2007-10-21

性労働者に権利を!仏で盛り上がる運動

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インターネット新聞・JANJAN』に【 性労働者に権利を!仏で盛り上がる運動 】という記事を書きましたので転載します。

写真脚注:「性労働者はサルコジに抗う」と書かれたプラカードを掲げるパリ17区のカミーユ=カブラル区議。

 「フェミニズムは私たちを無視してきた」 舞踏会でつけるような仮面を顔につけパリ市内を行進した街娼たち数百人がそう訴えた。

 2005年、女性の権利拡大を訴える3月8日の国際女性デーの数日前、それにあわせて街娼デモが行われた。彼女らは働く権利と自身らの地位向上を主張した。『ルモンド』や『フィガロ』といった高級紙は黙殺したが、無料日刊紙『20分』はカラー写真入りでデモを大きく紹介した。彼女たちはフェミニストが女性の地位向上といいながら、苦境に置かれている街娼など性労働者(セックスワーカー)の存在を無視していると非難した。

 フランスでは第二次世界後、政府がそれまで合法化されていた売春宿を禁止し閉鎖させる一方で、売春という行為は合法のままにし、街娼に働く余地を与えた。客引き・売春の交流場として知られるパリ西部にあるブローニュの森や一般の公道に立ち客を待つ街娼は長いこと、パリの風物詩であった。

 しかし、ニコラ=サルコジ大統領が内務相だった時に成立させた国内治安法(通称・サルコジ法)が2003年3月19日に施行されて事態は一変する。同法は売春行為を禁止し、違反者は最高禁固6カ月、罰金・約百万円の刑の対象になった。街娼が客に声をかける行為はおろか、「消極的勧誘」という概念が法に盛り込まれ、ミニスカートや胸元の開いた服を着て道端をウロつく行為が犯罪となりうるようになった。

 ブラジル出身の移民で、コールガールの経験を持ち、男性から女性に性転換し、フランス初のトランスジェンダーの地方議員としてフランスで脚光を浴びたパリ第17区のカミーユ=カブラル区議はサルコジ法をこう批判する。

 「サルコジ氏は娼婦を人目のつかないところに追いやりたいのです。性労働者にだって市民として道に立ち、道を歩く権利がある。しかし、ブローニュの森を性労働者が歩くと逮捕される。化粧して、ミニスカートをはいて、胸の開いた服を着ることが『消極的勧誘』といいますが、性労働者でない女性だってそういう服装をするときがあるでしょう。性労働者のみを摘発するのは不当で、不可解なことです」

 彼女によれば外国人の性労働者が最も実害を被っているという。

「彼女達は警察に捕まれば、身分証明書を取られ、フランスから強制退去させられる。だから、警察の目に見えないところへ行こうとする。私は長いことNGOをつくり、週に何度か、街娼と対話するようにしてきました。客から危害を加えられたら連絡するようにと伝え、避妊の必要性を訴えてきました。しかし、彼女らは今では地下に潜り、事実上、対話できない状態になっています。逃げ場としてマフィアに依存する性労働者が明らかに増えています。性労働者がマフィアに搾取されることは憂慮すべき事態です」

 カブラル区議を中心にして街娼たちは公然と人権活動を始めた。2005年3月のデモ以降、同年6月25日にパリで行われたレズビアン&ゲイ=パレード(50万人が参加。毎年開催)では性労働者がチームをつくり参加、サルコジ法・撤廃を訴えた。

 同年10月1日に催されたトランスジェンダーの権利を訴えるデモにも街娼らは参加し、自らのムネをさらして性の解放を体で表現する人もいた。2006年3月18日にはフランス史上初の祭典『娼婦プライド』(Pute Pride)が開かれ、今年の3月17日も同祭典は開催された。これはゲイ・パレードにならったもので、「娼婦/男娼である」ことに誇りを持つ性労働者が集まり毎年開催する。初年度は300人近くの売春婦/夫が参加し、パリの公道を2時間近く行進し、働く権利を訴えた。

 今春のフランス大統領選挙では仏全土で性労働者がサルコジ落選運動を展開し、社会党のセゴレーヌ=ロワイヤル候補を応援した。そして、6月の下院議員選挙ではパリ第5区からカブラル区議が「性労働者の代表」として無所属で立候補した。結果は232票(0.78%)を得ただけで惨敗であったが、「性労働者の権利」を訴える候補者として注目を浴びた。

 「サルコジが大統領になったことで、性労働者への締め付けはより厳しくなるでしょう。だから、私たちは声を大にして『性労働者に権利を!』とこれからも訴えていきます」

 カブラル区議は決意をこう語る。性労働者による闘いはフランスで今後も続く。