2005-09-24

【論考】フランスから見た小泉圧勝・新保守・極右【宮台論文を受けて】


【写真】上からサルコジ氏、ドヴィリエ氏、ルペン氏、ドラノエ市長。 いずれも筆者が撮影。クリックすれば画像が拡大。

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宮台真司氏は先の総選挙のキーワードを

「農村型保守=旧保守、都市型保守=新保守(新保守主義ではない)、都市型リベラルの、三つだ」と指摘し、「小泉支持層のメインは旧保守でなく、新保守=都市型保守だ」と喝破した。小泉圧勝という結果に終わる前に、である。

http://www.miyadai.com/index.php?itemid=302

宮台氏は新保守を「過剰流動性と生活世界空洞化で不安になり、『断固・決然』に煽られるヘタレ保守」と名付けた。

フランスで新保守の受け皿になってきたのは、ジャンマリ=ルペン党首率いる極右政党『国民戦線』である。彼らはいう。「フランス人のためのフランスを」と。移民流入の恐怖を煽り、徹底した排斥を唱え、一方で「死刑復活」を高らかに掲げ、犯罪に対して厳罰で臨むべし……という態度をとり、治安強化を訴えた。国民戦線の集会に参加するたびに、その多様なメンツに驚かされた。都市郊外に住んでいるような若者たちが多く参加する一方で、南仏からやってきたおじいちゃん・おばあちゃんたち、退役軍人も闊歩する。若者たちはルペン氏が登場すると、「Le President」(党首様〜〜ッ!)と絶叫する。

宮台氏の云う「過剰流動性と生活世界空洞化で不安」になった人々がルペン支持に流れていることを証明するデータを紹介しよう。

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ルペン党首がシラク大統領とともに決選投票に進出した2002年仏大統領選挙第一回投票の世代別投票動向(フランス大手調査機関・IPSOS調査)を見ると、16人いる候補者の中で18-24歳ではルペン党首が一番人気で16%もの支持を獲得、二位のシラク候補・ジョスパン候補(当時、首相。社会党)は各々14%。25-34歳ではシラク支持が18%(1位)なのに対し、ルペン支持は17%(二位)。職業別で見ると、失業者のルペン支持は38%でダントツ一位。二位のジョスパン(社会党)支持に(13%)大差をつけた。工場労働者の支持率でも30%とルペン氏が二位のジョスパン氏(15%)を圧倒。「過剰流動性と生活世界空洞化で不安」になった人々がルペン支持に傾斜したことはあきらかであろう。

しかし、2002大統領選挙後、シラク大統領がとった政策はより流動性を高めるものであった。ラファラン首相率いる内閣では社会党政権下で実施された社会福祉国家的諸政策の見直し・改革を断行した。一方で、アメリカ的グローバリズムに対抗する形で、欧州統合を進めていったのだが、皮肉なことに、英国の強い交渉によりEU域内における経済競争を推進する『欧州憲法』ができあがってしまった。

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2005年5月29日に行われた欧州憲法・批准をめぐる国民投票を前にして、極右・極左陣営は批准によって「流動性が高まる」と大合唱。左翼は「経済的な自由主義がフランスを覆う」といい、極右は「安い労働者が大挙し、移民流入により社会が崩壊する」(*1)と危機を煽った。国民議会(定数577)に362議席を有するUMP(フランス国民運動連合)とUDF(フランス民主連合)というシラク与党はもとより、国民議会に149議席を有する最大野党の社会党、緑の党が欧州憲法の批准に賛成したにもかかわらず(国民議会の90%以上が賛成)、国民投票では大差で批准が否決された。

IPSOSによれば、憲法反対票を投じた人のうち、2002年仏大統領選挙第一回投票において16人いる候補者の中でルペン氏に投じたのは32.5%でダントツ一位。二位のジョスパン候補の18.5%を遙かに上回っている。

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さて、当ブログではUPM総裁にて内相をつとめるニコラ=サルコジ氏がフランスで人気を博している状況について繰り返し論じてきた。サルコジ氏は次のようにいう。「フランスが目指すべきは、欧州的な経済ではなく、米英型の競争社会だ」と。サルコジ氏は治安強化を掲げて、売春宿が廃されて以降 約60年もの間つづいてきた街娼(という文化/形態)をパリ市内から締め出し、次ぎに移民をターゲットにし、容赦なき排斥をすすめている。パリ市内・近郊の無人住宅・ビルで暮らしているアフリカ系移民を、今月に入ってから警察を動員して強制排除・強制封鎖した。マスコミを動員しての大パフォーマンスであり、サルコジ内相のリーダーシップを高らかにアピールした。

