2008-06-30

囚人の演劇

さて、前回お伝えした、囚人による演劇ですが、

先ず、チケットを購入するところから他の演劇とは違っていました。

H子さんが招待してくれたのですが、購入の際に見に行く人の名前と生年月日が必要で、その後の変更はできません。

つまり、購入時に提示した名前の人しか刑務所内に入れないようになっているんですね。

そしてチケットは、当日券はなく、遅くても5日前までには購入しなければなりません。

・・・

刑務所に入る時は、入口近くに設置してあるロッカーに、チケットとパスポート以外は全て預けなければならず、入ってから厳しいボディチェックがあります。

パスポートは、チケットの名前確認に必要で、預かり札と交換して受け付けに預けるのです。

かなりのセキュリティですね・・・。

・・・

・・・

そうやってやっと中に入ると、もちろん私は刑務所の中に入ったのは初めてでしたが、囚人が手作りした池や庭、石のモザイクでできた椅子やテーブルがありました。
癒し系の小さなお庭、という感じ・・・。

花壇には美しい花がたくさん咲いていて、ラヴェンダーの香りが心地良かったのですが、そこは囚人が収容されている建物へのエントランスで、もう一度チェックがありました。

やっと、舞台が設置されている広いグランドに入りました。

そこは、囚人の建物にぐるりと囲まれた空間で、鉄格子越しから囚人が私たち観客を珍しそうに見ているのがわかります。

その日は肌寒く、しっかりと上着も着てスカーフも首に巻いていたのですが、簡易客席が木製のため雨で湿っていたので、観客用ビニールの透明雨合羽をいただいてすっぽりとまとい、完全防備をいたしました。

H子さんから聞いたところによると、アメリカ、オーストラリア、イタリアやフランスなどでも、このような囚人の演劇が行われているそうです。

ドイツでは、ここ10年ほどで定着して、プロの演劇の監督や美術や脚本など、本当にしっかりとした人々が支えて作り上げるので、クォリティが高く、演技指導も相当なものです。

もう、本当に驚くほどの演技力!

そして、戦いのシーンでは、実際に戦うような演出ではなくて、空手の型のような複雑な動きをします。

これがまた、とってもきっちりと練習をしていてミスがなく、素晴らしかったです!

囚人達の集中力とエネルギーの高さに、私は圧倒されてしまいました。

・・・・

舞台が終了すると、なんと私たち観客は、出演した囚人や、スタッフの囚人とその場でフリートークができるようになっていて、これにも驚かされました。

やはり、このフリートークの時はさすがにまわりがざわざわしていてうるさかったので、私はほとんど聞き取れなかったのですけれども、後でH子さんから聞いたところによると、

私たちが話しかけた出演者とスタッフの囚人は、それぞれ終身刑と殺人の罪を犯した人だったそうです。

「でも、終身刑といっても、最高15年の刑期だそうですよ。

そして、罪が重なった場合は、終身刑を2回とか3回とかってするようになっているらしいです。」とH子さん。

・・・

イタリアやフランスでは、刑務所の外での公演もあるそうで、その時には脱走者もいるとか。

@@;

え~~!!!!

そ、そんな・・・・

・・・

・・・

「舞台に関われる囚人は、ドラッグ中毒ではないことと、攻撃性があまりないということで選ばれるらしいです。」とH子さん。

う~~ん、

そうなんですね・・。

で、でも、終身刑だったり殺人だったりするんですね・・・。

・・・

殺人罪の囚人が私達にさりげなくたばこを勧めました。

私たちは喫煙しないので、丁寧にお断りしましたが、彼らにしてみれば貴重なたばこでしょう。

話した囚人は皆、人なつっこくて優しかったです。

・・・

お芝居は、6週間みっちりと練習を積み重ねて完成するそうで、

その6週間の平日の午後は毎日厳しい練習を行ったそうです。

・・・

・・・

翌日、美術ジャーナリストのS枝さんにメールで伺ってみました。

S枝さんは、「地下のベルリン」という本の著者で、美術手帖などにも執筆していらっしゃる優れた作家です。

S枝さんは、やはりずっと前からご存知でした。

そして、とても興味深いことを教えてくださいました。

何でも、30年ほど前に、作家のサミュエル・ベケットがカリフォルニアにある、死刑囚のみが収容されているサン・クエンティン刑務所で、

囚人の劇団を作り、活動していたのだとか、

そんなに昔からあるんですね!!!

その劇団は、国際的に有名になったそうです。

知りませんでした~~。

さすがはS枝さん!

よくご存知です。

・・・

・・・

私にとっては、衝撃的なお芝居でした。

言いようのない感情がこみあげてきて、どう表現したらいいのかわかりません。

私の気持ちを整理するためにも、来年また見てみたいと思いました。

H子さん、誘ってくださってありがとう!!

・・・

・・・

来年は、ついに刑務所から出て、ベルリンのミッテにある劇場で公演するそうです。

このエントリへの反応

  1. いつも励みに拝見しています。
    私も野菜ジュースと玄米粉を食べて夫と共通の持病に戦う毎日です。
    大げさではありますが、こういう気持ちを持っていないとやりきれなくなってしまうからです。なので青木さまのこのブログは、モチベーションをあげるのにほんとうに助かっています。

    さて、囚人の舞台で思い出したのですが、イギリス映画に「Greenfingers」という実話に基づいた作品があります。ご存知かと思いますが、囚人たちがにガーデニングに目覚めて初めて命を育てる喜びを知って、フラワーショウに出場するという心温まるストーリです。海外の刑務所のあり方にかなりカルチャーショックを受けたのですが、こういうプログラムも日本でも導入するといいのでは、などと思ったものです。最近日本でも、やっと民間が経営している刑務所もできてきているみたいですね。

    青木さまもお体どうぞご自愛くださいませ。

  2. waonmo さま

    コメントをありがとうございます。

    ご夫婦で仲良く一緒に、野菜ジュースと玄米粉を召し上がっていらっしゃるんですね!

    素敵ですね~~!

    私の理想ですよ!^^v

    誰かと一緒に実践する方が、はるかに成功率が高いと聞いたことがあります。

    ぜひお二人で、健康になってくださいね!

    心からお祈りしています!!!

    ・・

    イギリス映画、私は知りませんでした。

    とても興味深いです。ぜひ映画を見てみたいです。

    貴重な情報をありがとうございます!

    実際、囚人の演劇は私にとってあまりにも衝撃的で、3日経った今でも、何だか心の中にもやもやと残っています。

    H子さんから聞いたのですが、演劇のスカウトマンも見に来るのだそうです。

    でも、いざスカウトしても、刑期があと5年もあるとか、そんなに待てないのですね。

    それで、なかなかうまくはいかないみたいです。

    罪を犯した人は、刑期を終えて出所してから、現実の厳しい世界が待ち受けています。

    あらゆる意味で、考えさせられる舞台と出会いでした。

    ・・・

    それではまた!

    お元気でお過ごしくださいね!♪