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特集:図書館の委託2
[品川区]魅力ある図書館づくり検討会中間報告(案)
二〇〇三年一〇月

品川区立図書館
魅力ある図書館づくり検討会
[2004-12-11]

品川区立図書館魅力ある図書館づくり検討会●品川区立図書館の館長(古里兌夫氏)と係長四人、一〇人の地区図書館長からなる品川区区役所内の組織


1●品川区立図書館の現在と課題

1 公立図書館をとりまく状況

 先の調査会レポートにも示したとおり、二三区内では窓口等の民間委託や非常勤職員制度の導入が進んでいる。その原因の多くは各区財政状況の悪化であり、まず人件費の圧縮が各自治体の最重要課題となっているためである。その後の規制緩和の流れから自治法二四四条の改正もあって、この傾向は全国の自治体に波及している。
 その一方で、公立図書館の新館建設は続いており、生涯学習を支える公立図書館の必要性が失われていないことをあらわしている。二〇〇〇年自治法改正で地方分権が一層推進された。各基礎的自治体は、その基本的機能を住民に提供しなければならない。それがこの財政難の中でも図書館の整備が続けられていく理由であろう。
 しかしながら各事業が効率的に行なわれなければならないことは、自治法第二条一四にいう「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」との規定を待つまでも無い。その上財政難の中で、各自治体は一層効率的経営を求められており、その手法として民間への窓口等の業務委託となっていると思われる。
 一方区民の側では、一層生涯学習活動の必要性が高まっており、図書館をはじめとする生涯学習を支える機能の充実が求められている。日本の図書館では、最近ビジネス支援図書館が話題である。これは各自治体内の産業活動を支援する一つの図書館サービスのかたちであり、浦安市立図書館などが先進的な役割を果している。アメリカの図書館ではサービスの大きなウエイトを占めるビジネス支援であるが、レクリエーション的な図書館利用にも増して、自治体の住民の生活に実践的に役立つ図書館のサービスが求められているのであろう。
 また子ども読書活動推進法の施行に伴い、各自治体では推進計画の立案がはじめられている。これは子どもの読書環境の整備と読書の推進を地域・家庭、学校、図書館が行うというものである。品川区立図書館では従来から取り組んでいるものであるが、少子化社会や子どもの健全育成の観点から、あらためて子どもの読書が注目され、法により推進策が取られていくことになったものである。品川区立図書館の従来からのサービスが時代のニーズによって認知されたとも言える。いま改めて地域に根ざしたサービスの一環として、学校との連携を確立し、子どもの読書環境整備に取り組む必要がある。


2 品川区をとりまく状況

 九月四日平成一六年度予算編成の依命通達が出された。その依命通達には、以下の方針が述べられている。

 「品川区は、これまで子育て支援、高齢者福祉、まちづくり、教育改革をはじめ各分野において先進的な施策を展開し、着実な成果を挙げてきた。
 しかし、今や地方自治は、自治体経営と行政サービスの質を競い合う自治体間競争の時代であり、区民の区政に対する期待はさらに高まってきている。
 こうした中、各事業部にあっては、あらためて事業部制組織の目的を踏まえ、これまで以上に経営的視点に立った自主的な創意工夫を発揮し、その成果を平成一六年度予算編成に具体的に反映させることが求められている。
 一方、わが国経済は、ようやく株価の動向などに環境変化の兆しが見られるようになったが、依然としてデフレ基調は根強く、区を取り巻く財政環境は、なお先行き楽観できない。とりわけ、調整税の動向等から見ると、区一般財源の枢要である特別区財政調整交付金がさらに落ち込むことは避けられない。また、国による補助負担金整理合理化の方針及び東京都第二次財政再建プランの区への影響などについても予断を許さない状況にある。
 このような時期に最も重要なことは、今後も品川区が新たな政策課題へ積極的に取り組んでいけるような弾力的な財政体質を確保・維持していくことである。」

 ここでは周知の通り、品川区においては財政的な危機は述べられていない。しかし、今や地方自治は、自治体経営と行政サービスの質が住民から問われる時代となっている。また財調、国、都など区を取り巻く環境は予断を許さない状況にある。
 このことから、これまで以上に経営的視点に立った自主的な創意工夫を発揮し、新たな政策課題へ積極的に取り組んでいけるような弾力的な財政体質を確保・維持していくために、事務事業の原点に立ち返った見直しが必要である。


3 区立図書館 これまでの経過(歴史)

