2003-10-03

第7回 PubLineWeb

●PubLineとは何か?
 
出版業界にいる方なら既にご存知かと思いますが、「PubLine」とは紀伊國屋書店が提供しているオンラインでの販売情報の閲覧サービスです(正確には「PubLineWeb」)。
以下に紀伊國屋さんのホームページにあるPubLineについての説明を引用します。
 

■ PubLine(パブライン)
POSレジで管理される紀伊國屋書店全店の販売情報を、インターネットを通じて出版社やそのほかのメディアに公開しています。
販売データ分析による増刷手配、また購入者の性別や年代ほかのデータ分析による新商品のマーケティング等、PubLineを有効に活用する出版社が増えています。

 
 
●PubLine以前
 
書店の実売データ(しかも詳細なもの)が翌日にわかる、などということは一昔前では考えられないことです。当事者ではないので私が書くのも恐縮ですが、DC-POS(講談社が作った実売データの収集システム)やレインボーネットワーク(学研・河出書房新社・光文社・主婦と生活社・祥伝社・新潮社・筑摩書房・中央公論社・文藝春秋社・KKロングセラーズの10社が集まって作った実売データの収集システム)では、データの収集と集めたデータの処理に莫大な金額を費やしていました。そのため、そのデータを利用できるのは応分の負担が可能な版元に限られていました。また、PCの普及以前のことですから、データの集計ひとつ取っても「Excelで気軽に」などということは有り得ず、プログラムの変更を伴う作業となっていたのが実態だそうです。
 
 
●その当時の参考資料
 
DC-POSの実際や活用などについて詳しく知りたい方は当事者である永井祥一さんの『データが変える出版販売』をお読みください。1994年の刊行ですが、今でも役に立つ、実売データの活用を知るための必読書です。
レインボーについては残念ながらまとまった資料がありません。現在、日本出版インフラセンターの本間さんにしっかりとした資料をまとめていただければと思いますが、どうでしょうか。
 
 
●『出版販売を読む』
 
さらに遡ってお勧めしたい名著(と言って良いと思います)があります。みすず書房の相田良雄さんの『出版販売を読む』です。この本にはPOSやパソコン・インターネットなどが存在する前から販売データを計数管理していた先人の偉大な叡智が詰まっています。営業に関わる人間だけでなく、出版社で働く全ての方におすすめします。
 
 
●PubLine以降
 
現在ではPubLineをはじめ日次のデータだけでも過去の努力を遥かに上回る質と量のデータが利用可能です。さらに月次であれば4000以上の書店の実売データが安価に利用可能です。これは、件数にして25%、実売では75%以上をカバー(弊社の場合)する驚異的なデータです。これらをもてあますことなくどう活用するか、現時点での大きな課題であると考えています。
 
 
●PubLineで出来ること
 
PubLineでは前日までの店舗毎の単品の実売(日次・週次・月次)がわかるだけでなく、入荷・在庫・返品、購買客の性別・年齢層、雑誌の号数別販売実績、さらにそれらのほとんどについてグラフ化することも可能です。また、これは大きな特徴ですが、自社のデータだけでなく、他社のデータについても全く同様に確認できます。つまり、自社の商品と他社の商品の実売、自社の営業活動と他社の営業活動の成果を比較することさえ出来るのです(実際弊社ではそういう使い方もしています)。
PubLineで出来ることについてさらに知りたいと思った方は(株)紀伊國屋書店 店売推進部 PubLineWEB係までお問合せください。連絡先はこちらのページをご覧ください。
 
 
●PubLineで出来ないこと
 
上記の通り、PubLineは非常に優れたシステムです。これ以上手を加える余地などないのではないか、と思えるほどの完成度です。
ですが、PubLineにも出来ないことはあります。出来ない、というよりは「書店と版元の立場の違いによる視点の違い」があるということなんですが、版元としての視点でデータを活用するためにはやはり独自のノウハウをためていく必要があると考えています。ですので、PubLineの画面を眺めるだけでなく、そのデータを自社に蓄積し、自分で集計してみることは無駄ではないと考えています。