いい獣医さんに出会いたい!

発行:ポット出版プラス
西山ゆう子 著
希望小売価格:1,200円 + 税 (この商品は非再販商品です)
ISBN978-4-86642-001-1 C2077
四六判 / 112ページ /並製
[2016年11月刊行]
印刷・製本●萩原印刷株式会社
ブックデザイン 小久保由美
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【電子書籍】
●『いい獣医さんに出会いたい!』は電子版(価格:900円+税)もあります。以下のサイトでもご購入いただけます。

内容紹介

いい獣医師に診てもらいたい。
犬猫も長生きする時代だからこそ、ご近所のかかりつけ医をもちたい。
飼い主ならだれでもそう思う。
「いい獣医さんってそもそもどんな獣医?」という投げかけから生まれた本書。
第一章は、納得のいく治療を受けるための診察室での会話術をQ&Aで伝える。
第二章では、30年間米と日本で獣医師として働いてきた著者が、動物病院をめぐる時代状況と獣医療の変化を語る。
これからの獣医療が直面するペットの高齢化問題にも触れ、飼い主と獣医師との絆が今後ますます大切になると説く。

保護犬を飼い、動物保護活動も積極的に行なっている浅田美代子さんが帯の推薦文を書いてくれました。

   飼い主を選べない
   彼らを守るのは
   私たち飼い主の責任です。
   獣医師と
   いい関係を築くことが
   どれだけ大切か…。
   西山先生がわかりやすく
   書いてくれた。
          浅田美代子/女優

目次

はじめに

第1章 飼い主と獣医師のQ&A

[質問1]初診
初めて受診するとき
獣医師に何を、どこまで話すべき?

[質問2]初診
いっぱい質問をしたら先生にいやな顔をされた。
いい質問の仕方はありますか?

[質問3]初診
診察を終え、会計で金額を聞いてびっくり!
事前に金額を教えてもらえないの?

[質問4]初診
注射のとき犬が大暴れしました。
先生が下手なのかな?

[質問5]初診
診察室で犬猫に赤ちゃん言葉で
話す飼い主はバカっぽく見えますか?

[質問6]初診
獣医師にとって
困る飼い主ってどんな人ですか?

[質問7]予防
アメリカでは犬の混合ワクチンの接種が
3年に1回でいいと聞きましたが本当ですか?

[質問8]予防
今まで5種だった混合ワクチンを
7種がいいと勧められました。従うべき?

[質問9]予防
猫にもワクチンの接種を勧められました。
室内飼いで外には出さないのに必要ですか?

[質問10]予防
フィラリアの薬やフロントラインはネットで
安く買えるので、病院でもらう必要はない?

[質問11]再診
まったく触診しない先生に、ちゃんと触って
診てくださいと言いたいけど、なかなか言えない。

[質問12]病気・ケガ
病気になってから病院を探すのでは遅い?
狂犬病ワクチンは自治体で受けています。

[質問13]病気・ケガ
どうしても病院に連れていけないとき
動画を送って診てもらうのはダメですか?

[質問14]病気・ケガ
「手術する方法もあるが治らないこともある」と
先生に言われ、判断に困っています。

[質問15]病気・ケガ
動物病院にしか売っていない高い療法食を
勧められました。金額が高くて悩むのですが。

[質問16]病気・ケガ
お金もかかるし、あまり検査をしたくありません。
獣医さんには愛情が少ない飼い主にみえるのかな?

[質問17]老化
高齢で足腰も弱り、ワクチンも打たなくていいと
言われました。もう病院に行かなくていい?

[質問18]老化
入院させずに自宅で看病したいのですが、
入院を勧めてくれた先生に悪い気もします。

[質問19]老化
痛みが辛そうで安楽死させたほうがいいと
家族は言いますが、どうしたらいい?

[質問20]転院
引っ越して病院を変わることに。
新しい先生にはどんなことを伝えればいい?

[質問21]転院
今の病院と合わないので、転院を考えています。
「カルテのコピーをください」と言っていいの?

[質問22]セカンドオピニオン
セカンドオピニオンを取ると、今の先生が
気を悪くしないか心配。内緒でやってもいい?

