投稿者「ポット出版」のアーカイブ

『羯諦』●タコシェ中山亜弓さんに紹介していただきました

タコシェ店主の中山亜弓さんに、2009年8月19日発行の「[書評]のメルマガ」の中で、2009年9月発行予定の『羯諦 山中学 写真』を紹介していただきました。

中山亜弓が選ぶこの一冊(34)「あるがまま」の視点

タコシェは、1992年に作られた山中学さんの写真集『不浄観』(限定150部)を、恐らく日本で唯一販売したお店です。
今回の『羯諦 山中学 写真』発行も、中山さんからのお話がなければ実現しませんでした。
ありがとうございます!

羯諦 山中学 写真』は現在予約受付中です。
ご予約はお問い合わせフォームで承っております。
本のタイトル/冊数/お名前/郵便番号/お届け先ご住所/お電話番号/メールアドレス/お支払い方法をお知らせください。
お支払い方法等詳細は、「本の購入」のページをご覧ください。

『エロスの原風景』ができるまで/松沢呉一インタビュー03/松沢呉一が語る『エロスの原風景』の読みどころ

前回まではこちら

01・国会図書館を抜き去るまで(ただし、エロ本のみ)

02・エロ本を捨てるな

「トルコ風呂」の元祖は「東京温泉」ではなかった──!!
そんな、ほとんどの人は知らない通説をひっくり返す『エロスの原風景』
手つかずのテーマだから、面白いのです。

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松沢呉一『エロスの原風景』に関する記事一覧

●松沢呉一が語る『エロスの原風景』の読みどころ

──50年後、宮武外骨、プランゲ、松沢呉一、ってなるかも。

「そうはならない(笑)。なぜかっていうと、宮武外骨は、わいせつに関する本や売春に関する本も出しているし、発禁もくらってますが、それ以外にもいろんなことをやっています。対して、私はエロしかやってないですから」

──やっばエロだけ、はダメ?

「日本では基本的にエロって文化の最底辺、いや、最低より下で、文化だとさえ思われていない。国によっては、大学の中にセクソロジーのコースがあったりもするけど、日本にはない。学問の対象ではないんです。そんなもんに金や時間をかけて調べるような人間は単なるバカ、単なるクズですから」

──プランゲもエロ本だけ持って帰ったわけではないんですか?

「検閲していたものを全部持って帰っている。『噂の真相』の元となった『真相』といった左翼誌だとか、『政界ジープ』とか、そういう政治雑誌も持って帰った。今早稲田大学の先生が中心になって整理をやっているけど、エロ系はまだ整理されていないんじゃないかな」

──じゃあ、松沢さんがそんなエロに惹かれるのはなんでですか?

「誰もやっていないテーマが好きなんですよ。世間からゴミ扱いされているもの、存在さえ認識されていないようなものに魅力を感じてしまう。ここ数年、ずっと調べているのは、提灯だったり、暖簾だったり、建物の色だったり。その話をすると長くなるので、ここでは深入りしないですが(笑)、こうも日本はエロを軽視していると批判的に語りつつ、だからこそ、そこにこだわりたくなる。『エロスの原風景』のなかでは、カストリ誌の章が面白いっていう人が多いんですけど、私自身は、トルコ風呂発祥の話が面白いと思っている。一般的には、トルコ風呂の元祖は、銀座にあった『東京温泉』ということになっているんですけど、それは違うってことを昔の雑誌から記述を拾い集めて論証してます。これはまだ誰もやっていないことなんだけど、もともと『東京温泉』がトルコの元祖と言われていること自体がどうでもいい話で(笑)、知っている人自体が少ない。そんな小っちゃなものを根底からひっくり返しても、なにも世界に衝撃を与えない(笑)。それでも、そういう作業が好きなんですよ。エロというジャンルはそういう話がいくらでもあります。調べている人が少ないので。トルコの元祖という話もそうですが、カストリ誌に掲載されている文章や写真から何かを見出していく作業はとても刺激的です。でも、カストリ雑誌そのものに関しては、過去に何冊か研究書がまとまってるから、書いている側としては、正直、いまひとつです」

──ビニ本の章はどうですか?

