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非常勤制度のあり方をめぐって
 みなと図書館員本多伸行さんへの反論

 低賃金構造を固定化することになりませんか?

手嶋 孝典
[2002-10-03]

『ず・ぼん』七号(二〇〇一年八月発行)の特集「非常勤の未来」の中で港区立みなと図書館に勤務する常勤職員・本多伸行さんが「これからの図書館には、短時間専門職員が必要だ」というタイトルで、新しい働き方の提案をした。その中で、『ず・ぼん』六号(一九九九年一二月発行)に手嶋孝典(本誌編集委員)が書いた「町田市立図書館が嘱託員制度を導入するまで」を納得できないと、批判した。今回は、その批判に対して、手嶋孝典が反論する。

文●手嶋 孝典
てじま・たかのり●一九四九年生まれ。町田市立図書館勤務。本誌編集委員。


本多さんの主張は方法論が違うだけ

 本多伸行さんは、私が『ず・ぼん』第六号に書いたレポート「町田市立図書館が嘱託員制度を導入するまで」に対して、第七号で批判している。「これからの図書館には短時間専門職員が必要だ」というタイトルであるが、私は専門職員を置く必要があるか否かは別として、短時間勤務職員の制度化を求めているのであり、本多さんの考え方とそれほど隔たりがあるとは思えない。〈非常勤職員は、正当な身分の位置付けさえあれば、勤務時間の短い正規の職員〉(『ず・ぼん』七号、三一頁上段一〇行目)という本多さんの主張もそのとおりだと思う。
 それでは、私と本多さんの主張は、どこが異なるのだろうか。結論を先回りして言うと、方法論の違いということになるのだろうが、本多さんのようにいきなり正論だけを押し付けようとしても、現実との乖離を埋める媒介がなければ、空念仏に終わってしまう危険性があると思う。
 本多さんの方法論の特徴は、臨時職員を「違法な形で雇っている」ことに着目し、それを梃子にして、「違法雇用追及と臨職・非常勤職員の組織化」を労働組合の力により行ってきたという点にあると思う。その点については、私は本多さんたちの運動を大いに評価するし、その到達した成果を全体のものにしていく取り組みが必要なことも認める。
 それだからといって、その運動を推し進めていけば、短時間勤務職員の制度化(特に労働条件の同質化)にそのまま行き着くとは到底思えない。


臨時職員や嘱託員を責めているのではない

 臨時職員について、町田市役所や町田市教育委員会が、違法な雇用を一部で続けている事実を否定するつもりはない。本多さんも指摘しているとおり、「恒常的業務」について臨時職員として雇用することが違法であることがある程度分かっていたからこそ、嘱託員に切り替えていく必要性を主張してきたのである。しかし、その取り組みに誤りがあると指摘されている点については率直に認めたい。すなわち、臨時職員を「違法な形で雇っている」という点を争点としないで、「雇用期間が短く、かつ端末操作に厳しい制限が課せられている臨時職員を嘱託員に切り替えていく」とした部分である。
 ただし、〈本人に責任が無く、又、努力のしようがないことをそしり、正規職員との別扱いを求めている〉(前掲同書、二八頁下段五行目)と一方的に決めつけている点については、現状の制約について触れているのであり、本人を責めているわけではないので納得しがたい。事実、現在雇用している嘱託員の中には、かつて臨時職員だった者も少なからずいるし、率直に言って、制度上可能であれば、正規職員として任用したいと思えるような優秀な嘱託員もいる。
 本多さんも指摘しているように、臨時職員については、「一年以内に廃止が予定されている職」か産休・育休代替や病欠代替しか認められないのであるから、短期間雇用の臨時職員にコンピュータの端末操作に厳しい制約があるというのは、至極妥当な措置だと思う。ただ、産休・育休代替や長期病欠代替の臨時職員については、『ず・ぼん』第六号に書いた時点では、そのような事例が重なった場合に限るなど、適用の条件が極めて厳しかったが、最近では職員課と協議すれば、ほぼ一〇〇パーセント認められるようになった。


