2009-11-23

いただいたご本『カント 信じるための哲学』

● 石川輝吉『カント 信じるための哲学』(NHKブックス)

読むべき本はいっぱいあって、机の上ではいつも献本やら図書館から借りてきて資料やらが積ん読されている。いったいみんなどうやって本を読む時間を捻出しているのだろう? そもそも怠け者なのがいけないのだが、最近では趣味の読書にすら余裕かなくなっている。

そんななかでも、これから絶対に精読しなければと思っているのが、石川輝吉著『カント 信じるための哲学』である。

「どこにも真理はない、と主張するだけなら、懐疑論や相対主義で十分だろう。……これは真理そのものを取り出す哲学ではない。だが、疑うための哲学でもない。この世界を、物の存在や善や美があることを、「わたし」の側から「真じるための哲学」なのだ」

序章に書かれたこの文言を読むだけで、これはいま読まなければならない一冊だ!と思う。ジェンダー/セクシュアリティの領域などはローカルなのでまだ相対主義や懐疑論をやっていれば論文が書け、ポストも獲得できるかもしれないが(←ポストはないか)、やはりいま現実の世界をしっかり生きようとすれば、必ずこの問題に行き当たる。相対化され、多様化され、拡散していく状況のなかで、いかに人と共同できるのか、いかにこの世界を共有できるのか。そうした問題意識を核においたカント論ならば、手に取らざるを得ない。

ちなみに、伏見が昨今こだわっているクィア学会の件も、そうしたテーマに関わっている。あれ、あまりにも卑小な実例ではあるが(笑)、登場人物たちの「キャラ」の問題ではなく、実は、思想性の問題なのではないかと。

関係ないけど、この本の著者の名前と髪型が妙にかわいいね(笑)。