 品川区立図書館は、平成四年(一九九二年)全館オンラインが稼動し、新たな時代を迎えた。この時点で、サービス事務マニュアルなどの業務の統一化が図られた。さらに区立図書館のサービスのあり方などを検討するため、サービス組織検討委員会が組織され、報告「区立図書館の利用を活性化させよう」では、他自治体図書館との利用状況調査により、品川区の活動数値の低さが判明した。そのため、図書館は利用されなければ価値のないとの観点から、(1)新刊書の見計らい選定の集中化、(2)予約多数本の複数本購入等が報告されている。
 平成五年(一九九三年)には、サービス組織検討委員会最終報告がされ、図書館行政の目的を生涯学習活動への援助・利用の促進とし、(1)図書館行政の目標として貸出数二〇〇万点、登録率二〇%、(2)資料収集では年二万タイトル以上の購入や資料保存七〇万タイトル、小規模館の蔵書更新期間の短縮、視聴覚資料等の収集範囲の拡充などが提言されている。
 同年二〇期社会教育委員会議答申「品川区立図書館の資料収集とサービス」がだされている。生涯学習社会実現のために、(1)図書館の資料では、資料種別の拡充と館規模に適した蔵書量と蔵書の維持更新、(2)サービスについては、十年単位での実施計画と重点課題の策定、サービス内容の設定等が提言されている。
 平成七年(一九九五年)には現品川図書館が中央館として開館。同時に祝日開館と夜間延長開館が実施された。この年度の貸出数は、二二六万二六二二点となりサービス組織検討委員会が掲げた目標数値が達成された。またこの年には「人事異動・職員定数の見直し検討委員会」報告がされている。
 平成九年(一九九七年)には、総合検討委員会報告がだされている。運営方針の短期目標として、貸出数二五〇万点、登録率二五%が掲げられた。
 平成一〇年(一九九八年)になり、荏原図書館の祝日・夜間延長開館が実施された。
 平成一一年(一九九九年)には、平成一〇年の「品川区立図書館運営委員会報告」に基づき、全館祝日・休日(第三日曜日)開館、地区図書館の特別整理期間の短縮が実施されている。
 平成一二年(二〇〇〇年)、品川区議会行財政改革特別委員会から「図書館に関すること」について「具体的検討事項のまとめ」が提出された。この内容は別途触れる。
 平成一三年(二〇〇一年)には、前記行財政改革特別委員会の提言を受けて設置された「図書館業務の見直し検討委員会報告」に基づき見直しが実施された。(1)月曜日の隔週開館、特別整理期間の見直し、火曜日の時間延長、(2)非常勤職員の導入による職員定数削減等が実施された。
 なお、詳細は別紙「品川区立図書館これまでの各検討委員会の検討経過」および「品川区立図書館業務等検討経過」に記した。【ず・ぼん編集部注・別紙は収録していません】


4 区立図書館の課題
(行革特別委員会の指摘事項:残された課題)

 区民の求める魅力ある図書館、区民のニーズを検討する上で、平成一三年度行革特別委員会により指摘された事項がまず検討すべき内容であろう。
 ここでは、(1)開館時間の拡大、(2)通年開館の実施、(3)特別整理休館の短縮、(4)定数削減、(5)業務委託の可能性、(6)蔵書機能と蔵書計画のあり様、(7)小規模館の統廃合を含む組織運営の効率的あり方、(8)インターネット利用などが意見として出されている。
 このうち開館時間の拡大と定数削減措置は、平成一三年度に実施された。開館時間については、月曜日の隔週開館と特別整理休館の短縮が行われた。また定数削減は、同時に非常勤職員制度の導入により行われた。インターネットによる予約サービスは平成一四年一〇月から開始している。また今年度は、夜間開館八時まで館を数館拡大実施する予定である。
 残された課題は、通年開館の実施、小規模館の統廃合を含む組織運営の効率的あり方、定数削減、業務委託、蔵書機能と蔵書計画のあり様などである。
 残された課題は多い。今年度将来の品川区立図書館のあり方を見据えたうえで、長期政策を立て、その中で、課題解決に取り組んでいく必要がある。



5 区立図書館の現状・サービスの分析から
(*別紙「統計のまとめ」を参照願いたい)【ず・ぼん編集部注・別紙は収録していません】

(1)資料費の状況

 資料購入費全体では、品川図書館開館翌年を基準にすると、厳しい経済情勢の中で、様々な創意工夫により平成一三年度まで順調に増加し、総体で、三五〇〇万円増加したが、昨年度の資料費は一三年度に比して八三〇万円マイナスである。しかしながら平成八年度と比較すると一四年度の図書購入費は約一六〇万円・二一%の増となっている。児童図書購入費は国際児童年がらみの事業充実から二〇四三万円から二七一一万円の約三三%増である。一般図書は五六四一万円から六五八三万円約一六・七%増となっている。
 視聴覚資料費については、平成八年が一四四二万円、平成一四年度が一九八四万円で、三七・六%の増加となり、一番伸び率が高い。雑誌については、八・八%の増加である。
 館別にみると、一般図書では、荏原が三四・七%、品川が二五・五%増なのに対し、大井が九八・九%とマイナスで、その他の館は、ほぼ横ばいか、微増程度であった。
 児童図書費は、品川四八・二%、二葉四一・二%、荏原五九・二%増と三館の延びが大きく、他の館も二〇〜三〇%増加となっている。もっとも伸び率が低いのがゆたかで一二・二%にとどまっている。
 定期刊行物では、大崎が平成八年から比して八五・八%ともっとも減少している。大崎図書館は平成九年の一七一タイトルがピークで品川を除き突出していたが、翌一〇年に一二一タイトルまで減少し、現在は一二五タイトルとなっている。その影響で、貸出数は、平成八年度、八四一二冊が翌年は八〇五七冊と減少した。しかしその後平成一〇年度八七一二冊、一一年八九六八冊と増加したが、一二年度に七六九七冊に落下している。タイトル数の減が貸出数の減と直接的には連動はしていないが、やはり貸出数に影響を与えていると言える。
 視聴覚資料は、資料購入費の増加が、所蔵数の増加ときれいに連動して、伸びている。
 逆に資料費の減少が貸出数の減少につながったのが、八潮で、平成八年に比して平成一四年度は八七%まで資料費が減少し、貸出も平成五年に比して、九二・七%まで減少している。例外的なのは、ゆたかで、資料費が平成八年に比して一六・八%増加しているのに、平成一一年をピークに平成五年度と比較し平成一四年度は九六%となっている。他の館は、ほとんどが右肩上がりの増加である。