「ビニ本はリアルタイムで買っていて、それ以前のものよりもずっと愛着があるんですけど、多くの人が知っているジャンルなので、あんまり書く気がしなくて、先に各論とも言えるスカトロものを連載で取りあげてまして、今回の本でもそっちを先に収録してます。ビニ本は、スカやホモものなどの各ジャンルにとっても意義があるという視点はあまり書いている人がいないかと思いまして。でも、今の30代となるとビニ本と裏本の区別もついていないことがわかって、ちょっと前にビニ本の概略的な原稿を連載で書いたんですけどね。ビニ本、裏本はすごいコレクターたちがいて、会ったことはないんだけど、ほぼ全部の裏本を持っている人もいるんですよ。人を介して、その人のコレクションのリストをもらったら、完璧なんです」

──裏本ではその人にはかなわない?

「全然かなわない。その人が持っていないのは、存在しているのかどうかもよくわからないものだけなんですよ。そのリストをみて、ものすごすぎて、このジャンルはその人に任せました(笑)。各ジャンルにそういう人がいて、『エロスの原風景』で紹介しているフレンチ・ポストカードのコレクターもけっこう多い。もともとフランスのものですから、当然フランスのコレクターには勝てないし、国内にもコレクターはたくさんいます。フレンチ・ポストカードは20世紀の頭くらいにフランスで大ブームになって、世界中にコレクターがいて、日本でも復刻されていたりする。ただ、ヌードで、彩色のものっていうのはわりと珍しいので、私の原稿ではそこに重点を置いてます。どうしても、他の人が書いていないところを探す習性があるもんですから」

フレンチポストカード

『エロスの原風景』フレンチ・ポストカードの項より

──当時のカラーっていうのはどうやって色をつけてるんですか?

「手作業です。筆で彩色するか、スタンプを使って彩色する。だから、同じ写真でも、色が違っていたりする。そういうところまで見ていくといよいよ面白くて、同じ図柄のものを何枚も買ってしまったり。でも、私はエロ以外に興味はないんで、他のフレンチ・ポストカードはどうでもいい(笑)」

──フレンチ・ポストカードってエロ以外にもあるんですか?

「そのまんまの意味でフランスのポストカード全体を指す意味もあるんですけど、英語でフレンチって言うと、『エロ』の意味になることが多いんですよ。英語で『フレンチ・レター』っていうとコンドームの意味だったり。『フレンチ』がつくとエロになる。フレンチ・キッスもそうだし、英語圏でいやらしい色はブルーなんですけど、これもフランスのエロの全集から来たとされている。フランス人がエロいってことじゃなくて、フランスとイギリスは、互いに品のないものを相手の国に押し付けている」

──そういうことなんだ。

「ちなみにピンクがいやらしい色と認識しているのは、私が調べた範囲では日本だけです。なぜそうなったのかの歴史も一通り調べていて、前史はあるにしても、確定した歴史はそれほど古くない」

──で、松沢さんは、いやらしいほうのフレンチ・ポストカードが好きだと。

「そうですね。たまーに、陰毛が見えてるのがあると、ものすごく幸せになる(笑)。たぶん当時も非合法で出されたものじゃないかと思うんですけど。エロ以外に興味がないわけではなくて、実際にはそうじゃないものも買ってますが、原稿を書くとなると、エロに向かってしまう。誰も書いていなかったりするので。プランゲは別として、カストリ雑誌は数で言うとたぶん私が日本で一番か二番に所有していると思うんですけど、自分が所有しているかどうかはさして重要ではない。すでに書かれているものよりも、自分のオリジナルの視点を探せるかどうかにかかってくる。それが探せないと、どうも執筆意欲がわかない。それを探すためには自分で買い集めるしかないってことです」(続く)

(このインタビューは2009年7月12日東京国際ブックフェアで行なわれた公開インタビュー『「戦前、戦後のエロ本」〜日本のエロ表現史』に大幅な加筆・訂正を加えています。聞き手:沢辺均)

『エロスの原風景 江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 』

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著者●松沢呉一
定価●2800円+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入
[2009年07月 刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン●小久保由美

内容紹介

エロ本は遠からず消えると言っていい。そんな時代だからこそ、こんな本を出す意義もあるだろう──
(「はじめに」より)

