2008-05-06

パパゲーノ!!

先週・金曜日のお話が続きます。(ここのところちょっと忙しいので、更新が遅くてごめんなさい!)

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行って参りました。

新地下鉄駅・Bundestag(ブンデスターク。連邦議会駅)での、オペラ「魔笛」公演!!

世界で活躍するジャズ・ピアニスト、高瀬アキさんと二人で、7時半くらいに到着。

開演は8時ですが、開場は1時間前の7時より。

私たちのチケットは、最も良い席のエリアではありましたが、そのエリアのどこに座っても良いというチケットなので(指定席は全くなし!)、早く行って良い席を確保する必要がありました。
でもアキさんと私は、あまり早く行くことができませんでした。

日本からやってきていた友達夫妻が、1時間前に行って私達の席もゲットしてくれるとのことで、安心して会場に向かいました。

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「6時45分に到着したんだけれど、すでに沢山のお客さんが入口で並んでいて、本当にびっくりした。」と夫妻。

いやはや、チケットを持っていてもすごい状況ですね。

席をとってくれた夫妻に大感謝!!

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地下鉄のホームは、サイトで見るよりは普通でしたけれども(笑)、確かに柱がインパクトありますね。

ベルリンの郊外にある、ユニークな火葬場(クレマトリウム)を建てた建築家が手掛けたとのことで、なるほど、と納得。

いつの間にか、ステージになっているホームで数人がおしゃべりしていて、それも演出のひとつでした。

そして、8時になってオーケストラと指揮者のハーゲル氏がやって来て、スタンバイ。

高まる期待、大きな拍手!

いよいよ、オペラ「魔笛」の始まりです!!

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生演奏の醍醐味はあるものの、やはり地下鉄という空間での音響は、そんなに良くはなく、でもひどく悪いということでもなく、予想通りの楽しさで溢れていました。

モーツァルトが生涯最後(1791年)に書いた有名なオペラの一種、「歌芝居」と言われる作品である「魔笛」は、道化キャラのパパゲーノを中心として、

王子タミーノ、ザラストロ、夜の女王、女王の娘のパミーナ、夜の女王の3人の侍女、パパゲーナ、童子(少年少女の合唱)などの登場人物が、音楽に合わせて歌い、演じます。

今回のベルリンでの地下鉄オペラは、良くも悪くも、とてもベルリン的な作品に仕上がっていたと思いました。

先ず、設定は現代。

そうですね、地下鉄のホームで演じるのですから、それは妥当な演出でしょう。

ホームを掃除する人々、警察など、面白い役回りにしていました。電車が通過する線路の脇の壁には、シーン毎にいろいろなメッセージ性の強い文字や映像が投影され、それが大きな舞台美術の一つになっていました。

そこまでは、結構ありがちだとは思うのですが、とても面白いと思ったのは、

パパゲーノ

です!

プログラムを購入しなかったので、はっきりとしたことはわかりませんけれども、おそらく今回出演している歌手の中で、オペラ出身ではないのは、このパパゲーノだけでしょう。(ダブルキャストで、もう一人のパパゲーノ役はオペラ出身者のようです。)

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ヤン・プレヴカというシンガー・ソングライターがパパゲーノを演じたのですが、彼のベルリンっぽいボロっとしたパンクな装いがとってもツボで、すごく良かったです。

似合っていましたね・笑。

薄汚いシャツにパンツ、そしてブーツ。黒い革ジャンを着て、キャップをかぶっていました。

爪には黒っぽいマニュキアをして、ベルリンでよく見かけるくたびれたお兄さんか、あるいはホームレスな雰囲気がありました。

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最初は、この彼だけがオペラの発声ではなかったために、とても違和感がありました。

むしろ、ひどいとすら思いました。下手に聞こえたからです。

でも、どんどんストーリーが進むにつれ、舞台は社会的な風刺もいたる所にちりばめられていて、ベルリンっぽいなぁと感じ始めたところから、

突然パパゲーノがすご~~く魅力的に見えてきました。

そして今回の作品は、オペラ歌手だけにせずに、キーパーソンであるパパゲーノをあえて彼のような歌手にしたことで、奥行きが出てでこぼことした面白さを醸し出すことに成功しているように感じました。

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38歳のヤン・プレヴカは、1992年から99年まで世界的に活躍していたドイツのロックバンド「Selig」の歌手です。

彼自身は、ハンブルク出身で、バンドもハンブルクで結成されました。

彼のバンドの音楽は、70年代ロックと、80年代の終わりに生まれたグランジなどをミックスして、かなり実験的な要素があったと聞いています。

ワールドワイドで成功し、ドイツの大ヒット映画「Knockin’on Heaven’s Door」の音楽も担当し、人気があったようですね。

すでに解散してソロ活動をしているプレヴカは、俳優としても注目されるようになりました。

そして、今回の大抜擢!

ハンブルク出身のプレヴカではありますが、ベルリン的な舞台の中で、ベルリンのパパゲーノになりきっているように見えました。

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こうした異端児が一人いることで、舞台にゆらぎが生まれて、完璧なオペラの世界がどこか崩れていき、それが不思議な魅力を作っているように思いました。

そういう意味で、とても面白い作品でした。

夜の女王の素晴らしい二つのアリアは、それゆえに安心して聞くことができて(笑)楽しめました。

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ということで、プレヴカの、噛めば噛むほど味が出るするめのような存在感が、ベルリンの未完成の面白さを体現しているようで興味深かったです。

嗚呼、パパゲーノ!!

あの、ちょっと下手な(汗)歌声を、もう一度聞いてみたくなりました・・・笑。