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ポット出版ず・ぼん全文記事ず・ぼん4

特集:どうする、どうなる?大学図書館
使える大学図書館はどこにある

 
[1997-12-10]

個人が直接出向いて蔵書を利用できる全国の大学図書館


 大串論文(二八頁)、東條論文(三六頁)でも明らかなように、文部省の「大学図書館実態調査」では、日本の大学図書館は既に大変高い比率で一般公開を実施している事になってしまい、実態を反映していない。大学図書館はガードが固いから肩書きのない学外者は相談したところで当然応じてもらえない、というのが、これまでの図書館関係者、および、一般国民の常識でもあったろう。せいぜい卒業生であるか、民間人だが学会に所属しているから、あるいは学内の教授の紹介状がもらえたから、などというのが、もれ伝えられるこれまでの隘路であった。ビジネスや旅行や留学などで、海外体験(特に滞米体験)が珍しくなくなってくると、こうした日本の大学図書館の“常識的あり方”が改めて問われてくる。「ソレハナゼダッタノ?」
 はたして現在は、当該の学生・卒業生・教師でなく、また他大学の学生・教師という範囲でもなく、あるいは学会等に所属する(認知された)研究者というわけでもない、ごくふつうの一般の市民の求めに——日本の大学図書館はどのような対応をしているのだろうか。ふつうの市民に、どれだけの大学図書館が、館内での蔵書の閲覧のためにドアを開き、資料のコピーを許し、さらに館外への持ち出し(=貸出し)を認めているだろうか。


手がかりとなる日本図書館協会の調査

 社団法人日本図書館協会は、全国の公共図書館・大学図書館を対象として、毎年、悉皆調査を行い、結果を『日本の図書館―統計と名簿―』として刊行している(一九九六年十二月に刊行の『日本の図書館 1996』で四一冊目を数える)。ここに収録されている大学図書館調査は、文部省発行の『全国大学一覧』『全国短期大学・高等専門学校一覧』をもとに、全国の国公私立大学、短期大学、高等専門学校、ならびに大学校、共同利用機関の図書館一五〇〇余から直接回答を得ている詳細な調査だという。調査項目は時代とともに少しずつ変わってきているが、最近の調査には、「VI 奉仕」の中に「10 地域住民へのサービス」という記入項目がある。その記入要領をみると、
 

 地域住民へのサービス
 地域住民が直接来館し、図書館の資料等を利用することを目的として公開されている場合をいう。
 サービスを「1.実施」している館で登録制をとっている場合は、前年度の実績の人数を記入し、館外貸出が可能で、貸出冊数総数が記入できる場合は前年度の貸出冊数を記入する。
 と定義されている。その大学への個別の縁故や関係性、あるいは教員等の紹介といった不確定な条件とは違い、一般の地域住民への大学の開放度を問う、ストレートな定義といえるだろう。 この調査項目は、大学や学会等に属さない一般国民が大学図書館にどうアプローチできるかというテーマの、大規模でスタンダードな指標であろうと思われた。
 ところが、この「地域住民へのサービス」の調査結果は、『日本の図書館 1995』の名簿に(地)(=地域住民へのサービス)としてわかりにくく記号化されたことがあるだけで、『1996』では消えている。『日本の図書館』は、全国の各図書館の、延床面積、奉仕対象人数、職員数、蔵書数、新規受入冊数、貸出数、予算、連絡先等で構成された四〇〇ページに及ぶ年報で、日本図書館協会の会員である図書館には毎年配布されて、標準的に使われる基礎資料である。『1996』の大学図書館部分には相互協力業務(図書貸出・文献複写)の実績公表さえあるのだが。つまり、図書館間の協力は、各大学毎に実態が公表されているが、「住民開放」の実態は配布資料では明らかではない(調査結果の周知というのは、問題提起やサービスのうながしという要素を持つので、収録されないのは残念である。大学図書館の刺激にもなるし、もっと端的に言って、全国の公共図書館の現場で、特定分野の専門的なコレクションを求める、あるいは他の有効な情報収集機関を求める住民への案内の手がかりに、大いに使えると思うのだが)。


「地域住民へのサービス」調査結果は?

 私達、ず・ぼん編集部は、日本図書館協会の資料室に問い合わせ、「地域住民へのサービス」の部分の調査結果を入手した。これは、現在、地域住民(学外者)へのサービスを実施している図書館の一覧表である。さらに手続きとして、登録制をとっているかどうか、サービス内容が館内での閲覧のみか館外貸出も実施しているのかがわかる。統計的には、地域住民サービス実施館は九五年度実績のこの調査で 七〇三館、その実施率は四五・一パーセントという。そのうち二五八の図書館が館外貸出を実施と答えている。この数値の高さは正直に言って認識不足であった。声高な大学改革・リストラ論議が飛び交っているが、大学図書館もその実質のところで変動が起こりつつあるのだろうか。
 そのリストを見ると、旧帝大などの有名国立大学、昔からの大都市の総合大学はあまり載っていない。地方にある、比較的小規模の新しい大学図書館の試み、というような趨勢はうかがえるかもしれない。しかしこれは注目すべき新しい波だろう。「地域住民サービス」をしている大学図書館を、まずは地元の住民はのぞいてみようではないか。少なくともかってのような権威的な門前払いではない、柔らかな入館案内が期待できる。そしてうまくいけば、自分に合った知・情報へのアプローチの手段をそこでひとつ付け加えていけるだろう。


「ず・ぼん」独自調査
実績ある図書館に聞く

 ず・ぼん編集部では、地域住民サービスを実施し、館外貸出も行っている図書館の中から、登録人数および貸出冊数の多い五〇館を選び出し、独自の調査を行った(筑波大学付属図書館、大阪府立大学総合情報センターなどは学外者の登録人数が二五〇〇人を越す。そして北九州大学北九州産業社会研究所、大阪府立大学総合情報センター、上智大学聖三木文庫、金沢工業大学ライブラリセンターなどでは、年間の貸出冊数が五〇〇〇冊を越しているのだ)。五〇館を選び出す際に、選び出す図書館が一定地域に集中しないように考慮した。
 これらの図書館は、先行的な事例だと思われたので、登録手続きやコピー料金、蔵書の特徴といった実用的な問い合わせだけでなく、サービスの始まった経緯や業務上の位置付け、来館する学外利用者層のタイプ、日頃のPRの仕方までうかがった。明文化されていれば利用規則のコピーの提供も依頼した。結果は二八の図書館から回答を得ることができた。そのうちの二館が、積極的なPRを行っていないということで掲載を見合わせることとなったが、二六館についてはそのまま掲載する(個々のコメントのニュアンスもお読みください。この二六の図書館を見渡すとその大学の成り立ち、蔵書の特徴、学外利用者開放に至る個別の道筋などが想像されて興味深い)。調査へ協力いただいた図書館には感謝します。
 また、今回私たち編集部が独自に調査を試みるきっかけとなった、日本図書館協会調査の「地域住民へのサービス」の調査結果をあわせて掲載させていただく。
 この記事および調査が、大学図書館内でサービスの対象として「地域住民」の存在を思い起こす一つのきっかけになり、公共図書館の日頃の業務の中で地域住民への案内先としての大学図書館への注目を再度喚起させ、そして最初からあきらめていた一般住民の大学図書館の利用可能性を呼び起こさせるなどの、反応を生んでいけば幸いである。

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