宮台氏はいう。

【鬱屈した彼ら(都市型保守=新保守)を吸引するのが、不安と男気のカップリングだ。不安を煽って、鎮められるのは「断固」「決然」の俺だけだと男気を示す。20年前の英米ネオリベ路線でも石原都政誕生でも見られた、都市型保守の定番的動員戦略だ。「不安のポピュリズム」と呼べる。 】

サルコジ路線は「不安のポピュリズム」の典型であり、極右のルペン氏を非難することで、極右との違いをアピールしつつも、極右へ流れ出た都市型保守を賢明に取り込もうとしている。分裂の危機に瀕している最大野党・社会党を尻目に、次期大統領が有力視されているサルコジ人気は、日本の小泉自民党・圧勝劇と相通ずるものがある。

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しかしながら、欧州憲法・否決後に首相に就任し、就任当初としては歴代内閣で過去最低ともいえる支持率(44%)でスタートしたドヴィルパン首相の支持率がここにきて急上昇している。イラク戦争の折に、外相として開戦に抵抗し世界に名を馳せた、ルックス抜群・弁舌さわやか、詩人にて歴史書・思想書を上梓し、貴族の家系というフランスの貴公子は就任するなり、失業と闘うことを宣言し、就任から「100日間」で成果を出すと宣言した。ドヴィルパン首相はサルコジ氏とは異なる「欧州モデルの継続」を掲げて経済対策に取り組み、最新の世論調査では56%もの支持率を得るに至った。ドヴィルパン人気は、米英流にたいして警戒的なフランス国民が少なからずいることの証左であろう。

一方で、IPSOSが政治家の人気度を調査したところ(7月20に発表)、フランスの政治指導者で一番人気が高いのはゲイであることをカミングアウトしているベルトラン=ドラノエ(社会党)パリ市長。彼に好感を持っているフランス国民は63%。同調査ではサルコジ氏が60%、ルペン氏は16%という好感度であった。ドラノエ市長は旧来の社会党型とはことなる、第三の道とでも呼ぶべき市政運営をすすめており、保守層からも支持を博している。

【表層の不安に惑わされずに「真の心」を見極めたがるフランス定番的モチーフに対し、人々の不安を鎮める「男気あるヒーロー」を愛でるアメリカ定番的モチーフ】(宮台ブログより)

「勇気あるヒーロー」を愛でるアメリカ定番的モチーフ(サルコジ)と「表層の不安に惑わされずに『真の心』を見極めたがるフランス定番的モチーフ」(ドラノエ氏やドヴィルパン氏)がフランス国内においてもいま拮抗している。

どちらが勝つのかは、2007年大統領選挙で判明する。

*1:『SAPIO』(小学館)7/27日号に、小生が執筆した【[国家主権]フランス「EU憲法」拒否の立役者ドヴィリエを直撃! 「国民は自分の運命をブリュッセルに委ねるつもりはない」/フィリップ・ドヴィリエ】で、フランス右派がなぜ批准に反対したのかを突っ込んで議論している。政党『フランスのための運動』党首・ドヴィリエ氏は、高齢のルペン氏にかわる右翼のカリスマとして注目。2007年大統領選挙に向けて、着々と準備を進めている。

このエントリへの反応

  1. お久しぶりです。これだけ人気があるにもかかわらず、周りでサルコジやルペンを支持している人を見たことがないのですが。「スターアカデミー」を見ていると公言するのが恥ずかしいのと同様に、実は隠れルペン支持が多かったりするのですかね。
    ところで、Dauphineあたりの学生はやはりサルコジ支持が多いのでしょうか?もしお時間があればDauphineの雰囲気などお聞かせください。

  2. お久しぶりです。御元気ですか。御察しの通り、Dauphineはサルコジファン、多いですよ。彼が講演すると1000人以上集まります。

  3. けんちゃん、チャッキョしてごめんね