2007-05-15

サルコジ大統領誕生の報道で見落とされた点

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tnさんが「サルコジ氏夫人、投票していなかった! 決選投票 – フランス」という記事があるのを教えてくれました。決選投票の日、セシリア夫人は行方不明になっておりました。なにをしていたんでしょうね。

オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

タイトル:サルコジ大統領誕生の報道で見落とされた点
サブ・タイトル:「フランスで親米派大統領、誕生」と米国メディアは歓喜

【本文】
 フランスのニコラ=サルコジ氏が社会党のセゴレーヌ=ロワイヤル氏を破り、大統領に当選してから1週間がたつ。サルコジ氏は5月16日から大統領としての公務を開始し、17日には首相を任命する予定だ。

 サルコジ新大統領に関して日本の全紙・通信社・全テレビ局が大きな扱いでその勝利を伝えた。しかし、重要な点がいくつか見落とされているので、指摘したい。

支持層はどこか

 まず、サルコジ支持の中核となった社会層がどこであるのかが論じられていない。投票日に有権者3609人に電話調査した世論会社・IPSOSのデータが支持層を如実に表しているので、紹介しよう。

 職業では商人・職人の82%が(ロワイヤル氏は18%)、農民の67%がサルコジ氏に投票した(ロワイヤル氏は33%)。社会的地位では、自営業者の77%が(ロワイヤル氏は23%)、年金生活者の65%が(ロワイヤル氏は35%)がサルコジ氏に投票した。

 自由民主党が農村で強いように、サルコジ氏は「農家の保護」という伝統的な保守政策を掲げ農民の票をつかんだ。商人・職人や自営業者から支持されたのは、「もっと働き、もっと稼ごう」というスローガンの下、「英米流の競争原理をフランスにも導入する」という主張が、「働けば稼げるようになる」のだと思う人たちに受け入れられたからだろう。政党支持者では、与党の「国民運動連合」支持者の98%が、中道派政党の「フランス民主連合」支持者の66%が、極右政党「国民戦線」支持者の83%がサルコジ氏に投票した。移民に対する厳しい規制や犯罪の厳罰化といった極右支持者が喜ぶ政策を日ごろから実践してきたから、圧倒的な支持を得られた。

投票の動機

 有権者の投票動機についても十分に説明されなかったので、論じよう。サルコジ氏に投票した人は、「心の底から彼に大統領になって欲しい」という理由から投じた人が77%と圧倒的で、「ロワイヤル氏がイヤだから」という理由で投票した人は18%に過ぎない。対してロワイヤル氏に投票した人では、「サルコジ氏がイヤだから」という動機で投票した人が42%にものぼった。

 大手世論会社「Tns-Sofres」が投票日に有権者1200人を対象に行った調査でも、ロワイヤル氏に投票した動機として「サルコジ氏への拒否感から入れた」という有権者が50%、「ロワイヤル氏に賛同したから入れた」という有権者(45%)を上回った。サルコジ氏に投票した有権者のうち、「サルコジ氏に賛同したから入れた」人が63%、「ロワイヤル氏への拒否感から入れた」人は32%に過ぎなかった。サルコジ氏の当選に対して、ロワイヤル氏に投じた有権者の92%が不満だと答えた。以上の調査からも分かるように、サルコジ氏に対する「拒絶反応」はフランス人の間で根強く、同氏は「国論を二分する」政治家なのである。日本のメディアでは報じられない一面だ。

 最後に、アメリカ合衆国のメディアが「親米派の大統領がフランスで誕生した」と歓喜したことが、日本のメディアでは伝えられていない。日刊「ヘラルド」紙は「親米派の勝利」、日刊「コントラ・コスタ・タイムズ」紙は「親米派のサルコジが選出」と一面で報じ、テレビ局のABC放送(ABC)は「親米派候補が大統領に当選」と報じた。

サルコジ氏がなぜ、アメリカで愛されるのか

 アメリカですら批判が日増しに強くなっているイラク戦争の開戦をサルコジ氏は正当化しているのだ。昨年9月11日に米国を訪問し、ジョージ・ブッシュ大統領と固く握手を交わし、米国との協調をアピールした。イラク戦争開戦前にフランスが開戦に抵抗したことを「ムダな行為だった」と批判し、その理由を「米国に屈辱の感情を持たせてしまった」と述べ、「仏米関係の建て直し」を説いている。

 皮肉なことに、サルコジ氏が大統領に当選してから数日後、英国のトニー・ブレア首相が退任を表明した。どこのメディアもブレア首相の最大の汚点として「イラク戦争への参戦」をあげている。英国から「大の親米派」の首脳が退くが、フランスで「米国を愛してやまない」首脳が誕生するのである。私には皮肉な巡り合わせに思えてならない。