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              東京にデポジット・ライブラリーを 
                多摩発、共同保存図書館基本構想 
                [2003.11.26刊行] 
        編著●多摩地域の図書館をむすび育てる会 
                  定価●1600円+税 
                    ISBN4-939015-57-2 C0000 
                    四六判/192ページ/並製 
        印刷・製本●株式会社シナノ 
        ブックデザイン●沢辺 均/山田信也 
		 
		在庫有 
		
  
                  
				  【立ち読みコーナー】※本書所収原稿の一部を紹介 
                     
                    「はじめに」 
                    「第1章 保存と利用をめぐる 
                    図書館の現状と課題」 
                     
                     
                    ■はじめに 
                     
                    多摩地域の公立図書館は、1960年代末から、その基本機能である資料提供を果たすことに取り組んできました。そのための資料費を確保し、リクエスト制度により求められた資料を確実に提供するよう努めてきました。さらに、児童へのサービス、分館網や移動図書館による全域サービスの展開、地域・行政資料の収集・提供、レファレンス・サービス、「障害者サービス」を行い、全国の公立図書館の先駆けとなりました。 
                    このリクエスト制度が機能したのは各自治体だけの努力ではありません。これを支えた都立図書館の協力貸出の重要性は、強調してもしすぎることはありません。ことに、1987年に立川市に開館した都立多摩図書館は、先行した都立中央図書館との地域分担と位置づけられながらも、都立中央図書館が応じないレファレンス資料、雑誌・新聞も協力貸出の資料として提供し、事実上の機能分担を実現しました。 
                    区市町村の図書館は、資料費、資料の収蔵能力には限界があります。これを支えたのが都立図書館の協力貸出です。この機能に着目して、区市町村の図書館を第一線、都道府県立図書館を第二線図書館とも呼んでいます。市町村立図書館は、この都立図書館の支えをうけながら、「探しています」(都立図書館未所蔵資料の多摩地域の図書館の探書情報)やISBN総合目録の活用等、市町村立図書館間の相互協力を進めています。都立図書館にたよるだけでなく、相互の協力で、さらに確実な資料提供を実現するよう図っています。 
                    しかし、2001年度末、都教委で検討された「都立図書館あり方検討委員会報告」が出され、都立図書館は地域分担をやめ、資料の保存年限も有限年数保存に変更し、一タイトル一冊のみの収集・保存にする等の業務改編を、2002年度当初に強行しました。この委員会の検討中にもかかわらず、都立図書館は、複本の除籍を始めました。区市町村立図書館等が、除籍資料を引き取ったため、資料そのものの消滅は免れることができました。 
                    今回の再編計画で「サービス低下はない」との都議会答弁がありながら、昭和25年以前刊行の資料、10万円以上の資料、新刊図書は、2003年9月から協力貸出に応じないと通告してきました。危惧されたように、協力貸出へのダメージが表れてきました。 
                    再編計画の見直しを求めていたわたしたちは、東京都・都立図書館がこの方針を撤回しない以上、独自の方針を立てる必要性を痛感し、デポジット・ライブラリーを構想する道を選び、本プロジェクトによって2002年7月から対応案の検討に入りました。その後、2003年1月に中間報告を発表し、多摩地域の4か所で説明会を実施し、参加していただいた市民、図書館職員からの意見を集約し、検討を重ねました。 
                    ここでわたしたちは、多摩から発し、全都等へ及ぼしていく、デポジット・ライブラリーの基本的な考え方や運営体制について報告し、その実現に向けた方向性を提案します。 
                     
                     
                    ■第1章 
                    保存と利用をめぐる 
                    図書館の現状と課題 
                     
                    1 図書館を使い分ける〜図書館の役割分担〜 
                    東京には、約400の公立図書館をはじめ、学校図書館、大学図書館、専門図書館など様々なタイプの図書館があります。 
                    これらの図書館は設置目的にしたがい、特長を活かした多種・多様な資料・情報を集め、それぞれに保存・提供しようと努めてきました。IT(Information
                    Technology─情報技術)化が進む中、これらの様々な図書館が強固でしなやかなネットワークを形成し、もっと生活に根ざした情報環境をつくり出していくことが、『自己決定社会』には不可欠です。 
                    今では、住環境の条件のひとつに、「身近に充実した公立図書館があること」があげられるほどになっています。 
                    では、わたしたちの暮らす多摩地域から東京の図書館の現状を見てみましょう。 
                     