●『実話ナックルズ』(ミリオン出版)で2004年より現在も続く、日本エロ出版史を網羅する長期連載の単行本第1巻。
●稀代のエロ本蒐集家である著者所蔵の膨大な資料の中から、エロ本173冊、図版354点をフルカラーで掲載。
●読み物としてだけでなく、顧みられることのなかったエロ表現史の概観を辿る、資料性の高い一冊。
●大幅加筆に、連載時には掲載されなかった資料も掲載。

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『エロスの原風景』ができるまで/松沢呉一インタビュー02/エロ本を捨てるな

前回はこちら

01・国会図書館を抜き去るまで(ただし、エロ本のみ)

エロほど、時代に寄り添ったジャンルはない、と松沢呉一は『エロスの原風景』で説く。
50年、100年が経ち、「使えなく」なったエロ本は、時代を映す、貴重な資料なのだ。

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松沢呉一『エロスの原風景』に関する記事一覧

●エロ本を捨てるな

──国会図書館の収集部の人と会ったことがあるんですが、国会図書館には、段ボールにカストリ雑誌とかが未整理で保管してあるそうですね。

「収蔵されているものでも、未整理のものがたくさんあって、名前は出しませんが、ある分野で業績のある方が、ビニ本や裏本を国会図書館に寄付しています。彼は、『これは貴重な資料だから』ということで、自分が持っているものを段ボール何箱分か寄贈した。それは彼が資料というのものの意味をわかっているからであって、ほとんどすべての人たちは、ビニ本、裏本は文化じゃないと思っている。カストリ雑誌も今見ると『面白い表紙だな』と思えるし、中身も面白いと思える人が出てくる。その後作家として大成した人も書いているし、著名な人が変名で書いていたりもする。しかし、その面白さは、半世紀経っているから初めて見えてくるだけであって、今皆さんがバカにして捨てているエロ本も時代が経ってから歴史的価値が初めてわかる。わからないかもしれないけど、わかるかわからないかを今の我々には判断ができないってことなんです。『変態資料』も軒並み発禁になっていて、梅原北明は上海に逃げたりもしてる。エロですからね。ここで『昔はひどかった』と嘆くのは簡単なんだけど、AVを作っている人たち、エロ本を作っている人たちは今だって逮捕されています。それらのAVやエロ本を見た時に、『エロじゃ逮捕されても仕方がない』とか『エロだから逮捕されても当然』と感じるのと同じように、当時のエロ本が摘発されていることを多くの人たちは当然と感じていた。今古い雑誌を見ても逮捕されるようなものとは思えないだろうけど、これは時間が経ってエロが生々しくなくなったというだけ」
変態資料
『エロスの原風景』「変態資料」の項より

──今のエロ本も、半世紀後にはそう見えるようになる。

「本や雑誌というメディア自体が古くさいものにしか見えなくなるんじゃないですかね(笑)。皆さんが今のエロ本をバカにしているように、当時の人たちもバカにしていた。バカにされるようなものでもアメリカに持ち帰ったのがプランゲの偉いところです。この前ネットに書きましたが、NHKの番組で宮武外骨を取り上げていたんですよ。その番組は単に宮武外骨の業績をなぞるだけじゃなくて、あまり他では見られない視点があった。宮武外骨は、晩年、明治の新聞や雑誌を集めていました。今も東大に残ってますが、それまで権威を嫌い、叩き続けた外骨が、なぜ東大のもとで、そういうことをやっていたかというと、『日本にも活発な表現がなされた時代があった。それを後世の人が理解できるようにしたい』という思いがあったから。それまで新聞や雑誌を保存するなんて発想はなくて、言い換えれば、『世の中の人がクズ扱いして捨てているものにも未来の価値がある』ってことです。戦争が終わって、やっと自由に表現できると思ったら、今度はGHQの検閲が待っていて、外骨はまたも絶望するわけです。テレビでは、そこまでしかやっていなかったんですけど、その検閲をしていた側にプランゲがいた。皮肉なことに、検閲する側と検閲される側だったわけですが、実は彼らは同じ思いに突き動かされていたんですね。ビニ本や裏本を寄付した私の知人も同じです。そのビニ本や裏本は整理もされずに、段ボール箱に入れられたままでしょうけど、それでいいんです。図書館員は裏本の整理以外にもっと他にやることがあるんだから」

