2009-08-01

「新着雑誌記事速報」リニューアル

前回のエントリーで、今年の3月に当館で公開した「新着雑誌記事速報」を、はてなRSSからGoogle AJAX Feed APIに切り替えるため、テストしていることを書いた。

「新着雑誌記事速報」というのは、国立国会図書館が配信する雑誌記事索引のRSSを利用し,はてなRSSを使って、受入雑誌の新着記事を公開する図書館サービスであることは、前回にも書いたとおりである。
以前は、受入雑誌の約4分の1にあたる114誌(2009.3.1現在)の新着雑誌記事を見ることができる「ゆうき図書館新着雑誌記事速報」(旧)版を7/18まで公開していた。
こちらでは、はてなRSSのフィードを自動振り分けする機能を利用して、『2006年版雑誌新聞総かたろぐ/メディア・リサーチ・センター発行』の分野コードに準拠し、各分野ごとに記事名を一覧できるようになっていた。

このサービスの最大の問題点は、

  1. はてなRSSは、配信されてから2週間以上経過したデータを保持しない仕様のため、国会図書館が記事情報を登録してから2週間経過すると記事情報が表示されなくなる。
  2. 分野ごとに振り分けただけなので、特定の雑誌に掲載された記事を探すのには向いていない。

ということだったので、これらを少しでも改善すべく、リニューアルすることにした。

今回のリニューアルでGoogle AJAX Feed APIを利用することにより、タイトルを選んで記事を表示することが可能になった上、最新の記事情報は消えないようにもなった。
また、これまで利用していた国立国会図書館が配信する雑誌記事索引のRSSに加え、株式会社富士山マガジンサービス(fujisan.co.jp)の目次新着情報「Fujisan RSS」を新たに利用することで、受入雑誌の約65 %にあたる272誌(2009.7.1現在)の新着雑誌記事を見ることができるようになった。

○(新)「ゆうき図書館新着雑誌記事速報」

http://www.lib-yuki.net/room_ad/sokuhou-blog.html

タイトル別表示が可能になり、対象誌数が倍以上に増え、表示も消えなくなったのだから、このリニューアルの成果は結構大きいと思っている。

リニューアルの鍵となった、Google AJAX Feed APIというのは、JavaScriptを使用してRSSフィードをダウンロードし、表示する仕組みのことである。

用意されたサンプルコードを、目的にあわせて加工してつくるので、JavaScriptとhtmlの知識が多少は要求される。
だが、似たようなものを公開している人がたくさんいるので、それらを参考にすれば、プロでないと手が出ないというほどでもない。

少し前に、ある市立図書館の人が「これからの司書はJavaが書けなきゃ勤まらない」と言っているというのを伝え聞いた。
ちょっと極端だし語弊のある言い方だと思う部分もあるが、確かにGoogleやAmazon、はてななどが提供するAPIを、図書館サービスに活用しようと思ったら、避けては通れないのだろうという気もする。

更にProject Next-LのEnjuというシステムや、まちづくり三鷹のシステムのような、Ruby on Railsで開発された図書館システムの今後の可能性を考えると、RoRも知っておきたいし、Webサービスを推進する以上は htmlも多少は書けた方がいい。
また、日々データベースを使って仕事をしているのだから、そうすると当然ながらSQLは知っていた方がいいということになる。

いろいろ羅列してしまうと、すごく大変なことで、図書館員の仕事が一変してしまうような印象を受けるかもしれないが、そんなことはない。

インターネットが普及する前の時代、オンラインデータベースを検索する際には、少ない検索数で効率よく絞り込むスキルが司書には要求されていた。
その頃のオンラインデータベースは、Dialogなど学術情報系のものがほとんどだったから、公共図書館はそういったものを利用していなかったに過ぎない。

公共図書館の仕事は、本や雑誌だけにとどまらず、さまざまな媒体の情報を扱って提供するものだと言って、 違和感を感じる司書はもう少ないだろう。
インターネット上の資源を利用者に提供したり、あるいは自館の情報発信に有効に活用したいと考えるのは、当然の流れだ。
そうすると、JavaやSQLも使えた方が良いというのも、突飛な話ではない。

だからといって、そういうことを話すと図書館にプログラマーばかりを揃える必要はないと言う人が必ずいるだろう。

もちろん、確かにそればかりが司書の仕事ではないのだから、正論だと思う。
またパソコンはどうしても不得手という職員もいるだろうし、個人のスキルも様々だ。
だが、習得できればはるかに進んサービスが出来るのに、それは司書の仕事じゃないとか、自分には関係ない、もしくは無理だと思い込んでいる人が多いように思う。

例えば、ある条件の統計資料を急に求められたとする。
その時に、SQLを知っていれば瞬時に回答できるのだが、わからなければまずシステム担当者を探すことになる。
そのシステム担当者が、各業務のデータを熟知していれば話は早いが、そうでなければ要求を伝え、理解してもらうのに、また時間がかかる。
こういうことは、何もSQLに限った話ではない。
各業務担当がWebサービスを検討・推進できれば、それだけスピーディな展開が可能になる。

SEに任せきりだったり、館内に1人だけ詳しい人がいる程度の状態とは、雲泥の差が出てくる。

やはり、わからないよりはわかったほうがいい。

そうはいっても、すぐにプログラムが書ける司書を揃えることなど不可能なのだから、やはりじっくり育成するしかない。
最低限、プログラムが書ければ具体的に何ができるのかを上司が理解し、勉強を推奨する必要はあるのではないか。
公共図書館の管理職者に司書経験のある有資格者は多くはないようだが、司書の仕事の目的やアウトラインを理解した上で、現場の司書たちが学ぶモチベーションを持続できる環境を提供することが、何より大事ではないかと思う。