2007-01-16

『ゲイ@パリ』を語る①

拙著『ゲイ@パリ 現代フランス同性愛事情』に関連して、歌川泰司さんからインタビューを受けました。

そのやりとりを紹介します。

歌川さん:ゲイやレズビアンをターゲットとしたような広告を、頻繁に見かけるパリ。東京と比べると、リべレーションがずいぶんと進んでいるように思っていたけれど、アンケートでは 3割の人が同性婚に対してアゲインストなのには、かえって驚きました。まだまだ苦労する場面は、たくさんありそうですね。また、ひどいヘイトクライムは東京より断然多いようにも思えました。パリの同性愛者と東京の同性愛者、それぞれが置かれている状況の違いって、主なものを挙げるとしたらどんなことでしょう。パリの見習うべき点や、日本の誇りにすべき点なども、もし思い当たるようでしたらご回答ください。

及川:3割の人は「同性愛者の結婚合法化」に対しては反対だけども、反対する人の中には「同性愛という生き方自体は認められる」という人もいます。フランスには30年以上の歴史がある悪名高き『国民戦線』という極右政党があります。アメリカでいえば、共和党の中の最右派のような人たちが集まった政党です。同党は当然、同性カップルの結婚合法化に反対し、同性カップルも結べるパートナーシップ制度・パクス(PACS)も廃止すべきだと主張しています。しかし、同党支持者を対象とした最新の世論調査によれば、極右支持者のうち71%が「同性愛という生き方は受け入れる」と答えている点です。極右ですら、アメリカのように同性愛自体を「罪」とは見なしていません。

同性愛者を狙った犯罪は日本よりフランスのほうが多いというのも事実です。襲われてゲイが殺されたケースもあります。一部の人々の中では、同性愛嫌悪が根強く残っていることもたしかです。これはユダヤ人差別と同じです。ユダヤ人も暴行されることがあり、時には殺されもします。差別を理由に人を襲い、命を奪う……という事例が少なくないのは、フランスの哀しい現実であります。

パリの同性愛者と東京の同性愛者が置かれた状況の違いは、パリ市内では同性カップルが公然と手をつなぎデートし、時には抱きしめ合い、キスをできる点です。日本だったら、後ろ指さされそうですが、パリでは誰も気にもとめません。同性愛者が街にいるのはごく普通の事実として受け止められています。拙著にも書きましたが、駅のキヨスクや街の雑誌売り場にゲイ雑誌が公然と売られ、ゲイ雑誌のポスターが公共の場に掲示されています。さらに、フランスの首都・パリの市長はゲイであることを公言していて、ブレーンとしてゲイの活動家をパリ市の助役にあてています。市長は「同性愛を理由とするいかなる差別も許せない」と宣言しています。東京都では同性愛嫌いで有名な石原慎太郎が知事を務めているのとは、対照的です。

パリで見習うべき点は、ゲイの市長を誕生させたことがあります。日本でもゲイを公言した政治家・首長を誕生させるムーヴメントがあってもいいと思います。 日本の誇るべき点は、数年間開催がとまったとはいえ、東京レズビアン&ゲイパレードが復活し、フランスでも報道されたことです。アジアで最大のゲイ・プライドに発展して欲しいと願っています。