2009-10-23

「多摩地域資料問題」の影響について思ったことなど。

「救いたい!」のエントリーが、物凄いアクセス数だったことを知った。
twitterでも盛んに伝えられ、この件について有志を募って討論しあうディスカッションを開催しようという動きにまで発展している。
こうした動きのきっかけになれたのは良かったし、様々な意見を知ることができたのは嬉しかったが、なかには自ら情報を収集・判断せずに、尻馬に乗って感情的になってしまっているようなネット上の発言もあったようで、それには正直なところ少し戸惑った。
だがそれだけホットなニュースになったということなのだろう。
ともかく、予想していたよりはるかに多くの反響があったことに、少なからず驚いている。

今回の件で図書館の資料保存について関心を持つ人が結構たくさんいたということがわかった。
多摩の資料に限った話ではないが、こういう問題について「捨てるな」という感情的な意見だけでなく、多様な意見がたくさん表出したことが、なにより一番大きい収穫だったと思っている。

10/16のシンポジウムでこの話を初めて聞いた当初は、今回の対象資料が原則「複本」であるということは知り得なかった。
(後ほど都立から各館へのFAXを確認したが、そこにも「複本」という言葉は一切記載されていなかった。)
また、都立図書館からの通達が各館長宛のFAXのみであり、通達から締め切りまでの期間が2週間しかなかったという都立の拙速さが、今回一番の問題ではなかったかと思う。

図らずも僕自身がこの話題に関してネットでの情報発信源となってしまった責任上、正確な情報を早く伝えなければと思い「続・救いたい!」をアップしたが、それと前後して都立は来年1月まで期間を延長したことを知った。

一般には国会図書館があるから捨てても安心と思われがちだが、国会図書館に所蔵していない資料が、他の図書館(公共・大学・専門)には数多くある。
それに、そもそも国会が持っていない地域資料など、どの地域にでも多数存在するものだ。
その点があまり知られていないように思ったのだが、そこは司書の力不足ということもあるだろう。自分としても反省したいところだ。

そんなことを踏まえると、複数冊購入したベストセラー本と、廃棄したら同じものが滅多に市場に出ないような地域資料とを同一基準で除籍するというのは、やはりおかしいと思っている。
しかも、多大な費用をかけて脱酸処理までして保存しようとしていたという事実は軽くはない。
それを敢えて除籍したのだから、それなりの事情があるのだとは思う。
それだけに、そこのところを最初にきちんと説明して、建設的に進められなかったのかな?という素朴な疑問は残る。

1冊あるから十分かどうかという判断は、すべて一律にするのでなく、それぞれの資料の性質を考慮し、臨機応変にした方がいい。
恐らくそれくらいのことは、都立だって考えていないはずがない。
要は、キャパの限界なんだから仕方ないということだとは思う。

それならそれで、都内市町村以外にも積極的に声をかけ、廃棄したくはないんですという意思をアピールしていたら、また違った展開もありえたのではないだろうか。

多くの人は承知のことと思うが、都立の資料廃棄問題についてはこれまでにも様々な議論があり、それが「特定非営利活動法人共同保存図書館・多摩」の誕生に繋がっているという。
このあたりの経緯は、自分は実際にその活動の当事者ではなく、ここで語れるほどの知識もないので言及は避けたい。
ただ、この団体の理事・事務局長である齊藤誠一氏が今回苦言を呈したことが発端である以上、同種のことが繰り返されたと捉えていいんじゃないかとは思う。
そういう意味で、継続的あるいは間歇的に、資料保存の問題に関しては、話題になった方がいいのだろう。
そうでないと、各図書館は内規ひとつで資料を簡単に左右できてしまうのだから、少なくとも目を離しっぱなしでいいとは思わない。

本当は複本が多いらしいと知った時点で、「だったら捨てていいじゃん」という意見が圧倒的になるのではないかという危惧もあった。
だが、実際にはそういう意見ばかりでもない。
文化を守れと声高に叫ぶ人もいれば、そんなところに税金を使うなという人もいるし、出版物だけ全部保存するという前提がどうなんだという疑問を呈する人もいれば、捨てるなという人が全部引き取ればいいだろうといった声もある。
本当に様々な意見が出てくるが、個人的にはとりあえず多摩地区の郷土資料という括りのコレクションの価値を考えると、極力散逸は避けた方がいいし、公共図書館にあることで、その資料が利用登録すれば誰でも・いつでも調べられるという点を、そう軽視して良いのか?という疑問は感じている。

多様な意見が出て、それらを包括した現時点での結論が出れば一番だ。
どの図書館の資料もシームレスに検索できて、全部が画面上で見られるようになれば、また違ってくるだろうが、少なくとも現在はそうではない。
(とはいっても、「オリジナルが保存」される別の意味はもちろんあるが。)
まずは、現時点で散逸させずとりあえずまとめておくことが望ましいと思う。
学校の教室とか、空いている公共の場所など、もう少し時間をかければ出てくる余地がありそうな気がするし、まとまったコレクションならば大学が引き取ってくれる可能性もあるのではないだろうか。
共同保存図書館・多摩が立ち上がることも予想されるので、まだまだ選択肢はあるんじゃないかと思う。

こうしたことは、何も都立多摩固有の問題ではない。
今回の問題を通して、溢れたらこうすれば良いというモデルの提示になることを期待したいし、そのための検討・議論はオープンな形でどんどん行った方がいいと思う。

※本件を踏まえた私案をこちらにアップしています。

このエントリへの反応

  1. [...] 笹沼氏は、[「多摩地域資料問題」の影響について思ったことなど。]で【都立図書館からの通達が各館長宛のFAXのみ】と書いてますが、これは間違いです。FAXだけではなく、都立図書館が発行しているメルマガでも通知し、翌週、文書も配布したそうです。 [...]

  2. [...] ※本件のまとめはこちらです。 [...]