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第24回 『傷だらけの店長』

お久しぶりです。今回は『傷だらけの店長』というタイトルで7月中旬にPARCO出版から刊行される書籍をお勧めしたいと思います。タイトルに含まれた「店長」という言葉からご想像の通り、出版業界の重要な当事者である書店、その書店で働く店長を描いた作品です。書店経験といってもアルバイトでしかない私が店長の作品をお勧めするのはおこがましいような気もしないでもありません。が、出版社の営業として書店と関わる中で感じている様々な思いはこの作品を読むことでより深く掘り下げられた気がします。それが、出版社の営業にこそ、この本を是非お勧めしたい理由です。
なお、お勧めする以上、どうしても内容に触れざるを得ません。そのため、一部「ネタバレ」のような話が含まれます。その点、お含みおきください。

新文化(業界紙)での連載

元々この作品は業界紙の新文化に連載されていました。連載中に著者本人が店長を勤めていた書店の閉店という大きな出来事があり、ある意味、同時進行のドキュメンタリーとしても読める作品です。
連載当時から出版業界では話題になっていたように思います。出版業界紙である新文化での小説の連載は異例のことだったようです。当時、新文化編集長だった石橋さんの強い意志があったことを伺っています。連載の途中から書籍化の噂を聞いていましたが、実際に書籍化されるまでには時間がかかりました。その分、大幅な加筆修正があったようです。

作品の内容

この作品は都内の駅前にあるチェーンの書店の店長の、まさに「傷だらけ」の日常を綴っています。内容を要約するよりも、目次をご覧いただいたほうがよいかと思います。以下に全目次を掲載いたします(目次はゲラから起こしたものなので刊行時には変更になる場合があるかと思います。ご了承ください)。

誰もいない店内で。
ただ、許せないだけなんだ。
消えてくれ!
本屋なんかやめておけ…?
私はいつだって怒っている。
ノルマと向き合う。
誠実な私の、不誠実な行為
ソボキトク、スグカエレ。
なにしろ時給が低い。
いつもの朝。
万引き犯を殴った痛みは。
都心の大書店で意地悪をする。
深夜の出勤。
伝える者がいない…。
「本屋になりたきゃ、家を出て行け」
「かつての私」に何を言う?
さよならも言えなかった。
私よ、あきらめるな。
土俵際。
まだ空は明るい。
「使えない」
甘きオープニングスタッフ
くそばばあ…。
ベテランのクビをきる。
全国データ、とやら。
「その年収で、納得してるわけ?」
防犯カメラはお前を見ている。
そのとき、私はどうすれば…。
本屋ごときの分際で。
その仕事、ほんとに続けたい?
残匂をさがす…。
辞める決心の向こう岸
頼れる店長? 便利な店長?
「なぜ本屋になったの?」
俺は待ってるぜ…。
もはや正義なんかじゃない。
終わりのはじまり。
告知。
彼は扉をノックしてくれたが。
最期の夜を過ごす。
自己満足だったのか?
いつもどおりの一日。
闇の奥を覗く。
緑の日々を過ごす。
わすれものにであう。
未練はある。悔いもある。
志を捨てられない、すべての書店員へ。

この作品に描かれているもの

この作品で描かれているのは、疲れ果て苛まれ日々の業務に押し潰されそうな孤独な店長の姿です。救いはあまり無いかもしれません。ですが、それが書店という現場の現状であるということを著者は伝えようとしているはずです。一口に書店と言っても規模の大小や景気の良し悪しは確かにあります。この本でも再三描かれていますが、アルバイトや社員、店長、経営者といった立場の違いもあります。ですが、そうした諸々を鑑みても、書店の現場が疲弊し、働いている一人ひとりにとっての未来が描けなくなっていることを著者は伝えようとしています。

華やかな「出版業界」はどこにある?

大手の一翼を担う出版社におけるリストラの過程を渦中から発信した「たぬきちのリストラなう日記」が同じく7月に刊行の予定です。誰もが羨むほどの待遇(給与)や華やかな媒体のイメージ、芸能人によるイベントやマスメディアで話題のベストセラーなど、そこには確かに皆が思い描く「出版業界」があります。興亡も盛衰もドラマチックで、好きなことをやっていたい人たち=大人になれない人たちが思い切り遊んでいられる血湧き肉踊る鉄火場。著者であるたぬきち氏の筆致も、リアルを描いているはずなのにどこかエンターティンメントを感じさせる文体・内容で、新潮社という超メジャーな出版社(PARCO出版さん、比べてすみません)からの刊行も含め、話題になることは確実でしょう。
それも確かに出版業界の一端であることは間違いありません。が、決して全てではありません。たぬきち氏の現実と同様に、『傷だらけの店長』の現実も存在しています。多くの小零細出版社で日々苦闘している営業マンの日常も、現実です。

町の書店と小零細版元

私は小零細出版社で営業関係の仕事をしていますが、そうするとどうしてもお付き合いする書店さんは超大型のお店が中心になります。町の書店の重要性は頭ではわかっていても、実際に商品を扱っていただくためには厳しい判断をいただくことがあるのも事実です。町の書店からすると小零細出版社の本も置きたい気持ちはあるかもしれませんが、商売の現状を考えればやはりメジャーな版元の本に重きを置かざるを得ない局面もあるでしょう。もちろん、そうではない「個性的」な書店があることも事実ですが、それが主流とは言えないことも事実として受け止めなければなりません。

未来はどっちか

この作品では具体的な未来の可能性は提示されていません。暗示するかのように示唆されてはいますが、それも「そう言い聞かせている」ものなのかもしれません。大きな時代の変化の中で淘汰される業界に対する、既にノスタルジーと言ってもいい感情が芽生え始めているようにも読めます。
無理に希望を見い出すのであれば、そこにこそヒントがあるのかもしれません。これだけ厳しい現状の中でも、本屋の店員は憧れの対象となることがあります。そして、離れていった人々にとっても、懐かしく振り返ることができる場合が多いようです。
魅力もやりがいもある職業のはずです。なのに、実際にやってみると大きな苦渋を強いられる。特に待遇面において。ならば、どうやって待遇面を改善していくのか。
残念ながらその話題は私には荷が重過ぎます。ですが、常に忘れないようにしたいと思います。

最後になりましたが、著者の友人でもある出版コンサルタントの石塚昭生さんがPARCO出版の許諾を得て公開している『傷だらけの店長』の書店向け注文書へのリンクを掲載します。
http://www.ikimono.org/diary/wp-content/uploads/2010/05/kizudarake.pdf

出版業界で本を作り売る全ての方々にこの本のことを気にかけていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

※2010年7月20日追加
パルコ出版の特設サイトへのリンク

第23回 緊急提言「本屋をLANのホットスポットやすれ違いスポットに」

●本屋の店頭を無線LANやWiFi通信のホットスポットにできませんか?

今回はいつもとまったく違う内容です。自分なりに考えてみた本屋さんへの提言です。異論反論あるかと思います。コメント欄にどんどんお寄せください。

本屋にお客さんを連れ戻すのは書店のみでなく出版社にとっても喫緊の課題です。とは言うものの、具体的な方法となると、手間や金のかかる事(イベントやメディアでの告知)以外になかなかこれといったアイディアが出てこないのも事実です。ですが、他業種ではありますが、無線LAN(Wi-Fi通信)がお客さんを集めるのに成功した例が既にあります。おもちゃ売り場でのポケモンの配布イベントや「マックでDS」や秋葉原ヨドバシカメラの「ルイーダの酒場(すれ違い通信スポット)」などです。これらは販売ではなく、「通信環境を用意する」+「オリジナルの付加価値を設定する」という方法でお客さんを集めることに成功した例です。

これが本屋の店頭でもできないでしょうか。具体的には、「アクセスポイントを用意して通信を行いたいお客さんを集める」+「どこかで買った電子書籍(やゲーム)に、オリジナルの追加シナリオ・書き下ろしの追加データ・オリジナルおまけ画像などをイベント的に書店での接続に限ってもらえる」、といったサービスです。

簡単に整理してみます。

1.本屋を無線LANやWiFi通信のホットスポットに。

2.店頭の在庫を減らしてできた空きスペースを上記のホットスポット用に提供する。

→ヒトを集めるためにはアクセスポイントだけではなく椅子とテーブルが必要(「マックでDS」)です。看板を作っただけでヒトが集まった「ルイーダの酒場」は例外でしょう。但し、人が集まれば自然とすれ違い通信も始まる可能性は高いです。

→店内だと、例えば子ども達が棚の攻略本を勝手に持ってきて居座ったりという問題があります。場の見せ方・作り方が重要な鍵になりそうです。

→電源の提供をどうするかという問題も。ノートPCなど持ち込んで仕事をしだす社会人が現われだしたらしめたものでしょうか。

上記1.2.だけでも「お客さんを本屋に連れ戻す」ためにはかなり有効ではないかと思いますが、もう少し。

3.自動販売機などを設置して飲み物など販売(僅かでも副収入が発生)。

→ミスドなど飲食店併設や既に飲食コーナーのある店舗の場合、このあたりは有利でしょう。但し、こづかいを使いたくない子どもは飲食店には入らないのでやはり無料スペースは必要ではないかと思います。

4.書店でもらえる追加シナリオ(もしくはおまけのデータ)の提供(将来的な課題)。

→ラノベ系(オリジナル画像・ボイスなど)、自己啓発系(著者によるメッセージ動画など)、実用系(追加データ・最新情報など)、文学系(書き下ろしの解説・自著を語る、等々)。

※店頭での配信を「イベント的なおまけ(付加価値)」に絞れば、書店にも出版社にも、そしてもちろんお客様にも、わかりやすいメリットを提供できるように思います。

※上記を取次(もしくはチェーンの本部)が安価に提供できれば「導入したい」という書店は少なくないのではないでしょうか。もちろん、出版社やゲームメーカーのスポンサードによって書店の負担が無料であればさらに参加店舗は増えそうです。

※既にこのアイディアに対して「田舎では難しいのでは」というご意見を頂いております。が、逆に言えば「都会なら勝機あり」ということであろうと考えております。

※逆に「田舎だからこそホットスポットが欲しい」という要望もあるようです。

ちなみにホットスポットを用意するのは無線ルータを一台買ってくればすぐに始められます。ですが、せっかくやるなら全国の書店で統一シールを作るとか場の見せ方・作り方を共有するなりして、将来的に「WiFiしたけりゃ本屋に行こうぜ」という状況を生み出すのが良いのではないかと思います。もちろん、「ウチの店じゃそんなスペースは用意できないよ」というお店もあると思います。が、商店街にあるお店なら空き店舗はどうですか? ショッピングモール内ならちょっとした休憩スペースは? そこから本屋にどう誘導するか、本の売上にどうやってつなげるか。解決すべき課題は山ほどあります。が、それを考えてみるのは今まで以上に前向きな話のように思えます。

どうですか、本屋の皆さん。本屋のホットスポット化でお客さんを取り戻してみませんか?

