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青の色ムラ

紙に色を乗せて、「おお…!」と思う体験が少なくなりました。
(しいて言うなら万年筆を使ったときと、ハンコを押したときくらいでしょうか)

先日、ポット出版の新刊『まるわかり幼稚園ライフ』の色校正が出来上がってきました。
今回表紙の厚紙には、気包紙Uという紙を使いました。気包紙にはU(非塗工)とC(塗工)の2種類があり、CはUV印刷専用で、Uに比べてちょっとつるつるしています。紙本来の風合いを持ち、やさしい手触りで、コンセプトはその名の通り「気持ちを包む紙」。
この本は、幼稚園ってどんなところだろう?というギモンを解消してくれたり、子育てに関する悩みや不安を和らげてくれる本なので、あたたかみのある紙を使いたかったのです。

ところで最近のポットでは、並製本に見返しをつけないことが多くなりました。
見返しは、表紙の内側に貼られる紙のことで、半分は表紙に貼られ、もう半分は「遊び」として独立しています。(のどから数ミリは、本文束に貼られて表紙と本文束をつなぐ役割を果たしている、であっているのかな…)
見返しには色紙が使われることが多く、本を補強するだけでなく、装飾する役割をもっています。

いまから数年前、この「見返し」がなくても本の強度に問題はないのではなかろうか。という説が有力になってきた頃に、見返しをつける/つけないという選択肢を持てるようになりました。(たしか沢辺さんに「見返しをつける理由を考えろ」と言われたことがきっかけだった)

見返しをつけない場合は、表紙の内側が丸裸になるので、ポットではそこに印刷をして装飾することが多い。
今回は表紙の外側(表1から表4)はは真っ黄色に、内側(表2から表3)は真っ青にしたいので、それぞれブルーナカラーのような特色インキで刷ってもらう計画です。

話は戻って、気包紙Uに刷った表紙の色校正紙を見てみたところ、青色の塗りにムラがありました。
紙の表面がぼこぼこしているためにムラが出たのだと思います。
(黄色は色味が薄いのでムラがほとんど見えない)

私は「インキを盛ってなるべく色ムラを軽減させてください」と指示を入れたものの、なんだか違和感が残る。
そして小久保さんにチェックしてもらったところ…
「この色ムラも、テクスチャみたいで良いじゃない。この色ムラを活かすのもアリだよ」という言葉。
そうか! かすれやズレやムラ、自分の予想外の現象も楽しむ!
ふだんデスクトップで文字を入力したり色を塗ったり描いたりしていると、忘れがちなこの姿勢と感覚。

桑沢に通っていたとき、印刷実習の先生がシルクスクリーン工房をやっていたので何度かシルクスクリーンを体験させてもらったことがありました。木枠に糸を張って作った布のような版の絹目にインキを乗せ、スキージというゴムの道具でインキを押し通して印刷物に色を乗せるので、インキが滲んだり、かすれたり、乗りすぎたり、ずれたりと仕上がりには失敗がつきもの。版がうまく作れたかどうか、インキの量は適切かどうか、スキージの押し引きの力加減、版を印刷物から離すときなど、とにかく加減がむずかしいのです。

はじめてシルクスクリーンでTシャツに印刷したとき、案の定うまくはいかず、インキが刷りたいところからはみ出て滲んでしまいました。 先生は、それを見て「失敗もたのしむんだよ〜」と言って筆でぴゅっぴゅっと書き足して模様にしてしまいました。

小久保さんの言葉に思い出されました。先生がおっしゃっていた、「失敗もたのしむ」。
今回でいう失敗とは、紙の性質によってインキの乗り方、発色の仕方が違うことによる刷り上がりを想像しきれなかったこと。もちろん失敗したらまずいこともありますが、“この種の”失敗はたのしんでなんぼ。
「インキを盛ってなるべく色ムラを軽減させてください」という指示を消した私は、満足したのでした。

昨日の反省

前回の日誌に対して、那須さんが口頭で“赤ペン”を入れてくれました。訂正箇所と教えて貰ったことを以下に書きます。

>ゆうに30分という時間を費やされていました。(9〜10行目)
>熱く議論されていました。(22行目)
>デザイン部の方が、日々頑張っておられます。(24行目)

まず、日誌を書く自分の立場を考えること。
あくまで、内部の人間が内部の出来事を語るのだから、過剰な敬語は不要。「会
議は30分でした」程度の表現で十分。社外から電話を受けたとき、社内の人間
に対して敬称を付けたり、敬語を用いたりしないのと同じ。

>大村紙業さまへの発注票打ち込み(4行目)

大村さんは確かに外部の企業。但し、ここでは業務内容のタイトルとして用いて
いるだけなので「さま」は不要。
加えて、例えば大村紙業の社員さんと話すときも「大村紙業さま」とはいわない。
普段からお付き合いが長いこともあり、過剰に持ち上げると慇懃無礼になってし
まう。

後者に関連して、ポットでは外部に業務を委託するとき「発注する」とは言わず、「お願いする・依頼する」と言い換えるルールがある。「発注する」は、“上の企業”が“下の企業”に仕事を流してやる、というニュアンスのため。対等に仕事をする相手に対して、そういう言葉は使いたくないと考えている。

自分の言葉遣いがぐちゃぐちゃだなぁ…ということ、そして、信頼関係は言葉でも築かれるのだな、ということを感じました。今日の日誌にも、たくさん“赤ペン”の箇所があると思います。気付いたら、ご指摘お願いします。

今日で、ポットに来て最初の一週間が終わります。私にとっては、大変でしたが楽しい一週間でした。次週は火曜から金曜までの出社です。まだまだたくさん迷惑をかけてしまいますが、来週からもまた、よろしくお願いします。