(2)貸出数

 平成五年度と比較し、平成一四年度は資料全体で約三〇%増。内訳は図書が二〇%・雑誌・視聴覚資料が五〇%台の増である。
 全体の貸出数は、平成一一年度をピークに減少傾向にある。特に図書の減少が顕著である。雑誌・視聴覚資料は一一年度と比較するとほぼ横ばいである。
 以下、平成一四年度の数値を平成五年度と比較すると、一般図書の伸びは、改築後の品川図書館の貸出数が二倍から三倍近く達しているのに対して、地区館は増が二館、減が七館となっている。また児童図書の伸びは、七館が二〇%から五〇%以上の増となっているのに対して、三館が二〇%から四〇%近い減となっている。特に八潮図書館は中央館開館後現象傾向が著しいが、加えてこの地域の児童数の減少と重なっていると推測される。
 全体貸出数は、八潮・大崎・大井・五反田が減となっているが、特に八潮の減が二三・四%と大きい。八潮・大崎・五反田については、中央館開館の影響もあり、平成八年以降貸出減が続いている。源氏前は、一般・児童とも増加率が大きい。雑誌は、先に触れたとおり大崎のみ約一九%の減となっている。視聴覚資料は、ゆたかが約四%減、八潮が七%減である。
 以下ピーク時の平成一一年度の数値と一四年度と比較すると、ゆたかは、一一年度以降全体の貸出数が毎年約一〇%ずつ減少している。全体合計でみて、増加しているのは荏原・源氏前のみで、増加は、一般図書一館、児童三館、雑誌六館、視聴覚七館である。すべての資料で貸出増は源氏前で、すべて貸出減はゆたか・大井である。

(3)蔵書数

 平成五年度と比較すると、一四年度は所蔵の合計で二一万増、伸び率二四%である。内訳は一般一三・二万、児童五・二万、雑誌一五〇タイトル、視聴覚二・五万増である。
 一般図書は五年度から一一年度まで毎年増加し、いったん一二年度に一万三〇〇〇冊減少したが一四年度まで再び増加している。
 一般図書の増加率は、大崎・品川・五反田・ゆたか・荏原の順に大きく、少ないのは八潮・大井・南大井である。児童図書も全館で増加しており、増加率の大きいのは五反田・ゆたか・品川・大崎の順である。少ないのは源氏前・大井である。この二館では平成一一〜一三年度にかけて一時的に所蔵数が平成五年度を下回った。雑誌タイトル数は、平成九年度をピークにここ五年間は一三五〇前後で推移している。
 視聴覚資料は、平成五年度と比較し五〇%増である。伸びの大きい順に品川・二葉・大崎・五反田である。伸びの少ないのは大井・南大井・ゆたかの順である。
 m2あたり所蔵数では、二葉・南大井・源氏前に多く、少ないのは品川・五反田・八潮の順である。二葉は、品川の約二・二倍の所蔵数である。小規模館にこの傾向が強く出ているが、これは資料費が少ないにもかかわらず所蔵数が多いのは、蔵書更新がむしろ進んでいないと見るべきであろう。
 いずれにしても、小規模館・中規模館・大規模館それぞれの蔵書づくりのコンセプトの整理が必要である。

(4)登録者

 平成五年度と比較すると、一四年度は登録者で六〇〇〇人、率で一・八%増となっている。平成一一年度のピーク時と比較すると、登録者数が四〇〇人減、率で〇・四%減となっている。品川は開館時(平成七年)と比較すると、登録者は約四〇〇人増だが、登録率はほとんど変化が無い。
 登録率トップ3は、八潮・品川・大崎であり、ワースト3は、五反田・荏原・南大井である。
 五年度と比較し、登録者が減となっているのは八潮のみ(八三六人減)である。
 一一年度のピーク時と比較すると、増となっているのは荏原・品川・源氏前で、減少しているのは八潮・ゆたか・南大井の順である。

(5)まとめ

 区立図書館の活動の概要は以上のとおりである。統計的な指標からは、区立図書館の最近の活動数値の低下の原因は、はっきりとはつかめない。さて平成一一年度が各サービス数値がピークとなっている現象は、少なくとも東京全体では同様の現象が見られ、品川固有の現象ではないため、バブル崩壊後デフレ経済の傾向が強まると同時に、国民全体の傾向として図書館利用が減少していると見るべきなのであろうか。しかしながら3で触れた平成九年に総合検討委員会が提起した活動指標は、いまだに到達していないことも事実である。
 また文部科学省の公立図書館の設置および運営上望ましい基準案のサービス指標として出された、「貸出密度上位の公立図書館整備状況2001」を見ると、品川規模の自治体のサービス指標と品川の数値は以下のような内容となっている。
 ここでは、貸出密度と貸出数で上位図書館と品川区立図書館の数値に格差があることに注目していかなければならない。館数の違いから見た場合、一館あたりの資料費に大きな違いが出てくる。これは新刊資料の提供数の大きな差となって現れ、もっとも魅力のある資料が少ないことを意味している。
 また、図書館総経費の差では、職員費の差がそのまま出ている。当然館数の違いから、配置職員数の違いもでており、職員数・職員費の差となっているが、効率的運営を考える上で検討すべき課題となるものである。