談話室沢辺 ゲスト:J STYLE BOOKSオーナー大久保亮  第2回「書店経営の実情」

●書店の仕事とは


沢辺 最近印象に残る人の例はどんなもの?

大久保 子供向けのワークショップをされてる方から、子どもに土を使って何かを学ばせたい、それから野山に関する知識を面白く子供に伝えたい、ひいては環境問題に目を向けさせたい、という問い合せがありました。僕なりの観点から、その人の企画に使えそうな本をリストアップして、それぞれの本をすべて解説したりとか。

沢辺 で、買ってくれました?

大久保 買ってくれますよ。まあ買ってくれたということよりも、いい企画が出来たってフィードバックをもらえて、楽しいですよね。やっぱりその人の世界でしか考えられないこと以外のことを僕が提案できたので。例えば、野山駆け巡りながら環境問題も面白いけど、家畜をテーマにして、その家畜と肥えた土壌の関係だとか、そんなところからやるともう少し世界が広がって見えます、とかね。僕なりのセンスでアプローチの仕方を提案すると、「あ、これ企画いただき」とかそういう話になるんですよね。そうするとやっぱり在庫のない本屋でも少しは役立てるかなって(笑)。こういうことは、僕の今までのキャリアを活かした仕事にはなってるかなとは思いますね。というのは、会社勤めのときには、例えば役員が、あれどうなってる? これは?って思いつきでいうこともあるわけです。それをいちいちこう全部調べて、きれいに資料に落とす。またこれを調べたら当然こういう質問も来るだろうっていうのを考えた上で資料をまとめるわけですよね。こういう経験はいま役立っていますね。
だから、そういう人には、馴染みの本屋だけの域じゃなくなって、すごく大切にしてもらえるようになってきたなっていうのは自分でも感じますね。そこまでやってくれるなんて思ってなかったし、まあ普通だったら金を取れるくらいですよね。それくらいのクオリティのものをやってるっていう自信はあります。

沢辺 そうだよね。六本木の有料図書館だったら、有料なんだから、そのくらいのレファレンスはやってほしいっていうレベルの話だからね。

大久保 資料探しだけでもみんな大変なんですよね。例えば大きい書店さんに行って、自分の考えていることに関わる本を選ぶ時間だけだって相当な時間がかかるわけじゃないですか。ここからだって新宿行って往復もうそれで1時間でしょ。本を選んで、なかったらまた渋谷に行って、ってやってたら、もう何日分もそこで労力を浪費する。僕だったらだいたい1日、長くても2日。場合によっては1回リスト出して2日で取り寄せて、見ていただいて、すり合わせして。回答は1日くらいで返してますね。しかもその間、その人は別の仕事ができるじゃないですか。僕はそういう役の立ち方をしたいなって思うんですよね。やっぱり地域の人が仕事で上手くいってくれないと私も困るわけですよ。大不況でアパレルの方に次々倒れられちゃったら、僕は商売をしていけないんですよね。遠くから来ていただくような店じゃないですから。とにかく地元の人に役立つ。それはクリエイターさんだけじゃなくて、お年寄りから子供まで。地元の人に役立てられる店じゃないと僕は意味がないと思うんですよね。

沢辺 でもひょっとしたらそれで金取れるようになるかもしんないね。

大久保 いや、まあ取るつもりはないですけどね。

沢辺 いやもちろん。大久保さんにはないかもしれないけど。

大久保 普通だったらコンサルティングフィーは十分取れますよ。本代よりよっぽどこっちのほうが高いですよ。

沢辺 いやいや、本だけでなく、そういう付き合いがあればそこに目をつけて、ねえねえちょっとこういうのを10万円でやってくれない?って声がかかるとか。

大久保 4回くらいスカウトされましたもん。ウチの会社来ない?って。中には怒りだしちゃって、「君がここで店番してなきゃいけないのか!」とか言って(笑)。いけないんじゃなくて好きでやってんですからってなだめたりとか。いろんな人がいますよ。

沢辺 金払うからってやってよという人もいるでしょ?

大久保 全然本に関係ない仕事とか手伝ったりもしますよ。英語でプレスリリース書いたりとか。海外の展示会初めてなんだけどどうしたらいいかっていわれて。じゃあプレスリリースをまず雑誌に出すとか、とにかくもう宣伝しましょうって言って、結局翻訳もして。

沢辺 いいこと聞いたな。こんど頼もう。違うか(笑)

大久保 いいですよ。そういうお付き合いですよね。

沢辺 声がかかるかもしれないよね。

大久保 かかってます(笑)

沢辺 だけどこういうことって、最初からそういうことやりますからなんか声かけて下さいって言ってもダメで、大久保さんがそういうことを本という媒介を通じてみせてきたことっていうのが先にあって、それで付いてきているってことだもんね。

大久保 まあそうですね。
でも、僕が金を取らないのは、別にサービスで人間関係をつなぎ止めたいって思ってるわけじゃなくて、それで金を取っちゃうと、書店業のクオリティが下がると思うんですよ。そこまでやらなくても、例えばそれがレベルAだとしたら、レベルCとかDぐらいのサービスを店舗の中で出来ないと本当はおかしいんですよ。それが書店員の仕事でもあるわけじゃないですか。理想論ですよ、理想論。実は、それが、書店という小売業のクオリティと事業体力をつけさせることにつながる。だからそれを付加価値として、あらたに金を取るようじゃ書店員はダメだと思うんですよ。それだとただの売り子になってるだけで……。

沢辺 うん。そうそう、解る解る。

大久保 そういう思いがすごくあるので、あえて金を取らないという気持ちもすごくあります。

沢辺 コンサル目指してるわけじゃないもんね。書店的基盤があるからこそ、今受けてるっていうか、相談してくれたりするってことももちろんあるわけだしね。

●神宮前という土地柄

大久保 あとは土地柄が特殊だっていうのはありますね。これが町田の駅前の本屋で同じようなことをやろうとしたってたぶん出来ないですよね。ここにいるお客さんだからってのはすごく大きいと思います。

沢辺 なるほど。

大久保 だからまあ、そういう意味でもあの場所は、この場所っていうのは商売は難しいですけど、良かったかなと思いますよね。何が幸せかって言うと、いままでもう4年目ですけど、1回もここじゃなきゃ良かったなって思ったことなかったですね。ここじゃなかったもっと商売しやすいのにとか、こっちの方が良かったなとか、早まったなって思ったことはないですね。それは店を構える人間としてはすごく幸せですよね。
商売はもちろん難しいです。今日も来て下さったお客さんから「こんな目立たないところに本屋があったんだ」て言われた。その人は竹下通りからもっと先にある、アパレル関係の方だと思うんだけど、「こんなところにこんないい本屋あるの知らなかった」って。「ここは目立たないよね」「知らないよね」って皆さん言いますよね。まあそれが良くも悪くもあるんです。

沢辺 良くもあるでしょ。

大久保 そう、もちろん。

沢辺 裏通りの目立たない路地にあって、あれこんなとこに書店ができたんだって、見つけたときって、見つけるほうもうれしいわけですよ。それって裏通りで目立たないっていうマイナスが、プラスになるよね。

●軌道に乗せるまでの試行錯誤

沢辺 でもどうなんですか? 商売的に言うと、初年度は黒字になったんですか?

大久保 なってない。なってるわけないじゃないですか(笑)。やっと今年に入ってからですかね。

沢辺 え、じゃあ今現在は何とか黒字になってるんだ。

大久保 まあ威張れるほどの黒字じゃないですけど。黒字っていうか、ロスは出してないって言ったほうが正確ですね。いや、伸びてますよ、このご時世でも。伸びてますけど、ゆっくりゆっくりです。

沢辺 それ売上ベースで?

大久保 そうですね。

沢辺 でも減価償却は?

大久保 そんなこと考えてないですよ。考えられませんよ(笑)

沢辺 MBA持ってるくせに?(笑)

大久保 そう。考えない考えない(笑)

沢辺 損益分岐点とか……(笑)

大久保 そんなこと考えない(笑)。そんなこと考えたら毎日暗くなるじゃないですか。だからそりゃね。富士山登るような感覚なんですよ。朝、頂上のことを考えたら、毎日仕事なんてできないですよ。

沢辺 今日は一合目までいこうとか?

大久保 そう。達成できる地点をひたすら眺める。

沢辺 自分の食い扶持は出せます? 十分に。

大久保 そりゃ十分じゃないですよ。
ただ、垂れ流しは止まりました。

沢辺 何年ぐらいで止まったの?

大久保 2年かかりましたね。
1年目はボロボロで。なにやってもなにやってもダメでしたね。

沢辺 なにやってもって、どんなことをやったの?

大久保 品揃えもそうですし、商品の入れ替えも頻度はすごかったし。チラシは月に1万枚を2年間毎月やりましたね。

沢辺 1万枚のポスティングを?

大久保 はい。

沢辺 例のハガキ式ですよね。

大久保 ハガキ式もありますが、いろいろ試行錯誤しました。最初はビニールのショッピングバッグに広告と、あとちょっと興味を引きそうなチラシを入れたりして。そのままゴミ箱に捨てられないような、あ、この中に入ってるのってなんだろうって思ってもらえるようなものを組み合わせて入れて。

沢辺 版元のチラシみたいなとか?

大久保 いや、それはお客さんの宣伝や、お店のカードだったりですね。袋に入れて、配る手間は一つなんで、同じぐらいの時期にオープンしたレストランのチラシとかも入れて、配りましたね。

沢辺 月に1万枚ってことは……。

大久保 週3千枚強。

沢辺 週3千枚。っていうことは1日、7日毎晩やったとして一晩430枚。

大久保 一晩1千枚目標でやりました。

沢辺 そうだよね。毎日は出来ないもんね。

大久保 1千枚から2千枚くらい。この辺は、集合住宅ばっかりなので、1時間1千枚はいけますよ。何の自慢にもならないですけど。

沢辺 例えばさ、J STYLE BOOKSを起点にすると、どれくらいのところまで配りきれるの?

