2005-07-15

年金改悪に反発!パリ市内の交通機関はすべてストップ。全面ストライキは三週間も続いた。

1995年の冬に起きた大型ストライキは、いまでもフランスでは語りぐさになっている。

当選して一年も経っていない保守系のシラク大統領は、14年に及ぶ左派系のミッテラン政権で培われた社会システムを改革すべく、まず公務員の年金制度に手をつけようとした。

しかし、フランスの組合側は当然、待遇を悪くする改革案を飲まず反発した。シラク政権は妥協することなく、新政策を断行しようとした。そして、95年12月、公務員労働者によるストライキが始まった。

パリ市内の地下鉄・郊外電車・バスは労働者によるストライキのため、全面ストップした。交通手段を失った市民が車を使ったため大渋滞。道路もまともにつかえない状態だった。市民は歩くしかなかった。

想像してほしい。東京都内で、小田急線・京王線・中央線・山手線・西武鉄道・総武線etcがストのためすべてとまり、バスもはしらず、営団地下鉄・都営地下鉄もストップ……という状態がパリで三週間も続いたのである。

電車の1,2分の遅れすら許さない日本人ならば怒るであろう。

「利用者のことを考えろ」

と。しかし、パリ市民の過半数以上はストを支持したのである(データはパリに置いてきているので、パリに戻りましたら、紹介します)。公務員の年金改革の次は、国民全体の年金改革につながる……と判断したのだろう。

日本では昨年、与党が年金改悪案を強行採決した。しかし、国民的な反対運動はほとんどといっていいほど、盛り上がらなかった。フランス人であれば間違いなく、95年冬以上の反対運動が組織されただろう。

次のように言う人もいるかも知れない。

「フランスは組合が強いから、政府・経営者に抵抗できるのだ」

と。馬鹿をいってはいけない。

フランスの組合加入率がどれぐらいか、御存知だろうか。何と10%に満たない9%以下なのだ。
(http://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2000_03/furansuP02.htm)

日本は組合加入者が減ったとはいえ、30%以上はまだあるのではなかろうか。

フランスではストが起こるとき、労働組合の組織員が非組合員の労働者を一人一人説得する。なぜ、ストが必要なのか、何を目的するのか……を事細かに、時には扇情的に述べる。組合上層部の命令故ではなく、ひとりひとりが自分たちの意志でストへの参加を判断する。だから、強い。

フランス国歌のサビの部分は次のよう繰り返される。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪
武器を取れ、市民諸君!
隊列を組め!
進もう!進もう!
不浄な血が我々の畝溝に吸われんことを!
♪♪♪♪♪♪♪♪♪

国歌で歌われているように、いまだに、国民の権利を「武器」に、隊列が組まれ、御上(おかみ)に抵抗する、それがフランスという国である。