2007-06-09

ムズィーク・ムズィーク!!(1)

木曜日は、フィルハーモニーの室内楽ホール(小さい方のホールです)で、バイオリニストのギドン・クレーメル率いる「Kremerata Baltica」の演奏を聞いて来ました。

いやぁ、久しぶりにエンターテイメントとしての楽しい生の音楽を満喫しました!

私の耳がとっても喜んで、嬉しい反応をしていて、何だかどんどん聴覚が良くなっていくようなイメージが自然と浮かびました。
なので、本当に幸せな時間を過ごしました!!

・・・

息子の夕飯を作ってから早めに出発した私。楽しみにしていたコンサートでしたので、ワクワクしていましたし、自分の食事のことなどすっかり忘れて少食もスムーズでした・笑。

雨が降ったりやんだりのぐずついたお天気の上、電車のストも予定されていましたので早めに出たのですが、結局乗り継ぎも悪くなく、8時から始まるのに7時5分前には到着しました。

でも、こうした余分の時間ってすごく好きです。たまには会場内でゆっくり本を読みながら、場の雰囲気や空気をゆるやかに感じるというのもいいものです♪ 

実際に、そういうお客さんが沢山いて素敵です。
老夫婦がお食事をしながらにこやかに会話していたり、グループで何か飲みながらワイワイとおしゃべりしていたり・・・。

音楽好きな人々の、とっても良い空気が流れているのです。

・・・

フィルハーモニーの中には、7時にならないと入ることができません。でも、すでにベルリナーがおよそ20人くらいは入り口の前で待っていたでしょうか。

あ、そこでアジア系のおばちゃま発見!
アジアのどこの国の方かはわからず・・・日本人にも見えますが、中国、韓国かベトナムあたりの方かも???

55~60歳くらいの、ショートヘア+小柄でふくよかな女性で、私は何度かフィルハーモニーの前で見かけたことがあります。
軽装で(Tシャツに七分パンツ+サンダル)、大きめのリュックサックを持っていつも入り口を背にして立っているのです。

つまり、チケットを買うか売るかするスタイルというわけです。

でもこのおばさまの目的を私は知っています。
かなりパワフルなのです!

いつだったか、息子の急な都合で予定していた公演をどうしても聞きに行くことができず、コンサート数時間前にそのことがわかったので、友達に代わりに行ってもらうにはあまりに時間がなさすぎたため、仕方なく息子を伴って会場前でチケットを売ったことがありました。
もちろん私はダフ屋ではないので、買った時と同額か状況によっては安く売りますし、その時は人気のコンサートだったために、すぐに買い手が見つかりました。本当にほっといたしました。

その時に、この上記のおばさまと目が合ったのです。
開演ギリギリの2~3分前くらいでしたでしょうか。

入り口の所でプラカードを持って立っているのですが、通常だったらそこにドイツ語で、

「求むチケット」などと書かれているものですが、この方のはちょっと違います。

目ざとく息子が読んで、

「ねぇお母さん! あの人、すげ~!!! ちょっと見てよ。」と、目を丸くして言いました。

「え、あまり見るのは悪いでしょ。」と言いつつも、私も一瞬は目が合ったそのおばさまのことが、少し気になっていたのです・・・。
コンサートを聞きに来るような装いではなくて、こう~ヒッチハイクをしているような? そんな感じの女性が、アジア人ですからかなり目立つのですけれど、とても堂々とそのプラカードを持って立っていました。
堂々と・・・そして、まわりの人を威嚇するような、怖い顔できりっと口を結んでいました。

彼女が胸の前に突き出すように持っていた紙には、こう書かれていたのです。

「求む!
無料のチケット」

いや、こういうダイレクトなお願いは、見たことがないです・・・。
かなりの衝撃を受けました。

まわりの皆さんは、懸命に並んでチケットを買ったりしているのに、そうじゃない人も、欲しければいろんな人に話しかけてお金を払って買っているのに、そのおばさまだけが、強い意志でもって、自分からは誰にもコンタクトをせずに、ひたすらプラカードかかげて、

「ただ券頂戴!」とアピールしているわけです。

驚きましたけれども、それだけじゃなくて、なんとも複雑な思いがありました。

・・・

そのおばさまと、昨日再会したのです。つまりこの方は、いつもフィルハーモニーの前に立って、誰かがいらなくなって無料でチケットを進呈するのを待っているのですね。

それにしても・・・そこまでしても、フィルハーモニーで音楽を聞きたいという情熱に、音楽の力を感じました。

・・・

さて、そんなこんなで・・・次回はギドン・クレーメルの演奏のお話を・・・。