2005-03-18

【『Gay @ Paris』用・原稿】はじめてのゲイバー@パリ

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 写真をクリックすれば、画像が拡大されます。予約者が100人集まれば刊行されるかもしれない『PHOTOエッセイ Gay @ Paris』はまだまだ、予約を受け付けています。以下は、それ用に書いた文章です。比較的長い文章ですので、興味のある方は御覧ください。

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その日は朝から、雪が降り続いていた。数分間、歩いていると手がかじかんでくるくらいに寒い。

パリでは何日も続いて雪が降るなんて、とても珍しいことだという。世界的に知られている建物や通りに降り積もる雪は、パリに似合っている。街の魅力がよりいっそう、引き立てられる。

 その夜、ポンピドゥー・センターの入り口前で夜、初めて会うフランス人のゲイ男性と待ち合わせをしていた。

 それまでも、パリのゲイ・タウンであるマレ地区には何度も足を運んだけれど、ゲイバーに入る気概を持てなかった。客が怖いというのではない。日本ではしばし、二丁目のバーに行ったことがあるし、『伝説のオカマ』東郷健さんの取材時には、毎週といっていいぐらい、当時、氏が経営していたゲイバー『サタデー』に通い詰めた。店内でまぐわう客を見かけたこともあるが、他の客がいるところで人目も憚らず愛を交わすことなど、ずいぶん長閑だと思いはしたが、気色悪いとかヘンなものを見せられた、という不快感はまったく湧かなかった。

 マレ地区のいくつかの店内をのぞくと、白人だけが集まっている。私が見た店がそうなのか、時間帯が悪かったのかは分からないが、東洋人も黒人も見あたらない。店に入ったときに、東洋人にたいする侮蔑の少し混じった視線をあびるのではないかと思い、入るか入るまいか悩みながら、店の前を何度も行き交いし、けっきょく入らずに帰る……ということを何度か繰り返していた。外国人の中には、日本人しかいない空間に入ることが怖いという人がいる。同様に、白人しかいない空間に入ることに、忌避感を覚えてしまう。

 四年前に、東郷健さんに頼まれて、私はニューヨーク旅行をした際に、ゲイ・タウンに足を運んだ。東郷さんから、そこでゲイ雑誌とゲイ・ビデオを買ってくるように言付かっていた。その際に、せっかくならばゲイバーに寄っていきなさいヨ……ということで、タクシー代と称していくらかのお金を渡されていた。

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2005-03-14

【Gay @ Paris】用原稿 ……パリのマザー・テレサと呼ばれた女性…… 〜トランスジェンダーのパリ市議・Camille Cabralさんに会いに行く〜

写真を新たにつけました。写真をクリックすれば、特大なのがみられます。比較的長い文章ですので、興味のある方は御覧ください。

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メトロの最寄り駅から歩いて30秒ばかりのところに事務所はあった。

いつものように空は一面、鈍色の雲で覆われていた。しかし、息を吐いても白くならない程度にまで気温が上がっており、春の到来を感じさせた。

時計に目をやると、待ち合わせの時間まで30分以上ある。あまり早く着きすぎては礼を失すると思い、カフェに入った。

その日の取材には、私と同じ大学から交換留学制度をつかってパリに留学中の女性が付き添ってくれた。自分のつたないフランス語のために、取材相手と意志疎通が図れなかったら困る。そんなときに手助けしてもらおうと思い、同行してくれるよう頼んだら、快諾してくれた。わたしは事前にいくつもフランス語で質問を用意した。自分の手に余った質問を日本語で彼女にメールしたら、それをフランス語になおし、用意してきてくれた。

わたしはエスプレッソを、彼女はオムレツとクリーム入りの珈琲を頼んだのだが、店員があやまってオムレツを二個もってきた。湯気がたつ作りたての健康そうな黄色をしたオムレツはとても美味しそうに見えたけれど、昼食をすませてきた私は一つ食べきるほど、お腹が空いていない。それにいくばくかの緊張を覚えていたから、コレステロールの高そうなものがとても喉を通りそうになかった。彼女が「一つしか注文していないけど」といって、引き取ってもらった。

その日、取材することになっていたカミーユ・カブラル(Camille Cabral)さんとは以前に一度、顔をあわし挨拶も交わしていたのだけれど、フランス語で改まってインタビューするというのは、これが初体験であった。それまでも何度か何人かの人にインタビューをしようと思ったことがあったのだが、自らの語学力に自信がなく、ついぞインタビューする機会をもたなかった。

待ち合わせ時間の一〇分前になってから、私たちは店を出た。 続きを読む…