大久保 北は山手線の線路際から千駄ヶ谷方向にはサザビーズくらいまででだいたい1千枚ですね。2丁目から3丁目にかかるところで1千枚。で、表参道駅方面で言えば、まい泉あたり6丁目のエリアまでで1千枚とか。そんな感じですね。

沢辺 じゃあそれ1時間。まあそれなりに大変だわね。

大久保 いや、もう出来ないですよ。

沢辺 もう出来ない?

大久保 もうやる自信ないですね。倒れる。いまはもう考えたくもない。走りますからね。
昼間ポスティングしてる人たち見ると、いいなって思いますよね。こんなにのんびり配ってられてって。だって店が終わって、配れるのは3時間しかないわけですからね。

沢辺 小走り?

大久保 小走り。走ってる方が気持ちが保てるので。タラタラとやってると気持ちも落ちちゃうじゃないですか。だからタンタンタンってリズムつけて走る。ペースつけて配ってると気持ちもやっぱり乗るわけですよ。でも、配ろうとしたら「入ってくんな!」と怒鳴られたりとか。40歳近いMBAホルダーが……泣けてきます(笑)。
でもまあそれもやっぱ楽しくて。あ、いつも領収書を切ってくれるあの人はこんなところから来てくれてたんだって発見があったり。
チラシってすごいベタじゃないですか。コンサルティングをやってる人とかは、そんなのゴミになって終わりだよって、やりもしないくせにみんな言うわけですよ。だけど、意外にみんな見てて、しかも見たらすぐ来てくれるんですよね。こんなの入ってたって言ったり(笑)

●ポスティングの効果

沢辺 MBA仕込みの応答率で言うと(笑)、0.2%くらい?

大久保 いやいやいや、もっとありますよ。1%くらいはあるんじゃないかな。感覚的には。

沢辺 じゃあマーケッティング的に言うと、かなりの好応答なんじゃないの?

大久保 好応答だったと思いますよ。だから僕は、ポスティングが無意味かっていったら、無意味じゃないと言い切れます。ただ、やり方ですね。どういう内容でチラシを作るか。どういう形で入れるか。それは何百通りとやりましたよ。
ちょっと厚みのあるフリーペーパーで、くしゃっとされないようにしたりとか。で、最後に行き着いたのがハガキなんですよね。ハガキは意外にみんな捨てないんですよ。ホントのハガキと思うのかどうかわかんないですけど。

沢辺 厚みじゃないかなあ。それとさ、J STYLE BOOKSのハガキチラシってさ、大久保さんが作ってる感じがするの。

大久保 あ、そうですか(笑)

沢辺 大久保さんが自分のインクジェットプリンタかなんかで、つくってる感じがする。いや、素人の手作り風がいいと言っているわけじゃなくて、大久保さんらしくいろいろ工夫されてるなっていう風に思うんだよね。

大久保 それは言われたこと何度もあります。2年もやりましたから、1人何枚も見るわけじゃないですか。見てくうちにその変化も見えてくるし、やっぱりこの辺はグラフィックの方が多いので、ああいうの気になるのか、「あ、ここ変えた」とかそういうのちゃんと見てくれるんですよね。で、店に来てみたら、いつもこの人1人しかいないな……。

沢辺 そうそう。

大久保 もしかしたらこの人が自分でつくって、自分で配り歩いて、全部一人でやってんのかなって、そこまで見てくれるっていうのもまたありがたいですね。だから、一人でやってたから良かったかなっていうのは今はありますね。この人は店を閉めたあと、一人でやってるんだって、そのチラシの背景までちゃんとみんな見てくれる。

沢辺 物語、ね。僕は、店ができた時にぱらっと覗いたときはね、オシャレなカッコいい本屋出しやがって、という第一印象ですよ。率直に言えば。

大久保 (笑)気取りやがってって感じで。

沢辺 いかにもじゃないですか。場所も場所だし。そういう人がやりそうだなって。で、大久保さん二枚目だしさ。

大久保 いや、そんなことないです(笑)

沢辺 なんだけど、やっぱ一番印象に残ってんのはチラシ話だよね。

大久保 もう無茶苦茶、泥臭いですよね。

沢辺 時々立ち話するようになって、まあ一応応答は親切だから、ただキザってわけじゃないんだなって。それで時々お喋りするようになって、一番すげーって思ったのが、チラシ。1千枚撒いてるって言ってたとき。

大久保 そうですねー。あのときは絶好調のときです。チラシだけは(笑)

沢辺 僕もポスティングやったことあるけど、ホント嫌だった。

大久保 嫌ですよ。ポストに入れてる時に住民の人に会うのも嫌だし。

沢辺 そうそう。僕の場合は商売がかかってなかったから、どんなぼろアパートでも、ともかくポストの数があるとこ見つけりゃ、嬉しいっていうだけになっちゃって。だからポストの中にチラシが溢れているようなところでも入れる。そうすると一応減って嬉しいなあって思うんだよ。でもそんなそんなの効果もないってことは見た瞬間に解るのに、効果とか考えないでともかくこの手元を減らすっていうことしか考えなくなっちゃうじゃん。一戸建てかなんかが続いてるとさ、もう腹がたってきたりさ、やんなってきたり。一体何のためにチラシ配ってんですかねみたいな。

大久保 だから、配り方も考えましたよ。さあ今日やるぞって行って、でもポストがチラシだらけだったらその日はもう止めるし。何曜日が一番効果あるかとか。日曜日に頑張って配って、月曜の朝一にOLさんが見て、週末楽しかったねみたいな話をしながら手紙をさばいて、その中にチラシがあって、あ、本屋だっていうのを想像したりとか。何曜日が一番効果あるのかとか。配り方も色々考えたり。それがどれだけ効果あったのかっていうのは解んないですけど、ただ、そこで繋がってる方もたくさんいますし。

沢辺 僕が話したときに、「ねえねえ大久保さん自分で配ってるわけ?」みたいなことを聞いたと思うんですよ。

大久保 そうですね。その時話したのは、なるべくポストにある名前を頭に刷り込むようにしてるんです、と。

沢辺 そうそう。

大久保 あれもよかったんです。こっちは顔と名前が一致するわけじゃないですけど、領収書の宛名見て、千駄ヶ谷の先の方ですかっ?って話しかけたりして。えーなんで知ってんのって。もしかしてチラシ見てきて下さったんですかって。やっぱり自分の手で配ってよかったなと思いましたね。

沢辺 僕なんかもう人間が堕落してるからさ。チラシ配ろうとか思うと、いかにコストを落として、誰にどうやって効率的に配らせるかなんてことを考えるけど、「大久保さんが自分で配ってるの?」って聞いた時に、「もちろんそうですよ。ポスト見て名前も覚えるようにしてるんですよ。領収書を切る時に一声かけると割と喜んでもらえるんで、それだけ覚えるようにしてるんですよ」と言ったときに、やっぱちゃんと一生懸命やってんなーって思ったわけです。人間の共感って言うのかな。それがついてる気がすんだよね。

大久保 そうかもしれないですね。僕自身もチラシなんて効果ないって思ってやってたんですよ。そう思ってやってたんですけど、やる限りは、たとえ効果が1でも、0じゃない限りはやれば効果がそれなりに出る。だったら、その努力は惜しむべきじゃないですよね。だからやれることは全部やろうって。そういう感じですよね。やれることをやってんのかって言うのは、いつも自分に言い聞かせてますよね。それはキャリアがないから上手には出来ないですけど、ただ、ちゃんと考える。僕なりに考えて、お前自分がいまできることやってるかっていうのは常に思ってますよね。

●転職、独立で見えてきたこと

沢辺 だから大久保さんって、なんか変な言い方だけど、転職をプラスに転化してますよね。

大久保 転職をプラスに……いやもう、それはそれしか食ってけるものがないですからね。こっちも必死ですよね。

沢辺 転職ってさ、必ずしもプラスに出来る機会は多くなく、どっちかっていうと転職するたびに給料減ってくみたいな。

大久保 給料は減ってますけどね(笑)

沢辺 もちろん給料は減ってるけど、書店を自営するっていうものすごい困難な道を何とかやっていけてるのは、大久保さんの前の仕事経験を十二分に活かしているから、っていう気もするんですよね。
でも最初のデザイン書はあんまり……グラフィックデザイン系の本は、あんまりよろしくなかったですよね。

大久保 最初の品揃えですか?

沢辺 うん。

大久保 最初の品揃えはまあ、僕自身もマーケティングしてたわけじゃないし、ここにどういう人がいるかも解らなくて。例えば建築家の方がこんなにいるとは思わなかったし。まあせいぜいファッション系の人は多いだろうなぐらいですよね。で、開店して一ヶ月もしない頃、たぶん近所に住んでる方なんですが、その方に「あなたね、自由が丘だったらいいわよこれで。でもここにいるのはね、プロ中のプロよ。トップクラスの人たちが、とにかくいるわけだから、これじゃああなた、商品が弱い」って言われて。総入れ替えです。それでもやっぱり僕の専門分野じゃないですから。僕もグラフィックは好きで、趣味程度には買ってましたけど、やはりプロの求めるものって言うのは解んないですよね。今でも解んないかもしんないですけど(笑)。そんな感じです。
でもそう言ってもらえるのって、僕にとってはラッキーなことなんです。

沢辺 ねえ。


窓際には、デザイン関係の書籍を並べている。

大久保 言われなかったら解んないですよね。たぶんそこで、かなりのお客さんを失ってるんですよね。皆さん期待して来て下さっているのに、ああなんだ、ちょっと素人っぽいなって。最初は僕はそんな玄人好みのものよりも、いろんな分野に、例えば建築の興味ない人が、建築に興味を持ってもらえるようなイメージだったんですよね。で、とにかく、ジャンルは、学参とかアダルトとか抜いたとしても、それ以外のものはなるべく幅広いジャンルでやろうとした。みんなが今まで興味を持たなかったジャンルも興味を持てるようなイメージで品揃えはしてたんで。それじゃあ、やわいと言えば、やわいですよね。そこで品揃えをがらっと変えて。

