脱!ひきこもり YSC(NPO法人 青少年自立援助センター)の本

発行:ポット出版
工藤 定次 著, YSCスタッフ 著, 永冨 奈津恵 著
定価:2,000円 + 税
ISBN978-4-939015-64-9(4-939015-64-5) C0037
四六判 / 248ページ /並製
[2004年04月刊行]

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内容紹介

“ひきこもり”とは状態・状況を指す言語であって、それ以上でも、それ以下でもない。

故に、状態・状況を克服さえしてしまえば「普通」の状態・状況に存在し得るのである。よって「状態・状況の克服」の方法論や思考が重要となってくる。だが、克服するための実践的方法論や、思考はほとんど提示されず、いたずらに“ひきこもり”の存在を評している人々のなんと多いことよ。「方法を考え、実践してみろよ、お前ら」と叫びたくもなろうというもの。

 「実践者は不利だ」とつねづね思っている。実践に矛盾はつきものだし、一〇〇パーセントの成果など達成し得ない。人間という、高等かつ複雑な存在に対応しているのだから、当然と言えば当然なのだが、何ともムカつく。

 「能書きを言ってんじゃねえよ。お前も実践してみろよ、バカヤロー」。

 私の心の中は自由だから、なんでも思っちゃおう。

 「俺は人生を賭けて、ひきこもりの青少年たちに付き合い、多くを自立させてきた」とも思う。誇りでもある。誇りでもあるが、同時に「俺の人生、ひきこもりに関わるためだけのものだったんだろうか。ひきこもりに関わっても得るものは少なく、失うものが多過ぎたのではないか。なんともつまらない人生なのではないか」とも思う。

 それでも、歩みを止められないのは、いったいなぜなんだろう。…



約30年にわたりひきこもりたちとつき合ってきた工藤定次の、ひきこもりという「状態・状況の克服」の方法論、思考をあますところなく記した一冊。



目次

●はじめに 今こそ「ひきこもり」を再認識するとき



第1章 ひきこもり考………工藤定次

1…ひきこもりとは何か 「社会から引く」「空間に籠もる」の二重鎖国状態

2…ひきこもりを分類する ひきこもりのタイプは一つじゃない

3…ひきこもりを援助する YSCでの援助手法と援助団体の組織化

4…ひきこもりの長期化 状態にはまっていく長期化の構造

5…若者から大人へ 大人へと育て上げるシステムを模索する

6…ひきこもりのゴール 自分の生活の糧を自分で得るということ



第2章 ひきこもりの若者たち………YSCスタッフ

1…江藤君のこと 彼は動けるチャンスをずっと待っていた

2…京子ちゃんのこと 仲間同士のふれあいの中で迎えた新しい旅立ち

3…田中勝也君のこと 言葉の裏に隠された本人の気持ちを読む

4…神山浩一君のこと 境界的な障害を伴う場合の難しさ



第3章 YSCってどんなところ?………永冨奈津恵

1…YSCで行われていること タメ塾からYSCへ進化する支援体制

2…相談から家庭訪問まで 長い時間をかけて自立への第一歩をともに進む

3…訪問スタッフ座談会 「家庭訪問」という役割

4…共同の場での支援[利用の方法] 日常生活の場をスタッフとともに作りながら支援する

5…共同の場での支援[カリキュラム] 学ぶ、楽しむ、参加する、働く、自立への道を模索する

6…YSCスタッフ座談会 一人の人間の心が動き出すその手応えがこの仕事の魅力

7…YSC副センター長インタビュー 元気になっていく姿が何よりもうれしい

8…卒業 自分で自分の生活の糧を得たときがYSC卒業のとき

9…父兄インタビュー●1 悩み続けた今までの三年間はなんだったのだろう?