──僕もそう思う(笑)。

「今の時代に生きている我々が今の時代について判断できる部分はほんのちょっとしかない。100年後、200年後に価値観が変わることを我々は読み切れない。だから、とにかく残すしかない。それを踏まえて、国会図書館の役割はなんでもかんでも残すことですけど、そこがちゃんと理解されていない気がします。国会図書館の所蔵品は、町の図書館から取り寄せられて、閲覧することができる。本当は貸し出しはできないはずですけど、現実には貸し出しまでやっている例があります。なんてバカなことをしているのかって思う。だから、紛失する。貸し出しはもちろんのこと、国会図書館から外に出すべきではない。そんなことをしたら、どうやっても紛失するに決まってますから。国会図書館は閲覧さえ禁止にしちゃえばいい。あそこは保存をするのが使命であって、閲覧をするための一般の図書館とは存在意義が違います。図書館の人たちも誤解をしていて、本にベッタリとシールを貼ることに反対する図書館員もいる。でも、一般の図書館はとにかく頑丈にすることと、ハンドリングを楽にすることが大事であって、カバーも箱も全部捨てちゃえばいいんです。そんなことに気を使うのは税金の無駄遣いであって、本自体、古くなったら捨てていいし、利用者のいない本も捨てていい。でも、国会図書館だけは箱もオビも栞も全部残すべきです」

──国会図書館はカバーも、オビも全部捨てているんですよね。

「それがおかしいし、今度はそれが税金の無駄遣いです。国会図書館は、本に印刷された著作物を保存するだけでなく、本という形のある商品をも保存すべきであり、箱やカバーに表現されたデザイナーの仕事も保存すべきです。貸し出しをするとか、閲覧をすることを考えるから、捨てるという発想が出てきてしまう。国会図書館は保存が目的なんだから、短冊やチラシの類いまで残した方がいい。閲覧のためには、そこまでできないというのなら、閲覧は禁止にしていい。全面禁止までしなくても、有料にして利用者を減らしてもいいし、どうしても閲覧したい人は、戸籍謄本とパスポートを提出して、なぜ閲覧したいのかを原稿用紙10枚にまとめて提出するようにすべきです。利用者の利便をとことん無視した方がいい」(続く)

(このインタビューは2009年7月12日東京国際ブックフェアで行なわれた公開インタビュー『「戦前、戦後のエロ本」〜日本のエロ表現史』に大幅な加筆・訂正を加えています。聞き手:沢辺均)

『エロスの原風景 江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 』

978_4_7808_0126_2.jpg

著者●松沢呉一
定価●2800円+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入
[2009年07月 刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン●小久保由美

内容紹介

エロ本は遠からず消えると言っていい。そんな時代だからこそ、こんな本を出す意義もあるだろう──
(「はじめに」より)

●『実話ナックルズ』(ミリオン出版)で2004年より現在も続く、日本エロ出版史を網羅する長期連載の単行本第1巻。
●稀代のエロ本蒐集家である著者所蔵の膨大な資料の中から、エロ本173冊、図版354点をフルカラーで掲載。
●読み物としてだけでなく、顧みられることのなかったエロ表現史の概観を辿る、資料性の高い一冊。
●大幅加筆に、連載時には掲載されなかった資料も掲載。

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松沢呉一『エロスの原風景』に関する記事一覧

◎『エロスの原風景』ができるまで/松沢呉一インタビュー
01・国会図書館を抜き去るまで(ただし、エロ本のみ)
02・エロ本を捨てるな
03・松沢呉一が語る『エロスの原風景』のよみどころ
04・『エロスの原風景2』に向けて
05・エロ本を集めることの悲哀

◎「部数と印税」シリーズ
「部数と印税 1・印税さまざま」
「部数と印税 2・刷部数と実売」
「部数と印税 3・下がる印税率」
「部数と印税 4・上製にする理由」
「部数と印税 5・本のみてくれ」
「部数と印税 6・部数と定価」
「部数と印税 7・上製の経費とアマゾンの順位」
「部数と印税 8・ネット時代の本の買い方」
「部数と印税 9・『エロスの原風景』は来週発売」

◎『エロスの原風景』の裏庭風景
『エロスの原風景』の裏庭風景 1・エロというもの
『エロスの原風景』の裏庭風景 2・黙殺される存在
『エロスの原風景』の裏庭風景 3・見えない歴史
『エロスの原風景』の裏庭風景 4・チンコ展
『エロスの原風景』の裏庭風景 5・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(上)
『エロスの原風景』の裏庭風景 6・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(中)
『エロスの原風景』の裏庭風景 7・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(下)

