2009-04-21

MILK月間!

映画「MILK」の評判はなかなかで、みなさんけっこう泣いて観たようですね。もちろん伏見も大いに泣き、濃密な思いが過去からこみ上げてくる経験を得ました。さて、映画の関連本『MILK 写真で見るハーヴィー・ミルクの生涯』(AC Books)がゴールデンウィーク明けに刊行されます。伏見も監修で関わっていて、映画もこの本も応援しております。本書ではミルクと同じ時代を過ごした人々の証言とともに、70年代のゲイコミュニティとミルクの実際の写真が収録されています。ぜひ愛蔵版として家の本棚に飾ってみてください。オカマのみなさんは神棚に祀ってみたら?(笑)

● 伏見がママになるゲイバー、エフメゾでも4/29と5/6(ともに水曜祭日)は開店を17:00に早めて、本の先行発売会?を兼ねた営業になります。映画「MILK」のことなどあれこれ話しながらゴールデンウィークのひとときをいっしょに過ごしませう。営業時間は17:00ー04:00。通常料金。

以下、版元よりのパブです。

milk.jpg●『MILK 写真で見るハーヴィー・ミルクの生涯』
序文:アーミステッド・モーピン
まえがき:ダスティン・ランス・ブラック
監修:伏見憲明 訳:安齋奈津子

¥1,995(本体¥1,900+税) A4変、136ページ、並製
2009年5月1日発売 ISBN:978-4-904249-06-2
発売:AC Books http://www.ac-books.com/

この本の刊行を記念して、5/21にはジュンク堂新宿店でトークライブも行われます。

● 『MILK 写真で見るハーヴィー・ミルクの生涯』出版記念トークセッション

「私は私。でいいじゃない?」 伏見憲明氏×中村うさぎ氏

70年代の終わり、ゲイであることをカミングアウトして選挙によって公職に就いたものの、1年もたたないうちに暗殺されたハーヴィー・ミルク市政執行委員。21世紀の今も、アメリカのみならず全世界で、「生きづらさ」を抱える人は絶えない。

愛するってどういうこと? ありのままの私ってだれ? 生きるってどういうこと? 幸せってなに?

日本におけるゲイリブのフロントランナー伏見憲明氏と、現代女性と社会を鋭く問う中村うさぎ氏が、「私を生ききる」ことについて語る。

日時:2009年5月21日(木)18時30分〜20時
料金:1,000円(1ドリンク付き)
定員:50名(定員になり次第しめきり)
会場:ジュンク堂書店 新宿店8階喫茶コーナー
予約先:ジュンク堂書店新宿店7階カウンターにて。電話予約も承ります(03-5363-1300)
http://www.junkudo.co.jp/event2.html

2009-04-19

いただいたご本『「死刑」か「無期」かをあなたが決める』


● 小浜逸郎『死刑」か「無期」かをあなたが決める』(大和書房)

伏見はアッパラパーなので、「裁判員制度ってアメリカの裁判みたいでかっこよくない?」「選ばれちゃったら面白い人間模様が見れるかも!」みたいな幼稚な意識しかもっていなかったのだが、民主主義と近代国家の擁護者、小浜先生が今度はこの新しい制度についてたいそう怒っている(ヤバ、ごめんなさい)。「裁判員制度は、いくつもの憲法違反を犯している。このような制度は即刻廃止すべきであるし、国民は、たとえ「赤紙」が届いたとしても、これに応じる必要はない……」

読んでみると、たしかにこの制度は「近代民主主義」や「国民主権」といった近代国家の根本に抵触するところがないとは言えないようだ。小浜先生は近代の原理に照らし合わせて裁判員制度を否定する。原理から思考することが苦手な日本人は、こういう批判を向けられると言葉をなくしてしまうか、スルーしてしまうかになりがちだが、やはりここで踏ん張って考えることが必要なのだろう。「近代民主主義という法的・政治的なフィクションをどのようなものとして扱えばいいか」伏見もロックやホッブスでも読んで勉強しないとなあ。

2009-04-18

伏見徒然草 vol.65「ネオホモの時代」1

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● 伏見徒然草 vol.65「ネオホモの時代」1(バディ2009.5)

