ユニークなドクターR!!笑

「で、中国人のドクターは、私が患者ということで、どんな反応をされたんですか、やっぱり嫌だとおっしゃったのでしょうか?」「いや、それが、即答で、<私はプロだから>と言ったんですよ〜〜ハハハ!」・・・そうですよね、プロのドクターは、日本人だろうが何だろうが、ちゃんと診察してくださるはず。私はそう信じております。

ということで、クリニックでの診察を終了しました。最後にドクターMが挨拶に来てくださり、再会を約束してお別れしました。本当にどのドクターも素晴らしく、感謝の気持ちでいっぱいです。

エッセンで少し時間があれば、ナイヨンと合流も考えられたのですけれども、時間がなくて次回ということになりました。3月に会えるかな? 今度は息子抜きですね・・・笑。

2時ちょっと前、ギリギリにエッセンに到着し、そこから電車でヴィンターベルクに移動、そしてタクシーに乗ってノルデナウのホテル・トメスに到着したのは、すでに5時近くでした。