2012-01-30

お部屋2316/改めて風営法の目的

まずはここまでのおさらい。

2217/クラブが厳しく取り締まられる歴史的背景
2299/クラブが厳しく取り締まられる歴史的背景 2
2305/風営法とダンスホール
2306/風営法と深夜喫茶
2311/風営法と公共圏の規制
 
 
歴史的経緯を正確に把握する必要はないと言いつつ、自分の好奇心として古いものを調べているところで、ざっとここまでにわかったことをまとめておきます。

以下はおもに警察庁保安局防犯課編『条解 風俗営業等取締法』(立花書房・昭和34)、平出禾・責任編集『風俗犯罪』(春秋社・昭和30)によります。

戦前、警察の力が及ぶ範囲は広く、衛生、建築、運輸、労政などが警察の管理下に置かれていましたが、戦後の警察改革で、それらの多くは他の行政庁に移動になり、良俗保持の見地から、風俗事犯に関係する業態は警察の所管として残されます。

風俗事犯というのはもっぱら博打と売春を指し、そこに抵触しやすい業態が風営法の規制を受けることになったわけです。

ところが、2313/赤線と白線と黒線に書いたように、この時点では売春自体は合法ですから、合法の行為に抵触する虞れのあるものを特別に扱うのはおかしな話で、ここで「青少年の性的非行を防ぐ」という目的が持ち込まれます。

ダンスが規制の根拠になったのは、チークダンス等によって、性的興奮を喚起すると見なされ、なおかつ、店に所属するダンサーによって接待がなされ、時に売春にまで発展していたことと、青少年が猥褻なダンスを踊り、不健全な性行動や不良行為を促す場であるとみなされたことによるものでしょう。

風営法制定当時、このことは条文に謳われていないのですが、現在の風営法では第一条に明記されています。

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第一条  この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。

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この趣旨から考えて、現状のクラブと当時のダンスホールはまったく違う業態と言ってよく、なお規制の対象にされているのは不当と言えそうです。その一方で、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する目的でクラブを規制することは正当という見方も可能ですが、これは18歳未満を入れなければ済む話です。

私でさえ、クラブでは身分証明書の提示を求められ、「高校生に見えるんか、おい」ってことだったりするのですが、それだけ厳しく年齢チェックをやっている以上、この法の趣旨は守られていて、大の大人が集まっている場がなんで12時だの1時だのに制限されなけれぱならんのかって話です。

年齢チェックの甘い店もあるんでしょうけど、それは個別に取り締まればよく、そういった店を基準にすべてのクラブが深夜の営業を禁じられるのはおかしい。

それだけの話なんですけどね。検索すると、それだけの話をまだ納得していない人たちもいるようですけど、それは法改正を求める側が間違っているのではなくて、納得していない側に間違いがあるのだとしか思えないです。これについてはまた次回にでも。