【表1 品川規模の自治体のサービス指標(「貸出密度上位の公立図書館整備状況2001(文部科学省)」より)と品川の数値】
  人口規模 貸出密度 図書館数 職員数 非常勤
職員数
蔵書総数
貸出密度上位図書の
平成13年度の数値
393千人 8.8冊 4.6館 67.4人 37.4人 978千冊
品川区立図書館の
平成14年度の数値
324千人 7.5冊 10館 101人 70人 1,065千冊
 
  登録者数※ 貸出数 図書館
総経費
資料費 運営経費 職員費
貸出密度上位図書館の
平成13年度の数値
218
千人
3,430
千冊
1,010,736
千円
148,136
千円
340,344
千円
522,256
千円
品川区立図書館の
平成14年度の数値
60
千人
2,441
千冊
1,572,850
千円
137,736
千円
385,114
千円
1,050,000
千円
※登録者の数値については、有効登録者の扱いの違いによるものと思われる。


6 各館の現状と問題点・経営のあり方

 全館的な変更では、まず開館時間の拡大策として、月曜の交代開館の実施、祝日開館の実施などが行なわれた。また読み聞かせボランティアの養成は、子どもたちへの読み聞かせ等の技術的蓄積を地域の人々の力を借りて安定的に、継続的に措置していこうとするものとして平成一三年度末から開始されたが、まだその成果を見る状態まで制度が熟成していない。
 一方経営的な改善策としては、平成一三年度に非常勤職員制度が施行され、正規職員二七人を削減した。
 しかし、開館時間の拡大のための措置は、職員の交代勤務の状況を拡大し、また非常勤職員の週労働日の三日程度による交代がそれに加わり、職員集団として協働を阻害する結果となった。また、非常勤職員を含む労務管理のための新たな仕事が加わり、予想をしていない日常業務量の増加を生じた。そのため基幹的業務に手が廻りきれない状況となり、図書館としての力量をそいでいく悪循環を生んでいる。
 またインターネット予約の開始に伴う予約数の倍増も業務量の増大を生み、全体的に日常業務に追われる状況となっている。
 以上のように区立図書館ではこの間様々な改革がされ、正規職員・再任用職員・非常勤職員からなる職員集団の努力により様々なサービス拡大が実施されたが、一方で日常業務に追われる状況が続く中で、図書館運営の限界を訴える職員が多いのも事実である。
 その一因には、区立図書館の今後のあり方とそれに近づいていくための方策が明確に提示できていなかったこともあげられよう。
 今回の改革では、区民の求める魅力ある図書館像を描き出し、様々な施策や改善・改革の取り組みが有機的に結合していくような施策体系を作り出す必要がある。
 また基幹業務のあり方を確定し、区民に魅力ある図書館としてどのような運営をしていくべきかの組織目標を明確にし、あるいは活動目標を数値化するなど、明快でわかりやすい図書館運営を実現していく必要がある。

7 区民の求める魅力ある図書館とは

 では、区民の求める魅力ある図書館とは、どのようなものであろう。
 先に触れたように区民の側では、一層生涯学習活動の必要性が高まっており、図書館をはじめとする生涯学習を支える機能の充実が求められている。レクリエーション的な図書館利用にも増して、自治体の住民の実生活に役立つ図書館のサービスが求められていることであり、実践的で役に立つ図書館が求められている。
 中小企業などの産業活動支援型図書館サービスのあり方は、先進アメリカの図書館活動を見る時に、日本の生涯学習活動も図書館に、この機能を求めてくることは明らかである。
 また、先に触れた行革特別委員会の指摘事項の残された課題は、区民のニーズとして位置付けられる。

2●品川区立図書館の今後向かうべき方向

1 品川区立図書館今後のあり方

 以上の点から、区立図書館の今後のあり方を描き出して見る。一つは、図書館の中心的機能である資料提供のあり方であり、また区民の生涯学習活動を支える今後の区立図書館の長期的展望を持ったあり方である。

(1)資料の提供のあり方 (社会教育委員会議報告から)

 図書館にとって、資料は最大の資源であり、新刊提供のありかた、組織化、蔵書更新のありかた、保存など、全てに渡って、効果的で効率的な業務により、その機能を十全に発揮できるよう措置されなければならない。
 まず、新刊提供数・蔵書の適正規模については二〇期社会教育委員会議答申「品川区立図書館の資料収集とサービス」では、資料のあり方について、以下のように触れられている。
 詳細は別紙「蔵書の維持のあり方と更新(平成五年社会教育委員会議報告より)」を参照願いたいが【ず・ぼん編集部注・別紙は収録していません】、一般図書については、小規模館は出版後五年までの資料で五割を構成し、新刊提供数は、蔵書数の1/7程度が好ましいとされている。また中規模館は蔵書年限平均九年程度、新刊提供数は、蔵書数の1/7程度が好ましいとされ、大規模館は蔵書年限平均一〇年程度、新刊提供数は、蔵書数の1/10程度が好ましいとされている。
 またこの時点での蔵書規模は、小規模館五万三〇〇〇点、中規模館六万三〇〇〇点、大規模館が八万四五〇〇点とされている。
 これから新刊提供数を出していくと、小規模館は一般図書四千冊・児童図書二千冊、中規模館は一般図書五千冊・児童図書二・三千冊、大規模館は一般図書五千冊・児童図書二・八千冊となっていく。
 社会教育委員会議がいう蔵書規模は、現状とは異なっている。それぞれの適正規模がどの数値であるのか今後検討を要するが、少なくとも社会教育委員会議の検討をベースに見ると、現在の資料費は、社会教育委員会議がいう魅力ある書架づくりのためには、資料費で概算四〇〇〇万円が不足していることになる。従って、資料費の増加を図ることが課題である。
 また、区立図書館全体の蔵書の保存という観点から見た場合の課題がある。現在蔵書総数は一〇〇万点を越える。図書資料は、一〇〇万弱であるが、そのタイトル数は四〇万タイトルに満たない。長期的視点にたった場合、区立図書館の蔵書は区民の資産であり、できる限り多くのタイトルを保有し、区民の資料要求に応えられる蔵書体系となっていなければならない。
 そのため資料の収集分担を進めていき、タイトル増を図る必要がある。当面、現在の五割増加の六〇万タイトルを目標数値とする。
 集中選定および資料装備については、資料を幅広く収集し、分担収集を推進し、かつできるだけ早く区民に提供する観点から、抜本的な見直しを行う必要がある。
 特に、資料費の増加は今改革の一つの基盤であるが、その増額効果が将来に渡り区民の資産になると言うことを基盤において、出版業界の物流システムの問題点を克服できる安定したシステムの確立に取り組む必要がある。