プライバシー保護については研修を行っている

 利用者のプライバシーに関わる部分を臨時職員にできる限り関与させない、という点について本多さんは、地方公務員法上の守秘義務を根拠に批判しているが、それだけで済むのであれば、本来の意味での「プライバシー保護法」の制定は必要ないということになる。町田市立図書館の場合、研修を徹底することにより、利用者のプライバシー保護を含む「図書館の自由」や「図書館員の倫理綱領」について全職員が考える機会を設けている。短期間雇用の臨時職員は、残念ながら対象になっていないが、月一回行われる研修には、正規職員や嘱託員はもちろん、産休・育休代替や長期病欠代替の臨時職員が参加する。また、図書館内に「図書館の自由に関する委員会」を設置し、日常的に生起する問題に対応している。
 話が多少横道にそれるが、町田市立図書館の研修制度について触れると、前述した月一回の研修は、第二木曜日(休館日)の午前中に行われる。研修は、図書館での職場経験年数によってクラスが分かれる。職場経験が一年未満の職員(嘱託員を含む。以下同じ)及び臨時職員は、新人研修を受講する。一年以上、二年未満の職員は、フォロー研修を受講する。
 二年以上の職員は、コース別研修を受講する。この場合は、受講といっても、自分で課題を決め、一年以上かけてグループ又は個人で自主的に研修するのである。
 その他に、図書館に異動してきた職員については、五日間程度の着任研修を義務づけている。新入職員にも、同様に五日間程度の着任研修を受講させている。この研修は、中央図書館で行う研修であり、各館配属後は、館ごとに独自の研修がある。嘱託員については、五日間の研修期間を設けているが、最初の二日間を中央図書館で行い、残りの三日間は、配属された館で研修を行う。
 もちろん、研修を行っているから、プライバシーは保護されているなどと強弁するつもりはないが、「正規職員にどれほどプライバシー保護についての自覚があるのか疑問」などというのは、図書館職員の発言として恥ずかしいことだと思う。


待遇格差がある限り、同質の労働を求める方が間違っている

 私は、正規職員と非常勤職員の待遇(賃金、その他の制度)が労働時間に比例対応する以上の格差がある限り、非常勤職員に正規職員と同質の労働を求めること自体が許されないと考えている。同一の労働を求めるのに、同一の待遇を保障しないとすれば、それこそが低賃金の労働者を固定するだけでなく、逆に増やし続けることになるはずだからである。
 例えば、町田市の場合、正規職員の年間の平均賃金は、約八五〇万円以上であるが、月一六日勤務の図書館嘱託員の場合は、二四〇万円にも満たない。労働時間に比例対応して補正しても、三二〇万円足らずであり、賃金以外の労働条件にも大きな差がある。
 〈パート労働法に準じて均等待遇や比例按分を徹底すれば、非常勤(パートタイム)雇用はむしろ高くつく。安易な非常勤職員の拡大はかえって経費の増大につながる。この結果、正規職員と非常勤職員の適正な配置の条件が形成されていくだろう。〉(前掲同書、二九頁下段二二行目)という本多さんの主張は、「均等待遇や比例按分を徹底すれば」という前提が成立して初めて有効性を持つのではないだろうか。現在は、その前提が成立していないからこそ、低賃金の臨時職員や非常勤職員の存在が、その絶対数ばかりでなく、職員全体に占める割合をますます増加させているという事実に眼を向ける必要がある。それを食い止めるには、低賃金の臨時職員や非常勤職員には、その待遇に見合った労働しか認めないという対応で望むしかないと思う。
 もし、それ以上の労働を求めるのであれば、待遇を改善して、徐々に正規職員並みの労働に近づけていくという方が、戦略としてはるかに有効ではないだろうか。
 というのは、雇用者側は、同じ労働をしてもらえるのであれば、低賃金の労働者を選択するであろうことは間違いないからである。正規の労働者の首を切って、あるいは直接切らないまでも、退職者の補充をしないで、低賃金の労働者を雇用するということの方が、世間一般にまかり通っているのではないだろうか。