このごろ、「ネオホモの時代だ」とよく話す。「ネオホモ」とは伏見の造語。同性愛というセクシュアリティを社会化していく方向性を持った人たち*を「ゲイ」というのなら、「ホモ」は同性愛をベッドのなかの嗜好としていればいいという感覚に生きている人たちだと、とりあえずしておく。その上で、「ネオホモ」はかつての「ホモ」と違って、自らの欲望にさして後ろめたさや恐怖感を抱いているわけでもなく、また異性愛のライフコースに従おうというのでもない人々だ。

「ネオホモ」の増殖は、八十、九十年代を通じての日本社会の多様性の広がり、社会生活と私生活の分離傾向、少子・晩婚化、ネットの発達によってマイノリティのネットワーク化が可能になった状況、「ゲイ」の推進力で実現した同性愛をめぐる社会的条件の向上などを背景にしている。しかし彼らは「ゲイ」たちが理念とした「ゲイコミュニティ」や「ゲイカルチャー」などにはさほどシンクロすることはなく、ただ同性に性的欲望を抱くことを共通項として、あとは階層や学歴、職業、地域性、性的嗜好などに則してそれぞれの暮らしを営んでいる。 続きを読む…

2009-04-14

15日(水)は通常営業です

SB.jpg日が長くなってきたので、またカフェタイムでもはじめようかと思いつつ、でも、早くを開けても学生さんとかそんなには来てくれないしなあと躊躇する伏見ママ(ノンケの学生さんはけっこう足を運んでくれるんだけどね)。なので、まだ通常の19:00-04:00 営業です。ただし、夜中お客さんがいなくなった時点で看板を消します。最近体力の衰えが顕著なので、深夜は調子悪くなったらさっさと切り上げますが、という殿様商売ですが、それでもよければいらしてください。

でも真面目にはやってるんですよ。少し前から出すようになったカレーだって、実は、毎回バージョンアップしている。なんでもはじめると一生懸命やる伏見なんで、改良に改良を加えているわけです。いつも市販のルーを使って作っているんですが、先週はどうもカレー自体の味が薄いような気がして、風味を加えようとSBで出しているなつかしいカレー粉を足してみた。これはこれでいい感じになったような気がするのだが……まあ、試しに食べに来てください。

2009-04-10

書評『女装と日本人』

● 三橋順子『女装と日本人 (講談社現代新書)』(2008)
初出/現代性教育研究月報

ここ数年、性に関する書籍で心底面白いと思うものには出会ったことがない。もうだいたいがパターン化されていて、「はいはい、フーコーを使って分析したいんですね」とか、「はいはい、性の多様性の焼き直しですね」とか、扱う素材がちょっと違うくらいで、最初から答えがわかっているものばかりだからだ。その点、この『女装と日本人』は繰るページごとに新しい発見があり、久しぶりに性の問題を考える楽しさを味わった。

本書も流行りの近代主義批判がベースになっていて、現代の性的抑圧の源泉を近代の性科学の輸入に求め、前近代のあいまいで複雑なセクシュアリティ/ジェンダーのありようをロマンティックに理想とするあたりは、別の思潮から批判されるかもしれない。しかしそうした点は別にしても、この本には読み手に訴える力が満ちている。それは歴史に埋もれていた事実を丹念に掘り起こすことで、言葉を奪われてきた者たちの声を掬おうという志を持っているからだろう。また、研究者が都合のよい資料を集めてきて言説分析をやりました、という類の安直さを拒否し、女装者である著者が自身の実存を繰り込み、足を使ってテーマに迫っている姿勢が、行間に心地よい緊張と深い悦楽を与えている。 続きを読む…

2009-04-06

笑うゲイリブ

1237339026786.jpg映画『MILK』を観てからというもの感覚が昔に戻ってしまい、やたらテンションの高い伏見である。若い者がぬるいことを言ってたりすると、「てめ、古いゲイリブなめんなよッ!」「こちとら自分の人生も、親も、みんな売り飛ばしてリブはじめてんだよッ!」と殴りたくなる。ワハハハハ!