(2)今後の品川区立図書館のあり方

 品川区立図書館の今後のあり方を検討する上で、三つの基本構想と、それを推進していくための簡素で効率的・効果的な図書館運営を加え四つの柱を設定した。以下にその概要を提示する。
 まず第一の基本構想は、区民の生涯学習を支える大人のための図書館づくりである。
 区民の生涯学習活動がますます区民自身の生活と自己実現にとって重要な時代となっている。IT社会という新たな時代に対応した図書館のあり方に加え、産業活動を支援するビジネス支援型の図書館づくりも求められている。当面大崎図書館においてそのモデル的図書館づくりを実施する。
 また先に触れた資料提供機能の強化を図ることと、IT社会における区民のIT総合学習センターとしてIT基盤を整備した図書館づくりを大人のための図書館づくり政策の骨格とする。
 国文学資料館移転後(平成二〇年以降)の跡地に、その機能を整備した新中央館をつくる構想をまとめ、今後関係部署に働きかけていく。
 加えてゆとりある図書館づくりも必要である。各図書館の施設は、昭和四〇年代後半から「貸出中心」のコンセプトのもと、建設・運営されてきたが、これからは区民の生涯学習のための図書館利用という観点から、ゆとりのある図書館空間が求められよう。そのため計画的な改築・改修・または建て替えなどを長期的視野で進め、「ゆとりある図書館づくり」をめざす。
 第二の基本構想は、子どものための・青少年のための図書館づくりである。「子どもたちに未来を切りひらくちからを」がサブタイトルとなっている。
 ここでは従来からの児童サービスを「子ども読書活動推進計画」とリンクさせ、学校・地域と連携して、より一層子どもたちの読書活動を推進していくものとする。
 また学校図書館のコンピュータ化・オンライン化とその後の運用について、区立図書館が積極的に関与していく。また整備された学校図書館は、一部地域開放を行うことする。
 さらに中高生のための図書館づくりを実験的にすすめ、その効果を計るために、従来のヤングアダルトサービスにとらわれない、新たなタイプの中高生が参画した中高生のための図書館づくりにチャレンジする。
 第三の基本構想は、だれでもが利用できるユニバーサル図書館づくりである。高齢者・障害者・在留外国人のための図書館づくりも進めていく。
 最後が、先に触れた三つの基本構想を推進していくための手法として、簡素で効率的・効果的な図書館運営をおこなうことである。次項で触れるので、ここではその骨子のみを述べると、まず窓口業務等の民間委託の検討を進めることである。次に資料装備委託についても、資料をなるべく早く区民に提供する必要から、選定方法の改善とあわせ、進めていくものとする。
 また、図書館経営についても、五ブロック制による地域別図書館経営に変更する。各ブロックは、地区中心館と分館からなり、それぞれを一体的に運営していくものとする。また文化センターと併設している図書館については、文化センターとの経営統合を図り、ここでも一体的な運営を行うものとする。
 最後に、ICチップによる資料管理をおこなうことである。平成一八年度を目処に移行する計画としたい。ICチップによる資料管理では、自動貸出・返却システムが今の光学式(バーコード読取型)の自動貸出・返却システムより効率がよく、窓口要員の圧縮が期待できるものである。
 以上の経営改革により、簡素で、効果的・効率的な図書館経営を実現する。詳細は、「今後の品川区立図書館のあり方(案)」を参照されたい。

2 今後の政策を実施するうえでの基盤整備(効率的で効果的な経営を!)