本多さんの方法の問題点

 本多さんが頼みとしている「パート労働法」というのは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成五年六月一八日法律第七六号)のことだと思われる。確かにこの法律は、〈短時間労働者について、その適正な労働条件の確保(中略)等を講ずることにより、短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図ることを目的とする。〉(第一条)と謳ってはいる。
 第三条第一項で、〈事業主は、その雇用する短時間労働者について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して、適正な労働条件の確保〉等〈をはかるために必要な措置を講ずる〉ことが求められている。更に第五条第一項で、〈厚生労働大臣は、短時間労働者の福祉の増進を図るため、短時間労働者の雇用管理の改善等の促進、(中略)「等に関する施策の基本となるべき方針(中略)を定める〉としている。これは、「短時間労働者対策基本方針」と呼ばれるもので、平成六年労働省告示第八〇号として定められた。〈この基本方針は、短時間労働者の職業生活の動向についての現状と課題の分析を行い、これに基づいて今後行うべき短時間労働者の福祉の増進を図るための施策についての基本的な方向を示すもの〉とされている。なお、この〈方針の運営期間は、平成六年度から平成八年度までの三年間と〉なっている。
 加えて、第八条第一項で、〈厚生労働大臣は、(中略)第三条第一項の事業主が講ずべき雇用管理の改善等のための措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(中略)を定める〉としている。その「指針」というのは、「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(平成五年一二月一日労働省告示第一一八号)である。
 「指針」の第二「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置」の三「所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ労働者の取扱い」は、〈事業主は、所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ短時間労働者のうち通常の労働者と同様の就業の実態にあるにもかかわらず、処遇又は労働条件等について通常の労働者と区別して取り扱われているものについては、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努める〉としている。問題は、月一二日から一四日勤務の図書館嘱託員の「所定労働時間が通常の労働者とほとんど同じ」といえるかどうかであるが、常勤職員の労働時間の四分の三を超えない非常勤職員の労働時間を「ほとんど同じ」とするのは、残念ながら無理があると思う。仮に、百歩譲って「ほとんど同じ」と解釈できたとしても、それは強制力を持たない努力目標でしかない。
 つまり、現状では、いくら「通常の労働者と同様の就業の実態があ」っても(要するに同じ仕事をしていても)、「処遇又は労働条件等について通常の労働者と区別して取り扱」っても(要するに賃金等に差別があっても)違法ではないということになる。もちろん、私は、それを是認するつもりは毛頭ないが、本多さんの方法によって解決するのは、至難の業であるという点を指摘しておきたい。
 そもそも、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」自体が、第三二条で適用除外を設けているとおり、「国家公務員及び地方公務員並びに船員職業安定法(昭和二三年法律第一三〇号)第六条第一項に規定する船員については、」対象とならないということも蛇足ながら付け加えておく必要がある。もちろん、本多さんもそれを承知しているからこそ、「パート労働法に準じて」という言葉を使ったはずである。


なぜ、業務の仕分けを行う必要があるのか

 「正規職員と嘱託員の業務の仕分けを緻密に行う必要がある」と私が主張するのは、それを固定化しようとしているからではない。逆に、業務の質を正規職員に近づけたいのであれば、「均等待遇や比例按分」に近づけるしかないという方法で問題の解決にアプローチしようと考えているからである。つまり、本多さんと私とでは、方法が逆なのである。「的はずれで虚しい」と感じるのは、本多さんの勝手ではあるが、本来あるべき姿から演繹して正論を押し付けるやり方は、逆に低賃金構造を固定化することになってしまうのではないかと危惧する。
 本多さんは、〈確実に戦力化していく非常勤職員にとって替わられたくなければ、非常勤職員の労働条件を正規職員並みにするしかない(正規職員の労働条件のダウンを申し出るという手もあるが、出来るはずもない)。〉(前掲同書、二九頁下段一六行目)と述べている。本多さんが高く評価している小形亮さんが、『ず・ぼん』の同じ号に、「常勤職員は図書館に存在し続けられるのだろうか」というタイトルで書いている。小形さんは、〈常勤の賃金を今のままにして、非常勤の賃金のみをそれに比例するまで引き上げるということも、労使間のパイの分け方を大幅に変えない限り無理である。〉(前掲同書、二六頁一四行目)と主張する。つまり、正規職員の賃金を引き下げることもあり得る、という考え方である。
 本多さんは、「出来るはずもない」と決め付けているが、広い意味でのワークシェアリングという発想に立つなら、困難は確かに伴うに違いないが、考え方としては評価できる。少なくとも、本多さんが主張する「パート労働法」(パートタイム法)を武器に非常勤職員の労働条件を引き上げていくことの困難さとそれほど差違はないように思える。しかも、現実には、正規職員の相対的な賃金ダウンは、進行しつつあるのではないだろうか。