沢辺 よくその人がいてくれましたよね。

大久保 そうですよね。で、言ってくれた。

沢辺 普通だったら言わないよ。でもそれを引き出せたっていうのが、大久保さんになんかあったのかもしれないね。
でもさ、大久保さんを基準にすると今の本屋さん、大変だよね。

大久保 いや解んないですよ。僕は他の本屋さんのことは良く知らないので。本屋の友達ほとんどいないですからね。
組織に入っちゃうと、やる意識はあっても自由が与えられない、っていう話くらいは耳にしますけどね。まあそれぐらいしか知らない。

沢辺 不安じゃなかったですか?転職して。

大久保 転職して、いや、不安ですよ。

沢辺 僕も独立したての時は、いてもたってもいられないほど、泣きたくなるほど不安だった。


知人が雑貨や食器などを展示し、大久保さんがそれに合わせた本を展示するスペースもある。

大久保 でも、それもお客さんに助けられてますね。1年目から来てくれているお客さんで、やっぱり1人で独立して、その不安な時期を過ごした経験のある方が、ああ、俺も良くわかるよ、デザインをやってて、今日は1日中だれともしゃべってねえなと思ったりとか、そういう辛かった経験や失敗した経験だとかをお店に来ては話をしてくれたりとか。
励ましてくれて、買い物してくれて、という人はね、けっこういるんですよ。だからこのエリアはあったかいなって思いますもんね。会社辞めるときは上司に「世の中冷てえぞ」って言われましたけど。冷たいなって思ったことはないですね。不安はもちろんあるし、朝まで寝られたことって数えるぐらいですよ。夜中絶対起きますし。けど、まあ割と図太いんですよ。線細そうに見えて、負けず嫌いなんですよね。

●書店、出版業界に思うこと

沢辺 じゃあ最後に、書店業界では仕入正味が少ないっていう意見が多いわけだよね。で、大久保さんが4年かけて、日曜日もでて、アドバイスも含めてレファレンスサービスみたいなことまでしても、まあ自分の食い扶持くらいは出ますよ、という程度だとしたら、やっぱり商品マージンが余りにも低いっていう思いはありますか?

大久保 いや、それはマージンは高いにこしたことはないんですけど。規模の小さい、新しい書店だからなおさら思うのですが、制度は一つのルールだと思ってるんです。そのルールの中でどうにかするのが僕の仕事。なので、そのルール自体を改正しようということに心血注ぐよりは、そのルールの中でいかに実入りを増やすかとか、売り上げを伸ばすかとかということを考えることしかしてないですね。
当然マージンは多ければいいんですけど、かといって、他の業界で置き換えて考えてみたら、最終的なマージンってどうなのかなと思うんですよね。例えば、アパレルは、マージンがたくさんある。でも、在庫をたくさん抱えるし、違うところで費用が、例えば営業費用がかかったりするじゃないですか。トータルで考えた時に、残るマージンは、アパレルだって似たようなもんなんじゃないの、なんて。レストランなんかもそうですよね。そんな儲かんないよって。マージン少ないし、廃棄しなきゃいけないし。船場吉兆みたいなこともしてらんないし。
そう考えると商業ってそんなとこなんですよね。そこをうだうだ言うのはやめようと。「大久保さんここに本屋開いて下さい」って誰かに頼まれてやってるわけじゃない。僕はやりたくて、マージンが低いのは承知の上でやってるわけだから、そこをうだうだ言う暇はないですよ。
それよりも、仕入のロスや返品のロスをいかに減らすかとか、自分のスキルを高めることでそういうのをカバーしていくほうがいいんじゃないかなって。
もちろん取次とか見てると、もっとね効率のいいオペレーションやってローコスト化して、お互いのマージンを増やすことは簡単だろって思いますよ。改善の余地はたくさんあると思う。でも、僕自身、制度がどうだこうだいうようなレベルじゃないし、もっと自分にできることは何かと考えますね。
僕は商店経営を極めたいと思っているんです。開店の時に数千万レベルの資金を持ってたら、会社を辞めるときにそれを担保にお金を借りて不動産でも買って、家賃収入が得られるように安心を確保しておいて、その余力で本屋をやれば、食い扶持に困ることもないし、資金も回る。でもそこは敢えて、ちょっとカッコいい言い方ですけど、背水の陣を敷いてギリギリのところで自分を追い込みたい。少しでもない知恵が絞れるように。やっぱり困らないと知恵なんか出ないじゃないですか。困らないとチラシなんか配んないですよ。

沢辺 そうだよね。出来れば帰ってすぐ寝たいもんね。

大久保 寝たいですよ。やっぱり自分をどれだけ追いつめてるかだと思うんですよね。そうしないと知恵なんか出て来ないですよね。

沢辺 うーん。まあルールは横並びで、大久保さんだけが低いわけじゃないんだもんね。

大久保 ええ。みんなに決められたルールなんですよ。

沢辺 まあ少々の差はあっても、みんな一緒だしね。ちなみにいま返品率ってどのくらいですか?

大久保 返品率……。どれくらいだろう。

沢辺 そういうのは出してない?

大久保 出してない(笑)。

沢辺 業界平均は40%だよ。

大久保 40まではいってないですね。

沢辺 書籍はほぼ注文どおり? 見計らい(※書店からの注文ではなく、取次会社の判断で納品される商品のこと)が来てるんですか?

大久保 ん? すいません業界用語がわからなくて……。

沢辺 いやいや、そんなの全然問題ないですよ。

大久保 配本、自動配本みたいなものですか?

沢辺 そうそう。

大久保 それは、ほとんどないですね。たまに1〜2冊注文以外の本が混じってるけど。

沢辺 じゃあ、ほぼ自分で注文出した分?

大久保 全部自己発注ですね。小書店がパターン配本を外して個別注文すると欲しいものが入らないってよく聞きますが、いまひとつピンとこない。

沢辺 欲しいものが入らないっていうのは、「1Q84」みたいに置いとけば売れる本ってどんな店でもほしいわけですけど、そういうのが取り合いで小さな店に入らないっていうことだと思いますけど。ピンとこないっていうのはどういうこと?

大久保 欲しい本は入ってるから。

沢辺 例えば「1Q84」にしても?

大久保 うん。入ってますね。『ミシュラン』とかも入ったし。もちろん500冊とか言ったらくれないでしょうけど。

沢辺 いくら「1Q84」とか「ミシュラン」でも、500冊も売れるわけじゃないもんね。

大久保 売れないですよ。だけど、十分さばくくらいは入ってます。

沢辺 ふーん。

大久保 あと僕から『本の現場』で唯一不満なのは、出版不況の正体が分からない、ということ。明らかにされてないと僕は思うんですよ。
感想メールでマクロだのミクロだのって話をしたと思うんですけど、本では、出版統計の数字が語られていたり、あとはまあアナログ的な話はされてるんですけど。
でも、例えばの話をすると、「SWEET」っていうファッション誌が最近売れています、と。マクロ統計的にはいままで下火だったのが伸びてます。評論家とかが何年後かにその数字を見て分析する時に、ああ、あの時は原宿にH&Mやフォーエバー21が出来て、ファストファッションが流行って、それがファッションの意識に火をつけて、それで「SWEET」は伸びたんだ。そんなふうに分析するかもしれないですよね。統計の上辺の数字だけを見て語る人は。
だけど、実はあれはおまけが売れたんだよというのが現場レベルでの実際だったりする。そういうミクロの分析がたぶん必要なんですよね。
そのうえで、出版不況ってホントに不況なの?って、ほんとは僕は疑ってるんですよ。ホントにみんなが言ってるほど不況なの?って。たぶん沢辺さんもそういうところおありだと思うんですけど。

沢辺 うん。

大久保 出版不況の正体って誰も語ってないと思うんですよ。ホントの意味で。正体が語られずに、制度変更のことばっかり言ってるのは、非常に危険だと思うんですよね。出版業界の川上から川下までみんな不健全で、不健全な状態の中で外科手術したらみんな倒れます。手術にならないですよね。そういう怖さがあります。
ルールづくりにタッチできない側としては、どうなろうとそれに従うしかない。いつの間にかそういう論調になって、勝手に決まったら怖いなという不安はありますよね。それは、沢辺さんとか永江さんとか、発言力を持っている方がきちっと言ってくれると嬉しいなっていうのはありますね。

沢辺 うーん。僕も不況だとは思ってないのね。日本経済全般においても。例えば、車にしても、明らかに俺たちが若い頃のステータスシンボルにはもうなってない。俺たちの若い頃は見栄があったわけね、MARKⅡ乗りたいなとか。そんなのいま何もないでしょ。

大久保 みたいですね。

沢辺 僕自身も、いやあレンタカーでいいよって思ってるわけね。明らかに効率的だから。社会全体が、もうそんなにどうしても買いたいものがなくなってしまった状況でしょ。これはよく言われることだけど、可処分時間に占める読書の割合が減ってきているわけですよね。それはインターネットが、時間だけじゃなく中身も代替えして奪っているからだと思う。だから相対的に雑誌とかが落ちている。ま、本は微減だけど。
だから、大して不況なんじゃなくて、いままでみたいなどバカ売れの仕方がもう通用しなくなってるだけに過ぎないような気がしてならない。ちょっと前だったらセブンイレブンを10店舗出せば8店くらいは黒字になっていたけど、いまは厳しい。ただ出せばいいというわけにはいかなくなって、既存店も落ちてきていると。それは不況ではなくて、社会の変化だと思う。町の小さな本屋が潰れていくというのも、他の業種だって小さな店は潰れてるでしょ。

大久保 本屋だけじゃないですよね。

沢辺 この近所の裏通りで八百屋が潰れたでしょ?

大久保 あ、そうですか。

沢辺 まい泉の近くには豆腐屋があって、なかなかいい豆腐屋だと思ってたんだけど、あそこも潰れたし。それと同じことじゃない。
和民に行けば、みんなで飲んで、1人2000円ぐらいで割り勘できちゃうのに、大して高くない店で3千、4千円。で、和民のほうが種類も豊富だしさ。そうすると、ここはあのおばあちゃんのみそ汁うまいんだよ、みたいな特徴がないと、小売業は難しい。豆腐屋が潰れるのと同じ理屈だと思うんだけどね、本屋が潰れるのは。違いますかね?

