2005-03-31

仏映画『L’Esquive』は、フランスの『パッチギ!』だ!

映画館に入り浸るのがこの上ない喜びですので、最低でも週に三回は映画館に足を運び、映画鑑賞に耽っています。最近は完璧とはもちろんいえないにせよ、フランス語も徐々に解するようになってきましたから、フランス語映画を積極的に観るようにしています。

2005年1月-3月の間で、心に残った映画は以下の、五作です。

①:英国映画『Vera Drake』
②:仏映画『最晩年のミッテラン』(Le Promeneur du Champ de Mars)
③:仏映画『L’Esquive』
④:仏映画『受難』(Calvaire)
⑤:アニメ『ハウルの動く城』

 『L’Esquive』以外には、本欄で短評を書いたので、ここでは触れません。英国の中絶を描いた①の映画は今夏、日本でも上映される予定です。心に残る作品の場合、必ず2〜3回、見るようにしています。①〜⑤はどれも繰りかえし見ました。

先日、パリに大学時代の知人が来ました。
「ぜひ、パリの映画館にいきたいです」
 というので、レ・アール(Les Halles)のシネ・シテ(CinxJ�?Cite)に行き、仏映画『L’Esquive』を見ました。英語もフランス語も解さないというから、ならばフランスの国語たるフランス映画を見ようということになりました。同映画をその前に、一度見ており、仏語をわからなくても楽しめるであろう……という私の読みはあたり、とても喜ばれました。

同映画はセザールで、四つの部門で賞をとっています。

舞台は治安悪化で有名なパリ郊外、登場人物は15歳の少年・少女たち。役者は現地調達だそうです。移民が多く住む郊外だから黒人や移民の子どもが出てきて、まるでドキュメンタリーのような展開になります。物語は「言葉の連打によるケンカ」と「恋愛」から構成される。井筒和幸・監督の『パッチギ!』が殴り合いという肉体的ケンカの繰り返しならば、『L’Esquive』は言葉の応酬・マシンガントークです。

いったい、どのようにして演技指導したのかは分からないが、おそらく役者は「素」でやっているのではないかと思えるぐらい、迫力があります。フランス語を解さない知人も、激しい口げんかに、圧倒されていました。交わされる単語は分からないのに、何となく何が話されているか、何でケンカしているか、表情・声色から伝わってくる、というのです。

ストーリーは、クリモという移民の息子がリンダという同級生に恋をするという話。クリモの母親は仕事をしておりまして、父親は監獄に入っているという設定です。リンダはとても気のつよい女性で、同級生の女性と口論ばかりしています。
登場人物が通う学校では演劇発表会がありまして、リンダが貴族みたいな女性の役をやります。クリモは彼女のことが好きだから、求愛する役をやります。

で、そのあと、二人の恋にまわりの友人が介入して、話はよけい、こじれていく……というドタバタした話に展開していきます。