◎その他
誤字のお知らせ 1
「著者キャンペーン」のまとめ
「著者キャンぺーン」の補足
エロの排除
その後の『エロスの原風景』
『唐沢俊一検証本』は記録的な売れ行き

◎『エロスの原風景』刊行記念 松沢呉一インタビュー
「modern freaks web」にて公開中

◎『エロスの原風景』紹介ブログ
孫と東村山Rhapsody
3羽の雀の日記
Tomatotic-jellyの日記
マガジンひとり
日刊サイゾー
田亀源五郎’s Blog
WEBスナイパー
ofellabuta
赤尾晃一の知的排泄物処理場(わかば日記)
Mucha-holic / ミュシャ中毒
サブカル雑食手帳
伏見憲明の公式サイト
東京散歩研究
四次元狂人
積ん読パラダイス
歌餓鬼抄
日日不穏日記
変○紳○の読書とかの日記
いぬん堂
エロ本編集者の憂鬱と希望

◎『エロスの原風景』書評掲載誌
『バディ』2009年8月号(テラ出版)
「目にも鮮やかなエロ本の歴史を辿る名著」
『週刊SPA!』2009年7月28日発行号(扶桑社)
「ニッポン文化における『エロ本』の重要性をひもといた、意義深い一冊!」
『本の雑誌』2009年8月号(本の雑誌社)
「万単位のエロ本から選ばれた(たぶん)、超一流の資料が惜しみもなく並べられているから壮観この上ない」
『トーキング・ヘッズ NO.39』(アトリエサード)
「エロも立派な文化なのだ。忘れてしまっていいはずがない」
『日刊ゲンダイ』2009年8月31日発行号
「時代のはざまに消えたエロ本173冊を収録!」

『エロスの原風景』ができるまで/松沢呉一インタビュー01/国会図書館を抜き去るまで(ただし、エロ本のみ)

日本国最高の知のデータベース「国会図書館」──が、どんな巨人にも弱点はある。それはエロだ。
エロに関しては国会図書館を優に超える資料を収集した男、松沢呉一の最新刊がこの『エロスの原風景』(7月1日刊行)である。
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松沢呉一『エロスの原風景』に関する記事一覧

●国会図書館を抜き去るまで(ただし、エロ本のみ)

──『エロスの原風景』で紹介している図版は、すべて松沢さんのコレクションをスキャニングさせてもらったわけですけど、そもそも、松沢さんはどういう理由でエロ本収集を始めたんですか?

「この話は、いろんなところで書いているんですけど、かれこれ20年くらい前にマガジンハウスの『ブルータス』で、高橋鐵の原稿を書くことになったのがきっかけです。高橋鐵というのは心理学を主体にした性学者で、、昭和20年代に『あるす・あまとりあ』という大ベストセラーになった本を出している。それまでにも高橋鐵の本は何冊かは読んでいて、改めて調べに国会図書館に行ったら、所蔵している本が5冊くらいしかなかった」

──実際はもっと本が出ていた?

「同じ内容の本の改訂版とか新装版が多く出ていて、それを入れると、数十冊出ている。高橋鐵は生活心理学会という団体も主催していて、学会と言っても愛好会みたいなものなんですけど、そこでも冊子を多数出している。一般に売られた物だけでも30冊くらいありそうなのに、国会図書館には5冊か6冊しかない。その上、そのうちの何冊かはリストにはあっても、行方がわからなくなっているんですよ。たぶん盗まれたのか、紛失したのだと思うんだけど、天下の国会図書館に3冊くらいしかない。だったら、自分で集めようかなと思い始めたのが始まりです。売れた人なので、古本屋にいくらでも売られていて、国会図書館は1日で抜ける。これは高橋鐵に限ったことではなく、性というジャンルに関しては、国会図書館の蔵書は全然たいしたことがない。これに限れば、国会図書館を簡単に抜けることがわかりました」

──(笑)

