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[第8章●地理情報コミュニケーション]
10… 地域メッシュ
[2003.10.01登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

寄り道に過ぎるかもしれないが、「マップコード」に関してもう少し書きたい。

マップコードの仕組みを知った時、最初に連想したのは「地域メッシュ」のことだ。国土をメッシュで分割し、そのメッシュごとに番号を振るという方法はマップコード以前にすでにあり、その勧進元はお国である。1973年にさかのぼる方式だ(昭48.7.12 行政管理庁告示第143号「統計に用いる標準地域メッシュ及び標準地域メッシュコード」)。以下にこの「標準地域メッシュシステム」の仕組みについて説明する。その説明を読めば、それがマップシステムと酷似していることに気がつくと思う。

まず国土を経度1度緯度40分のメッシュで区切る。これを「第1次地域区画」(一般には「1次メッシュ」)という。全国は174の第1次地域区画に分けられる。これは4桁のコードで現わされる。東京は「5339」。これは国土地理院の20万分の1地勢図の図幅面と一致する(だから20万図の右上にはその番号が印刷してある)。

1次メッシュを8×8に分けたのが「2次メッシュ」(正式には第2次地域区画)。だいたい10km四方になる。これは2万5千分の1地形図とぴったり重なる。いま、たまたま机上にあった「谷戸」という地形図の右上隅には5338-63という数字が印刷してあるが、5338が1次メッシュ、63が2次メッシュである。

3次メッシュは2次メッシュを10×10に分割したもので、1キロ四方。これを4分割した1/2地域メッシュとか10×10等分した1/10地域メッシュなどが目的に応じて使い分けられる。

ほらね、マップコードと非常に似た考え方でしょ。じゃあ、お国がなんでこんな「規格」を作ったか、というと、これは統計のためだと思う。ポイントは経度緯度であらわされるが、面の広がりはそれではむつかしい。たとえば人口密度を表現する場合でも、メッシュにわけないと不可能だ。そのニーズに対してメッシュを標準化したのが、このしくみと位置づけられる。

そう。メッシュは基本的に「面」を表現したい時に用いる方法だ。マップコードはその指向として「点」を表現したい場合に使うことを想定している。たとえばカーナビとかタクシーとか。

ともあれ、マップコードと地域メッシュが似ているということはわかった。ではどこが違うか。

1次メッシュの4桁の数字がどう決まるか。ちょっと面倒くさいけど、その算出根拠を書く。コードの上2桁はメッシュの南端の緯度×1.5、下2桁は西端の経度の下2桁である。1次メッシュの大きさは経度1度緯度40分であるとは先に書いたが、この「原点」は東経100度北緯0度であるから、経度緯度がわかっていれば、計算で算出することができる。

2次メッシュ。まず碁盤の目を想像して欲しい。8×8マス。左下隅を原点として、縦横に番号を振る(最初は0)。で、求める升目はタテ・ヨコの順で番号を読めばいい。

このようなロジックで「番地」は決定される



経度7分30秒緯度5分という単位も覚えておけば、これまた経度緯度から計算可能だ。だいたい2万5千分の1の地形図と重なるのだから、計算しなくても地形図を見るか、Web上に公開されている地形図閲覧システムを使えばすぐにわかる(ただしここでは2.5万図が4等分して表示されるので、ここで表示される番号の下1桁は省いて考える。たとえばここで「谷戸(北西)」を表示させると「5338633」という数字が画面の一番上に出てくるが、ここの2次メッシュは最後の3を省いた「63」である)。

Webで公開されている25,000分の1地形図



3次メッシュも2次メッシュと同じ考え方。ただし、升目は10×10になる。別に単位が経度45秒緯度30秒ということを覚えておかなくても計算も可能だ。

つまり、地域メッシュは緯度経度情報さえわかっていれば、誰でも(もちろん無料で)計算することができる。しかもその計算は電卓でも可能だ(面倒だけどね)。出てきた値は階層的な表現になっており、ぱっとみただけで、自分の知っている地域メッシュと比較して、どの方向にどれだけ離れているのか、といった「だいたい」が掴めるのである。

私にはマップコードより地域メッシュの方が優れたシステムであるように思われてならない。だいたいからして公有物だしね。

であるなら、なぜにデンソーはマップコードを開発したのか。非常に好奇心がそそられる。単に「桁数を小さくする」だけの目的なのだろうか。ナゾだ。知りたい。

で、じゃあ「生活に緯度経度情報を使おう」主義者(なのかよ、オイ)としては、地域メッシュをどう考えるか。これは先にも書いたように、「面」を捕まえるための考え方である。生活や一般のシゴトの場面では「面」情報は必要とされることはまずないだろう。コミュニケーションの手段としては、経度緯度で充分だ。それさえわかっていれば、地域メッシュは計算で算出できるのだから。

※地域メッシュについては総務庁統計局「地域メッシュ統計」あるいは(分かりやすいところでは)「生物多様性情報」のサイトにある「基準地域メッシュ」を参照して欲しい。

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fbさんより
ご意見いただきました

[2004-10-24]

デンソーの戦略?

マップコード、2次元コードのQRコードともに開発しているのがデンソーなんですよね。もはや自動車部品メーカーではくくれないような事業展開ですね。QRコードの方が最近は携帯やらいろんなところで実際の利用が浸透し始めているように見受けられます。
どちらのコードも独自技術を開発しそれを世の中に浸透させ優位性を確保しようとする企業戦略があるように思います。技術の中味を公開しないところなんかもMicrosoft社のWindowsと共通点が有ります。

実はこのサイトにはある地点の3次元メッシュコードを簡単に得るソフトなどないかと検索しておりたどり着きました。当初の目的を実現できるサイトがありました。
http://210.255.173.147/tml/idokeido.htm
緯度、経度を入力するか地図で該当地区をクリックするかで3次メッシュがすぐに得られます。このサイトの会社はどうやら生物多様性情報システムを作成しているようで便利な道具を提供してくれたのが納得できます。

うつぎ あかねさんより
ご意見いただきました

[2004-11-09]

メッシュ地図

いつも好奇心いっぱいの石田さんですね。
おもしろく拝見しました。

むかし、「地域開発センター」というところの機関紙の表紙を
担当したことがあって、その表紙のデザインは日本列島を
メッシュで表現したものでした。

確かなことは忘れたがここは国土開発の調査機関ではなかったのでしょうか?いまあったとしても再編されているでしょうけど。

その地図は、列島を県別に正6角形で蜂の巣のように表現し、
各種のデータを大きさの違いと色別で視覚化したものです。
原案は何人ものデザイナーがかかわっていたと思いますが。

これは県別の統計を目で見てぱっとわかるようにしたもので、
人口なら東京都が大きく、島根県が小さい六角形のように
でこぼこした列島が六角形でつながっているものです。

ですから、石田さんのいわれる平面の位置を確定したいというものとは違うのですが。
ボリュームを把握するものです。

そのころ私が考えたのは、2〜3種類のデータを同時に(数字でなく)表現できないかというものでした。
そこで立体地図をつくりました。
見本の絵があれば説明しやすいですが、平面の大きさと、立体の
高さの違いそれに色別を加えると3つの要素のデータが
ぱっと見て解るというものでした。

数字を視覚的に表わすものです。

話がそれたようでごめんなさい。地図が理論的に明快であっても
その場に行くと迷路のようで、地下がありビルがあり町の雑踏に入るといつも迷います。東京は変わり方も早いし。
どうすればいいんでしょうねー。

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