大久保 僕なんか下町の人間なんで、僕の祖父や曾祖父はわずか数十年というあいだに、関東大震災、太平洋戦争があって、店や家を失って、それでも続けてやってきたことを考えると、どこまでが不況なのかっていうのはあるんですよ。ちょっとやそっとのことで世の中のせいにしてられないなとは思いますよね。

沢辺 うん。そうですよね。

大久保 あくまでも僕の場合ですけど、世の中のせいにしてなにかを変えよう、などというのはまだ早いと。という感じですね。感情的ですけど(笑)。そういう意地とかは必要だと思います。なにをやるんでも。

沢辺 ところで、大久保さん、J STYLE BOOKSをやっていくなかで、いくつかは捨てたわけだよね?

大久保 ん? 何をですか。

沢辺 んー。日曜日の休みもないとか。

大久保 ああ、犠牲にしているものは沢山ありますね。もう仕事一色ですね。

沢辺 ですよね。でも後悔はないよね。面白いんだもんね。

大久保 そうですね。後悔はないですね。考えたこともないですね。先への不安はまだまだありますが(笑)。来月どうなってるかなんてわからないですからね。

沢辺 そうね。

大久保 だからいまだに通勤定期は1ヶ月分しか買ってないんですよ。もしかしたら来月不要になるんじゃないかと思って。

沢辺 はあー。

大久保 それがずっと続いてますね。

沢辺 その気持ち解る。

大久保 その、キャッシュフローを持たせたいとかじゃなくて、気持ちの問題なんです。

沢辺 わかる。気持ちの問題だね。来月はどうなるかわからないと言ったって、何か起こった時には、後始末だってあるわけで、3ヶ月分買っておいても全然無駄になることなんてありはしないし、仮に無駄になったって大した金額じゃない。だけど、なんかそこから始めないと、緊張感が途切れるみたいな気分だよね。だから、なぜか1ヶ月ずつ買う自分っていうのはあるんですよね。

大久保 そう。なんかね、あるんですよ。

沢辺 なんかあるんですよね。そこでこうなんか崖っぷちにいるぞ、みたいな。

大久保 ええ、あるんですよ。

沢辺 そうですね。いやー面白かったです。どうもありがとうございました。(了)

次回予定

J STYLE BOOKSオーナー大久保さんとの談話は今回で終了です。是非、お店に行ってみてください。
次回の「談話室沢辺」は11月2027日(金)を予定しています。
ゲストに、太郎次郎社の須田正晴さんをお招きして、版元ドットコムのこと、電子書籍のことを語りました。
お楽しみに!

プロフィール

大久保亮(おおくぼ・あきら)
J STYLE BOOKSオーナー

J STYLE BOOKS

Web http://www.jstylebooks.com/
住所 東京都渋谷区神宮前2-31-8メイハウスビル1F <Google Map>
TEL & FAX 03-3402-7477
定休日 日曜(不定休)
J STYLE BOOKS

談話室沢辺 ゲスト:J STYLE BOOKSオーナー大久保亮 第1回「書店経営を選んだ理由」

●本屋を始めた理由

沢辺 よく聞かれると思うんですけど、いまどきなんで本屋だったんですか?

大久保 よく聞かれますね(笑)。本屋を始めた動機は3つあります。
自分にしか出来ないことを、自分らしく楽しくやりたいっていうのが一つめの動機。
二つめは、ゼロから何かをやる経営者になりたいということ。経営の勉強をして、実務でそれを活かしてきたので、経営というものに対してもすごく興味があるんです。会社の中でも戦略的なことはやってたんですけども、自分で興したわけではないので、それをやってみたい、と。
三つめは、それを通して何らかの形で世の中に貢献できればな、ということです。それを総合的に叶えられるかなと思ったのが本屋だった。
大学を出て、その後社会人としてある程度キャリアも積んだ時に、「この先そんなに長くないな」と思ったんですよ。35歳ぐらいの時かな。自分の寿命の短さを意識したんです。もうそこに40歳が見えてて、60歳でだいたい定年を迎える。あと10年もやったらある程度人生が見えてくるだろうなあ、と考えたとき、何か自分を変えられるのってあと10年ぐらいのもんで、意外に短いんだな、って思ったんです。
それなりにキャリアも積んで、勉強もしてきた。でも、そのキャリアを積むってどういうことなんだろうって考えた時に、自分は幸せでないとおかしいし、幸せのほうに向いてないとおかしい。じゃあ幸せって何だろうって思った時に、自分にしか出来ないことを自分らしく、楽しくやれたら、それは幸せだな、と。
じゃあそれを今の自分に置き換えてみて、自分に何ができるんだろうと考えたときに、出てきたのが本だったんです。本屋っていうのは、ビジネスで成功する、しないは別にしても、そういう環境っていうのは自分なりに作れるんじゃないか。それを作れるのであれば、ビジネスとして成功させることにチャレンジするのは無駄じゃないな、と。

沢辺 経営に興味があった?

大久保 経営には興味ありましたね。元々、高校生までは、編集者、もしくは物書きになりたかったんです。
昔から本は好きで、小学校の文集にも本屋になりたいって書いていたぐらいで。物を読んだり書いたりするのが大好きだったんですよ。それで、大学もその方向で、将来編集に携われたらいいな、ぐらいに思って、英米文学部に入ったんです。

●馬術部での経験から経営に目覚めた

大久保亮
沢辺 大学はどこでしたっけ?

大久保 成蹊大学です。ところが、大学で体育会の馬術部に入部したことで、経営に目覚めたんです。特にお金もないのに馬術部なんか入るもんだから、やはり金に苦労するんです。で、馬術部も、代々そんなのが集まっていたので、馬術部自体、もう大借金地獄。僕が下級生だったときはみんな総出でバイト。アルバイト部だったんです。

沢辺 へえ、そうなんだ。

大久保 活動のほとんどはバイトなんですよ。バイトか馬のフン掃除か(笑)。
それで代々積み重ねて来た借金を、みんなで返してた。でも、それじゃあ楽しくないですよね。僕が入部したときの先輩たちの方針だったから、まあ馬に乗るのが楽しかったんで、黙ってやってましたけど。
でも、僕がキャプテンになった時には後輩にはそんな思いさせたくないと思ったんです。
で、いろいろ考えました。
その頃ちょうどバブルだったので、競走馬がたくさん余るんですよ。どういうことかというと、当時、例えば不動産会社で地上げ屋の社長さんなんかが馬を買って、自分の娘の名前なんか付けちゃったりするんです。「メグミハヤテ」とか。
そうすると、いざ故障したとき、娘の名前も付けちゃったし、殺すのはちょっと偲びないな、っていうのは人間だからあるでしょう。競走馬って、やっぱりデリケートでちょっと故障すると肉になるんです。でも、できることなら生かしてやりたい。
そういう人を見つけて来て、馬は絶対殺しません、と言って、その馬を僕らが請け負うんです。ちょっとした骨折程度なら、競走馬では使えなくても、乗馬用の馬で使えることって沢山あるんですよ。
僕らはその馬を乗馬用として、1ヶ月調教し直して、乗馬クラブに100万円くらいで売るわけです。お金をそれで稼いで、借金を返済、ってことをやったんです。
それで部の財政を立て直したんですけど、その経験ですね、経営って面白いって思ったのは。
何が面白いかっていうと、部員みんなのモチベーションとか、目が変わってくるんですよ。人が変わってくるんですよね。その変わりようっていうのは、もう本当に肌がゾクゾクするくらい。
当然ですよね。それまでは自分のお金にもならないアルバイトをずっとやってたのが、やらなくてすんで、本来の馬術部の活動に向けられるようになったんですから。

沢辺 自分が働くことの意味が、垂れ流しの借金の補填のためではなく、みんなで1ヶ月間交代で調教した馬が、たとえば100万円になるとか、そういう目に見える成果があったからなんですかね。みんなの目が輝くってことは。

大久保 みんなが変わったのは、部としての本来の活動を取り戻して、明るい未来が見えるようになった、っていうところですよね。それを僕は実際に行動で示した、と。
その経験から、僕は経営っていうものに興味を持つようになっていったんです。その時点で、もう文学はどうでも良くなったっていう感じ。どうでも良くはないんですけど、まあ元々勉強してなかったんですけどね(笑)。

沢辺 転部とかしたわけではなくて、最終的にはそのまま英米文学部を卒業した?

大久保 そのままですね。

●部の財政を抜本的に立て直す

沢辺 僕、ディテールが好きなんで聞かせて下さい。たとえばその馬術部って何人ぐらい部員がいて、借金返済も含めて、年間いくらぐらい稼がなきゃいけなかったの?

大久保 部員は大体20人ぐらい。

沢辺 四学年で? 少ないですね。

大久保 だって入っても辞めちゃうんですもん。そりゃあそうですよ。借金がなくても馬と一緒に寝泊まりして、馬の世話をやるわけですからね。
華々しくなんかないんですよ。もう本当に馬糞処理してる時間の方が圧倒的に長い。

沢辺 ますますディティールにいっちゃうけど、大学の中に馬術部のスペースがあったんですか?

大久保 厩舎があるんですよ。そこで馬を飼ってて、厩舎の横に部室があって、24時間、必ず誰か一人はついているんですよ。

沢辺 そうだよね。で、飼料も他の人の手は借りずに自分たちでやる?

大久保 部員たちで全部やります。

沢辺 飼料って配達してもらうんですか?

大久保 もちろん配達です。ロットで買いますからね。

沢辺 馬は何頭ぐらいいたんですか?

大久保 一番増やしたときで15頭です。最初、僕が入部した当初は7頭ぐらいですかね。僕の代で倍にしたんです。

沢辺 それは売るために?

大久保 いや、それもありましたけど、基本的にはそれまで、競技用の馬さえあんまり持てなかったんです。
僕の代のときは、同学年が運良く7人いたんですね。で、上級生になって、7人がそれぞれ自分の馬で試合に出て行ける、っていうのが理想なんです。

沢辺 なるほど。

大久保 なので、財務を良くしていったので、そういう馬も増やしました。

沢辺 つまり、最初に飼ってた7頭は、必ずしも全頭が競技に出せる馬ってわけではなかった。

大久保 はい。

沢辺 俺、馬のことあんまり知らないけど、競技に出せる馬っていうのは、サラブレッドとか?

