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[第17章●よくわかる十干十二支]
4… 十二支による方角表現
[2006.03.27登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

干支システムというか十二支システムは暦の部分だけではなく、方位や時刻でも使われています。せっかく干支システムがすっきり理解できた(と思う)んだから、この勢いで方位や時刻における十二支もやっつけちゃいましょう。

まずは方位システムから。

子丑寅卯の十二支システムは方位を示すのにも使われてきました。これは暦での使用法にくらべても、とてもわかりやすいものです。われわれは既に十二支の並び順を完璧に覚えてしまったわけですから、もうなにも怖れるものはありません。

子からはじまって、時計回りに丑、寅、卯……と配置していけばいいだけです。十二支は12個ありますから、時計の文字盤とまったく同じ位置にそれらの文字が置かれることになります。「12」の位置には「子」、「1」に「丑」、「2」に「寅」、「3」に「卯」。以下、「6」には「午」、「9」に「酉」というように配置されます。

これで方位盤はとりあえず完成です。時計で言えば「12」のところ、つまり「子」が北、「卯」が東、「午」が南、「酉」が西ということになります。

経線、つまり北極と南極を結ぶ線を「子午線」といいます。明石を通るそれを日本中央子午線と呼んだりしますよね。この子午線、北である「子」と南である「午」を結んだ線だから、子午線というわけですね。

しかし、自分で書いておいてこんなこと言うのもナンですが、方角を十二支で呼ぶことって、あまり思いつかないのです。

だいたい、方角を表すには東西南北という、れっきとした「専用語」があるわけで、何が哀しくて「卯の方向」などと言わにゃならんか、と。東と言えばすむでしょ。現に昔の本でも和歌でも、東とか南とか、言っとります。

残念ながら、方位に関して十二支を使っている例を思い浮かべられないのです。

ただ、不思議なことに、東西南北はヒガシ・ニシ・ミナミ・キタというくせに、東北とか東南とかとは言わないでウシトラとかタツミと言うんですね。

たとえば百人一首でも、「わが庵は都の辰巳しかぞ住む世を宇治山と人はいふなり」by喜撰法師
というのがありました。江戸深川の芸者のことを辰巳芸者と呼んだりします。

辰巳は文字通り、辰の方向と巳の方向の真ん中、つまり東南ということです。東南といわずに「タツミ」というのはよくあります。和歌では漢語を使わないというのが原則ですから、「わが庵は都のトーナンしかぞすむ……」とはなるはずもありません。それじゃワセダの唄だろう。

考えてみれば、方位を12分割で表現しなくちゃならないニーズなんて、ふつうの暮らしのなかではでてきません。ある意味でサイエンスの世界でしか発生し得ないんじゃないかな。現在でも日常のなかでは東南東なんて限定したりしません。せいぜい8分割です。四方八方ってことですね。

そのせいでしょうか。丑寅(東北)、辰巳(東南)、未申(西南)、戊亥(西北)の4つは方角を表す語としてよく使われます。

辞書の付録の図版などによくでてくる十二支による方位表現ですが、どうも単独ではそうは使われず、東西南北の四方の間を表わす語としてのみ、多用されていると考えてよさそうです(このへんは、今後もうちょっと考えますが)。

十二支による方位の表し方


この丑寅、辰巳、未申、戊亥は1文字の漢字でも記されることがよくあります。艮、巽、坤、乾です。音読みでは、ゴン、ソン、コン、ケンです。これらの文字はもともと「易」で使うもので、十二支とは関係がありません。艮を「うしとら」と読むのは、結果として同じ方角を指し示しているからに過ぎません。ちなみに易では北=坎(かん)、東=震(しん)、南=離(り)、西=兌(だ)という文字を使うそうですが、これはふつーには使わんでしょう。

艮、巽、坤、乾の文字はお城なんかでもよく見かけます。艮門とか巽櫓とかという具合。

本稿の目的(十干十二支をサクっとマスターする)から見れば、方角としての十二支は単独で使われることはほぼないものの、艮やら乾やらの方角語を理解するために、システムだけはちゃんとおさえておくということでよいと思います。

これらの文字を使った熟語としては「乾坤一擲」が思い浮かびますが、この乾坤は方位を示すものではありません。易では乾は「西北」の他に(というかメインの意味として)、天とか君主とか父とかを示す卦で、坤は地、母、臣下を表わす卦です。この四字熟語での乾坤は天地で、さいころ(天は1、地は6)をふって一気に決着をつけることを言います。なお、読みは「かんこん」ではなく「けんこん」です。

もひとつどうでもいいことを書いておくと、丑寅(艮)=東北は「鬼門」です。巽さん、辰巳さん、乾さんなんて姓はあるのに、艮さん、丑寅さんが存在しない(?)のは鬼門だからでしょうか。しかし、だったらなんで未申さんがないのか、不思議です。かな漢字変換(ことえり)でも、たつみ、いぬい、うしとらは変換できるのに、ひつじさるで「坤」にはなりません。

方角語として「ひつじさる」がなぜこうもマイナーなのか。これは今後よく考えていこうと思っています。

方角を示す十二支についてはこんなところでいいでしょう。次回は時刻を示す十二支。これは方角より難物です。

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丑寅さんより
ご意見いただきました

[2006-09-19]

はじめまして

たまたま、自分の姓を検索していて、
このページにたどり着きました。
丑寅と言う姓は、存在しますよ。(^-^;

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