2007-11-11

ADHD 「片づけられない症候群」って何だ?(2)

オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

主題:ADHD 「片づけられない症候群」って何だ?(2)
副題:「飽きっぽい、面倒くさい」

【本文】

メモしても、メモの所在がわからない

 A子さん(2004年に取材、当時35歳)は専業主婦。幼少時から、物忘れがひどく、時間に遅れることが多かった。すべき物事に優先順位がつけられない傾向があった。

 本人に自覚症状はあり、両親や兄妹も同様に感じていた。大学4年生の時に、「物忘れがひどい」「すべき物事に優先順位がつけられない」「日常生活の中で円滑に物事ができない」という症状が強くなり、卒業論文を提出期限内に仕上げることができず、1年間留年した。メモを取って、忘れないようにしようと工夫しても、メモの所在がわからなくなったり、メモをとったことすら忘れたりすることも多かった。大学卒業後は地元市役所臨時職に4カ月就職後、同市漁協事務所に正職員として採用され勤務した。しかし、いずれの職場でも就業開始時刻に間に合ったことがなく、ほぼ毎日遅刻だった。

 26歳で恋愛結婚し、翌年、長女を妊娠した後に退職、専業主婦となり3児をもうけた。それからADHDの症状が一層強まった。たとえば、先の見通しが立てられないため、不必要なことをしてしまい、予定時刻より30分遅刻をすることが多かった。夕食の買い物に長時間かかり、夕食の時間が大幅に遅れることも日常茶飯事だった。あるとき、『片づけられない女たち』を読み、自らの症状に酷似していると思って、病院の精神科に行った。そして、ADHDだと診断された。

 次はB子さん(2004年に取材、当時20代)のケース。彼女は家の2階で片づけを始めたときに、ふとタオルがないことに気づいて、階下に取りに行ったら、何をしに来たのか忘れてしまった。そして、脱ぎっぱなしの靴に気づいて、それをクローゼットにしまおうと靴を持って上がったところ、ベッドの上に雑誌の旅行ページが開きっぱなしになっていたのに気がついた。旅行の計画を立てていたために雑誌を読んでいたのだ。そういえば申込期限が迫っているワ……。と思い出して、あわてて旅行会社の電話番号を探しにかかった。でも部屋中が紙の山。探していたら、支払っていない請求書が出てきた。支払いに行くにも車はガス欠だし、カギも見つからない。

手続き面倒で出張フイ

 東京都内で働くUさん(2001年に取材、当時24歳、女性)の話を紹介しよう。「いつだって、何か手続きをすることが面倒で仕方ない」ことが悩み。DVDのソフト製作会社の正社員で、映像に音声を合わせる映像編集をしている。機械の操作が微妙で、センスも要求され、仕事は職人芸に近い。その才能が評価されて2001年4月、海外での映像機器の展示会に出張することになった。ところが、ビザの申請だけで気が滅入ってしまう。彼女はなかなか申請に行けない。とうとう出発の2週間前になり、ビザが間に合わず、海外出張は中止になった。

 正社員になる前は、彼女は事務や会計業務のアルバイトだった。そのときは時間にルーズなうえ、ミスが多かった。彼女の仕事はその後、映像編集に。機械の操作を教わっただけで、普通は数年かかる作業に約2カ月で慣れた。すぐ仕事を任され、社員にも昇格できた。

 海外出張の件で落ち込んでいた6月のある日、友人から

 「これあんたのことじゃない?」

と 『片づけられない女たち』 を薦められた。

大学病院精神科でADHDと診断

 職場でじっと座っていられない。仕事に必要な物をしょっちゅう忘れる。集中できない。ただし、知能が高いことが多く、社会人としての生活はできる。周囲からは単にドジなどと見られ、本人は密かに悩むケースも多い。本に書かれている内容を読み、Uさんはすべてが自分に当てはまると感じた。

 大学生になって、1Kのマンションでひとり暮らしを始めた。だが部屋を片づけられた状態に維持するだけでも大変な労力を要した。

 本を片づけていたら、ゲームに目が留まって始めてしまう。ふと我に返ったら、部屋は何も片づけられていない。掃除に集中するということが難しいから、いつの間にか部屋中に物が散乱していた。

 恋人が来る前日は1日かけて掃除をした。週に3回くらい遊びに来たから、恋人と会うか、掃除かで1週間のほとんど潰れてしまう。別れてからは掃除をする必要がなくなったため、部屋は荒れる一方だったが、それほど気にもならなかった。

 本を読了したUさんは、大学病院の精神科で診察を受け、ADHDと診断された。

 「誰でもできる簡単な手続きができないとか、今まで自分を悩ませてきたことの理由が明らかになって、すっきりしました。自分の状態に名前をつけてもらえただけで、気分が明るくなったんです」

 「小さいころから私は片づけられない女の子でした。宿題が片づけられない。部屋も机の中も片づけられない。忘れ物と落とし物、授業中のよそ見と私語はクラスで一番でした」

 Uさんはそう語る。

(続く)