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芝居編 10090807060504030201
映画編 10090807060504030201

芝居編02●バリアフリーシアター・ジャパンの「仕事」

●書き手
高島琴美さん
バリアフリーシアター・
ジャパン

さて、バリアフリーシアター・ジャパンについて、です。
いろんな人が、バリアの存在を忘れて、いろんな方法で、劇場の観客席に着いて芝居を楽しむこと。すべての人にとって、観客席が開かれた場所であるということ。
そのことを、「きちんと実現しよう」、というのが、バリアフリーシアター・ジャパンの「仕事」です。
ポイントは、「きちんと実現しよう」というところ。
これは、いい方を変えると、「すべての観客の権利として」とか「観客の権利保障」とか、そういう言い方になるようなことだと思う。将来にわたっての、「観客としての私」の権利の保障であるわけだ。
そう考えると、例えば、「何となく思いつきでこの芝居」、とか、「私(タカシマ)がこの芝居が好きだから」、とかではなく、システムとして、「すべての人に開かれた観客席」であるべきだと思う。
ああまったく、言い方硬いなー。
でも、ここは重要なことだと思うんですよね。
そういうわけで、 バリアフリーシアター・ジャパンは、劇団でも劇場でもないのです。
「演劇の観客席をすべての人に開かれた場所にすること」を仕事にしている、サポート組織です。
いまや、車椅子で利用できる劇場は増えています。でも、「利用できる」ということと、そこに行って嫌な思いをしないで、気後れするようなこともなく、楽しかった!という気持ちで心がぽかぽかするかどうかというのは、ちょっと違うことがある。利用可能ということが、「楽しい劇場」「また出かけたい場所」に繋がっていない劇場も、残念ながら、あったりする。

視聴覚障害を持つ観客も、これまでも、観客席で演劇を楽しんできた。
でも、障害の有無にかかわらずもっと楽しむ方法が、本当はもっといろいろあると思う。そのためのサポート体制は充分だったとは言えないと思う。
いっしょに観たい、もっと楽しみたい、という思いをかなえる方法は、たくさんある。
例えば、聴覚に障害のある観客のためには文字字幕・手話通訳・台本の貸し出し、視覚に障害にある観客のためには音声ガイド・開演前の舞台説明・点字台本の用意---そのために、個々に対応している劇団やボランティア団体があるのです。が、それらをつなぐ組織は、これまで、ありませんでした。
そして、車椅子使用者にとっても、また出かけたいホール、楽しい、気持ちのよい劇場であるために、工夫できることはいろいろあるのです。
それらのノウハウをつなぎ、さらに研究し改善し、蓄積し、バリアフリー公演・上映の情報を分かりやすい形で提供し、「障害のある人もない人も、ともに観る客席」を広げていく。
それが、バリアフリーシアター・ジャパンの役割なんですねえ。

劇場の観客席は、体験を共有する場所なのだから。
「観客席のバリアフリー」が実現するということことは「いろいろな価値観を持つ様々な人たちが一つの体験を共有する観客席」が実現することだと思うのです。
仮に500席の劇場で30人の視覚障害者が観劇したとしましょう。その体験は30人のみが共有したのではないのだと思う。500人が「障害の有無にかかわらず、共に見た」という経験をしたことになる。それが100ステージあるとすれば、視覚に障害のある人30人×100ステージで3,000名の体験なのではなく、500人×100ステージの50,000人の共有体験になるのだと思うのだ。
そういうことがいつでもできるようにするのが、バリアフリーシアター・ジャパンの仕事、だと思うのだ。で、バリアフリーシアター・ジャパンの仕事は、具体的には以下のようなことが考えられる、と、最初仕事を始めたときは、考えていた。
 
[バリアフリーシアターの確立]
1.   視覚障害者・聴覚障害者向け情報システムの開発
2.   バリアフリー公演実施のサポート
   視聴覚障害者の演劇等鑑賞用情報システムの販売
   および使用システムのメンテナンスとコンサルティング
   劇場・ホールのバリアフリー全般についての研修会の実施
   盲ろう学校等の団体鑑賞、修学旅行、その他団体鑑賞等のコーディネート
3.   ホームページの運営と情報の提供システムの整備
4.   ボランティアの育成
5.   その他の寄付・サポートのために
   サポートチケットの発売
   グッズの販売
   会員組織によるサポート
6.   その他の「観客席のバリアフリーの実現」をサポートするためのしごと

とっころが、この「6.   その他の『観客席のバリアフリーの実現』をサポートするためのしごと」っていうのが、おお、こんなこともある、あんなこともある!と嵐のように私を揺さぶっている、というのが、率直な今の状況。
いわゆる、「障害」がある人についてだけ、バリアがどうのこうの、というのは、おかしくないか?だいたい、「障害」の定義だって明確ではないでしょう。今自分が障害というときに、それはなにを指すのか?明確にできているか?疑問です。というか、そんな定義はできないと思う。
そういいながらも、バリアフリーシアター・ジャパンと名付けたのは矛盾でもあるけれども、意識的にそうした、という側面もある。
まあそういうわけで、いったいバリアフリーというのは、なんだろうか?という、ホントに根本的なことを、最近よく考えるのだ。
それから、話はちょっととぶようだけど、ユニバ−サルデザインをめざす、という考え方もありますよね。でも、それではなにか明確じゃないのではないか?という気も、なんとなくするのだ。
ユニバーサルデザインという言葉が明確じゃないように感じるというのは、私の本当に個人的な感じ方であって、全然的外れかもしれないので、先にそれは、誤解のないように、言っておきますけれど。
たとえば、演劇のユニバ−サルデザインされた状況って、どういうものなんだ?
なんか2回目にして悩みは深まるばかり。
悩むのは好きなので、私はいいんですけどね!

   
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