2006-06-12

感激!佐藤真海さんの笑顔

わたしはその人の笑顔をいまも鮮烈に覚えている。

大学の学部時代、野球を観戦するのが趣味だった私は神宮球場に通い、六大学野球を熱心に観戦した。六大学野球の学生席ではリーダー・チアリーダー・吹奏楽団から成る応援部が陣取り、学生の応援を指揮する。

わたしは野球も好きだけれど、学生の観客・応援部が一体となって選手を応援する空気がとても好きだった。心地よかったし、元気をたくさんもらえるような気がした。

2001年の5月に入ってからだろうか(時期に関する記憶は曖昧なのだが)、新人のリーダー・チアリーダーが神宮デビューした。神宮デビューとは応援部の一員として一年生が応援に加わることを指す。リーダーはまだかわいげの残るごつい声をあげ学生席を盛り上げ、チアリーダーは応援曲メドレーにあわせて愛らしくしかし力強いダンスを披露し選手を応援する。

頭のところまで足を上げるハイキックをするとき、一年生はまだ体が十分に柔らかくなっていないせいか、足がお腹のところぐらいまでしかあがらないチアもいる。少しテンポが遅れることもあり、しかし、そういう入り立ての初々しさが眩しく微笑ましかった。

わたしはいつだったか一年生の一人のチアリーダーに目がとまった。
そのチアは周りの誰よりも笑顔がひらけていてまぶしかった。
ただ、愛らしいというのではない。まわりに光を放つような明るさと、人の心を和ませるようなやわらかさをもった笑顔だった。

彼女の笑顔を見ていると、きっと素晴らしいチアリーダーになり、応援部をひっぱっていくのだろうナ……と思われた。

その女性、佐藤真海さんのことで覚えているシーンはもう一つある。

六大学(東大・法政・明治・慶応・早大・立教)の応援部が一同に介して、応援歌・応援曲・勝利の拍手・校歌(塾歌)を披露する六旗の下にというイベントが毎年6月開催されている。どの年だったか覚えていないのだけれど、そのステージで真海さんを見たような気がする。四年生のチアリーダーが応援曲の演奏にあわせてダンスをするのだけれど、たしか真海さんは、「W・S・A・D・A」と一字ずつ書かれたプラカードをもって途中登場し、それを左右に振り去っていたのではなかったか(だいぶ前の過去なのでわたしの記憶違いかも知れない。事実と違ったら御指摘ください)。

いつからだったろうか、神宮に行っても彼女の姿が見受けられなくなった。
リーダーやチアリーダーが途中からいなくなる……ということは残念ながら時折ある。理由は様々だろう。厳しい部活動についていけなくなった、思っていた部活動と違った、自由の利く時間がほとんどない………などが考えられる。彼女もきっと何らかの事情があり応援部を去ったのだろうな……と思った。わたしはそれ以降、彼女のことを思い出すことがなかった。

ところが、ある日、手に取った早稲田大学の広報誌「ワセダ・ウィークリー」(http://www.waseda.jp/student/weekly/contents/2003b/007c.html)の表紙で、忘れることのできない真海さんの写真を見た。彼女のインタビュー記事だった。記事を読んで驚きを禁じ得なかった。記事にはこうあった。

 真海さんは大学二年の夏、突然、右足首に激痛が走ったという。テーピングで凌ぎ、シーズンオフを待って病院へ行った。「悪くても疲労骨折か!?」と思い、念のためレントゲンを撮った。結果を見た医者の顔色が変わったという。病気は骨肉腫であり、三カ月の入院治療後、右ひざ下から切断し義足の生活になった。

 しかし、話はそれだけでは終わらない。
 彼女はその後、障害者スポーツに出会いスポーツ選手になる。
 2004年にはアテネパラリンピックの陸上競技・走り幅跳びに出場し、九位につける(3m95)。
2005年にはパラリンピックワールドカップの走り幅跳びに出場し4位(4m14)になり、2006年パラリンピックワールドカップでは走り幅跳びで3位(4m11)につける。

 スポーツ選手として世界的に活躍しているのだ。

 実は「ワセダ・ウィークリー」の記事に感銘を受けた私は編集部に彼女にメッセージを送りたいのでメールを転送してもらえないかと尋ねた。編集部から返ってきた回答は、彼女も忙しい身ですからそっと見守ってください……というものだった。

 本当ならば話はここで終わるはずだった。
 しかし、話はまだ続く。

 わたしはmixiを知人から誘われ、昨年九月からやっている。日記もまめに更新しているわけではないけれど、検索機能が充実しているので色々気になるワードを入れ検索し、面白そうな人を捜す……という作業は頻繁に行っている。

 二ヶ月ほど前、早稲田大学の応援部に興味があったので、「早稲田」「応援」というキーワードを入れて、検索した。すると、何十件かのリストの中に佐藤真海さんの名前があった。彼女の素敵な横顔がうつった写真がプロフィールに掲げられていた。
 そして、真海さんのブログのアドレス(http://blog.livedoor.jp/mami_sato/)もかかれてあった。早速ブログを見た。

 トップには彼女の愛らしく眩いばかりの笑顔が載っている。
 わたしが五年前にはじめて見た真海さんの笑顔より、もっとキレイだしステキだ。

 私は真海さんの活躍をこれから見守っていきたいとおもう。