2012-01-27

お部屋2313/赤線と白線と黒線

今回、クラブ規制とは何の関係もないです。誤解されると困りますが、私の専門はエロです。性風俗産業やラブホを取り締まる法律として、風営法も関心の対象ってだけ。最近、「専門はチャルガだ」と言っているんですけど、誰も相手にしてくれないです。面白いんだけどな。

2305/風営法とダンスホールで、私が軽く流しておいた遊廓の廃止と赤線については、おはらんが説明してくれました。

C.I.L.「遊郭の廃止と赤線・青線」

この中で、白線黒線について、おはらんが書いているような使用例があることを知りませんでした。板橋は洋パンが多かった場所で、よーく探すと、今なお米兵を相手にしていた飲屋街の痕跡を見ることができます。そういう場所なので、たぶん白パン黒パンという街娼用語が転用されたものなのでしょう。

しかし、一般的にはウィキペディアの「白線」の項にある通りで、規制逃れの新業態を指します。具体的にはステッキガールパンマ結婚紹介所など。戦前銀座に現れたと言われるステッキガールと戦後のステッキガールは別もので、戦後は観光ガイドなどの看板で売春をする業種を指します。とくに浜松が有名でした。戦前のステッキガールについては、当時から真偽についての議論が行われているのですが、私は「実在説」をとってます。信頼できそうな記事をいくつか見つけているものですから。

今はほとんど忘れられている言葉ですが、この白線という言葉は決してマイナーな用語ではなくて、昭和30年代の雑誌には頻繁に出てきますし、週刊誌の特集にもなっています。

ウィキペディアにあるように、昭和20年代からこういった新業種は登場していて、雑誌に出始めるのは昭和30年代から。「売春防止法施行以前にも非合法のもぐり売春は行われており、赤線や青線と同様に白線の言葉があったともいわれるが、ある程度認識されるのは、売春防止の法制化が取り沙汰され、売春を取り仕切る業者のアンダーグラウンド化が顕著になりつつあった頃である」とあります。

私が確認できている範囲では、昭和31年には雑誌に登場しています。例えば「読物実話」(日本文華社)昭和31年9月号掲載の山中潔「告白実話 白線女性 あの手 この手」。また、「漫画読本」(文藝春秋新社)昭和32年1月号では、杉浦幸雄が一コマ漫画のタイトルにこの言葉を使用しており、この段階ではすでにポビュラーな言葉になっていたかと思われます。「漫画読本」については『エロスの原風景』参照のこと。

誰が書いていたものか忘れましたが、白線赤線青線の時代の街娼を指すとしている単行本があります。ライターではなく、学者系の人だったような気が。これは間違い。昭和30年代以降、街娼をも白線としているものはたしかにあって、中村三郎著『白線の女』(東京ライフ社・昭和33)はその例です。しかし、昭和20年代に、そのような用例があったとはちょっと思いにくいです。これも白パンと混同したものではないか。

黒線白線に比べると使用例はうんと少なくて、白線の中で、暴力団がからむものを指します。よく誤解している人がいますが、この業種に暴力団が露骨な介入をしてくるのは規制が強まって以降のことです。売防法が暴力団を招き入れたのであります。ウソだと思うなら、この当時の雑誌を丹念に調べるとよろしい。調べもしないで勝手な想像で文章を書くヤツが多すぎだす。

というようなことも、我がメルマガを検索すればすぐに出てきます。便利です。ただし、使える機会が滅多にないです。

さて、問題は赤線です。これについては今現在すぐに見られるインターネット、雑誌、書籍では、ことごとくが「売春を公認していた地域」「売春を黙認していた地域」と書いています。これが通説であり、おはらんもこれに倣っています。

ところが、よくよく考えると、これはおかしいのです。売防法制定まで売春そのものは合法です。だから、各地で街娼を取り締まる条例ができるまで、街娼の狩込みの法的根拠は性病予防法でした。検査により、感染していることがわかると強制入院をさせていただけで、感染していなけれぱそれまでです。それ以上どうしようもなかったわけです。

従って、わざわざ地域を特定して売春を公認するも、黙認するもなかったはずです。たとえばスナックのママが客に金をもらってセックスをしても取り締まれない(単純売春ですから、今だって、これ自体は売防法の処罰対象ではないですが)。これも性病予防法によって、売淫常習の疑いがある場合に強制的に検査を受けさせることができただけです。

じゃあ、赤線とはいったいなんだったのか、何を黙認していたのかって話ですわね(国会答弁でも政府は売春が行われていることをしらばっくれているので、少なくとも公認という言い方は間違いかと思います)。

昭和20年代のものを読めばちゃんと書かれているものはあるのですが、公的な資料でこれを裏付けるために、私もすげえ苦労したものですから、そう簡単にタダで教えてなるものか。これについてはほとんど誰も気づいていないようなので、『エロスの原風景3』で一章入れるとするかな。

おはらんには、メシをおごってくれれば教える約束ですが、『エロスの原風景2』が売れないと次が出せないので、全国10人くらいの知りたい人はとりあえず『エロスの原風景2』を買うように。

原稿はまとまったのですが、いつ出るかは知らん。