といっても、なにもいまどきハーヴィー・ミルクと同じような解放運動を展開しようとも思わない。運動とは目的があり効果を求めるものだから、やはり時代に合わないやり方をしても意味がない。見せかけの過激さはラディカルでもなんでもなく、ただの愚鈍と言う。よく運動を=抗議行動(あるいは反体制運動)とイメージしている人がいるが、それは偏見というもので、そもそも社会運動とは、対象の心を動かす創造的な営みなのだ。←ゴルバチョフみたい(笑) 続きを読む…

蔵出しエッセイ 2「17歳」

「17歳」(共同通信/2002)

17歳の僕は途方に暮れていた。

同い年の連中は、屈託なく恋愛や友達との付き合いを楽しんでいたけど、僕はひとり、周囲との間に見えないバリアーを張りめぐらせて、不安に苛まれていた。というのも、その頃、自分の中で、ある「欲望」が日々大きくなっていくことを無視できなくなっていたからだ。 続きを読む…

2009-04-05

台湾ほぼ弾丸ツアー

yomise.jpgエフメゾ明けの木曜日、台北へメンテのために二泊三日の旅に出かける。もう何度台湾へ行ったかおぼえていないが、今回は一年ぶりの訪台。バー営業の翌日は早朝家に戻って昼まで寝るのだが、睡眠が浅く、疲れがとれなくて一日ぼーっとしてしまう。その日もなかなか眠れないまま、午後成田へ向かう。以前、飛行機に遅刻しかけたトラウマがあって、早めに空港に入る癖がついているので、この日もロビーで時間をつぶすのに苦労。

結局、台北市のホテルに到着したのは日本時間の深夜。にもかかわらず、日式しゃぶしゃぶを食べに近所へ繰り出す。もうほとんどこの鍋を食べるために台湾へ行っているような気がするのだが、山盛りの野菜(きゃべつなんか四分の一個くらい皿に盛られている)と豚肉や牛肉を、鳥ベースのスープに入れて食べるもので、これが安くて美味しい(八百円以下)。日式なのに日本にはない味で、台湾ではチェーン店もたくさんあってとてもポピュラーな一品なのだ。それで満足してその日は就寝。一泊三千円のホテルにもかかわらず、案外キレイで落ち着けた(朝食付きだけど、朝起きられず、それは省略)。 続きを読む…

2009-03-31

4/1は通常営業

mfmap.gif4/1(水)のエイプリールフールは通常営業です。新人店子(フェロモン出てます)もデビュー予定。

奇跡ってほどのことでもないのだけど、先週のエフメゾはじまって以来、全席がゲイだけで埋まった瞬間があったのですよ! これまでゲイ様たちにはいまひとつ受けがよくなかった伏見ママですが(笑)、一瞬、ふつうのゲイバーのような状態になりご満悦。やればできるじゃん。←いや、これは努力の問題じゃないんだけど。

でも、お客様がゲイオンリーになることがエフメゾの理想ではないんですね。伏見ママが演出したい空間は、ゲイだけが集まるゲットーでもなく、客と店サイドに視る/視られる非対称性がある観光バーでもなく、文壇バー的な「勝ち札コミュニケーション」を交わす場でもなく(「有名性」の戦闘ポイントを競うような感じ?)、やはりゲイ的なコミュニケーションを基調として多様な人たちに開かれた場なんですね。で、そのゲイ的なコミュニケーションというのは、あまり上手く言えないんだけど、単にセクシュアリティが同性愛ということではなく、笑いをクッションにして、低めの構えでコミュニケーションできる、って感じかなあ。 続きを読む…

2009-03-28

画期的なニュース

画期的なニュースが入ってきました。まだ小さな亀裂ではあるけれど、もしかしたらこれがきっかけとなって堤防が決壊するかもしれない。この問題に関わったアクティヴィストのみなさんと、福島瑞穂さんに拍手! すばらしい!

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海外での同性婚可能に 法務省が新証明書発行へ(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009032601001106.html

法務省は26日、同性同士の結婚を認めている外国で、日本人が同性婚をすることを認めなかった従来の方針を改め、独身であることなどを証明するために結婚の手続きで必要な書類を発行する方針を決めた。これまでは国内法で同性婚が認められていないことを理由に、証明書の発行を拒否していた。法務省は近く全国の法務局に通達を出す。 続きを読む…

2009-03-27

書評『セックス格差社会』


『世界の下半身経済が儲かる理由』で性と経済の問題を斬新に論じた著者であるが、今回は性と格差社会を数値から分析しようと挑んでいる。「もしかすると、近年の所得格差の拡大と恋愛経験の有無には、なんらかの因果関係があるのではないか?」

