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特集:どうする、どうなる?大学図書館
[大学図書館の開放度はどんなもん?-1]周辺住民に貸出を始めた法政大学多摩図書館の場合

堀 渡●本誌編集委員
[1997-12-10]

 法政大学多摩キャンパスは、東京都町田市相原町にある。戦前から都心の千代田区市ヶ谷校舎で知られた同大学が、町田市、八王子市にまたがる山林を切り開いて一九八四年に開設した。現在、社会学部と経済学部の学生は一年生から四年生までここに通う。地上五階建ての広い図書館棟は通学バスの途中からも目立つ。五階は大原社会問題研究所を中心とした研究所フロアであり、図書館は地下二階までの閉架書庫を含め地上四階まで。社会科学系大学図書館として、二〇万冊の洋書を含めて約七〇万冊の図書・雑誌を所蔵している。
 京王線めじろ台駅、JR横浜線相原駅、JR中央線西八王子駅より約一〇分から二〇分のバスの終点にある同キャンパスは、近くに都営の住宅団地も出来てきたものの、郊外の山の上という環境に変わりはない。都市基盤が未整備の地域にやってきた大学として、周辺地域との協議会をつくり、コンサートやシンポジウムも行い、地域への定着・連携をはかってきた。一九九五年十一月、社会学部で周辺住民二〇〇〇人にとったアンケートの中で、「図書館を利用したい」という意見が全体の約一五パーセントあったこともきっかけとなり、一九九六年十一月一日から周辺住民への図書館開放に踏み切った。
 多摩キャンパスがある東京都町田市と、近接する同八王子市、神奈川県相模原市、同城山町の在住、在勤者で十八才以上であれば利用資格がある。約七〇万冊の蔵書のうち、二階の開架フロアの図書一一万冊のみ館外貸出が受けられ、閉架の図書・雑誌などは三階の広い閲覧席等で館内閲覧を、というサービスである。開架フロアにあるのは、学生用の教養・趣味・娯楽書、および学部学生の講義に密着した社会科学書という。仮に地域の公共図書館としてみればその貸出用図書は一定の規模ではあるが、当然学生向きの蔵書構成である。また学生と違って、閉架の専門図書は借りられない。学生は閉架書庫への入庫も出来るが、学外者はカウンターでの請求となる。コピー料金は一〇円。ただし、開館時間は平日午前九時から午後八時、土日は午後四時まで(第二、第四日曜休館)で学生と区別はないし、利用可能時間はかなり長い。大学は「将来的には対象地域を拡げ、貸出対象図書も増やす方向で検討」と、事業開始時にコメントしていた。
 ここの特徴は、利用資格、料金の設定にある。資格は前述のように周辺四市町に限られ、利用料金(=登録料)は初年度三〇〇〇円(城山町民は一〇〇〇円)である。大学側はサービスを開始するにあたり対象の四市町の自治体に財政支援を申し入れ、それに城山町のみ応じたので、同町民のみ一〇〇〇円の自己負担で利用登録が出来ることになった(城山町以外の自治体には既に市立図書館があり、サービスポイントの地域配置などに各々の課題はあるにしても、一定レベルの活動を持続している)。サービス開始早々には城山町では、希望住民をマイクロバスで同キャンパスまで送迎し利用奨励をはかったこともあったという。
 一九九六年十一月から九七年三月までの利用登録者は合計一六八人。そのうち城山町民が六七人(四〇パーセント)をしめた。年度更新(更新料五〇〇円)なので四月からは再登録となるが、六月末までの更新登録者は一〇一人、新規登録者は二三人。繰り返しを含む来館者の総数、および更新登録者数は八王子市民が最も多いという。
 掃除の行き届いた図書館フロアを見学しながら、来てしまえばゆったり落ち着いた施設でいいな、という感想を抱いた。実際面の障害を言えば、「キャンパス内へ車での入構禁止」というのは、たぶん学生の通学指導との一貫性なのだろうが、わざわざの学外者にとってはハードルだろうな、と思われた。
 大学図書館の住民開放は、全体としては地方都市ほど開放率が高く、大都市ほど低い傾向にある。特に東京は、短大なども含めた全国比率では、奈良、京都、愛知についでワースト4である。大学の集中する東京周辺で、マスコミなどにも公表して有名大学が住民開放の実施に踏み切った意義は大きい。これを刺激として他の東京周辺の大学でも学外者への開放が検討され、もっとすすまないだろうか、と思った。法政大学多摩図書館について言えば、利用者の地域限定がサービス開始に至るいきさつもあって狭く、はっきりしている点、大学図書館らしい専門書・学術書、特徴ある蔵書等は館内利用に留めてしまっている点などは、課題であろう。当初予想より利用者が少な目なのは、登録料が高めなことや、交通が不便なことだけではないと思われた。
(サービスに従事される図書館員の労働や体制のことは考慮せず、希望を書かせていただいた)

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