2009-11-08

お部屋1979/図書館の中では見えないこと 8・デジタルとアナログ【追記あり】

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1・図書館はコンビニである
1970/図書館の中では見えないこと 2・こんな図書館があったら
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3・図書館の本はC級品
1973/図書館の中では見えないこと 4・図書館と税金
1974/情報を訂正するためのツール
1975/図書館の中では見えないこと 5・断裁の現実
1976/図書館の中では見えないこと 6・私設図書館とコレクター
1977/図書館の中では見えないこと 7・本は商品である
 
 
やっとまとめ終わりました。

出版の話は図書館の話の中で出すより、出版の話として出した方が興味を抱く人が多いでしょうから、このあと、新刊宣伝用のシリーズをやるとしたら、そちらで出すかもしれませんが、こちらでは出版業界の話を簡単に済ませ、今回を入れて、あと3回で終わらせます。説明部分をすっとばしているので、なんでそうなるのかよくわからん人もいるでしょうが、あとは各自考えるように。
 
 
都議会の議事録で経緯を確認してみました。今回廃棄される地域資料に限った答弁は見当たらなかったのですが、都立図書館の体制変更に伴う廃棄問題については、以下で取りあげられています。

2001.12.11 : 平成13年_第4回定例会(第16号)
2002.02.19 : 平成14年文教委員会
2002.02.20 : 平成14年_第1回定例会(第1号)
2002.03.04 : 平成14年文教委員会
2002.03.07 : 平成14年_第1回定例会(第5号)
2005.09.30 : 平成17年文教委員会
2006.12.01 : 平成18年_第4回定例会(第15号)

東村山の件でも、皆さん、市議会の議事録を駆使しているように、議事録をインターネットでいながらにして読めるのはいい時代です。しかも、検索できるので、必要な箇所がすぐに探せます。なんちゅう便利な時代になったのでしょう。今までだったら5日かかったことが5分でできる。

最初から十分壊れてましたが、香山リカにまで取りあげられて、なおのこと壊れつつある中村克さんによって、この界隈では知られるようになった小松恭子都議もこの件で質問をしています。

議論が尽くされているようには見えないですが、なんにせよ都議会でも取りあげられていたことであって、今回いきなり浮上したわけでも、内密に進めていたことでもない。「だから、文句言うな」とまでは言えないにしても。

この中にも出てきているように、協力貸出によって、重複した本を所蔵しておく意味が薄れています。だったら、それを廃棄して、どこにもないものを入れた方がいい。あるいはよりニーズがあるものを複数入れた方がいい。

これもすでに述べたように、地域資料を利用する人たちの多くは、ガイドブックのようなものを除いて、「うちの近くになきゃ困る」ということはないでしょうから、取り寄せずに、所蔵図書館に行くことにもそれほど大きな支障はないでしょう。ガイドブックだって、いつまで出版されるのかって話であって。

今までは地図の利用者も多かったと思うのですが、今の時代の地図を見るのに、わざわざ図書館に行く人は激減しているはずです。書店でも地図を買う人が減って、すでに潰れた地図の出版社もありますし、残っている出版社でも経営危機が噂されているところがあります。今は携帯でも調べられますので、地図は買わないですわね。

議事録だって同様です。ネットであれば検索もできますから、印刷した議事録を図書館で見る人はほとんどいなくなっているでしょう。

図書館を利用する理由として「調べもの」より、「無料の娯楽」を求める人がおそらく増えています(あくまで過去の比較として)。だから、調べものをするために図書館を利用していた私はめっきり行かなくなってしまっているわけで。

それでもたまには調べもののために図書館を利用しますが、この時にもインターネットが役に立ち、目当ての本を検索して、どこにあるのかすぐわかるのですから、自分の住んでいる地域の図書館になくても、都内のどこかにあればいい。

協力貸出がなく、検索もできなかった時代に、都内30カ所にあった資料は、10カ所にあれば十分です(利用頻度にもよりますが)。

さらに時代は大きく変わりつつあって、デジタル保存が進んでいるのですから、図書館が現物を保存しなければならない意味合いはいっそう薄くなってきています。

今をピークとして、このあと出版点数は減少していくことになります。ここは確定と言っていい。版元が減少していくのですから当然で、早ければ10年後には半数くらいになっているかもしれない。あるいは、電子書籍の広がり方次第ではもっと減るかもしれない。そんな時代に出版社が今のまま生き延びれるわけがなく、出版社が残っても、電子書籍の版元になっていきます。本をめぐる環境が違うので、ここ1年やそこらで、日本においても、アメリカや中国ほどに、電子書籍のマーケットが拡大しないにしても、3年後か5年後にはそうなる可能性が大です。