10…父兄インタビュー●2 寮に入るとまるでスイッチが入ったかのように動き出した

11…YSC施設データ



●YSC関連施設 北海道・しもかわ寮/愛知県・北斗寮(YSCH)



●あとがき 実践者の葛藤と言い分

前書きなど

●はじめに



今こそ「ひきこもり」を再認識するとき





 二〇〇四年一月に、青少年自立援助センター(以下YSC)で親の会が開かれた。一組の夫婦が遅れてやってくる。何だか妙にうれしそうだ。それもそのはず、一〇年近くアルバイトをしたり、辞めさせられたりの繰り返しだった息子が、この度、正社員として雇用されることになったのである。

 参加していた他の母親が「うれしい話を聞くと、こちらも幸せな気分になりますね」と言う。多くの方がうなずく。

 私を含め、スタッフもうれしい。一〇年近くの月日とともに、その間のできごとが脳裏を駆け巡る。

 ひきこもりの青少年たちに三〇年近く関わってきて、近頃「何かおかしい」と思うことが多くなった。その一つは、ひきこもりの青少年本人が、マスコミに登場し、盛んに発言している姿。しかも、堂々とカメラの前で発言している。

 この人たちは、本当にひきこもりなのか……。

 何か違う。また、この青年たちは「できない私たちのことを認めて」などとも言うのである。

 私とて、ひきこもりの青少年たちが、社会経験の穴を埋めずに、最初からなんでもできるとは思っていない。「穴さえ埋めてしまえば、自立できる」と固く信じているし、それは現実的事実でもある。ところが、その人たちは何ら努力することもせずに、「できない」と表明するのだから、驚きである。

 NHKのひきこもり当事者のインターネットアンケートでは、八〇パーセント以上の人間が、自立したい、社会参加したい、と表明しているし、自分一人の力では可能性が少ないので、第三者の力を借りたい、と回答している。

 マスコミで、「ひきこもり」を称している青年たちは、一体なんなんだ。

 私とひきこもりの青少年たちとの経験からすると、ひきこもりという状況を脱してからならばいざ知らず、ひきこもり状態のままで、人前で発言をするなどということは考えられない。

 本当に、このような「自称ひきこもり」はひきこもりなのか……。マスコミの人間は、映像が欲しいために、安易に自称ひきこもりに飛びついているのではないか……。

 このままでは、「ひきこもり」という地獄的時間を過ごさねばならない青少年たちが、誤解され、疎外される状況が拡大していく危険があるのではないか、と心の底から心配になる。

 「ひきこもり」とは一体どういうことなのか?

 「ひきこもり」とは、病気・障害ではなく、思春期・青年期の一過性のもので、誰にでも起り得るもの。

 このことを再度、原点から捉え直してもらいたいと思い、この原稿を書いている。「ひきこもりの青少年たちは、社会的経験の穴を埋めれば、自分の力で十分に生きていける存在である」ことを証明したいと思い続けている。



NPO法人青少年自立援助センター(YSC)理事長 工藤定次

著者プロフィール

工藤 定次(くどう さだつぐ)

1950年、福島県生まれ。

早稲田大学文学部、和光大学人文学部で心理学、社会学を学ぶ。

1977年、友人から引き継いだ学習塾にサリドマイ児を受け入れたことをきっかけに、

不登校児や障害のある子などさまざまな子をどもたちを受け入れるようになり、

塾名も自らのあだ名・タメをとって「タメ塾」と改名。

1978年にはじめてひきこもりの子どもを受け入れ、以来、ひきこもりの自立援助に尽力する。

「タメ塾」は1999年、「NPO法人青少年自立援助センター(YSC)」となる。

●著書

○1982年『学習塾の可能性 福生・タメ塾の記録』(ユック舎)

○1996年『お〜い、ひきこもり そろそろ外へ出てみようぜ──タメ塾の本』(ポット出版)

○2001年『激論!ひきこもり』(ポット出版,共著)

YSCスタッフ(ワイエスシースタッフ)

NPO法人青少年自立援助センターのスタッフ。

NPO法人青少年自立援助センター

http://home.interlink.or.jp/~ysc/

永冨 奈津恵(ながとみ なつえ)

1970年、福岡県生まれ。

『お〜い、ひきこもり そろそろ外へ出てみようぜ──タメ塾の本』(ポット出版)の

制作に携わった1996年頃、はじめて「ひきこもり」という存在に出会う。

●著書

○2000年『ひきこもり[知る語る考える]』(ポット出版,共著)

○2001年『激論!ひきこもり』(ポット出版,構成)



関連リンク

NPO法人青少年自立援助センター