「国会図書館を敵と見なして、それから数年で簡単に勝利しました。以来、国会図書館を抜いた男と言われている。ただし、エロだけ(笑)。きっかけが高橋鐵だったので、生活心理学会名義で出していたガリ版刷りのビラや、『セイシン・レポート』という雑誌もひと通り全部集めて、次に『エロスの原風景』でも取り上げている『変態資料』という雑誌など、大正から昭和初期のものも集め始めます。『変態』という言葉は、明治末期に心理学用語の『アブノーマル』の翻訳語として作られたもので、もともとは心理学、医学用語だったんですけど、大正時代に宮武外骨が『ちょっと変わった』『正統ではない』というニュアンスの言葉に俗化させて使いだして、『変態知識』といった雑誌を出しています。それを引き継ぐような形で、昭和初期にエログロナンセンスの時代になる。これを先導したのが梅原北明という編集者です。北明は大量の雑誌や本を編集していて、『変態十二史』という叢書も手がけている。当時は軟派本と呼ばれるジャンルの本が膨大に出ていて、北明以外のものも集め出し、大正末期から昭和初期に多数出ている『変態』という言葉がタイトルに入った本も医学書を含めて集めて、それとほとんど同時に宮武外骨も集めて。数が多すぎて、今でも集まり切らない物はあるけど、だいたい集め終わったところで、明治時代の造化機論や戦後のカストリ雑誌に手を広げて」

(雑誌を手にする)

「今日ここに持ってきた『猟奇』はカストリ雑誌の代表的存在で、創刊号(昭和21年10月発行)が戦後初めてわいせつ物頒布で発禁になっています。その後、版元が変わるんですけど、全部で二十冊くらい出ているのかな。こっちは『エロスの原風景』でも一章割いている創文社の雑誌で、『奇抜雑誌』です。これはカストリ雑誌に含まれるかどうか微妙な点があるんですが、広い意味で言えばカストリ雑誌です。この雑誌は、社長が全部一人で書いていました。だいたい月に30本原稿を書いて、他の社員に聞かせてその中から20本選んで出す。座談会だとかルポだとかいろんなものが入ってるんですが、それも社長が想像で書いていた(笑)。後半は他の社員の文章も増えるんですが、『怪奇雑誌』と『奇抜雑誌』の初期は全部一人でやっていたとのちに出た社長の手記に書かれています。カストリ雑誌は国会図書館にもあるんですけど、紙が粗悪な再生紙なので、傷みが激しく、紙が割れたりするので、一般の人は閲覧できない。他の図書館にもないですから、見ようと思うと自分で買って集めるしかないんです。

カストリ誌創文社

『エロスの原風景』         『創文社グループ』の項より
「カストリ雑誌」の項より

──他のジャンルと違って、エロに取り組もうとすると、必然的に自分で集めるしかないんだ。

「そういうことになります。アメリカの大学に『プランゲ文庫』というコレクションがありまして、プランゲは昭和20年から昭和24年に、GHQで検閲をやっていた人物です。この人は本当に偉い人で、その時期に発行された日本の出版物をアメリカに持ち帰ったんです。日本ではこんなものは公的な施設は保存していなくて、国会図書館にも中途半端にしかない。これもあとで集め直したか、寄贈されたんだと思うんですけど。そのため、悲しいことに、カストリ雑誌の最大のコレクションはアメリカにあるんですよ。これがアメリカの偉いところというか、日本のダメなところだと思うんだけど、浮世絵が海外流出して、海外でこそ評価され、保存されたのと似ている。しかも、日本では浮世絵の中の重要な柱のひとつである春画は、いまなお美術館で展示できない。日本だと『エロだから』ということで、こんなものはいらないと判断して捨てちゃう。捨てる前に集めもしない。善か悪か、必要か不要かを今の時代にたまたま生きている自分が判断できると思い上がっているわけです。しかし、そこに価値があると判断する人もいるのだし、今はいなくても、半世紀あとに必要とする人が出てくるかもしれない。そういった長い時間に沿った思考が欠落した国で、それを拾い集めてきたのが、言ってみれば私の人生(笑)」(続く)

(このインタビューは2009年7月12日東京国際ブックフェアで行なわれた公開インタビュー『「戦前、戦後のエロ本」〜日本のエロ表現史』に大幅な加筆・訂正を加えています。聞き手:沢辺均)

『エロスの原風景 江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 』

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著者●松沢呉一
定価●2800円+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入
[2009年07月 刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン●小久保由美

内容紹介

エロ本は遠からず消えると言っていい。そんな時代だからこそ、こんな本を出す意義もあるだろう──
(「はじめに」より)