 上記の基本的な今後のあり方の構想は、区民にとって魅力ある図書館となるために、推進しなくてはならない事業である。
 しかしこれらの事業を実施していくには、当然のことながら経費がかかることとなる。依命通達を見るまでも無く、現在の厳しい情勢下では、その経費は、自らの事務事業の見直しにより見出す以外に無い。そのためには厳しく経常的経費の見直しをしていく必要がある。
 現在図書館の総事業経費は、総体で約一六億円である。しかしながらそのうち、人件費を含む運営経費が約九一%となっており、区民がサービスとして直接うける資料購入費は、総予算の一〇%に満たない。経常的経費を圧縮して新規事業に振り替えていくためには、この九一%にも及ぶ運営経費の圧縮を図っていくことである。そのため、窓口等の民間委託の検討を進めていくと同時に、今後関係部署と協議しながら抜本的に職員制度のあり方を見直していくものとする。

3 民間の得意な分野との協働で区民のための図書館づくり

 社会教育法・図書館法という法律が予定する図書館運営の形態については、「館長・司書を置く」ことが前提とされ、また文部科学省の過去の見解では、全般的な委託という方法はなじまないとされている。
 今回の検討会の検討では、図書館の運営、図書館サービスの施行、蔵書の維持管理業務などの企画・立案・実施に関する基幹的事務事業については、従来の文部科学省の見解を受けて、職員がおこなう業務と位置付けた。
 しかし、それ以外の図書館の事務においては、民間との協働を図ることにより効率的運営を実現し、また次のような図書館サービスの拡大を図ることが可能である。
 まず民間委託により運営の効率化と人件費等の削減を図ることが可能となる。運営経費の圧縮分の一部について、資料費を始め、区民が直接受けるサービス資源へ振り替え、提供できる新刊資料を増加することが可能となる。
 次に夜間開館時間の延長や開館日の拡充を図った場合の開館維持スタッフの負担を民間と分散することで、その負荷を軽減でき、区民が求める開館体制を実現することができる。
 また、窓口業務についても、すでに実施した他区の実態を見ると、下記のような効果が確認されている。

(1)民間のノウハウによる接遇の向上

 徹底した社員教育により、顧客満足が高く得られる接遇レベルが実現している。区民を御客様として対応する基本姿勢は当然のことながら、挨拶や迅速な対応はもちろん、区民からの簡単な問い合わせなどへの対応も十分期待でき、接遇向上へ繋がっている。

(2)業務を民間に開放することで意欲ある人材の確保

 上記に加え、意欲ある人材の確保が可能となっている。委託業者が集めたスタッフの司書資格保有率は五〇%を超えているところも多い。司書資格を持ちながら、二三区の図書館では働く機会を得られなかった人が多いのであろう。また資格を持っていなくとも、本が好きで、図書館の仕事に興味を持って働く機会があれば働きたい希望を持った人が多いことを示している。
 民間に窓口業務を開放することで、こうした人材を確保でき、しかも区民が気持ち良く利用でき、また求めるものを迅速に提供できるのである。
 以上の点から、公の部分が行う図書館の業務と民間が行う図書館の業務を効果的に組み合わせることで、図書館の本来の機能を確保し、また効率的で効果的な運営を実現し、サービスのレベルアップを実現することが可能となる。
 従って、品川区においても窓口等の業務を民間事業者に委ね、区と民間が協働して区民のための図書館づくりをしていくことの可否について検討を進めていくこととする。現在検討会では、窓口等の民間委託のモデルとして、文京区を念頭に検討をおこなっている。
 さらに資料の装備については、来年度から民間委託すべく準備をすすめているところである。
 また窓口等への民間参入は、懸案であった開館時間の延長や通年開館においても、両者でその負荷を分散できるため、職員の負荷は比較的少なく、利用機会の拡大が可能である。民間との協働について個人情報・プライバシーの保護に関して疑問視する声を聞くが、プライバシーマーク資格認定を取得する業者が増加している点からも杞憂する必要は無い。

4 図書館経営を地域別経営に

 つぎに図書館経営のあり方であるが、小規模館の運営効率に関する指摘は、行革特別委員会でもされている。都区財政調整制度上の図書館の基準館数は、七館である。そこからみると三館多いことになる。しかしながらすでに地域に根付き、区民に親しまれている図書館を廃止することは困難である。ただし、小規模館の経営効率の悪さは放置できるものではなく、経営効率が向上するような図書館経営のあり方が必要である。
 そこで小規模館については、分館として運営することとする。また地域に根ざした図書館として、また区全体を区立図書館のネットワークで効果的に運営するためにも、品川区を五つのブロックに位置付けた運営・経営を行うものとする。
 品川ブロックは、品川図書館が八潮図書館を分館として、一体的に経営にあたるものとする。荏原ブロックは、荏原図書館が源氏前図書館を分館として、一体的に経営にあたるものとする。ゆたかブロックは、ゆたか図書館が二葉図書館を分館として、一体的に経営にあたるものとする。大井ブロックは、大井図書館が南大井図書館を分館として、一体的に経営にあたるものとする。大崎ブロックは、規模の点から分館方式には無理があるが、大崎図書館、五反田図書館が、相互に連携して経営にあたるものとし、一体的経営の可能性を探るものとする。
 地区中心館・分館の一体的経営のあり方の基本的なあり方を以下に示す。

(1)経営の基本的あり方

 地区中心館・分館における諸課題は、図書館経営管理、予算決算、資料の選定・蔵書管理、利用者サービス計画、個別サービスおよびその事務の標準化においても、全て有機的・一体的に経営し、かつ合理的・効率的な事務執行をおこなうことにある。
 また、利用者から見た場合、経営統合したからと言って、分館もその地域の区民にとっては、図書館としての機能に代わりがあるわけではなく、蔵書数・施設規模の制約を除き、区民が受けるサービスの内容に差異があってはならない。
 その意味から、地区中心館との一体的経営により、分館でのサービスのレベルアップを図ることの工夫が可能なように、分館専任担当は置かず、配置職員全員で二つの館を維持運営していくものとする。