                    1・1 まちの図書館(市町村立図書館、区立図書館) 
                    まちの図書館は、生活圏の中にあって、知的好奇心を満たすための入口です。 
                    多摩地域の全ての26市3町1村に図書館が設置され、390万の住民にサービスを提供しています。その多くの図書館は、1970年の東京都の「図書館政策の課題と対策」以降に設置されました。その歴史は30〜40年程度で、蔵書も概ねこの期間に限られています。また、多くは、区立図書館より資料費・施設・職員数は小規模です。開館日時も延長が進んでいますが、区部よりは短くなっています。 
                    一方、区立図書館は、資料費、施設は多摩地域より充実していますが、区民一人当たりでは、十分な態勢ではありません。さらに、司書の配置率のさらなる低下、民間委託の広がり、第三セクターや図書館法に基づかない図書館など、運営上の問題が山積しています。資料の収集・提供、そして図書館間の協力を難しくする原因となることが予想されます。 
                    利用実績は、2002年度は、多摩地域で、個人貸出が2752万3490冊で、住民一人当たり7・1冊、予約の処理件数(2001年度)は、145万7114件でした。区部では、個人貸出が5157万3255冊、住民一人当たり6・4冊、予約の処理件数(2001年度)は、433万6828件でした。(統計03・164頁、統計08・174頁参照) 
                     
                    1・2 都立図書館 
                    東京都立図書館は、日本を代表する都道府県立図書館です。幅広い資料を収集し、都民に閲覧、レファレンス・サービスを主とする直接サービスを行うとともに、広域的なサービス、協力貸出・協力レファレンスなど区市町村立図書館のバックアップを行ってきました。都立図書館は、区市町村立図書館の業務をバックアップする第二線図書館です。 
                    多摩地域においては、1950年代に設置され立地自治体の図書館の代替役をしていた、都立青梅・立川・八王子の三館は第二線図書館への脱皮を目指した移行期間を経た後、1987年に廃止。同年、立川市に都立多摩図書館が建設されました。多摩図書館は、資料の相互協力サービスと市町村へのレファレンス支援を柱に、全国的にも類を見ないサービスを実現してきました。都立中央図書館との複本購入、レファレンス資料や逐次刊行物の市町村への貸出、市町村立図書館どうしの協力関係のつなぎ役として評価されていましたが、2002年の都立図書館再編により、中央図書館の分館となりました。2001・2002年の2年間に大胆な蔵書の整理を行い、現在は、児童青少年・多摩の地域資料・逐次刊行物の全都への協力貸出などに限定したサービスへと方向転換しています。(統計・グラフ09・176頁、統計11・180頁参照) 
                     
                    1・3 小中高等学校の図書館 
                    学校図書館は、教科教育に多大な貢献が要求されています。しかし、公立小・中学校図書館は、資料、施設、人のいずれも不足しています。専任の学校司書・司書教諭の配置、資料費の獲得、施設の整備など課題は山積みです。市町村の図書館からの援助が欠かせません。 
                    また、都立高校図書館においても、学校司書の配置継続、司書教諭と連携したサービスの一層の充実が必要です。 
                    一方、東京には私立の小・中・高等学校も多く、学校図書館の充実を特徴としているところも多いのが現状です。 
                     
                    1・4 大学図書館 
                    大学図書館は、高度に専門化した学部・学科・研究室などの資料要求にこたえる形で、充実・拡大してきました。学術雑誌・専門技術誌にも踏み込んだ資料収集は公共図書館の比ではありません。 
                    大学図書館は、教員・学生以外の市民がその蔵書を利用するには壁がありました。また学生の教育・学習には、実際的でないところがあり、居住地や学校所在地の区市立図書館をあてにしていた例もあります。 
                    しかし、最近では、地域開放や区市町村立図書館との相互協力が始まっています。 
                     
                    1・5 専門図書館 
                    ユニークな蔵書構成の専門図書館は、設置母体の業務上の情報要求によって運営されています。一般に利用するには条件が課されることがありますが、まちの図書館のレファレンスには、頼りになる存在です。 
                    しかし、設置母体の経営状況に、存立が大きく左右されます。インテリジェント・サービスとして情報入手・伝達・検索・蓄積・廃棄をシステム化し発展している館がある一方、閉館・閉室に追い込まれている館もあります。 
                     
                    1・6 国立国会図書館 
                    国立国会図書館は国立国会図書館法に基づき、1948年に設立された立法府図書館です。国会へのサービスを第一にしながらも、行政・司法部門への奉仕、さらにこれらの要求を妨げない限りにおいて国民の利用に供する図書館として位置づけられており、図書館の図書館として奉仕する図書館です。約800万冊の図書と17、000種の雑誌・新聞を所蔵し、2002年には関西館と国際子ども図書館の開館によって三館体制となりました。直接入館しての利用には制限がありますが、急速なメディア環境の変化の中、ITを活用した活発な業務展開を行い、遠隔地からの個人利用が急増しています。 
                      