大久保 サラブレッドでも、きちんと調教された能力の高い馬とそうじゃないのがいますね。

沢辺 僕らが知ってる競技用の馬は、サラブレット。一番走るのが速そうで、高価そうで、だけどどっか足も華奢で、ちょっと転倒すると折れそう、みたいな印象ですよね。

大久保 そうですね。

沢辺 だけど、道産子みたいな、荷物引っ張っても、ひっくり返っても、骨なんか折れないでいくらでも起きてきそうな馬もいるじゃないですか。

大久保 乱暴な言い方をすれば、その中間、とまではいかないんですけども、サラブレッドよりちょっと丈夫なアラブ種っていうのがあるんですけど、その種もいましたね。

沢辺 サラブレッドでなければ競技に出ちゃいけない、というわけではないんだ。

大久保 じゃないんですよ。サラブレッドよりは見かけがずんぐりむっくりしてたりして、優雅じゃないですけど。

沢辺 じゃあ7人が全員一斉に大会に出る時、「おい、大久保、交代」とかじゃなく、それぞれが、俺はこいつ、あいつはあの子、っていうふうに、マンツーマンでやれるようにするために増やしたと。それも、競技に出していい馬っていうか、ちゃんとした馬を。

大久保 そうですね。それでもちゃんとはしてなかったですけどね(笑)。

沢辺 金持ちクラブにはかなわない。

大久保 かなわないです(笑)。金持ちクラブは、学生でも平気で一億とかのレベルですからね。俺ら一番高くても、それこそ100万円くらいですよね。

沢辺 買ってくるときも?

大久保 ええ。

沢辺 大久保さんたちのクラブで?

大久保 そうですね。それも同じような馬がですよ。ただ、もうちょっといい調教を受けています。競走馬に毛が生えているくらいなんだけども、馬の質がものすごく良くて、で、ちょっと上手な人が乗ってくれてたりとか。その程度のものを買ってきてるんですよ。

沢辺 ふーん。じゃあ年間の予算は1千万円規模?

大久保 1千万円を超えるくらいですね。けっこう金がかかります。

沢辺 飼葉代も含めて。

大久保 飼葉代と、あと獣医。けっこう獣医代がかかるんですよ。

沢辺 ああ、うちの犬もかかるわ。

大久保 でしょ。それも馬ですからね。部員で女の子がいたりすると、「ちょっとあたしの馬おかしい」となると、すぐ獣医を呼ぶんですよね。
来てもらうだけでもお金がかかるし、よっぽどのことがない限り、人間みたいにはっきり病状はわからないんですよ。グレーゾーンになってくると、「とりあえずこれやっときましょう」なんていうと、それでまた、けっこうお金がかかるんですよね。あとは、馬の足に蹄鉄を装着するのにもお金がかかる。
だから、馬売るのもそうでしたけど、金になるものは馬糞でも売りましたよ。それまでは業者に頼んで金払って引き取ってもらってたんですよ。それを一生懸命、千葉とか調布の方の農家の方に片っ端から電話して、1万円でもいいからトラックで引き取ってくれるってところを探しました。

沢辺 肥料に馬糞どうですかって?

大久保 はい。トラック1台分を1万円くらいで。それでも、今までお金を払っていたことを考えたら、今度はもらえるわけですからね。ずいぶん楽になるので、もう、徹底的にやりました。

沢辺 金儲けを、って言うと変だけど。

大久保 金儲けじゃないですけど、まあ緊縮財政をひいたわけです。
一番笑ったのは、馬場に敷く砂も買うわけですよ。でも、あれも金がかかる。僕の同期がいろいろ見つけてきて、競馬場の砂は1年に1回入れ替えするんですよ。それをもらってこようっていって、OKもらったんです。
ところが、「じゃあ何トンいる?」っていわれた時に、馬場に敷くのは何トンって、感覚的には解んないじゃないですか。で、適当な数字を言ったんです。
そしたら大型トラック3台くらいが学校の正門に並んで、守衛から「どうすんだ」って電話があって、仕方ないから無理矢理トラック入れさせて、砂を降ろしたら、しばらく富士山みたいな山になってました(笑)。
そんなことをしながら、部の財政とかみんなのモチベーションを上げていったんです。本来は競技のために体育会はあるわけですから、大学時代に馬術部やって、この成績を残せて、俺たち良かったよね、っていうふうに卒業したいよなって。

沢辺 大学からの部費って出たの?

大久保 援助はありますけど、240万円くらいじゃなかったかな。

沢辺 とすると、予算が1千万円強だとすると、1人あたり4、50万円は部に入れないといけないってことだよね。

大久保 そうですね。本当に金かかるんですよね。夏になったら馬を涼しいところに連れてかなきゃなんないし。

沢辺 涼しいところって、軽井沢とか?

大久保 軽井沢とか栃木ですね。僕のときは那須に連れて行きました。専用のトラックで移動させて、厩舎借りて、そこ合宿所にして。で、そこでもまたバイト。とにかく金がかかったんです。
でも、それじゃあ根本的な解決にならないから、そこで考えたのが馬の売買の商売でした。それでも、馬を売りもんにするのかとか、OBから大反対されました。僕からしてみたら愛馬精神とは言うものの、ちょっと違うんじゃないかなって、ま、悩みましたけどね。

沢辺 売るのは乗馬クラブのようなところに売るの?

大久保 そうですね。

沢辺 成蹊大学の乗馬クラブは100万円くらいで売っていたけど、普通はいくらぐらいで買うものなんですか?

大久保 ピンキリです。値段なんてあってないようなもんです。だからその時に、いかにいい馬に見せるか、ですよね。そうするとなんか悪い人のように聞こえるかもしれませんけど(笑)。
その時に、僕が調教して、これだったら乗馬クラブに遊びにきた初心者の人も、危険なく乗れますよとか。で、乗ってみて、値踏みするわけです。大久保亮

●サラリーマン、留学時代

沢辺 じゃ、会社の話にいきましょうか(笑)。
馬術部の経験で、経営が面白くなっちゃったから、その時点で出版社とか、本に関わる仕事をしようかな、という気持ちは消えて、経営的なことができる仕事がしたい、となったわけだ。

大久保 はい。大学出てからは住友スリーエムっていう会社にいて、そこで3年営業やって、留学をして、富士通に入りました。
やっぱり文学部なんで、経営に携わるような仕事をしたいと思っても、なかなかなかったんです。でもメーカーで営業から始めるのは悪くないかなと思い、最初は営業として入りました。
ただ、やっぱり経営に興味を持っていたので、経営戦略に関わる仕事がしたかった。けれど、そういう仕事に自分を当てて下さいという根拠もない。
だったら留学して、ちゃんと基本的な知識を身につけて、僕はそういう職種で役に立ちますっていう人になって、次のキャリアをスタートさせようと思って留学したんですよね。

沢辺 ちなみに留学の金はどうしたんですか?

大久保 金は、自分の貯金と、親から借りました。

沢辺 何年間留学してたんですか。

大久保 2年半、イギリスです。

沢辺 どんなこと学んでたんですか。

大久保 経営学部です。経営大学院、MBAです。

沢辺 じゃMBAも持ってるんですか?

大久保 はい。

沢辺 かっこいいですね(笑)。

大久保 (笑)ま、響きはいいですね。でもまあ、それで富士通に入って、海外の事業戦略の部隊で働きました。

沢辺 海外にいたし。英語も堪能だし。

大久保 まあそうですね。幸い、ちょうどイギリスに子会社を作ろうという計画があって、その立ち上げをずっとやっていました。

沢辺 大久保さんは何年生まれでしたっけ?

大久保 西暦で言うと1967年です。

沢辺 ってことは、そのころは90年代?

大久保 そうですね。94年に留学して、96年の12月入社かな。

沢辺 富士通では何年働いたの?

大久保 9年くらいです。2005年の10月20日付で辞めて、J STYLE BOOKSは2006年の3月オープン。

沢辺 辞めてからオープンまで早いね(笑)。

大久保 早いですよね(笑)。ちょっと焦りすぎて、中途半端なまま開けちゃったっていうのは反省としてありますね。
やっぱりあの物件、あの場所がすごく好きだったんで、少し焦っちゃったのもありますね。
あの大家さんだったらそんなに焦らなくても、僕のペースで任せてくれたって、今になると思いますけど、僕ももう、他に取られちゃうっていう焦りと不安があったので。

沢辺 しょうがないよね。

●「どこで」書店をやるか

大久保 しょうがないですよね。かなり中途半端な状態で開けちゃいました。
ちょっと話が戻るんですが、その2005年から遡ること3年くらい、2002年くらいの頃から、本屋のことを考え始めていて、場所探しも、土日を使って3年くらいしてたんですよ。
それでもやっぱり中途半端なところしかなくて、で、いいかな、と思っても不動産屋に相手もされなくて。不動産屋ってこんなに横柄なんだって、本当に思いましたね。
僕が最初に探してたのは文京区で、ちょうどその1年前に決まりかけた物件があるんです。茗荷谷の放送大学のすぐ近くの欅並木があるきれいな場所にあった物件。まあその物件も中途半端なんですけど、とにかく不動産屋が横柄で。

沢辺 2004年前後っていうと、不動産がまだ調子良かった頃かな。

大久保 ま、そうですね。1階の物件なんか見つかんないよって言われてました、その時。
ただ、ちょうどその茗荷谷の物件が決まりかかったときに、会社で中国に工場を作るという大きなプロジェクトに取りかかり始めて、なかなか辞めるに辞められなくて。自分がいい出したプロジェクトでもあったので、もうこれは気合いを入れて責任を全うしよう、それから辞めよう、思ったんですね。1年後に、僕が抜けても、迷惑がかからないというタイミングがあったので、もうこの機会を逃したら絶対ダメだと思って、辞めました。
場所は何も決まってなかったんですけど、まあ3年間探ししてもダメだったんだから、のんびり探すかと思ってたら、今の場所に出合ったんです。独立して一からスタートするわけだから、事業計画をきちんと立ててやらなければというところなんですけど、そういう経営戦略を学ぶためにMBAも取ったわけですし。だけど、自己資金だけでやるわけだし、ここはもうマーケティング無しで、好きなことを好きなようにやろうと思った。そのかわりやっぱりビジネスとしては厳しい。難しいことを自分でつくりだしてしまうのはもう覚悟の上でした。
とにかく、最初に話したように、自分の好きなことを好きなところでやりたかった。それが、この場所だったんですね。僕、このエリアはホント好きで。中学生のときから来てたんですよね。当時は、まだ何もないところで、オンサンデーズがまだ今のワタリウムの向かいのちっちゃなポストカード屋だったし、ヴォイスっていうちっちゃい古着屋さんが材木屋の2階にあって……。