(2)職員の配置

 上記条件から、以下の人員配置とする。
 館長一名、主査一名、その他職員とする。館長は、主査と協働して、二つの館の維持運営にあたる。職員の配置は基本として地区中心館とし、職員管理は地区中心館で一括しておこなう。分館への要員派遣は、施設管理、利用する区民への相談業務担当、蔵書管理業務、行事実施、施設管理など、必要な要員を派遣するものとする。

(3)蔵書管理

 小規模館の課題は、蔵書規模の小ささにある。今回の一体的経営で、魅力ある小規模館としていくための方策の大きなポイントもここにある。
 今回の魅力ある図書館づくりの検討では、先の社会教育委員会議の報告に注目して、小規模館の蔵書管理方針を抜本的に見直した。すなわち(1)小規模館の新刊提供数を中規模館と同等とする、(2)従って、蔵書更新年限は五〜七年程度となり、街の書店にかなり似通ったものとなる。
 小規模館における蔵書構成は、新刊書中心の構成となり、いわゆる蔵書バランスを保つことは不可能である。そこで中心館の蔵書と一体的に蔵書構成を見ていくなど、今までに無い工夫と中心館との連携が必要である。これらを含め適正な蔵書管理をおこなうこととする。

5 新たな時代の区図書館職員の役割

 さて、基幹業務のあり方と、それを担う職員のあり様が、今後の区立図書館の活力を決めていくことは明白である。
 基幹業務のあり様については、後に触れるが、ここではその基幹業務を担う区職員の任務について触れておく。民間事業者との協働で魅力ある図書館づくりをおこなっていく場合、以下のような点で基幹業務のレベル維持が問題となる。

(1)区民の相談に適切に応じられる職員のレファレンス能力と知識
(2)適正な蔵書の維持管理(収集・組織化・運用・除籍・保存)
(3)迅速な新刊資料の提供
(4)区民の生涯学習意欲に適切に対応した行事の企画・実施と広報
(5)行事・催事にあわせたブックリストなど図書館の能力を生かした生涯学習ツールの提供
(6)利用に障害がある人々への図書館サービス
(7)子どもたちの読書活動の推進支援と家庭・地域・学校の読書環境整備の推進
(8)IT時代に対応したサービスの構築と提供
(9)適切な事務事業評価と公表(マニフェスト)

 これらの点において区側の高いレベルと委託業者の高いレベルがあって、はじめて「魅力ある図書館づくり」が可能となるのであるから、常に適切な委託業者との協働の維持と、より高いレベルの指導が求められる。すなわち、区職員は、基幹業務を高いレベルで執行していくことが求められることになる。
 また職員がカウンター業務を行わないことにより、区民と触れ合うサービスが欠如する恐れを指摘するむきもあるが、基本としてレファレンスや蔵書管理、あるいはフロアマネージャーなどの業務を行う職員が常時サービスフロアに存在する等の工夫をおこない、常に区民の声を聞く業務運営を行う仕組みを構築していくことで、その代替は可能である。むしろカウンターでいそがしく業務処理をしているより、区民が気軽に声をかけられる状況を積極的に作ることは可能である。


6 新たな時代の図書館づくりのための区民との協働

 行政の様々な分野で住民の参画が必要な時代となっている。図書館においては、従来から利用者懇談会などが取り組まれており、障害者用資料の作成は、すでに十数年の歴史をもつボランティア団体の活動により支えられている。最近あらたな取り組みとして読み聞かせボランティアの養成が開始され、参画の形が広がっている。子ども読書活動推進計画では、地域との連携も更に必要となってくる。ボランティアとしての図書館行政への参画の形は今後も様々に探求されなければならない。
 また行政の透明性のために事務事業評価制度もスタートした。図書館においては、さらに館のミッションステートメントを公表し、区民の皆様にその評価をお願いするような工夫も検討すべきであると考えている。
 また運営そのものへの参画という点から、住民が参画する「図書館協議会」等の組織の設置も今後検討すべき課題であろう。いずれにしても区民の参画を得て、区民にとって魅力ある図書館づくりを進めていかなければならない。

3●最終報告に向けて

1 運営改革の確定にあたって

 運営改革を進め、運営経費を圧縮し、区民サービスを充実していくことは、区民が求める図書館づくりの基本的な方向である。しかしながら魅力ある図書館づくり検討会では、現時点では品川区立図書館の基幹業務の内容を確定できないなど、検討の途上にある。一方、魅力ある図書館づくりのための改革もスピードが求められている。また運営形態についても大幅な変更を伴う。そのため、運営改革をおこなう上で整備すべき条件・人員配置のあり方などの問題点を洗い出すため、なるべく早期に幾つかの図書館においてモデル的に実施を行い、実証・検証する必要があろう。
 実証・検証のためには、地区中心館と分館の経営モデル一件、ビジネス支援型図書館モデルで一件、文化センターとの併設モデル一件の計四館の、それぞれに異なった条件において、実施する必要がある。ただし各種条件が十分に検討されていないモデル実施である場合、配置する職員のあり方や定数管理の点から当然暫定的な形態とならざるを得ないため、その点も関係部署と調整を図りながら決めていく必要がある。今後の検討の中で決定すべき課題である。


