2006-03-29

次期大統領?セゴレーヌ=ロワイヤル国民議会議員を語る。

『AntenneFrance』77号(2000年1月24日)から以下引用する(http://www.antennefrance.com/lib/archives/2000/01/antennefrance_n_76.html)。

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 「公立の中学、高校で生徒に経口避妊薬を配布」

 今後、学校の看護婦が避妊を望む生徒に対して渡すピルは「Norvelo」といい、排卵を抑制し性交後72時間受精を妨げる効果を表す。

 パリジャン紙では、この措置がフランスならではの物である事を強調している。
「わが国では、他国に先駆け、昨年6月より処方箋なしで買えるようになった。今回の教育現場に対するこうした決定もさらに革新的な対応である。セゴレーヌ・ロワイヤル教育相は、毎年 10000 件にも及ぶ未成年者の妊娠に言及し、この措置が決してスキャンダラスなものではなく、妥当なものだと主張している。」

 もちろん現在様々な反響を呼んでいる。教育相自身も「スムーズに周囲の同意が得られたわけではない」ことを認めている。現場の看護婦が「生徒を見守りその家族と話し合いをする義務を負う」ことになる。PTA の側からは「子供達がピルに安易に頼るようになり、子供達の性関係が増長されるのでは。それに家庭での性教育がおろそかになるのではないか。」との懸念が生じている。

 現実的な実施に関しても解決すべき点がある。「全国に公立の中学、高校は7500あるのに、看護婦は 6000 人しかいない。看護婦のいない学校はどうすればいいのか」と、全国学校看護婦組合は、疑問を抱いている。

 パリジャン紙は、2人の女子高生の意見も掲載している。「そのことは、みんなでよく話したわ。ママとも話したけど、大賛成だって言ってた。」と、ジェラルデイーヌ。「学校でピルを配るのはいいことよ。まわりにも子供を堕ろした子がいっぱいいるし、私と同い年なのにもう2歳になる子供を持つ友達もいるのよ。彼女が不幸だとは思わないけど、青春はなくしちゃったわよね。」

 19 歳のオディールは別の見方をする。「乱用されるんじゃないかと思う。女の子が薬を飲んでいるてわかれば、男の子にとっては、何でもありってことになるんじゃないの?」

 同じ高校の看護婦アニーは、今回の措置に好意的で、すでに4箱 Norvelo を注文した。「去年の9月からピルがあれば2人に渡していたんだけど。コンドームが役に立たなかった子と、Non って言えなかった子に。」アニーによれば、彼女の高校では毎年2〜3人が出産を余儀なくされて、10 数人が堕胎手術を受けているという。

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 まず、初歩的な誤りを指摘する。この記事で出てくるセックス後に飲む経口避妊薬「Norvelo」は「Norlevo」(ノルリーヴォ)の間違いだ。『いざというときの緊急避妊法』(http://finedays.org/pill/emergency.html)というサイトは、『朝日新聞』が1999年12月4日に報じた記事「世界のくらし 「速効避妊薬」仏で論争 若年層中絶、年に6000件 中学・高校で配布へ」を紹介しており、その記事によれば「この避妊薬は受精卵の子宮への着床を妨げる作用があり、二十四時間以内に飲めば妊娠を九五%防ぐ効果がある」そうだ。
 同避妊薬は99年から薬局で処方箋がなくても購入できるようになっており、2000年からはセゴレーヌ=ロワイヤル教育相の決断により希望生徒に対して高校で配布されるようになった。
この措置に対しては大まかに三点の批判があり、一点は「性のモラルが低下する」という性道徳主義のものであり、第二点はコードームを使用するセーファー・セックスの低下を危惧する声であり、避妊薬が普及すれば生でセックスし中出しする学生が増えるのではと懸念する。三点目は学校専属の看護婦が少ないため効果が低いのではというものだった。三点目の批判を受けて、2002年からは薬局で18歳以下の女性に無料で同避妊薬が配布されるようになった。

 一連の避妊薬政策にはロワイヤル氏が積極的に関わってきた。次期大統領と目されるロワイヤル氏は性道徳主義にまけず女性の自己決定を支援する闘士としての顔も持っている。