2009-12-24

書影の利用をめぐるメーリングリスト[Next-L』でのやりとり

Next-Lというプロジェクトのメーリングリストに入ってる。
オープンソースの図書館システムを作ろう、という取組みだ。
作ろう、という目的も、開発の方向性もスゴくいい。
ポット出版の「ず・ぼん15」には、メンバーたちの座談会もある。

んで、そのメーリングリストに、書影利用に関するメールがながれた。
そのメールに、書店の人から詳しいメールがとどいたり、
ぼくが返事を書いたりした。
書影利用をめぐるさまざまな問題点が垣間見えるので、
当人たちに了解をえて、載っけますね。

話のながれは、
●大学図書館の人が、書影をサイトでだしたいけど、アマゾンから引っ張って来る方式は難あり、
 とりあえず(すべての本をかばーできないけど)版元ドットコムの書影だけでも引っ張ってきたいな
●書店のひとが、書店(のサイトなど)での書影利用すら、うまく行っていない現状を書いて
●沢辺が突っ込み返した
●横から版元ドットコム事務局の日高から、「こうしてくれるといいよ」という具体的な利用方法
みたいな流れです。

他にも大学図書館のひとから、書き込みがあったり、専門的なやり取りがあったのですが、
流れをわかりやすくしたかったので、

メール●01(2009.12.15)──────────
沢辺様、みなさま

 小野@○○大学附属図書館と申します。
 いつも「日誌」拝見しています。

 私のところのOPACが今度更新になり、現在調整中なのですが、
 ○○という会社の作ったデフォルトでは、amazonの表紙画像が表示されます。
 ところが、
 ご存知のとおり?、「国立大学」というところで、amazonの書影を
 出すのには、いろいろ面倒なので(面倒な理由は、末尾に書きました)、
 画像が出る仕組みそのものを切ってあるのですが、
 版元ドットコムさんの、書影を使わせてもらう方向で進めています。

 システム業者にも、前向きに検討してもらえることになりました。
 # 実装がいつになるか分からないので、気長に待つことにしています。

 書影画像の生成規則ですが、
 http://www.hanmoto.com/bd/ISBN978-4-588-00928-0.html
 が、こんな感じ↓のようですが、
 http://www.hanmoto.com/bd/img/978-4-588-00928-0.jpg
 この生成規則で、システムを組んでしまってもよさそうでしょうか?

 今後ともどうぞよろしくお願いします。

—–
 余談ながら理由:
 ・一応国立大学なので、一営利企業(amazon)の広告を載せてよいか議論
  がある。
  : 広告そのものがいけないわけではない(広報誌では広告を取っ
    ている)。ので、そういう理由だけではいまいち。
  : 複数の書店にリンクをつければよいか。
    画像そのものはamazonからとってきてリンクはamazonからつけるが、
    その下に楽天、yahoo、セブンアンドワイ、TSUTAYAとかのリンクも
    つけておけばよい?でも、googleにISBNでリンクしているなら、
    それと同じことか?
  : 広告企業を公募すればよい?(それは変だし乗ってくれる書店はなさそう)
  : あと、アフィリエイトで小銭をとること自体を、そういう前例がない、と経理部門が面倒がる、という説もある。
 ・SINETのAUPにひっかかる?
  : 参照 http://d.hatena.ne.jp/arg/20080217/1203253500
  : たしかにNII「学術情報ネットワーク加入規程」には、
    「営利を目的とした利用を行わないこと」とあるが、大学が広告をとることが「営利」かどうかは疑問。
 ・各出版社のサイトに画像があれば、それを使う?
  : 表紙画像のURLがまちまちなのでシステムには乗らない。
   (わざわざISBNから生成できない画像ファイル名をつけているところが多い、というのは使わせたくない、という意思の現れ?)

 基本的には、
 表紙画像があるとイメージはつかめるので、
 表紙画像がOPACに出て欲しいとは思っていますが、
 諸般の事情^^;で難しいようです。

 「ご自由に使用できます。」という書店が増えてほしいなぁと思います。

メール●02(09.12.15)──────────
版元ドットコム事務局の日高です。

システムまわりなんで、直接おこたえします。

ご指摘のuriでかまわないのですが、現時点での推奨画像サイズは
「72dpiで原寸」という、かなり巨大なものになっており(もちろんそうでない、小さな書影画像もたくさんありますが)、

http://www.hanmoto.com/bd/img/978-4-901510-77-6.jpg

このように巨大なものも結構あります。

内部で呼びだす場合も、これではサーバ・ネットワーク負荷が厳しいので、

http://www.hanmoto.com/bd/img/image.php/978-4-901510-77-6.jpg?width=500&image=/bd/img/901510/978-4-901510-77-6.jpg

http://www.hanmoto.com/bd/img/image.php/[ファイル名]?width=[表示したいサイズの横幅]&image=/bd/img/[ファイル名

