2006-11-09

宮台真司氏との対談を収録した『沸騰するフランス』の魅力③

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拙著『沸騰するフランス 暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社)の章解説はこれで最後だ。

 同書第11章では「地球規模での『持続可能な発展』を探る──赤毛のダニー・インタビュー」と題して、欧州議会議員で欧州議会会派『欧州緑の党』代表のダニエル=コーンベンディット氏にインタビューした。「赤毛のダニー」という愛称で親しまれる同氏は1968年に学生を中心にして起きた叛乱『パリ5月革命』の英雄で、現在では欧州環境派の大御所・ドン・リーダーだ。フランスでドイツ人の家庭に生まれ育ったダニーはジェンダー・フリーのさきがけでもあり、当時、男女別々だった学生寮に立てこもり、男女共同にすべきだと訴えた。現在は公立の学生寮は男女共同になっている。ダニーは環境派であると同時に「絶対自由主義者」(リバータリアン)である。緑の党は単に環境保護を声高に主張すればいいのでなく、どの党よりも「個人の自由」を尊重すべし!というのが同氏の立場だ。絶対自由主義という思想・哲学から、同性愛者やトランスジェンダーなどの解放・人権擁護を熱心に説いている。日本の環境派はえてして、同性愛者の人権に鈍感であるが、それではいけないと同氏はいう。日本人がダニーから学ぶべき点は多いだろう。
 
 第12章では「イラクで拉致された女性記者──フローランス=オブナさん」と題して、イラクで武装勢力に拉致され半年監禁されたオブナ記者との出会い・交流について書いている。オブナ記者は女性でありながらコソボ、アフガニスタン、イラクといった紛争地域を取材し記事を書いてきた。底抜けの明るいキャラクターを持ちながらも、社会の底辺で喘ぐ人々の小さな声を拾い、記事にしていた。解放後、オブナさんと接触する機会があった。その貴重な体験について、私は記事にした。

 最後の補章では宮台真司・首都大学準教授との対談「フランス流多様性の衝撃」を収録している。宮台氏と以下のテーマについて語った。

・ 政府が提案した初期雇用契約(CPE)と激化した反対運動
・ CPE反対で大学の6割がロック・アウト
・ フランス人の平均労働時間は週35時間
・ 欧州型社会の典型的イメージはオペラ座
・ フランスから見た日本のフリーター・ニート問題
・ 日本では企業に入ると私的な時間がなくなる
・ フランス人の性意識
・ フランスでは出生率に占める婚外子の割合が48%

 私がフランスで見てきたことを語り、それにからめて日本の馬鹿オヤジを宮台氏が批判するというかけあいになっている。宮台氏の毒舌が面白いと好評だ。