沢辺 材木屋なくなっちゃったね。

大久保 ええ。原宿橋のたもとのところに店があるぐらいで。その後、シピーとかジーンズ屋が出来ましたけど。何しに来てたんだろ?と思うんですけど、なんか居心地が良くて好きで、しょっちゅううろうろしてたんですよ。
とにかく好きなところで店を開きたかった。だけど原宿だから敷居は高いだろうなとたかをくくってて、アプローチを全然してなかったんですよね。しかも茗荷谷でつんけんされたから、原宿なんて相手にもしてくれないだろうと思って。
でも会社は辞めたのに場所はなかなか見つからない。だったら一度でもいいから自分の一番好きなところに当たっても損はしないなと思って来てみたら、トントン拍子に話が進んで。12月の末には契約しました。そこからです、準備をはじめたのは。

●開業までの道のり

大久保 書店開発という会社とフランチャイズ契約をして、書店を始めたんです。太陽の別冊のレクチャーブックだったかな?(※太陽レクチャーブック005「本屋さんの仕事」平凡社) そこで、吉祥寺にあったTRICK+TRAP(2007年2月12日閉店)というミステリー専門の本屋の方が、書店開発いいみたいですよ、と勧めていて、だったらここに頼めばいいやというくらいの気持ちで、書店開発を訪ねてみたんです。そしたら、「まあ、いいですけど、あんた本気ですか?」みたいに言われちゃって(笑)。
で、どういう書店にするのかをいくら説明しても相手にわかってもらえなくて。あの本屋を言葉で説明するのってすごく難しいんですよね。結局、「ちょっと手伝いようがないから、とにかくどんな本を置きたいのか自分で考えて教えてくれ」と言われて。それからトーハンと直でやり取りし始めました。正月に、入れたい本のタイトル、出版社、著者名、ISBNを全部一覧にしたリストを作って、トーハンに送ったんです。ま、あとはトーハンが適当に数合わせの本を突っ込んでくれて、という感じでした。いっぽうそれと平行して内装にかかりはじめました。内装は、以前から自分が頼みたい建築家を決めていて、お願いしてみたら、一発でOKしてくれたんですね。年末年始返上で、一生懸命やってくれたんです。

沢辺 若い建築家なの?

大久保 50歳手前くらいですね。

沢辺 その人はなんで知ったの?

大久保 昔、雑誌で見て、この人いいなって思って。自分が家を建てるならこの人に頼みたいなって思ってたんです。彼はモンスーンカフェとか手がけた人なんだけど、住宅もやっているんです。その住宅がとにかく素晴らしいんですよ。電話して、内装なんですけどやってもらえませんかって言ったら、その人も本が大好きで、それなら是非みたいな話になった。

沢辺 本好きだって知ってたの?

大久保 いや知らないです。

沢辺 偶然ですか?

大久保 偶然。

沢辺 お店は、何坪あるんですか?

大久保 15坪です。

沢辺 ところで、最初に本を仕入れる時は、何百万円ってかかりますよね? 一種の保証金というふうに解釈されているけど、要は本を買うということですよね?

大久保 いえ、初期在庫の代金と保証金は別です。在庫分は普通に一括で支払って、保証金は別途、坪数×10万円を書店開発に納めるんです。

沢辺 そうすると、うん千万円かかる?

大久保 そうですよ。本屋って開業するには金かかるんですよ(笑)。テナントを借りるのだって保証金かかりますからね。

沢辺 そうだよね。

大久保 保証金だから返ってはくるんですけど、初期投資としてかなりかかります。

沢辺 3千万円くらい?

大久保 そんなにはかかってないですね。

沢辺 1千万円じゃすまないでしょ。

大久保 すまないですね。開店が1年前だったら、頓挫してましたね。

沢辺 え、なんで?

大久保 そこまでの金が用意できなかったですから。一年間、プロジェクトにかかった期間、稼げたのは良かった。でも苦労して稼いだ金が(笑)、初年度とかはどんどん出ていきました。始める勇気より続ける勇気の方が大変だなと思いましたね。

●書店経営の面白さ、難しさ

沢辺 やってみたらどうでした?

大久保 面白いのと、まあ当然ですけど、こんなに難しいもんなのかと。

沢辺 難しかった?

大久保 難しい。それは今でもそうですけど。僕は富士通にいた時に、ヨーロッパのコンピュータ会社をゼロから立ち上げて──もちろん僕一人でやったわけじゃないですけど、事業戦略を組んで、3年で黒字化させて、5年でヨーロッパで第2位に持っていったんですね。
でもいまから思えば、楽なものですよ。書店の経営って、比べものにならないくらいもう全然難しいですね。
富士通でやったことを自分の成果だなんて思ってたら、人間ダメになってましたね。エリート気取りだったし。当時は、富士通で副社長のブレーンみたいな立場だったんで、すごく特別なんですよ。本社部門では、2階級上の人とは直接喋れないんですよ。例えば、平社員が部長に話すと、「課長と話せ」って。酷い上司になると、部長の机の前を通っただけで怒られる。そういう官僚的な会社だったんです(笑)。でも僕は、副社長に直接戦略を提言する立場にいた。戦略会議とかもちろん取締役会議とかにもアテンドしてましたから、議論の場で解説したりとか、ここはこうでこう判断されるのがいいと思いますとか言ったり。無茶苦茶恵まれていたわけです。でも当時と比べて、独立してからの3年間のほうが桁違いに勉強できたと思いますね。

沢辺 勉強って例えばどんなこと?

大久保 企業にいるときは、狙いすましたマーケティングをしてきたわけです。マーケットでは需要がこうなってて、こうこうこう進むっていう見込みがあって、ウチの強みはこうだからってこれを活かしてって論理的に組み立てる。すると、みんなふんふんって納得してくれる。ところが、いまはまったく逆。俺はこれ好きなんだ、これやりたいんだって。でも、社会というのは、実はこっちのほうが受け入れてくれるんじゃないかと思う。
はじめはね、この店をぱっと見た印象では、こんな場所で、自分の好きな本ばっかり置いて、こいつはどっかの大金持ちで、道楽でやってるんだろって、たぶん皆さん思ってたと思うんですよね。

沢辺 俺思ってた。ごめん(笑)。

大久保 だから最初の1年って、なんか僕の品定めをしてたんじゃないかな。自分の本気度をみんな確かめてた、品定めをしてたなっていう感じは今はしますね。だけどそんな中で、「あ、君よっぽど本好きなんだね」って言ってきてくれる人がいたり。そんな偶然の出会いが物事をよく廻してくれてたり。まあちょっとまだ解ってないとは思うんですけど、あ、世の中ってもしかしてこういうことなのかなっていううんですかね。もっと自分をさらけ出していいんだって思えたのが一番の勉強かな。

沢辺 俗論なんだけど、例えば、出した店が富士通のパソコンショップだったとしたら、誰もが知ってる会社だし、しかも名の通った会社だから、よっぽど変なことはないだろうっていう、まあベースの信用があるじゃないですか。でもいきなりJ STYLE BOOKSっていう名前も聞いたことないし、大久保さんっていう個人と今まで付き合いがあったわけでもなく、どこの骨かも解らないっていう、そういう落差みたいなことなんですかね。そういう感じではない? つまり会社の信用とかブランドがあって勝負していないという……

●お客との会話

大久保 っていうか、考え方が真逆のような気がするんですよね。例えば、個人で仕事をやって成功されてる方とかが気に入ってくれて、いろいろアドバイスをいただいたりとかするんですよね。そのときに、ああなるほどなと思ったのが、とにかくね、自分にウソついちゃダメだと言われたこと。自分の好きなことやりなさい。途中でダメになるやつは、ダメになってよくなりかけてる時に手放しちゃうんだと。もうちょっとガマンしたら上手くいくのに、その手前でみんな手放すんだ。そこで踏ん張れるかどうかというのは、ホントに自分がそれを好きかどうかなんだよ、と。やっぱりこの辺にいる人は好きなことやって生きてる人が多い。みんなファッション好きだとか、グラフィック好きだからとか。

沢辺 まあオシャレだからってやってるやつもいると思うんだけどね。カッコいいからとかさ。

大久保 長い間続けてきて、そして成功されてる方は、ですよ。

沢辺 なるほど。続けられてる人ね。

大久保 好きでやったから成功して、いくらお金を持ってても、昔のスタイル崩してなかったり。そういう人を見てるとやっぱり、ああそうだな、マーケットがどうこうじゃなくて、自分中心。自分の気持ち中心で、それに素直にやっていく。これは、サラリーマン時代とは真逆ですよね。それがやっぱり一番のカルチャーショックですよね。まあちょっとね、僕が言うときれいごとっぽく聞こえちゃうんですけど、やっぱりそういうね、実体験で語ってくれる人の言葉は励みになりますよね。

沢辺 え、だけどさ、本屋のレジに立ってて、どうしてそんなことが聞けちゃうわけ?

