2007-09-26

仏極左政党の若手党首が新党結成の決意表明

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日刊ベリタ』に【仏極左政党の若手党首が新党結成の決意表明】というタイトルの記事を執筆しましたので転載します。

【本文】

 トロツキズムを掲げるフランスの極左政党「革命的共産主義者同盟」(LCR)のオリヴィエ=ブザンスノ党首は19日、同党を発展的に解消して、あらためて新党を結成する用意があると語った。LCRは今年7月に採択した政治宣言の中で、新党の理念は「反資本主義、フェミニズム、環境主義、国際主義、社会主義」になると強調。同党はトロツキズムという既存の枠を超えて、「反グローバリズム」や「反資本主義」を旗印に、幅広い政治勢力の結集を目指す方針を示している。野党第一党の社会党に不満を覚える左派をまとめようとしているようだ。 
 
 AFPによると、ブザンスノ氏は

「LCRは歴史の新しい頁を開こうとしている。新党はトロツキズムに根ざした政党を目指すのではない。資本主義に代わる新しい世界を創ろうと願っている全ての人たちのために、『反資本主義』の名の下に大同団結する政党を創る」 
 
 「新党は今までの政党とは全く異なる完全に新しい組織だ。党が前衛で大衆を啓蒙していくのだという考えは捨てる。新しい世紀は新党と新しい政策を要求している。」と語った。 
 
 LCRは1930年に結党された「フランス共産主義同盟」の系譜にある極左政党で、反スターリニズムを掲げる第4インターナショナルにつらなり、プロリタリア独裁を放棄し、議会制民主主義に則った政治を尊重している。 
 
 ブザンスノ氏は国民的人気の高い政治家で現役の郵便局員だ。平日は郵便配達をしていて、退社後の時間や休日を政治活動に捧げている。2002年春のフランス大統領選挙に27歳の若さにしてLCR公認で出馬して、 同党史上最高の121万0562票(4・25%)を獲得して善戦した。 
 
 今春の大統領選挙ではマリー・ジョルジュ・ブュフェ「仏共産党」議長や反グローバリズム運動の闘士ジョゼ・ボヴェ氏、アルレット・ラギエ「労働者の闘い」党首など他の左派候補が、2%にも得票率が達せず大惨敗した中で、「僕らの人生は彼らの収益よりも価値がある!」をスローガンにしたブザンスノ候補は前回獲得票を28万8019票上回る上位から5番目の149万8581票(4・08%)を得て健闘した。 
 
 同じくトロツキズムを掲げる極左政党「労働者の闘い」が未だにプロレタリア独裁を掲げる中、LCRは早くから議会制民主主義の尊重を掲げるなど柔軟さがあり、左翼的な過激さはなく、フランスでは国政政党として認知されている。新党結成の動きはトロツキズムからの脱却を意味し、大衆政党に脱皮しようとする同党の意気込みといえる。 
 
 LCRは、これまで国政選挙や地方選挙には積極的に候補者を立て、今年6月の下院議会議員選挙では577ある選挙区のうち、当選者はゼロだったものの492人の公認候補を擁立した。同党のスローガンは「100%左翼」というものだ。基本理念として「マルクス主義」「トロツキズム」「共産主義」を謳ってきた。 
 
 日刊紙「パリジヤン」8月24日号のインタビューでは、ブザンスノ氏は「『反資本主義』を訴えるすべての人たちと『もう一つの社会』を訴えるすべての人たちと新しい組織で私たちは協力してゆきたい。私たちの提案は、LCRのリメイク版や古い組織が化粧直ししただけの政党に参加しようというものではない。LCRの遺産を否定することなく、我が党は新しい歴史の一頁を開かなければならない。いま、求められているのは、新しい政治の時代であり、新しい政党だ」と述べ、旧態依然とした左派の体質からの脱却を訴えた。 

写真脚注:記者団の取材に応じるブザンスノ党首(2005年、及川健二・撮影)。