実際、著者の調査によると、「年収別にみた交際女性のいない独身男性の割合」では、年収が少ない男性ほど彼女がいないことが現れている。年収200万未満だと73.9%が彼女がおらず、年収が上がるごとに「彼女いない率」は減少していく。これは18〜34歳の独身男性のアンケート調査であるが、「年収別にみた性風俗に行ったことのない独身男性の割合」でも、「年収別にみた1月あたりのセックス回数がゼロの独身男性の割合」でも、年収が低くなればなるほど性愛も貧困になる。 続きを読む…

2009-03-26

いただいたご本『童貞の教室』


著者の松江哲明さんとは何度かお仕事をしたことがある。とても感性豊かで、実直な青年という印象で、また会ってみたい人の上位にランクしている方なのだが(←偉そう)、本書はうーん……。いただいたご本で文句をつけることはしない主義なのだけれど、どうにもこうにもヌルくてヌルくて、ユルマン温泉で無理やり筆下ろしをしているような気分……。

そりゃ伏見が最近耳にした初体験話が、「掲示板で知り合った人のアパートへ行ったら、もう一人いて3Pでした」とか、「実の祖父にフェラチオされたのが、初めての性交渉でした」とか、「40歳になるまでモンモンと過ごしていて、やっと念願叶いました」とか、「アナルは使っても膣は使わずに三十六歳」とか……けっこう強烈なネタばかりで、ふつうの男子の告白じゃあ読み物として満足できない、つまり感性がガバガバになっていることも事実だろう。しかし「童貞の教室」と題するなら、もう少し性愛の部分を突っ込んで、広い視野での分析もほしかった。そしてここで「あんにょんキムチ」ネタはしつこい。

やっぱ一度、松江を掘らないといけない気がしてきた。松江、ケツの穴おっぴろげて来ーい!

とも思うのだが、まあ、中学生や高校生の生な青少年にしたら、このあたりのヌルーい感じがいちばんリアリティがあるのだろう。そういう意味では、思春期男子との接続は上手くいっているのかもしれない。だけど、松江は一回掘らないと駄目だな(しつこい)。

2009-03-25

本日(3/25)も通常営業

zairyou.jpgあぁ、一週間が経つのが早い! エフメゾをはじめてからあっという間に次の水曜日が来てしまうので、どうも落ちつかない。今日も午前中からカレーの仕込みやら、銀行回りやらでバタバタ。来週はエフメゾ明けで台湾へ行くので、航空チケットの払い込みと釣り銭の用意等があって、チャリで行ったり来たり。でも、まあ、ちょっと大きめな仕事が終わったところなので、気持ちはらくな感じかな。

ともかく今晩もどんな新しい出会いがあるのやら、とても楽しみ!

営業時間:19:00-04:00(深夜お客様がいなくなり次第、看板を消します)

2009-03-24

蔵出しエッセイ「あのとき、あの場所の一冊」

asashi.jpg*今回から「蔵出しエッセイ」のカテゴリーを増やして、媒体等に発表したエッセイを収蔵していきます。単行本に収録していないような大昔の、ヘタクソなものも入れていくので、笑わないでね。第一弾は最新エッセイで、先週「週刊朝日」に掲載されたもの。

「あのとき、あの場所の一冊」(「週刊朝日」09.3.30)

子供のころから何をやっても継続できない自分が嫌いだった。小学生の夏、ラジオ体操は最初の何日か通うだけで、あとは寝坊してしまった。春になると毎年、ラジオの英語講座のテキストを買うのだが、それも4月号でたいてい挫折した。 続きを読む…

2009-03-23

ミスターゲイジャパンコンテスト開催

m2.jpg
行ってまいりました、ミスターゲイジャパンコンテスト。人様の男ぶりに点数をつけるなんて、そんな天につばをするようなことできない、とか思いつつ、しっかり審査員を果たしてきた伏見です。もちろん水着審査もかぶりつきでチェックしまくり(写真)。

エントリーされたみなさんはイケメンで個性的な面々でした。本当は候補者なんてGTJの仕込みじゃないか?と疑っていたのですが、全員、ちゃんと応募してきたとのこと。地方からの参加組も二人いて、こういう企画にカミングアウトのリスクをおかしてまで出ようという人も案外いるんだなあと、隔世の感を抱きました(告知期間が一週間でこれだけ集まるんだからね)。