大久保 (笑)なんでですかね。うちの店って話になるんですよ、人と。そんな大成功してない人でも、普通のその辺の、それこそポットの社員さんとかでも。今これやってんですけど、とか。他愛もない話から重い話まで、とにかくうちの店ってなぜか会話になるんですよね。それが僕は一番楽しみでもあるんですけどね。ほんといろんな人と毎日会話してますよね。

沢辺 カウンター広いし、それに何もないもんね。チラシが2、3あるくらいで。

大久保 本を選んでる人を会話に引き込むこともありますね。もうちょっと商売っ気を出した方がいいんじゃないかって反省するんですけど。とにかく会話になりますよ。皆さん余裕のある方だから、こいつ危なっかしいなとかって思うんでしょうね。思ってると思うんですよ絶対(笑)。

沢辺 余裕があるかどうかっていうのは一概に言えないけどね。

大久保 それは僕の目から見てですけど。だからいろんな師匠がいますよ。近くに住んでる元証券マンの80歳近いおじいさんがいるんですが、彼は本田技研の株式上場を立ち上げた人で、本田宗一郎さんとも一緒に仕事をしていて良く知っている。で、僕も経営の話はついていけるので、本田さんと藤沢武夫さんはもうとにかく立派だったとか、これこれこういう時の振る舞いはすごかったとかって、とかいろんな話を聞かせてくれるんです。で、5月くらいだったかな。日曜日に電話がかかってきたんです。最初は、一応日曜日は休みということにしてたんですけど、5月くらいから日曜返上でずっと店開けてるんですよ。まあ100年に一度の不況と言われてますから、何が起きても後悔しないようにと思って。それで電話を取ったんですよね。そしたら「この経済状況の中、日曜日定休日で当たり前に休んでたら経営者失格だと思って電話したんだよ」って。それ、おっかないでしょ(笑)。もうつくづくこの辺の人はね、優しくもしてくれるけども、とにかく目が厳しいと思った。審美眼もそうだし、人を見る目、事業を見る目、とにかく厳しい人が多いとは思ってたものの、やっぱりつくづく怖い人に囲まれて仕事してんだなと思いましたよね。そういうのがやっぱり勉強ですよね。

沢辺 でもそれって最高のエールでしょ。

大久保 ええ。

沢辺 たかだか行きつけの店にしたって、そこまではやんないよね。この不景気で小売店も大変だし、調子が良かったセブンアンドワイだろうがイオンだろうが安売り競争に走って大変だ大変だってなってる時に、その小売店の末端の小ちゃな個人営業みたいなところが日曜も平然と休んでるようじゃダメだよっていう着目もすごいね。

大久保 電話かけてくるところがすごいですよね(笑)。

沢辺 電話をかけてくれるなんて、これはもう大久保さんに対する共感だよ。

大久保 奥さんには止められたって言ってました(笑)。

沢辺 そりゃそうでしょ(笑)。

大久保 やめとけってやめとけって(笑)。
だから、日々勉強してます。これは一言では語り尽くせないですよね。いやほんと勉強になりますよね。

沢辺 でもね、さっき大久保さんは富士通の時はいわゆるマーケティングで理詰めで調査分析して、データを出して戦略を立ててたけど、今は真逆のことやってますよ、って言ったじゃない? でも僕は、本田宗一郎さんだって、ほかの人にしたって、仕事で名を残した人というのは、結局は人間力、というか、自分の好きで勝負していたんじゃないかと思う。うまく言えないんだけど、マーケット戦略はもちろん立ててるとは思うけど、その手前には、企業だろうが個人だろうが、同じものがあると思うんだけどね。

大久保 いや、それは今はまだわからないですね。自分がやってることはまだあんまり冷静に見えてないですから。いまは、水の流れにそって左手はこうかいて、右手ははこうかいてって優雅に泳げるような状態じゃなくて、とにかく両手足バタバタさせてるだけですから。ですからまだまだ自分を俯瞰できないですけど。まあとにかく面白いというか、充実感のある毎日です。
実は僕にはもう一つ目標があって、これは商売とは全然関係ないんですけど、人間って何人と喋ったのかってすごく大切だと思うんですよ。何人と会ったか。何人とどんな話をしたか。だからいまは毎日いろんな人に会える。今日いい天気ですねで終わる人もあれば、深い話をする人もいますけど、そういう環境にいる、というのはすごく楽しいですよね。こんなこと言っちゃあれかもしれないですけど、本はついでに売っている(笑)。そっちの方が楽しくて仕方がない。
場所柄、仕事の資料を探しに来られる方もすごく多いので、やっぱりそこに役に立たないとやっぱり意味ないなと僕は思っているので、なんとか役立ちたいと思う。たいていはインターネットをお使いですから、そこで調べてもたどりつかなくて、困った果てに来られることが多いわけです。そういう中で仕事のお手伝いとかさせてもらうと、また、よりその人との関係が深まるし、その人がどんな仕事されてて何に困っているのかって僕自身もわかってくるので。結局、人との関係がすごく面白い。

次回へ続く

第2回「書店経営の実情」は11月20日(金)に公開します。

プロフィール

大久保亮(おおくぼ・あきら)
J STYLE BOOKSオーナー

J STYLE BOOKS

Web http://www.jstylebooks.com/
住所 東京都渋谷区神宮前2-31-8メイハウスビル1F <Google Map>
TEL & FAX 03-3402-7477
定休日 日曜(不定休)
J STYLE BOOKS

『本の現場』(永江朗著)の非再販扱い(再販売価格維持契約の不適用)について

ポット出版は、2009年7月に発行した『本の現場』(永江朗著 ISBN978-4-7808-0129-3 C0000)を、再販売価格維持契約の不適用(非再販扱い)の商品にしました。

●『本の現場』カバー裏の表記について
・希望小売価格●1800円+税 としています
・楕円(20ミリ×14ミリ)に「非再販」と表示しています

●非再販扱いした理由
ポット出版は、日本の出版市場がますます活性化するための一つの課題に、小売店=書店の商売の自由の拡大が必要だと考えています。
メーカーであるポット出版は、市場で購入される商品をつくることに力を注ぎます。
書店では、その商品を創意工夫を持って、ますます販売してほしいと思います。
その創意工夫を実現するために、書店の自由がより拡大されるべきだと考えています。
商品の値段に関する自由、商品の選択の自由、がその主なものでしょう。
値段に関する自由とは、いくらで販売するか(メーカーの希望小売り価格より下げるのか上げるのか)です。
また、仕入れ価格の低減も必要だと考えています。

この本は、値段に関する自由を多くしようと考えて非再販扱いにしました。

同時に、著者の永江朗さんも、「本来、商品の値段は小売店が決めるものだから、定価はなくていいんじゃないのというだけの単純なことですよ。」(『本の現場』214ページ)と書いているように、著者の考えかたにも後押しされて今回の非再販扱いをしました。

●書店に関わる具体的な取り扱い
・ポット出版の取次への出し正味はかわっていません。したがって、書店の仕入れ正味も、(たぶん)従来の再販の商品と同じだと思います。
・販売価格は、希望小売価格に拘束されません。(たぶん)仕入れ正味は同じだと思いますし、少数の商品のみを店頭で特別な対処をしなければならないので、現実的に価格の変更(安くする/高くする)は難しいと思います。
・返品もこれまで通りです。歩安入帳ではありません、書店の仕入れ正味と同額での返品を取次ではとるはずです。
また、ポット出版はこれまでも返品の制限をしていませんので、委託品・注文品とも返品を受け入れています。
逆送などありましたら、この非再販扱いの本にかかわらず相談ください。書店と一緒に返品を受け入れるように取組みます。
・二段バーコードの値段は、希望小売価格の1800円としています。レジでは、この額が表示されるはずです。
もし、希望小売価格と違った値段で販売する際には、ご面倒でも、直接販売価格の入力をお願いします。

以上よろしくお願いします。

○その他ご不明の点がある場合は……
ポット出版までお問い合わせ下さい

【書店様向弊社連絡先】
お問い合わせフォーム●こちら
電話●0120-029-936
ファックス●0120-009-936

書店員・図書館員向けアンケート結果のご報告

ポット出版は、7月9日(木)〜12日(日)に東京ビックサイトで開催された「東京国際ブックフェア」に版元ドットコムの一員として共同出典し、ブース内で書店員様・図書館員様へ向けてのアンケート調査を行ないました。
版元ドットコムブースを訪れていただいただけでも感謝!ですが、さらにポット出版のアンケートにまでご協力いただき、ポット出版一同、心から御礼申し上げます。
ご協力いただいた皆様にはささやかな気持ちを添えて御礼のお手紙をお送りいたしますが、一足お先に、アンケート結果のご報告をさせていただきます。

【アンケート結果】

●回答者の構成
書店員            24人(69%)
図書館員            8人(23%)
不明                3人(9%)
合計                35人

●ポット出版を知っていましたか?(よく知っていた/知っていた/よく知らなかった/全く知らなかった)
よく知っていた    3人(9%)
知っていた        10人(29%)
よく知らなかった    5人(14%)
全く知らなかった    17人(49%)
合計                35人

●ポット出版と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?(全く知らなかった方以外)(自由回答)
・サブカル(書店)
・サブカル系(書店)
・セクシュアリティとかクイアとか。サブカル系(書店)
・サブカルチャー本と、書店の業界の本を出版されている(書店)
・アングラ演劇関係のイメージがあります(書店)

・ずぼん(図書館)
・ず・ぼん(図書館)
・ず・ぼん(図書館)
・ず・ぼん。ネットでの情報公開が相当多い(図書館)
・出版流通について真剣にとりくんでいるイメージ(ず・ぼんをよく読んでました)(書店)

・かわいいかんじ(書店)
・児童書系(書店)
・児童書のイメージ(書店)
・まず思い浮かぶのはポット。かわいらしいイメージです。宝塚関係の本をいくつか(担当で)書店に置いてあるのでそういうイメージです(書店)

・個性的な感じ(図書館)
・何か発信してる版元(不明)
・図書館として、とても気になる版元さん(図書館)

・特に思い浮かばない(書店)

●FAX案内に必要だと思う情報は何ですか?(自由回答)
・新刊があると助かります(書店)
・新刊、これから出版する予定の本の案内(書店)
・他の書店での展開好事例など(書店)
・新しく出たもの(書店)
・重版・新刊情報など(書店)
・子供向け以外(書店)
・売れ筋の案内(書店)
・パブリシティ(予定)や採用状況、関連する情報のネタ(「新聞とか雑誌にこういうことが載っています!」ということ)(書店)
・どういった本か。どこに並べるのがいいのか。セールスポイントは何か。(書店)
・商品の見所。どこをオススメしたいか。熱意を感じるものにひかれます。(書店)
・今の情報で分りやすいと思います。(書店)

・図書館ではFAX<メルマガ<RSS (図書館)
・ISBN/調べやすいような正確な情報(図書館)
・新刊案内等(図書館)

・書店以外でも本を扱うので、ニーズにあった新刊、フェア等の案内(不明)
・内容をわかりやすく(不明)

●ポット出版へのご意見・ご要望などあれば、お書きください。(自由回答)
・これからもがんばってください(図書館)
・1,000円前後の求めやすい価格でお願いします(書店)
・出版界や図書館情報は興味深かった(書店)
・一般受けする図書等もあれば…(図書館)
・なんとなくマイナーなイメージがあるので、もっと街の書店で売るような本を出すと、広く読者がつくのでは?(図書館)
・学生の時はお世話になりました(図書館)
・FAXで送っていただいた注文書をReFAXして注文していますが、品物がなかなか来ません。FAXが届いていないのかもしれません。FAX送ってから電話で確認した方がいいでしょうか(書店)

以上です。
どうもありがとうございました。
アンケートは今後の出版活動に活かさせていだだきます。
今後とも、どうぞポット出版をよろしくお願いいたします。