の出版社記号部分]/[ファイル名]

このように動的にリサイズしつつ取得するようにしております。
ですので、そちらで取得サイズを決めていただき、上記のようなuriでサイズ決め打ちで取得していただくのがありがたい
です。

よろしく、お願いいたします。

メール●03(09.12.16)──────────

ずっとROM状態の庫本善夫@庫書房です、
書影に関しての余談だと思ってください、

突き詰めれば金が解決する問題ではあるのですが、

そもそも書店には書影に関する権利は一切ないのです。
ま、でもアマゾンとかのネット書店が書影にそれなりの代価を
払っているか否かは別として、少なくとも書誌情報については
多額の使用料金を払っています。書誌情報についての権利関係は
さほどややこしくなくて、材料は無料と黙認された前提で書誌情報を
作成したものに書誌情報作成の著作権が発生していて、これが商材、
商品データそのものが商材となっているのが現状です。
年間200万円ほどを払えば書誌情報を一次的に使用することができます。
(二次的使用以降は別問題)

で、書影はどうか、
こちらはややこしいことになった経験があるので具体的にお話すると、
奈良県書店商業組合でオリジナル図書カードを作成販売しようという話が
ありました。結果的には作成販売することができましたが、その製作過程が
なかなか面倒でしたが権利関係に問題の無いところから奈良らしい、来年の
遷都1300年祭がらみのオリジナル図書カードを作ることができました。
(絶賛売り切れなので、ごめんなさい、入手不可です)

予定より大幅に作成が遅れたのは私たちの画像に対する考え方の甘さが
原因しておりました。当初某大手版元さんの営業さんが気軽に「うちの
奈良関連書籍の写真を使ってください、使用料はいりませんから、」と
言ってくれましたのでその版元の書籍をいろいろ広げて検討しまして
「これ使わせていただきます」と数点の候補をお知らせしましたところ、
かなりの間があいて、「表紙の写真だけにしてください、中の写真は
使えませんから、」と返事。で、表紙だけに絞って検討して縦長に
なっているのを少しトリミングしたサンプルを作って送ると、、、やはり
問題があったようで、しばらくたってから、こういうふうに使ってくださいと
作成例がきました。組合ではどうしたものかと困ったのは、ぱっと見たら、
出来上がりの図書カードはどう見てもその版元さんの本の宣伝カードに
しか見えない、見るからに本のデザインそのままだったのです。これでは
使えないということで期日にも余裕がなかったこともあり版元さんの
画像を諦めました。

歯切れの悪い話から推察されるのは版元さんの内部事情でした。
1枚の表紙写真には、版元営業さんだけでは勝手にできない権利、
本そのものを編集した編集関連の方以外に、写真の撮影者、
装丁のデザイナーさんなどの権利というか思惑というか、絡んでいます。

アマゾンは黙認するかもしれませんが正面きって使わせてくれといえば
簡単な話では終わらないでしょう。私たち書店は無断で販売のために
本の表紙画像を使っていますが、これでさえ、正面から断りを入れたなら
無視という黙認か、駄目ですという紋切り型のお返事がいただけます。

高校の司書さんたちから相談されることもありますが、ホームページと言う
公開された場が簡単に使えるようになったため、生徒さんたちへの本の紹介
などもホームページが使われます。私には使って良いという権利など全く
無いので事情を説明すると個別に版元さんに使用許可を出す方もあります。
結果は版元さんごとでまちまちのお返事、もしくは返事なし。

アマゾンとかが黙認するのは対応する煩雑さでしょう。ディズニープロは
見事に対応してきます。あそこ以外で画像の無断使用を追求しに
来たという話は聞いたことが無いですが、厳格に言うなら無断使用は
著作権法に触れますね。

ネット上に公開されていることが即公共的な使用権があるものとする
ことには無理があると思いますので書誌情報だけでなく画像情報の
取り扱いについても明確なガイドラインなり使用の根拠を明確化させて
おくことは必要ではないかと思いますが、いかがでしょう。少なくとも
アマゾンから書影を取りましたなどと明示することは、、ありえない
ですね。

版元さんたちに機会があるごとにお願いしているのですが
公開して良い書誌情報なり表紙画像なりを ISBNコード入りの
HTMLファイルにしてネット上において欲しいですね。以前に
沢辺さんに簡単なことではないですかというような話をさせて
いただいたことがありました。その時版元さん側の簡単では
ない事情の話を聞いてしまったので、時間がかかる問題だとは
認識しております。