●『実話ナックルズ』(ミリオン出版)で2004年より現在も続く、日本エロ出版史を網羅する長期連載の単行本第1巻。
●稀代のエロ本蒐集家である著者所蔵の膨大な資料の中から、エロ本173冊、図版354点をフルカラーで掲載。
●読み物としてだけでなく、顧みられることのなかったエロ表現史の概観を辿る、資料性の高い一冊。
●大幅加筆に、連載時には掲載されなかった資料も掲載。

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『本の現場』●日経新聞に書評掲載

本の現場』(永江朗著)の書評が、2009年8月16日(日)の日本経済新聞に掲載されました。

本の現場
著者●永江朗
希望小売価格●1,800円+税
ISBN978-4-7808-0129-3 C0000
四六判 / 228ページ / 並製
[2009年07月 刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン●山田信也

目次

◎本はどう生まれているか
01●新刊洪水
02●本を出したい
03●ネット発の本
04●ライターの事情
05●編プロのいま
06●情報の無料化

◎本はどう読まれているか
07●アサドクとドクソン
08●「読書ばなれ」の根拠
09●新書ブーム
10●書店をディレクションする
11●本屋大賞と読ませ大賞
12●ベストセラーは誰が読んでいるのか?

◎付録・インタビュー
本棚が町へ出て行く─幅允孝(聞き手●永江朗)
再販制度はもういらない─永江朗(聞き手●沢辺均)

あとがき
プロフィール

関連リンク

●ポット出版サイト内の関連記事
「『本の現場』(永江朗著)の非再販扱い(再販売契約維持契約の不適用)について」
「取次との「取引約定書」「再販契約書」はこうなってるんです」
「『本の現場』に質問」
・上記含め、『本の現場』に関する記事一覧
●『本の現場』を取り上げたブログ記事
「本の現場」本屋のほんね
「永江朗『本の現場 本はどう生まれ、だれに読まれているか』」空想書店 書肆紅屋
「本の現場」ReadMasterの軌跡 3RD stg
「書店と読者に、本の価値をジャッジ」シニア世代がつぶやくニュース
「7月14日(火)」返ってきた炎の営業日誌
「本の現場、小松崎茂……ブックフェアで買った本たち。」空犬通信
「本の現場—本はどう生まれ、だれに読まれているか」経済学部生のレビュー
「新刊を非再版で発行(価格拘束なし)ポット出版」tx別館(本とネットの話限定)
「えっ!?本屋さんが値段を決められるの?」どりぃむめっせ営業日誌
「値引きOKの本」のほほん
「販売価格は書店側で決める本を出版へ by ポット出版」じだらく-マーケティングが語りたいけど語れない人のブログ
「出版幻想」GONT-PRESS
「再販制に乗らない本。ポット出版の試み」空手家図書館員の奮戦記 ~Library0.2からの出発?~
「永江朗さんの新刊」Berlinbooks infomation
「VAIO/尼崎/非再販」intoxicated life
「東京国際ブックフェア」ママさん編集者のぶらぶら日記

『本の現場』を取り上げた雑誌・新聞記事

・朝日新聞 2009年7月8日(水)夕刊「再販制に一石『本の現場』」
・出版ニュース 2009年8月上旬号 巻頭コラム「非再販本『本の現場』で思うこと」
・毎日新聞 2009年7月20日(月)朝刊メディア面「再販制 今こそ議論必要」(清田義昭)

いただいた本●ぼくに死刑と言えるのか─もし裁判員に選ばれたら

北尾トロさんからいただきました。

ぼくに死刑と言えるのか

書名●ぼくに死刑と言えるのか─もし裁判員に選ばれたら
著●北尾トロ

編集担当●尾形誠規
装丁●細工場
写真●石郷友仁
印刷・製本●大日本印刷株式会社

発行●鉄人社
定価●1,300円+税
四六判 258ページ 並製
2009年7月30日 第一刷発行

●全国の書店で買えます
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いただいた本●atプラス 01

太田出版さんからいただきました。

atプラス01

書名●atプラス 01
著者●上野千鶴子, 岩井克人, 柄谷行人, 水野和夫, 湯浅誠ほか
編●atプラス編集部

発行所●太田出版
定価●1,400円+税
A5判変型 160ページ 並製
2009年8月4日 第1刷発行

●全国の書店で買えます
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