2 基幹業務のあり方

 基幹業務を考える上での基本的概念は、以下のとおりである。
 区立図書館は、公の施設であり、だれでもいつでも気軽に利用できるよう整備・運営されなければならない。このことは、来館する区民だれもが利用を保障されるとともに、図書館の利用に障害がある人々の利用も保障していくことを意味している。
 図書館は区民の生涯学習を保障する機関であり、図書館資料は図書館利用の中核的資源である。その図書館資料という資源は、様々な思想信条、著作物がある中で、公平・公正・中立な立場から収集・保存を行い、広く紹介するよう収集することが求められる。その観点から、教育機関としての責任ある事業執行が求められる。
 また、発達段階にある児童に対しては、その健全育成を阻害する資料を極力排除していくなどのきめ細かな配慮が求められる。
 これが教育機関としての区立図書館が存在する意義であり、図書館にある資料の貸出や閲覧及び様々な事業により、区民の生涯学習、調査・研究、教養、レクリエーションに資するものである。
 このため区立図書館は、区民の身近な、だれでもいつでも気軽に利用できるよう体系的に資料を収集、整理、保存し、施設を整備している。この資料群は、区立図書館全体をとおして、区民の知的財産として収集、整理、保存されなければならない。これは十年・二十年といった期間の中で構築される計画事業である。この蔵書の計画的構築の前提は、公平・公正・中立な立場から毎年集められた資料群であるが、その中から計画的に区民の生涯学習活動に資するものとして計画的に体系的に保存し、提供されなければならない。
 こうして整備された資料群が、区民の生涯学習活動を支え、また資料に精通した職員が相談業務等をとおして区民の調査研究の支援をおこなうのである。
 前述したように区立図書館の基幹的業務は、教育機関としての任務から、安定的に、公平・公正・中立に執行されなければならない。また図書館の最大の資源である蔵書は、区民の文化的財産として保管維持提供されるよう執行される計画的事業である。
 以上の点から区民の生涯学習活動を支えていくために、また区民の求める魅力ある図書館を支える基幹業務は、現時点では民間にまかせることにはなじまないと判断している。この基幹業務を図書館職員がしっかり支えることで、民間に窓口等の業務をゆだねた場合でも一層レベルが向上し、相乗的に効果的で魅力ある図書館サービスが実現できる。
 本年度の政策課題研修は図書館をテーマとして、図書館における基幹業務の検討を行っている。この検討の中間レポートが九月末には出される予定である。最終報告は一二月を予定している。相当膨大な業務分析であり、手間のかかる作業である。検討会は、この報告を受け、一月以降に、品川区立図書館の基幹業務とは何かをまとめる予定である。
 さて今後の図書館業務を推進していくためには、職員の研修の充実は欠かせない。図書館サービスを実施していく上では、他の事務部門と異なる一定の業務知識と経験が必要である。
 従って、研修制度の整備充実を図っていく必要がある。この研修の整備充実の方法として、専門的な外部機関への一括業務委託を行うことを検討している。
 この研修制度は、品川区立図書館の職員として必要な図書館司書講座同程度の基礎的知識の習得と、品川区立図書館のミッションステートメントと運営の組織目標の理解と職員の役割などの理解、また中級研修として必要なレファレンスや書誌論、読み聞かせや障害者サービス担当としての技術的研修などをメニューとする予定である。
 これらの研修は、三年程度で全て完了するよう研修管理がされる。四年目以降は、応用力をもって区民の利用要求に応えられる図書館職員が出来上がる予定である。
 しかし、最低でも三年は研修が必要なことから、現在の職員人事異動の制度では、一人前の職員になって二年しかいられないことになる。また中央館における企画部門を担う職員は、全館運営を見据えて業務を行う必要があり、そのためには一定の業務経験や知識の蓄積が必要であり、ここでも問題が発生することになる。
 今後人事異動制度について、図書館の総合的な発展と、区全体の人材活用のあり方がバランスをとれるような弾力的な制度運用を求めていく必要がある。

4●中間報告の最後にあたって

 最終報告は、三月末に出す予定である。しかしながら今回の中間報告では、その主要な部分は、基幹業務のあり方を除き、概ね提示している。もちろん今後の品川区立図書館のあり方(案)については、その実施時期や施策の細部についての展開も必要である。また委託内容についても確定し、職員配置のあり方も決めていかなければならない。そうした部分は最終報告時におこなうものとする。最終報告までに検討すべき課題は、以下のとおりである。

(1)今後の品川区立図書館のあり方案の確定と事業計画づくり
(2)基幹業務のあり方
(3)地区中心館と分館の経営統合後の運営のあり方、業務のあり方
(4)窓口等業務の民間委託のあり方
(5)各館の規模に応じた蔵書のあり方、新刊提供数のあり方
(6)資料の収集分担の具体的あり方と新刊図書の選定方法の改善、資料を区民に提供するまでの時間の短縮方法
(7)職員配置のあり方

 今回の報告は、魅力ある図書館づくりのための基本となる図書館のあり方を示し、そのための事業の見直しの方向を提示した。
 何度も触れるが、区民にとって今後生涯学習の必要はますます高まってくる。このため区立図書館は、区民が求めるサービスを実施していかなければならない。事務事業の根本から見直しをおこなった今回の検討の趣旨はそこにある。われわれ品川区立図書館の職員は区民にとって魅力ある図書館をつくっていかなければならない。
 以上検討会の現在までの検討経過を中間報告する。


【表2 [品川区]区立図書館業務基幹業務一覧(検討会版) 2004年7月】
作成●品川区立図書館魅力ある図書館づくり検討会

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