そして、なによりイベントとして盛り上がったのは、司会のブルボンヌ先生の力量でしょう。やっぱり初のイベントなので、落としどころがわからない感じがスタッフサイドにも客席にもあったのですが、そこは女装のプロ。マーガレットさんなどと同じくらい古いキャリアを持つ大御所中の大御所だけあって、見事に会場を沸かせていました。

優勝は有田匤さんという45歳の絵描きの方でした。ほぼ同い年なのに伏見との肉体年齢の差はいったいなんでしょう(写真左はし)。メインストリームで通じるエロさ。そしてコミュニティに貢献しようという姿勢(伏見も見習いたい)。昨年は鬱病で苦しんでいたので同じ病気の方の励みになれば、ということをおっしゃっていました。同病の方の分まで世界大会ではっちゃけてきてほしいです。

2009-03-22

いただいたご本『人間の未来』


どんだけ仕事すれば気が済むの?と言いたくなるほど多作な竹田青嗣氏の新刊。副題に「ヘーゲル哲学と現代資本主義」とあるように、近代哲学の完成者として現代思想の標的となったヘーゲルを再評価することで、資本主義と国家を再定義しようとする野心的な論考である。竹田氏の主張は一貫していて、現代思想の価値相対主義からはなんら新しい社会構想は生まれず、ポストモダンの批判を経て、新たに近代哲学を鍛え直すことでしかこの世界に展望はない、というもの。

伏見は本作を読んでいてマジ感動してしまった。行間に情熱がほとばしっていて、とても熱いのだ。この人のこういう熱量はいったいどこから生まれるのだろうか、とほとほと感心してしまったのである。みんなが相対化の言説を振りかざして相手を無化することにばかり専心している状況で、ちゃんと土俵を作ろうという構えの大きさも、(ポストモダンの人からすれば滑稽なのかもしれないが)やはり人間として魅力的だ。そしてもちろん言説としても生産的だ。こういう強靭で志のある先人がいることは幸福なことだと思う。

竹田氏のように質的にも量的にもすごい仕事をしている人を前にすると、忙しさにかまけてちっとも仕事をしないのは情けないことだと痛感する。本当のところ忙しさは口実で、それは自分と向き合いたくないための言い訳にすぎないのだ。書くべきものを持っている人はどんな状況のなかでも書かざるを得ない。それがない人は、結局、「書けない」のである。

2009-03-21

いただいた未読本(すみません) 


いただいたご本でもどうしても読めないものがある(ごめんなさい!)。建築関係の書籍がそれで、その理由は、「そんな金ねぇんだよ!」の一言に尽きる。なので、文字を追う気になれないのは貧乏な自分のせいでしかない。この『建築バカボンド (よりみちパン!セ)』もパン!セが仕掛けてくるのだからよほど面白い内容に決まっている。でも、「そんな金ねぇんだよ!」ともう一人の自分が耳元で怒鳴るので、まだ読めないでいる。「感想ほしけりゃ金をくれ!」と安達祐実っぽく言いたい。

苦手な分野に「酒」というのもある。バーのママをやって半年以上経つのに、先週も「スコッチで」と言われて「スコッチって何?」と聞き返してしまった情けないママなのだが、それにも理由がある。小さい頃に父が酒乱気味だったので、お酒というとどうしても身構えてしまって、好奇心の対象にならないのだ。数週間前も、ちょっと泥酔気味のお客さんが入ってきたときに、「もう閉店なので」と断ってしまった。楽しい酔っぱらいならいいのだが、目が血走っている人を見ると恐怖感が先にたってしまう。なので、この『こどものためのお酒入門 (よりみちパン!セ)』も読めずにいる。でも、これはママという職業柄、教養本として読まないとならないよなあ。

同性パートナー生活読本―同居・税金・保険から介護・死別・相続まで (プロブレムQ&A)』もまだ未読なのだが、周囲での評判もよく、具体的な問題に対処する内容になっているようなので、当事者にはもってこいの一冊だろう。『挑発するセクシュアリティ―法・社会・思想へのアプローチ』は小倉康嗣氏の論文だけ読ませてもらっていて、こういうフーコーの使い方なら前向きでいいなあと。ゲイ・アイデンティティやゲイ共同性をいまさらいくら懐疑したって、こんなユルユルな時代にどんな意味があるのかわからないからね。まあ、そのくらいしかモチーフがなければ仕方ないけど。