コラム・・・Silly Question〔愚問〕

第2章 診察室での会話のトレンド
1980年代
1990年代
2000年代
2010年〜現在

前書きなど

 思えば、ずいぶん長い間、動物病院の獣医さんをしてきたと思う。

 獣医大学を卒業して30年。いろいろな時代に、いろいろな場所で、いろいろなタイプの獣医師をしてきた。東京の山の手の大きな病院から、北海道の田舎の小さな病院。まだワクチンも、予防医学も普及していない時代もあった。ある日、病院のドアをそおっと開けて、「あの、うちの犬、雑種なんですが、連れてきてもいいですか? ずっと具合が悪いので」と、遠慮しながら聞いていた男性の顔を、今でも忘れることがない。「動物病院がいつか、誰もが、どんな動物も自由に入れるような時代になれば」と、心の底から熱く思った瞬間だった。
 アメリカでは、ホームドクターと専門医がはっきり分かれている制度や院内の分業制に感銘を受け、オープン医療、常に進歩する医療に携わることの大切さを学んだ。院内で、地域社会の中で、獣医師としてどう生きていくか、どう貢献できるか、いつも考えて仕事をしてきたように思う。
 女性としても、結婚、子育てと仕事の両立も、皆と同じように悩み、苦しみ、答えが出ないまま、今に至っている。臨床獣医師として、盆も正月もなく、週末も返上して急患を診るのは慣れても、夫や子どもにそのぶん、負担をかけている自分に、獣医なんか辞めたいと、涙した時は数えきれない。それでも辞めずに獣医師を続けてきたのは、やはり私はこの仕事が好きだからなのだと感じている。

 ロサンゼルスの都会、アイオワの田舎、様々な人種と文化、宗教の違う飼い主さんと関わり、信頼し合い、心を寄せて、一匹の命を共に治療してきた。そして感じるのは、一匹の命を大切に思うこと、いとおしく思うこと、命に対して尊敬の念を抱くことは、人種や文化を超えた、全世界共通した気持ちなのだと。
 北海道、東京、神奈川、大阪。それぞれの土地の言葉、会話の方法が少しずつ違うことを知った。さらに、アメリカでは英語で会話を理解し、飼い主さんが理解できるように医療を説明するのは、短期間に習得できることではなかった。飼い主さんも私も、どちらも英語が母国語ではない場合も多々あった。コミュニケーションは、医療だけではなく、金銭のこと、万が一のリスクがあること、看病の仕方や看取り方、さらには哲学的、宗教的な考えや希望など、誤解がないように話す必要がある。これらを失礼なくきちんと伝えることは、人種、年齢を超えて大変なことだ。

 私は動物愛護や動物虐待問題についても、いち獣医師としてライフワークとして関わっている。各地方自治体(動物愛護センターなど)で、殺処分されるペットに心を痛め、不妊去勢手術をまじめに考えようと言い始めたのが30年前。今では外で飼育されている地域猫(昔はノラ猫と言っていた)、動物保護活動をしている愛護団体やシェルター、さらには、多頭飼育から多頭飼育崩壊に至ってしまう社会問題まで、NPOから行政、個人の愛護活動家、さらに研究者や教育者まで、様々な立場の人と、日本とアメリカで多く交流してきた。そしてここでも痛切に感じるのは、話し合うことの大切さである。
 飼い主さんと獣医師が、誤解のない会話を行うことができ、そのうえで、しっかりと診断、治療ができ、お互いの心が寄り添い、同じ方向を向くことができたなら。それがすなわち、ペットにとってベストな医療を提供することになると確信している。(以下略)
・・・・・・・・・・・西山ゆう子 まえがきより

著者プロフィール

西山ゆう子(ニシヤマ ユウコ)

北海道大学獣医学部獣医学科卒業後、東京と北海道の動物病院に勤務。1990年にアメリカに移住し、アメリカ合衆国獣医師免許を取得。勤務医、獣医大学の客員教授を経て、ロサンゼルス郊外に動物病院を開業し、院長を務める。2014年、拠点を日本に移し、シェルターコンサルタント、保護動物アドバイザーとして活動。動物虐待、殺処分問題、多頭飼育崩壊問題などに取り組み、日米で講演を行なっている。
相模原どうぶつ福祉病院(2017年1月オープン予定)役員。