今まで印刷物という形で読めていたものは、着々とデジタルでしか読めなくなっていくのですから、図書館やその利用者が本にこだわったところで、この流れに抗うことはできません。抗いたいなら図書館を利用していちゃダメです。もっと本を買わないと、確実に本は消えていきます。少々買っても無駄ですが。

便利なものに不便なものは勝てません。不便な本は便利な電子書籍に勝てないのです。アナログ盤の方がずっと保存性が高いにもかかわらず、寿命30年と言われるCDに駆逐され、ビデオテープが、寿命10年と言われるDVD-Rに駆逐されたように、本もいずれ駆逐されます。

そういえば、つい最近、聞かなくなったCDをディスクユニオンに売り払ったのですが、80年代のもので、買い取ってもらえなかったものが大量にありました。指の油脂のせいですが、そんなもので劣化するのがCDです。CDやDVDに触る時は手袋をするしかない。当時のものは今よりさらに盤質が悪いので、20年から25年が寿命らしく、どのみちそろそろ限界だったわけですけど。

10年後か20年後かわからないですが、そう遠くない将来には、商業出版としての本は消えるでしょう。つまり、図書館に所蔵すべき本が出なくなります。写真集のようなものや好事家向けの本は残るだろうとは思いますが、本は商品であって、商品として成立しないものを出せなくなるのは必然です。

本が消え失せる前に、利用者が均質である大学のような場ではいち早く本のない図書館が増えていくでしょう。一般の図書館ではいまなお「モニターでは本を読んだ気がしない」「小さい子どもには本が必要」「パソコンが使えない」といった人たちがいますから、すぐに一般の図書館で本をなくすことはできないにしても、いずれはそうならざるを得ない。

そういうことを言うと、必ずと言っていいほど、「そんな簡単に歴史ある本がなくなるはずがない」と反発する人が出てきますが、だったら、そういう人は、ネットですぐに調べられるのに、図書館に議事録を調べに行くのですかね。そういう人もいるでしょうけど。あるいは歴史あるアナログ盤だけを今も聴いているんですかね。そういう人も現にいますが、大勢に影響を与える存在ではありません。

国会図書館のデジタル化計画は、著作権者の団体のつまらない主張に配慮することによって使えないものになり、結局、googleに惨敗するだろうとの予想もできますが、それでも、著作権のないもの、著作権が切れたもの、著作権を放棄したものはすべて無料で見られることになるのでしょうから、利用という点でも意味がないわけではない。

行政が発行するものも、著作権が発生しているもの以外はすべてタダで公開すべきです。過去のものを含めて、議事録のように、図書館に行かずとも、すべてインターネットで見られるようにして欲しい。これは国会図書館を通さずにできることです。

白書の類いは、ネットでの公開が遅れることがあって、あれも改善して欲しい。すぐさま全文公開してなんの支障もなく、いち早く納税者が簡単に見られるようにした方がいい。そうなっていないことがあるのは、たぶん印刷した白書を販売するためでしょう。外郭団体の利害とか、いろんなことがからんでいそうです。民主党はチェックするといいと思う。

国会図書館のデジタル化は、利用という側面では必ずしも期待できないとしても、保存という意味では評価できます。

デジタルによって永続的な保存が可能かどうか不安定なところがあるので、本の現物をすべて廃棄していいわけではありませんが、利用頻度の低いものを東京都内で数十も保存する必要はなくなります。

保存の役割とそのデジタル化は国会図書館に任せる。それ以外では利用頻度の高いものを中心に所蔵しておけばよく、利用頻度の低いものは都内に3部もあれば十分です。

なぜ国会図書館に保存を任せた方がいいのかと言えば、保存に専念することができるとしたら国会図書館しかないでしょう。しかしながら、今現在も国会図書館は保存に専念することができていない。閲覧はデジタルでいいんだから、早く保存専門の図書館にしましょうよ。

次からが本題です。

追記:国会図書館のデジタル化において、OCRでの読み込みに反対し、本文検索できないものにしようとしているのは、著作権者の団体ではなく(おそらくそれもあるんでしょうが)、どうやら書協(日本書籍出版協会)のようです。なんちゅうバカなことを。確実にgoogleに負けます。国会図書館の足を引っ張ってどうする。どうせ方針転換せざるを得ないに決まってますし、後づけでやればいいだけのことですが、日本の出版社の団体がどの程度のレベルかがよくわかる話です。皆さん、笑い者にしてやってください。

このエントリへの反応

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