2009-03-17

18日(水)も通常営業

mfmap.gifあまりそういう印象はないでしょうが、伏見は実は気が弱いオカマなのです。ステージに上がるとなぜかスーパーサイヤ人になってしまうのだけど(笑)、ふだんはいたって小心者。喫茶店で注文したのと違う飲み物が運ばれてきても、なにも言えずに受け入れてしまうような子なの、ホントよ。

なので、自分のバーでも、「すみません、財布を忘れてきてしまって…」というお客さんにも「じゃあ次でいいよ」と言ってしまったことが二度ほど(一度はアイランドの上でやっていたイベント時)。でもね、そのお客さん二人ともがその後、支払いに来ないのですよ。これって最初から狙っているのかしら…そうは思いたくないけど。ほんとに忘れたのならしかたないと思うけど、ふつうなら翌週にでも来るのにねえ。そんなに悪い人に見えなかったから入店させてしまったのだが、これからはこの手も気をつけなければならないのかなあ(一人はアンケートに答えてもらったので、連絡先を知っているといえば知ってるんだけど)。

しかしお店をやっているとマジ人間の勉強になりますね。明日もいったいどんな事件が起こるのやら。

ところで、店のBGMは最近ちょっと古めのヒット曲を中心にセレクトしているのだが、実は毎回微妙に違う選曲になっている。ipodに入れている曲を数十曲くらずつ替えているのだけど、今回はmaxを加えました。あの時代のポップスはそれほど得意じゃないのだけど、彼女たちのものはなぜかお気に入り。アムロちゃんよりも馴染むんだよね。

営業時間は19:00-04:00(夜中お客様がいなくなった時点で看板を消します)。

2009-03-16

いただいたご本『マジックランタンサーカス』


最近の夜中のエフメゾはどこぞの文壇バー?と錯覚するようなときがある。どうしたわけか店内が編集者や作家で埋まってしまい、名刺交換会がはじまったりするのだ。だけどあくまでも伏見の店はゲイバーなので、いちばん身分が高いのはゲイ様であることは変わらない(貧乏な若ゲイ、大歓迎!)。有名作家といえどもここではゲイ以下の身分という認識で、女性やノンケは「ブス」「便所女」「粗チン」などとの暴言に耐えられる方のみに入店を許可している(笑)。

この本の著者の一村征吾さんもあるお客さんに連れて来られた方で、先頃、ランダムハウス講談社 第二回新人賞を受賞された期待の新人作家だ。帯にはかの村上龍氏の推薦文が添えられている。「この作品によって、幻想小説が復活するかも知れない」。伏見はまだ途中までしか読んでいないのだが、かなり面白く、冒頭の文章からして印象的だ。「便器を流れる液体があまりにも青かったので、僕はバランスを失いかけた」。色彩が頭にフラッシュバックするようで、ぐいっと引き込まれた。日米でデビューする彼の今後に注目だ!(ちなみに、チーママのヤス子さんは彼のことをイケメンと言い、頬を赤らめておりました)

2009-03-14

いただいたご本『天然ブスと人工美人 どちらを選びますか?』


著者の山中登志子さんとは、「週刊金曜日」をめぐる論争となった「オカマ問題」のときに知り合った。そのときは誠実で優秀な編集者さんだなあという印象で、彼女が美醜の問題で苦悩を抱えていて、考察を深めている方だとは知らなかった。

というか、山中さんは本書で、オカマに間違われて傷ついたと書いていたが、伏見はこの新書を読むまで彼女がアクロメガリーという病気を患っていることも知らなかったし、実は勝手にMTFなんだと思い込んでいたのだ(失礼。と言うとそれも差別のような気がするので、謝罪はしないが)。

この本は読まれるべき内容に富んでいて、面白いと言えば面白い。しかし、山中さんはかつて林真理子氏のエッセイを読んで、女性エッセイストが書くものは毛糸のズロースを三枚も重ねてはいているみたいだという批判に喝采したというが、山中さん自身もまだ潔くパンツを脱いでいない気がする。その躊躇ゆえに、伏見の読後感はどうもすっきりせず、彼女も毛糸のズロースを一枚残していてそのなかはムレムレだ、という印象なのだ。その湿潤な毒にかなりやられる。そしてそれをいろんな方に読んでもらいたいとも思う。ムレムレのパンツに繁殖する細菌こそ、現代の女性たちの病みの大元になっているのだから。