自治体によって、非常勤職員の労働の実態は異なる

 非常勤職員にどのような労働を求めているかは、各自治体あるいは、図書館によってまったく異なる。それは、正規職員の代替として雇用してきたか、あるいは、その補助業務に限定して雇用してきたかの違いである。
 大雑把な把握の仕方かもしれないが、有資格の職員を中心に業務が行われている図書館の場合は、概ね補助的な労働を担っているところが多く、逆に有資格の職員が殆どいないか、あるいはごく少数で、おまけに有資格の職員以外は、三年から五年で異動してしまう図書館の場合は、ほぼ同質の労働を担っているところが多いのではないだろうか。
 この点については、既に紹介した小形さんの論文でも分析しているが、私は、各図書館がどのような経緯で非常勤職員を導入したかによっても大きく異なると思う。
 町田市立図書館の場合は、神奈川県相模原市の図書館との相互利用を実施するために、嘱託員制度を導入した。その限りでは、本来であれば正規職員を増やすべきところ、それが不可能な状況であったために、嘱託員を採用したのである。そのような意味では、正規職員の代わりということになるが、その後、祝・休日開館や開館時間の延長と引き替えに更に嘱託員を採用し、正規職員を減員(長期病欠者の退職不補充)し、大量に存在した臨時職員を切り替えたりしたので、結果的として、臨時職員を嘱託員に切り替えたという意味合いが強くなったのである。
 これに対し、港区立図書館の場合は、本多さんによれば、〈平日の午後四時から午後八時まで、カウンターを完全に非常勤職員(二年前までは臨時職員)に任せている〉(前掲同書、三二頁下段二行目)とのことである。正規職員の代替として非常勤職員(臨時職員)を雇用しているのであるから、最初から正規職員と同じ労働が求められたのである。
 本多さんは、レファレンスを引き合いに町田市立図書館の制度を批判しているが、逆に、港区立図書館が「原則四年で異動する」正規職員にレファレンスを任せていること自体が私には信じられない。
 町田市立図書館の場合は、中央図書館では、ある程度経験を積んだ有資格者をレファレンスコーナーに配置している。職員数の少ない地域図書館では、すべてのレファレンスを有資格者が対応するというわけにはいかないが、仮に嘱託員が対応した場合でも、難しい事例は、必ず、ベテラン職員に引き継ぐことになっている。引き継ぎのために、利用者を多少お待たせすることがあったとしても、いい加減な回答をするよりは、余程ましだと思う。
 正規職員でも、経験年数が少ないうちは、少しでも不安があれば、ベテラン職員に助けを求めることは、当然であり、そのようなことは、何も図書館に限ったことではなく、官民共通のことではないだろうか。
 町田市立図書館の場合は、「町田市図書館嘱託員設置要綱」で嘱託員の職務内容を規定しており、「資料の貸出し、返却等のカウンター業務、資料の配架、整理業務等で、正規職員が行うべき判断を要する業務を除く図書館業務」に限定している。そして、「図書館嘱託員の業務の範囲について」、「図書館嘱託員のOA機器に係わる端末操作の範囲について」が内規として存在する【資料一、二参照】。
 参考までに、正規職員、嘱託員、臨時職員の業務範囲を紹介しておく【表一参照】。


呼び名を変えても中味が変わらなければ

 本多さんが違法性を指摘している、「恒常的業務」に携わる臨時職員については、少しずつではあるが減らす努力をしてきており、現在は、ようやく三名までになった【表二参照】。もちろん、土・日曜日や祝・休日勤務及び夜間勤務の臨時職員が大量に存在しているので、法的な問題がすべてクリアできたわけではない。その点については、ことあるごとに指摘しているので、人事当局も一定程度の認識を持っているはずだが、解決策を見い出すまでに至っていない。できるだけ早期に、嘱託員に切り替えるしか、解決の方法は見いだせないと思う。
 人事当局は、土・日曜日や祝・休日勤務及び夜間勤務の臨時職員について、待遇改善を伴わなければ、今すぐにでも嘱託員への切り替えに応ずるはずだが、それだけではまったく無意味であり、解決策とはならない。
 本多さんの問題意識は、理解できなくはないが、「常勤職員」と呼び方を変えたところで、「非常勤職員」との乖離が解消できるわけではない。「正規」といういかがわしさも丸ごと引き受けるつもりで、今回は、引き続き使用した。単なる言葉の置き換えでなく、真に差別的な実態が解消できれば、自ずと使われなくなると考えている。

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