.book(ドットブック)版 【電子書籍版】紫雲の人、渡辺海旭 壺中に月を求めて

発行:ポット出版
前田 和男 著
希望小売価格:1,500円 + 税 (この商品は非再販商品です)
ISBN978-4-7808-5054-3 C0023
電子書籍
[2011年06月刊行]

ブックデザイン 山田信也
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●発行・バージョン
・2011年6月24日 .book(ドットブック)版 Ver.1.1

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●2011年6月に発行した紙版の『紫雲の人、渡辺海旭』はこちら

内容紹介

「カルピス」の名付け親、作家・武田泰淳の伯父である渡辺海旭は、
宗教家にして教育家、社会事業家であり、さらには詩文家にしてコピーライターであった……。

廃仏毀釈、肉食妻帯・蓄髪勝手令、日本人の仏教離れなど、
明治に訪れた日本仏教の危機を打破するため、
思想・実践の両面で日本仏教界を支え続けたが、未だ評価は定まっていない。

海旭は何を思い、誰と出会い、実践を積み重ねてきたのか。
関東大震災による消失から数少ない資料を元に描き出す渡辺海旭という傑物の生涯。

目次



渡辺海旭の多様なる人脈
写真・留学時代の渡辺海旭
帰国してからの渡辺海旭

第一部●青雲編
一、明治天皇と蛇骨長屋と牛鍋屋
二、廃仏毀釈と金竜山浅草寺
三、東京府立庶民夜学校
四、抜嫡
五、尋常小学校上等科へ
六、博文館の小店員
七、渡辺海旭の誕生
八、八宗の泰斗、福田行誡
九、本誓寺寒林舎、法話と品定め
十、浄土宗学東京支校
十一、福田行誡、遷化す
十二、壺月と号す
十三、宗門を超えた新仏教運動

第二部●雌伏編
一、 欧州航路船上の人となる
二、 教育こそ国づくりの基
三、 食と酒は欧州の十字路にあり
四、 聖母マリアは観音菩薩?!
五、 自由思想団で大いに弁ず
六、 新旧異教間交流
七、 日露戦争
八、 惜別と盟約
九、 シュヴァイツァーとの出会い
十、 畏友、荻原雲来を故国に送る
十一、 詩藻の力
十二、 帰国

第三部●雄飛編
一、 創作童話「釣龍爺」
二、 社会事業家として
三、 新戒律主義
四、 遵法自治、芝中学三代校長
五、 文案家として
六、 国士として
七、 関東大震災
八、 仏教史の金字塔、大正新脩大蔵経
九、 国際梁山泊、西光寺
十、 遷化

第四部● 回想編
一、 中村屋女主人、相馬黒光
二、 カルピス創業者、三島海雲
三、 浪漫詩人、土井晩翠
四、 孤高の監督、今井正
五、 敬虔なる愛弟子、磯村英一
六、 異色の外交官、寺崎太郎
七、 異教のライバル、賀川豊彦
八、 畏友の娘婿、井上靖

渡辺海旭略年譜
主要参考文献
初出一覧

担当から一言

『民主党政権への伏流』(2010年9月弊社刊)の著者、前田和男さんの筆から、またまた大作が生まれました。
総ページ数528ページの大著です。『民主党政権〜』は648ページでしたから、前作よりは少し手軽にお読みいただけるかも……。
新刊『紫雲の人、渡辺海旭』は、明治・大正・昭和初期を生きた快僧、渡辺海旭の小説風評伝です。(著者は、「小説風評伝」と「評伝風小説」のあわいにある「物語」だと述べています)
僧侶というとなじみが薄い気がしますが、海旭は浄土宗の僧であり、なおかつ社会事業家でもあり、教育家でもあり、と、その活躍の幅は分野を超えて多岐にわたっています。が、その名は歴史の表舞台には登場していない、いわば知る人ぞ知る人物でした。
しかも、著者によると、その評価はいまだ定まらず、だからこそ海旭は「未来の傑物」なのだと評します。
かつて日本には、海旭のように豪傑というにふさわしい、魅力的な人物がまだまだいたんですね。一昨年弊社より刊行した『中井正一伝説』(馬場俊明著)に描かれた中井正一しかり。現代に目をうつすと、彼らのようにスケールのでかい人間はいるのだろうか、果たしてそれは誰なのか、そんなことをつらつら思いながら編集していました。
明治、大正、昭和とわたった海旭六十数年の人生は、日本が明治維新という歴史の転換点を経て社会のありようが大きく変動するまっただ中にありました。海旭は仏門に学び、十年間ドイツに留学します。帰国後、下級労働者を救済する「無料職業紹介所および宿泊所」を開設したり、教育家としても、芝中・高校の校長を務め、いくつもの学校の設立・運営にかかわり、と、著者がいうように「ひとつの器におさまりきらない」海旭は、さまざまな活動を結実させていきます。将来を見据えていま必要なこと、を見抜く力、判断力はなみのものではありません。
そんな例として、私が心に残ったエピソードのひとつにこんな話があります。
奇しくも、明治29年6月「明治三陸大地震」が起こり、大津波が東東北沿岸を襲いました。そのとき、「浄土教報」主筆であった海旭は、すぐさまこんな呼びかけ文を掲載します。
1)各寺に義援金箱を設置し、被害地の一助に充てよ。2)浄土宗学本校・支校生は、休みに入るので、罹災者を慰問せよ。3)尼衆諸姉は看護婦となり、現地に赴け。4)諸師兄が詠み終えた新聞雑誌小説を現地に送れ。5)父母を失った小児を寺で救済せよ。救護の第一位にすべきものだ。6)一時の救済に終わってはならない。世の冷熱に順わず、永久の忍耐と熱誠をもってあたれ。
このとき、海旭24歳。その後、ドイツ留学へと旅立ちます。
埋もれていた「傑物」渡辺海旭の「物語」、興味をもっていただけたなら、ぜひお手にとってみてください。

著者プロフィール

前田 和男(マエダ カズオ)

1947年東京生まれ。渡辺海旭の母校であり、海旭が校長をつとめた芝中・芝高六十回生。
東京大学農学部卒。翻訳家、ノンフィクション作家、編集者。路上観察学会事務局。資生堂化粧文化研究会会員。
著書に『民主党政権への伏流』(ポット出版、2010年)、『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書、2009年)、『選挙の裏側ってこんなに面白いんだスペシャル』(ビジネス社、2007年、三浦博史との共著)など。
訳書にジャスティン・リチャードソン&ピーター・パーネル/文、ヘンリー・コール/絵『タンタンタンゴはパパふたり』(ポット出版、2008年、尾辻かな子と共訳)、J・バルドーニ『名リーダーに学ぶ説得術』(ベストセラーズ、2004年)、O・ハラーリ『パウエル リーダーシップの法則』(ベストセラーズ、2002年)ほか。