                    これらの図書館の役割を把握した上で、使い分けるのが図書館の上手な利用法です。 
                     
                    2 保存と利用の現実 
                    それぞれの図書館の資料や保存体制は、どのようになっているでしょうか。 
				   
			        2・1 まちの図書館(市町村立図書館、区立図書館) 
			        財政難による資料費の削減(93年度から02年度予算で、区部で25%、市立で22%減)・出版物の収集率低下の中、その影響を最小限にとどめ、市民・利用者の日々の情報への要求にこたえようとしています。 
			        レクリエーション指向にとどまらず、生活支援・調査・研究の充実にサービスの重点を移し、常に満足できるレベルのレファレンス・サービスが求められています。「障害者」向けの資料、外国資料と、幅広く、深い資料の収集・提供に努めています。 
			        また、各図書館は、その自治体の地域資料を収集、保存する責任を負っています。 
			        しかし、大部分の図書館で書架は満杯になっています。そのために、利用頻度の低くなった図書・刊行年の古い図書を中心に、東京都全体で毎年約160万冊もの図書が除籍されています。 
                     
                    2・2 東京都立図書館 
                    東京の図書館利用者は、区市町村立図書館経由で都立図書館の本や雑誌を借りたりして、間接的に都立図書館を利用してきました。 
                    しかし、都の財政難の問題を背景として、大幅に資料費が削減(97年度決算から02年度予算で55%減)されています。そして今回の再編計画で、今後は原則として複本は購入しない、すでに所蔵している複本は除籍処分と決まりました。このため、区市町村立図書館へのバックアップ機能が大幅に弱体化・後退しています。2003年9月からは、昭和25年以前刊行の資料の協力貸出は行わなくなりました。直接来館する利用者との競合を懸念する都立図書館による、区市町村立図書館への貸し渋りが起きはじめています。(統計01・161頁、統計・グラフ02・162頁参照) 
                    また、都立図書館の書庫は、現有部分だけで、今後の増設等は行わない、資料の永久保存は有期保存にという方針を打ち出しました。都立図書館が、これまで構想してきた共同保存書庫(デポジット・ライブラリー)の機能は持たないという方向性を示しています。協力貸出を前提として、市町村立図書館が、多摩図書館に寄贈し続けてきた雑誌などの逐次刊行物の保存もあやぶまれます。 
                     
                    2・3 小中高等学校の図書館 
                    学習指導要領が改訂され、総合学習の推進が提唱され、要求がこれまでになく高まっているにもかかわらず、図書館整備の状況は不十分極まりなく、日常的な学習にも満足な資料が準備できないのが現状です。 
                     
                    2・4 大学図書館 
                    大学図書館でも、書庫は満杯というのが現実です。 
                    比較的扱いやすい外国雑誌の分担収集が、外国雑誌センター館として指定された9つの国立大学で実施されていますが、保存スペースの確保に困難をきたしています。東京大学・京都大学など大規模な図書館に広範な保存機能を付属させることや、地域ごと館種ごとに保存図書館を作るなどの構想が考えられています。 
                    ◆『学術情報資源の安定した共同アクセスを実現するために─分担収集と資料保存施設─』(国立大学図書館協議会情報資源共用・保存特別委員会 2001) 
                     
                    2・5 専門図書館 
                    大多数の図書館・資料室は、もともとスペース的に制約があり、資料の保存場所が十分ではありません。不況下で、母体の経営状況の波をうけ、閉館・閉室も多くなる傾向です。 
                    しかし、特色ある資料をみすみす廃棄することなく、都立図書館や区市町村立図書館、大学図書館などと協力し合って、保存と活用を考えたいものです。 
                     
                    2・6 国立国会図書館 
                    国立国会図書館は、法定納本制度に基づく、唯一の国内刊行物の納本図書館です。図書・雑誌・電子資料などを網羅的に集め、収集された国内刊行資料は、日本国民の文化財として蓄積されています。 
                    原資料の保存環境を整えることと平行し、著作権保護期間が過ぎた資料や、著作権者の許諾を得た資料のマイクロフィルム化・デジタル化を行う事業も進め、原資料の消耗を防ぎながら利用に対応できるよう整備が進められています。 
                    この未来永劫保存すべき文化的な資料の損耗を防ぐため、国立国会図書館で、市町村や都道府県の図書館で入手できる資料や調査の利用は、慎まなくてはなりません。市町村や都道府県の図書館などで、どうしても入手できない場合の最終的なよりどころです。従って、国立国会図書館の蔵書に安易に頼ることのないよう、一定の利用の見込まれる資料は、各市町村や都道府県の図書館自身が収集し保存しておくべきです。国立国会図書館が「保存のための保存」の役割をもっているのに対し、市町村や都道府県の図書館には「利用のための保存」の役割が優先されるのです。
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