沢辺さんたちの版元ドットコムはこのあたりの問題に積極的に
対応しておられるので小野さんの狙い所は正解ですね。でも
版元ドットコムさん以外の版元さんの情報をどうするかという問題が
残りませんか? 出版業界全体の問題として書協あたりに申し出て
みるのも方法ではないかと思います。日本インフラセンターが
図書館界へどういう対応を考えているかも知りたいところです。
図書館界も日本インフラセンターへメンバーとして参加しているはず
ですから何もないということは、、ないとおもいますが、、、、、

メール●04(09.12.16)──────────
書影問題について。
沢辺です。

●小野さん
問い合わせと、版元ドットコムのデータ利用ありがとう。
どんどん使ってほしいです。
使えるってことを、あっちこっちで吹聴してほしいです。
それが、「うちもそのようにしなきゃきないのかなー」って版元のムードを
作り出すことになると思うからです(笑)。

庫さん
こんなところで遭遇するとは(笑)。
庫本さん、に何点か。

●本の書影と、書誌データの権利について
○書影
・デザインには著作権はありません
・写真か絵が使われている場合は、その写真か絵には著作権があります。
従って文字だけの表紙には著作権はありません。自由に使えます。
○書誌データ
・著作権は、思想または感情を創作的に表現したものであって文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの、
なので、書誌データには著作権はないです。
・編集著作権はあるけど、ただ並べただけではダメで、昔の職業別電話帳のように、
どのような職業を抽出するか、どう分類するか、といった点が、編集著作権の根拠なので、
単に書誌情報をつくっただけでは著作権はありません。

●アマゾンなどなど
○書誌情報に多額な使用料を払っているとは言い切れないです。
 なにか確定的な情報はありますか?
 取次の情報(マーク以下のタイトルやISBNや値段などだけだろうけど)で間に合い、
 それは費用を払っていないと考えています。
 200万というのは「books.or.jp」のことかと思いますが、今は買ってないはずです
 →買わなくとも取次の書誌情報で間に合うからだと思っています。
○奈良県の図書カードの写真
 写真には著作権があります。死後50年以上か1955年(56年かも?)以前に【公表】された写真の財産権としての著作権はキレています。
 したがって、どの出版社が出した本であろうと、その写真をとった人が、上記に該当すれば無断無料で利用できます。
 たとえば、キャパの崩れ行く兵士(だっけ?)であっても。
 もし、使おうとしていた写真が、権利の残っているものなら、
 遷都1300年祭なんだから、もっと古い写真や絵を使えば問題なかったはずです。
 そしてその写真は、どの本からでも複写してかまわない。
 小学館の世界の美術から、モナリザを複写してもいい。出版社には「版面権」はありません。
○アマゾンのサイトにある書影は、写真/絵のあるものもないものもあります(つまり著作権のあるものとないもの)
 この権利処理は
 取次が各出版社に書影のネットでの利用承諾書をとってます。ポットも出してます。
 取次がそれにもとづいて、ネット書店での利用に了解を与えている、
 という構図だと思います。
 アマゾンには、写真/絵のあるもの、ないものももありますが、
 いちいち区別するのがメンドウなんでしょう。たぶん一律上記の了解をもって、
 許諾を得ているって立場だと思います。
 ところが、たぶん、そうした承諾書を、すべての版元が出しているとは考えられず(忘れてたり、も多いでしょう)
 承諾書を出していない版元の書影も一律出してしまっているのではないか? と想像してます。
 まあ、承諾書を出している版元にフラグをたて、その場合は書影を表示しているかもしれないですけどね。
 さらに、
 アフリエイトの一般の人にもAPIで書影の表示をさせていると思われますけど、
 これは原理的にはたぶんアウトだと思います。ネット書店が他に利用させるところまでの承諾書にはなっていなかったと思います。
 ただ、版元にとって、本の紹介をしてくれるのに、書影を利用を認めないとかたくなに考えているところはすくなく、
 現実に抗議などはしていないと思われます。
 げんに、新聞雑誌の書影で、利用承諾を問われたことは、ほとんどありません。
 勝手に掲載していて、でも、ありがたいと思ってます。
 アマゾンも含めて、実体上問題ないから、出しているってことに近い感じがしています。
○ところが、図書館は遵法が基本なので、原理的に扱う。
 すると、版元にいちいち聞くというところが少なくない。
 一橋大学図書館も、ちゃんとした利用許諾を受けていないので、アマゾンの書影を使う機能を
 はずしたんでしょう。そこで、せめて版元ドットコムの書影だけでも、と今回の問い合わせになったのだと思います。
 これは、出版界と図書館界が共同で書影利用オープンな本のデータベースをつくるというのが現実的な解決策ではないかと思ってます。
 ある程度、国会図書館なりがかね出してくれるといいんですけどね。
 そして、そこに書誌情報もくっつける。書店もどうどうと利用できる。版元は書店/図書館が本の告知を積極的にやってくれるってことです。

沢辺